神戸市障害者施策推進協議会への意見書
神戸市障害者施策推進協議会への意見書
神戸市障害者施策推進協議会 様 2014年8月4日
障害者問題を考える兵庫県連絡会議
意見書
〈はじめに〉
■改正障害者基本法を反映した議論をお願いします
2011年8月に改正施行された障害者基本法は、障害の範囲や目的・理念等、旧法から大きく転換されました。障害者基本法を根拠法とする「神戸市障がい者保健福祉計画2015」は2010年度末に策定され、障害者基本法の改正前に作成されたものです。すでに政府による障害者制度改革が進められ、そこで示された内容・骨子等をある程度盛り込まれた計画になっているとは思いますが、福祉計画の基本となる「理念」に係る部分については、先日6月30日に開催された協議会でも一定の議論/検討がなされてしかるべきかと考えます。同日、一部委員から「・・・の施設には地域移行できる人は一人もいません」との発言がありました。協議会はフリートークですから自由な意見が保障される事は承知しています。しかし、当該施設の入所者ご本人に十分な意思決定支援が保障されているのでしょうか。また「地域移行の希望はあるが条件整備等がなかなか難しい」との発言ならまだ理解できます。しかし何を持って「できない」と断言されているのでしょうか。改正障害者基本法には「他の者との共生は妨げられない」と明記されています。社会モデルを基本としている以上、社会的な環境を整備することが計画の基礎となるべきです。このように、まず計画策定の前提としての理念が欠落しているからこそ、このような発言も容認されているのではないかと危惧せざるをえません。
■障害者差別解消法を踏まえた検討をお願いします
今回策定に向け検討されています「第4期障がい福祉計画」の2年目に、障害者差別解消法が施行されます。同法の実効性を持った実施に向け、「神戸市障害者施策推進協議会」(以下、略『推進協議会』)においては、神戸市としての「差別解消に係る」条例制定に向けた検討が制度分科会の中で検討されている事は承知しています。しかし、「第4期障がい福祉計画」における一般就労への移行、また地域移行といった課題、あるいは地域での生活を継続していくこと等、差別解消の取り組みと密接に関連しています。福祉計画が「障害福祉サービス等の数値目標」を主たる内容とする事は承知していますが、先に述べた「障害者基本法」との関連と同様、「障害者差別解消法」を神戸市としてどのような仕組みを持って展開していくのか、それにより一層、特に一般就労を促進していけるのか、そのような視点を持った検討がなされてしかるべきかと考えます。
■推進協議会のあり方
今回は詳しく触れませんが、政策決定過程での当事者参画、全ての施策に関わりジェンダ―視点を持つ事を要望したいと思います。
【具体的要望】
■障害者差別解消に係る神戸市の独自条例の制定
○〈はじめに〉でも触れましたように、「障がい福祉計画」の基本的な理念/基礎となる「神戸市障がい保健福祉計画2015」が改訂の予定もなく、国における新たな法改定等の反映が不十分だと私たちは認識していますが、今回の福祉計画の作成に当たり、「第3期障害福祉計画」での第1章(4)「計画の基本理念」に該当するヶ所に、「第4期障がい福祉計画」においては、「障害者基本法」に則り、障害者が「分け隔てられることなく、地域で共生する権利主体」として存在し、そのような社会を構築するために、「障害者差別解消法」に則り、社会がそのための環境を整備する責任があることを、明記して下さい。
○上記を実現していくために、神戸市独自の「障害者差別解消に係る条例」を制定することにより、「第4期障がい福祉計画」の数値目標等を達成できるように環境を整備していくと明記して下さい。
■「支給量審査基準」(ガイドライン)の改訂
国において定められた「障害者基本計画」は様々な観点が盛り込まれていますが、何より重要な事は、今回はじめて「意思決定支援」も盛り込まれたように、より障害の重い人に対しても、十分な意思決定支援を行い、ご本人の自己決定に基づき、「地域社会での共生」をどのように実現していくのか、それが最重要課題として上げられています。神戸市も含め全国的にも障害者のとりわけ介護施策は歴史的にも家族依存、親亡き後は入所施設という流れは、今なお存在しています。どんなに障害が重くても住み慣れた地域社会で介護支援等を受けながら生活していけるのだ、そのような選択肢もあるのだ、そのように障害当事者や家族が安心できる施策の実現は急務です。それを前提として、以下の内容を「第4期障がい福祉計画」に盛り込んで下さい。
○「支給量審査基準」(ガイドライン)を見直し/改定することを「第4期障がい福祉計画」に盛り込んで下さい。
○あるいは、改訂に向けて、障害当事者、支援者、関係事業者、有識者等によって構成させる検討会を立ち上げる事を、今推進協議会で検討して下さい。
〈理由〉
○支給量審査基準のあり方
神戸市の「支給量審査基準」は一部数値のみしか神戸市ホームページで公開されていません。県内の多くの他市ではホームページで公開されています。障害を持つ人が今後どのように地域で生活していけるのか、そのためにどのような支援が受けられるのか、本人家族にとって大変重要なものです。支給決定権者は神戸市当局にありますが、現在「障害福祉サービス等利用計画」作成の義務付けにもあるよう、またご本人の自己決定の重要性が謳われているにもかかわらず、支給量審査基準を公開しないあり方は大変問題です。
○重度訪問介護の支給量
障害の重い人が地域で生活し続けるためには「見守り」も含め長時間利用を可能とする重度訪問介護が重要な施策です。しかし、現在の「支給量審査基準」では、最重度な障害者でも279時間とされています。一日約9時間の利用しかできません。近年、和歌山県でも同問題を巡る訴訟が起こされ、裁判所が原告の主張を是とした判決が下されました。また県内にも同支給量審査基準については格差が存在していますが、阪神間では一日24時間介護保障が実現されていたり、支給量審査基準で約500時間近い支給量が示されている市もあります。
また重度訪問介護の対象拡大が2014年4月から実施されています。知的障害者、精神障害者も対象となりました。現行の「支給量審査基準」での対応は困難だと思われ、改訂の必要性があります。
○移動支援の一律上限
移動支援は地域生活事業として実施されており、上記の「支給量審査基準」には示されていません。しかし、県内阪神間では概ね月60時間利用を上限とされていますが、神戸市では32時間です。移動支援事業は社会参加等の観点からも重要であり、ニーズも高いにもかかわらず、一律に32時間の上限は他市と比べても極めて低く、見直しが必要です。
○相談支援の独立性/サービス等利用計画
国において支給決定の仕組みを変えるため「障害福祉サービス等利用計画」作成の義務付けが決定されました。理由は、①「支給決定における公平性・客観性の担保」、②「本人の自己決定による利用計画に基づく支給決定」、という二つの側面があります。①を実現するため、「セルフケアプラン」も容認しつつ、基本的には指定特定相談支援事業者により同計画が作成されます。そして、②を実現するために十分なアセスメントや意思決定支援も行いつつご本人の自己決定、支援事業者・家族も含めた、本人中心の支援計画が必要とされます。
しかし、神戸市においては、本人の意向に十分耳を傾けず、とにかく「支給量審査基準」を前提とした相談が当たり前のように行われています。神戸市内各区役所の担当者の認識も不十分であり、目の前にいる障害者の意向より、本庁のご意向には逆らえないかのような対応も見受けられます。それも、「支給量審査基準」のあり方/問題点が反映されていると思われます。
○その他
その他、①「家族介護」を前提としたあり方 ②「訪問看護」との併用はできない(兵庫県障害福祉部局との見解の相違)等の問題もあります。
■グループホームのあり方
○建築基準
グループホーム数がなかなか増加しない理由として、建築基準の課題があります。兵庫県内においても神戸市だけが画一的に「寄宿舎」扱いすることで、事業者が努力して家屋を借り職員雇用した後らに、建築基準を理由として断念したケースが多くありました。今回、神戸市条例の改訂等により、一定努力された事はありますが、今後とも柔軟運用をお願いしたいと思います。
○地域格差
グループホームの設置には市内に大きな格差があります。グループホームの存在意義は、障害者にとって「施設」でなく地域の「家」であり、地域の中で小規模であることにこそ意義はあります。しかし市内の設置分布を見れば、大きな地域格差が存在しています。格差解消を計画の中に位置付けて下さい。
9月 3, 2014