オールラウンド交渉

対兵庫県 2014年度 障害者問題に関する要望書

兵庫県知事 2014年7月16日

井戸 敏三様

障害者問題を考える兵庫県連絡会議

代表  福永年久

2014年度  障害者問題に関する要望書

はじめに

貴職におかれましては、障害者の権利実現を基本とし、自立支援ならびに社会参加の促進など障害者福祉向上のため日々尽力しておられることと存じます。また、兵庫県障害福祉審議会の特別委員として障問連に委嘱して頂きありがとうございました。ご期待に添えるよう尽力したいと思います。

さて、現在、同審議会で検討される障害者プランならびに障害福祉計画は、障害者基本法の改正、障害者差別解消法の成立、そして国連障害者権利条約批准されて以降、初めての計画作成になります。一人ひとりの障害者が障害のない者と分け隔てられることなく共に暮らす社会を実現し、その人らしい人生や生活が実現できるよう、障害のある人が差別されることなく、「どこで誰と生活するかを決める権利」「障害のある者もない者も共に教育を受ける権利」等、権利を保障していく施策が、この兵庫県においていかに実現していくのか、今回の計画ならびにプランは非常に重要な意義があります。長期的な展望を持ち、かつ短期的には集中した積極的かつ大胆な施策展開が求められるのではないでしょうか。「障害者差別解消法」の実効性の確保や県独自施策や権利擁護の仕組みを県内くまなく実施するためにも、兵庫県独自の「障害者差別禁止解消」に係る条例を是非実現して頂くとともに、貴職が下記の具体的な要望項目にある諸施策を積極的に講じられる事を要望するものです。

 

【1.障害者差別解消法に関わる課題】

①  【条例制定】 障害者差別解消法が平成28年度から施行されます。従来の障害福祉の枠組みを越える内容であり、対象となりえるのは社会のあらゆる機関等が対象になり、施行に当たっては兵庫県障害福祉行政としての踏み込んだ取組みが求められます。そのため、県障害福祉部局として条例制定の決意を知事に具申し、制定に向けて努力して下さい。

②  【体制整備】 国の基本指針の策定等が遅れています。国の施策待ちでなく県としての検討を開始し、以下の施策を講じて下さい

・差別解消の推進には県庁内上げて部局を越えた横断的な体制が求められます。その中心となるよう、県障害福祉課内に「障害者差別解消推進室」(仮称)を設置し専任担当者を確保して下さい。

・障害者が差別に係る相談ができるよう、身近な窓口の開設ならびに兵庫県内各圏域ごとに(仮称)「中核地域生活支援センター」を新たに設置して下さい。

・差別解消法には紛争解決の仕組みが明示されていません。他道府県では、差別解消あるいは権利擁護に係る「調整委員会」あるいは「解決委員会」が設置されていますが、兵庫県においても同様の仕組みを作って下さい。

・平成27年度は同法の周知期間です。同法は「個別の場面における特定の障害者に対する取り扱い」が対象とされていますが、本人や家族に差別の認識や不当な取り扱いに対する異議申し立てできるようなエンパワーメントが、そして民間企業や各種機関、一般県民への意識改革が求められます。各市町毎の周知の取り組みも行われるでしょうが、兵庫県として各圏域ごとのフォーラムまたはタウンミーティングの開催、また差別事例の募集等の実施等、そのような施策が講じられる相応の予算を確保して取り組んで下さい。

 

【2.障害者計画  障害者福祉審議会

①  現在開催される障害福祉審議会の審議内容は、計画策定に向けた審議として極めて内容が不十分です。兵庫県の地域特性や諸事情等は勘案されるべきですが、基本となる国の法制度や基本計画の理念すら踏まえていない意見も見受けられます。最低限、合議体として成立させるためにも、まず審議回数を増やして下さい。

②  平成27年度以降の審議会委員が新たに選任されます。障害当事者委員が占める割合の増、複合的差別の観点から女性の当事者委員の選任等、私たちは求めます。県としての考えをお示しください。

 

【3.街づくり・交通・移動について】

①  【駅舎等のバリアフリー/進ちょく状況】 一日当たりの平均利用者数が3000人以上の鉄道駅における、エレベーター設置等に関する、兵庫県内の昨年度からの進ちょく状況について資料をもって回答して下さい。

②  【駅舎等のバリアフリー/ホームドア等】 JR六甲道駅での試験的に設置されると聞きますが、ホームドア又は可動式ホーム柵の整備に関する兵庫県内の進捗状況を報告下さい。また設置されるまでの期間は、安全確保のための駅舎ホームに何らかの人員を配置するよう県として各交通事業者に申し入れて下さい。

③  【バス問題/導入率】 県内各市営バス、県内民間バス会社ごとのノンステップバスの導入率に関し、昨年度からの進捗状況について資料を提示して下さい。導入率の低い市、民間バス会社について、どのように県として指導し解決を図るのか、具体策を述べて下さい。

④  【バス問題/淡路】 毎年要望している懸案事項である明石海峡大橋を走るバスに、車椅子のままで乗車できない問題について、車椅子障害者の移動権の侵害であり多大な不利益を被る差別である旨の兵庫県としての見解を明らかにし、兵庫県バス協会、障問連ならびに兵庫県関係部局による研究・協議の設けて下さい。

⑤  【精神障害者の割引問題】 精神障害者が、公共交通機関・タクシーを利用する際の運賃割引に関して、他障害に比べ立ち遅れており報道もされました。障害種別による差別は許されません。改善に向けた兵庫県としての検討状況ならびに取り組みを報告して下さい。

⑥  【公共交通事業所部会】 公共交通事業所部会として、バリアフリーなど障害者問題に関わる、この1年間の取組みについて報告して下さい。

 

【4.労働について】

①  【県職員採用・自力勤務条件】 昨年12月から今年1月に実施された明石市障害者職員採用において、「自力通勤、自力勤務遂行」条件が撤廃されました。国の基本計画にも、「・・・公共団体は民間企業に率先垂範して障害者雇用を促進する立場」とされ、兵庫県として障害者雇用の拡大に向け、「自力勤務、自力職務遂行」条件を撤廃して下さい。

②  【援助付き就労】 ジョブコーチや援助付き就労が兵庫県内各市町でどのように運用実施されているのか、資料があれば情報提供して下さい。なければ概略報告していただき今後に向けた課題について回答して下さい。

 

【5.自立生活支援に関して】

1.相談支援について

①  【サービス等利用計画】 現在、サービス等利用計画作成が義務付けられ、それを根拠をとして支給決定される仕組みになりました。相談支援事業者等により作成される計画に基づく支給量が、当該市町の支給基準(ガイドライン)に乖離が見られる場合、どちらが優先されるのか等、基本的にどのように考えるのか、県としての方向性を回答してください。

②  【相談支援事業者】 兵庫県として相談支援事業者の拡充のため相談支援従事者養成研修の拡大等、尽力されている事は評価しますが、まだまだ量的にも不足しています。神戸を除く各圏域ごとに1名のコーディネーターが配置されていますが不十分であり、各圏域単位で「中核地域生活支援センター」(仮称)の設置を県として行い、相談支援体制の整備を図って下さい。兵庫県下の相談支援事業の現状、広域的な相談支援の取り組み状況、今後の課題について報告して下さい。

③  【相談支援の内容】 障害のある人ご本人を中心とし、意思決定支援も含めた自己決定が相談支援では何より求められます。県下の相談支援事業の質的な課題について、兵庫県としての認識を報告して下さい。

④  【サービス等利用計画】 全障害福祉サービス利用者に対して実施される「サービス利用計画作成」について、県内各市町での実施状況と課題について回答下さい。

 

2.介助に関連して

① 居宅介護、重度訪問介護、相談支援について

私たちは県内における介護支給時間に関し大きな地域格差があると認識している。以下、各項目に回答されたい。

ア、【ガイドライン/支給決定】 また県内各市町の支給基準には大きなばらつきが見られます。県内のどこに居住しても同様のサービスが受けられる事が必要です。県としての考えを回答して下さい。

イ、【重度訪問介護/対象拡大】 平成26年4月から「重度訪問介護の対象拡大」が実施され、それにより、県内市町で知的障害者・精神障害者が重度訪問介護の利用に至ったケースがあれば、人数ならびに市町名に関する情報提供をお願いします。自立生活促進のためにも柔軟な運用を求めますが、兵庫県として「重度訪問介護の対象拡大」に関する考え方を回答して下さい。

 

②その他の介護保障

ア、       【同行援護】

① 視覚障害者はただ安全に移動できて目的地に着けばいいというだけでなく、目的地に着いてから

何をするのか、適切な情報保障がなければ目的は達成されません。そのような「移動+情報保障」という障害特性による支援の必要があるからこそ移動支援から同行援護に変わりました。ガイドラインが上限でなく、本来の制度の趣旨に則った運用が各市町でされるよう指導して下さい。

② 通院に限定した同行援護利用が可能である旨、厚生労働省から通知されましたが、それにより県として各市町にどのように周知されているのか回答して下さい。また、病院内での中抜きはしないように各市町に指導されたい。

③ 移動支援から同行援護に変わり、事業所の撤退が全国的に危惧されています。今年10月より同行援護のサービス提供責任者に、同行援護応用課程の研修が義務付けされることにより、更なる撤退が予想されます。県内の同行援護事業者の実態を調査し、その対策を講じるようにしてください。

イ、【入院時コミュニケーション支援事業】

①県内で地域生活支援事業において重度障害者の入院時コミュニケーション支援事業を実施している市町名ならびに同制度の利用状況(平成25年度の利用人数/利用時間)について情報提供されたい。また未実施自治体に対して同制度の意義を周知させ積極的に制度創設するよう働きかけると共に、制度促進のために兵庫県として各市町への財政的補助を行って下さい。

ウ、【ガイドヘルプの車使用】 郡部等においては公共交通機関も少なくバリアフリー化されておらず、また民間の車椅子輸送の介護タクシーも少なく、移動権が侵害され家族の負担が重い現状があります。地域生活支援事業による地域の独自制度の開発等、県として解決策について提案して下さい。

オ、【難病者/障害の範囲拡大】 昨年4月から障害の範囲拡大に伴い、象となる難病者も障害福祉サービスの利用ができるようになりました。平成25年度の各市町での利用状況について報告して下さい。

カ、【介護保険】 65歳を迎えた障害者について、介護保険の申請を強要しない事。障害特性を踏まえた制度利用と、生活実態を丁寧に聞き取り柔軟な対応を行う事。各市町において、介護保険利用により利用できるサービスが後退しているのかどうか、実態を把握されると共に、後退しないように市町に指導して下さい。また40歳以上の特定疾患者で介護保険利用されている人の実態についても併せて回答下さい。また、神戸市では介護保険認定が非該当になった場合、障害支援区分によらず「軽度」とし、居宅介護は一律20時間とされています。他市町でもこのような実態があるのか、併せて回答して下さい。

 

グループホーム・ケアホームについて

ア、【グループホームの一元化】 平成26年4月からグループホームが一元化されましたが、兵庫県として同事業の運用がどのように変化したのか、どう評価されているのか、説明して下さい。また、宿直型配置、夜勤配置の区分の仕方、労働基準法との整合性等について、改めてご説明下さい。

イ、【ホーム入居者の移動支援】 通所施設等が休みの土曜・日曜・祭日等において、共同生活でなく個人の余暇活動等のための外出をホーム職員が担う事は実質困難であると私たちは考えます。ホーム入居者が、通所施設が休みの土曜日曜等の日中に移動支援利用する事はホーム利用とのサービスの重複利用になるのかどうか、県としての見解を示して下さい。

ウ、【建築基準】 兵庫県として国土交通省(構造改革特区第25次)に、空き家活用のための建築基準法の緩和の提案をされましたが、その後の進捗状況を回答して下さい。その結果にかかわらず、ホームは寄宿舎ではなく家であり、街の中の小規模な「住まい」が多く設立される事が、地域での共生社会の創出であり、県内各市町に柔軟運用するよう県として指導し、兵庫県として「一定の要件を満たせばグループホームは寄宿舎ではない」旨の見解または認識を通達により明示して下さい。また引き続き国に対し建築基準の見直しについて兵庫県として要望して下さい。

エ、【消防関係】 スプリンクラー設置の義務付けに関する県内の状況や課題、県としての補助施策について説明して下さい。

オ、【基準条例/敷地内設置】 昨年度以降、基準条例による敷地内設置を適用して設置された事例があれば報告して下さい。また同条例に基づき事業者から申請があったが設置に至らなかった事例、ならびに理由についても併せて回答して下さい。

 

医療的ケアについて

いわゆる「医療的ケアの法制化」により、有資格の限られたヘルパーにしかケアしてもらえなくなり、ヘルパー数が減少したり対応してくれる事業所がなかったり、法制化まで関わっていた事業所が撤退したり、今まで以上に生活しづらい状況に追いやられています。昨年度からの進捗状況を中心に回答して下さい。

ア 研修を受けたヘルパーが多く必要であるにもかかわらず、県としての募集人員が少なすぎて、受けたくても受けられない。民間研修機関の増加を検討して下さい。

イ 指示書を書いてくれない主治医がいるので、ヘルパーが研修を受けることができない。医療機関等に制度の周知徹底を図ってほしい。

ウ 2014年度の研修募集人数、応募人数、受講人数、合格人数、実地研修認定人数、経過措置での認定人数を回答して下さい。

エ 医療的ケアを必要とする人が兵庫県下に何人位いるのか。また、研修を受け、認定されたヘルパーが何人位いるのか。どれ位満たされているのか等、分かる範囲で回答して下さい。

オ 実地研修してくれる指導看護士の確保が困難です。指導者養成研修をDVD視聴による自己学習を認め、指導看護士を増加して下さい。

カ 現在、既に研修を受講した指導看護師は何人いるのか回答して下さい。

 

【6.地域移行に関する課題】

【基本姿勢】 入所施設等の増設要望が現実的にある事は私達も承知しています。しかしそれは障害当事者が強く望んでいるのでしょうか。また入所施設での生活以外に選択肢が考えられない、地域生活を保障し得る基盤が脆弱なためではないでしょうか。兵庫県としての認識を回答して下さい。

【入所者等の移動支援】 平成25年度、施設入所者の移動支援事業の県内各市町での実施状況について、資料を持って回答して下さい。地域移行のより一層の促進、特に社会的経験を重ねる中で地域生活を回復していく過程での入院入所中の移動支援の意義は大きく、未実施市町に制度の意義を周知し、制度創設促進のため兵庫県として財政的補助を行って下さい。

【地域生活支援拠点】 社会保障審議会障害者部会の「障害者の地域生活に関する検討会」では、地域における居住支援のための機能強化として「地域生活支援拠点」が上げられ、県内市の審議会では拠点作りに向け検討されています。兵庫県としての考え方をお示しください。また新たな入所施設作りにならないよう、各市町に指導して下さい。

 

【7.生きる場・作業所について 】

日中活動において、卒業後に通所先がない、医療的ケアが必要だが受け入れてもらえない等、障害者、家族から多くの声を聞きます。「○○園に週2日、他の通所施設に週3日」等、本人の希望でなく受け入れ先がなく、仕方なくそんな状態にある人が当たり前のようにおられます。また事業者においても受け入れたいが送迎が必要な人は受け入れられない、また精神障害者は休みがちな方もおられ通所日数が少なく報酬面で運営上の課題が生じたり、また居場所型として機能している地域活動支援センターも補助金が厳しく苦労しています。私たちは小規模でも理念をしっかり持って地域生活支援につながる多くの事業所が身近な地域に増えていてくことが望ましい姿だと考えます。以下、質問に回答して下さい。

①  県内の地域格差も大きいと思いますが、兵庫県における生活介護事業、就労系事業等の日中活動の場の確保について、兵庫県としての現状認識と小規模でも事業体が元気に活動できる県としての助言、支援施策について回答して下さい。

②  第二次行財政改革プランとして、小規模作業所施策において、「市町に対する地方交付税措置と市町の実費負担額との乖離を踏まえ、県の支援のあり方を見直す」とされているが、平成25年度末の状況について報告されると共に、県補助を行っている市町名を報告して下さい。

③  就労継続B型事業は多数あり特別支援学校等の卒業者の受け入れに大きな役割をはたしていますが、経過措置が終了し、来年から就労移行支援事業を一旦受けないと利用できなくなると聞きます。特別支援学校等の進路指導でも大変混乱していると聞きます。具体的にどのように変わるのか、また課題について説明して下さい。

 

【8.その他】

ア、地域生活定着支援センター「ウィズ」の平成25年度の実施状況ならびに平成26年度上半期の実施見込みならびに検討課題について回答して下さい。

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