【報告】 兵庫県障害福祉審議会報告~分科会が終了、いよいよ計画策定へ~
【報告】 兵庫県障害福祉審議会報告~分科会が終了、いよいよ計画策定へ~
障問連事務局
5月下旬から始まった分科会日程が全て終了しました。障問連として交代で全分科会に傍聴または委員として参加しました。
全般的な分科会の状況は、計画の骨子作成にはあまりにも議論不足、合議の体をなしていない、また障害当事者委員(団体)を新たに選任したというものの、障害当事者が少ない(団体代表として障害のない人の参加が多い)等、極めて不十分な面が明らかになっています。水面下では、県・計画担当者には審議会をもっと開催して欲しい等、要望していますが、反応は芳しくありません。
今後、分科会意見、また後日各委員から提出される意見書を県事務局が取りまとめ、9月開催の審議会で計画/プランの骨子案の検討、12月には本文案に関して議論され、来年1月にはパブリックコメント募集、3月審議会で最終的に本文案が取りまとめられる予定です。時間がありません。
障問連として、6月末日締め切りの「意見書」の作成、審議会での議論の活性化とあるべき方向付けに努力し、また対県オールラウンド交渉要望書においても、計画ならびに審議会に関する要望を上げていき、その両面から取組んでいきます。特に障害者基本法に基づく「プラン」は今後6年間であり、障害者差別解消法の周知、施行、平成30年からの精神障害者の雇用義務化等、大きな制度改革を含まれます。国レベルでも国連/権利条約に明らかに違反するような病棟転換型施設の問題もあるよう、条約批准や法制度が変わっても、変わらないどころかむしろ後退させるような動向もあり、兵庫県下でもそのような事態にならないよう、基本となるプラン(計画)をあるべき内容にするよう取り組んでいきたいと思います。前号に続き、以下、各分科会報告を掲載します。
■「安全安心」分科会報告(6/2)
○県の考え方
〈理想像〉障害のある人が権利が尊重され、安全安心な毎日が過ごせる社会
① 防災対策を進め、障害のある人が安心して暮らせるまちづくりの推進
② 阪神・淡路大震災の経験と教訓を生かした被災した障害のある人に対する支援やこころのケアの強化
③ 地域の防犯ネットワークを強化し、障害のある人が安心して毎日を暮らせる防犯体制を構築
④ 障害のある人の権利を尊重し、多様性を認め合い、信頼できる住みよい社会を構築
○分科会報告
今分科会では藤原久美子さん(NPO法人Beすけっと)が障問連からの委員として出席し、積極的に発言され、分科会議論をリードし弾みを付けた。「プランの理念」(県案)の一文に意見することから始まった。
【自己決定】「障害のある人が必要な支援を受けながら、可能な限り自らの決定に基づき、社会の様々な活動に参加できる社会の実現」。
3月審議会では「可能な限り」の文言はなかったが、一部委員の意見を反映して挿入されたものだが、藤原委員から「及び腰だ。削除すべき」、他委員からも「意思決定支援等を通じやればできると言う認識が必要」等、賛同する意見が多数を占めた。
続いて「自助・公助・共助」についての議論。特に精神障害者に関し「自助は否定しないが長期入院している人に自分で決めるべきといっても困難。まず社会での受け入れ態勢の充実という意味で公助・共助をトップに持ってくるべき」の意見、しかし一方では、視覚障害者団体の方からは「本当は自助が一番であるべき。助けてもらうことも大事だが、重要なのは自立。視覚障害者も同行援護があることで、逆に自身での歩行が難しくなった」の意見。「自助という言葉の響きとして「自助努力」を感じるが「自己決定」も含まれる」と有識者委員から意見が出されたが未了。
そして今分科会「安全安心」の構成として、「まず権利擁護を先頭に据えるべき。差別や偏見が防災対策等の障壁になっており、人権という大きな括りがあって、個別の災害対応等がある。社会的排除、社会的包摂の考えが重要。排除されているところに安全安心はない。心の壁を取り払うことが安全安心の必須条件である。」と有識者委員から意見され、他委員からもまず、権利擁護をトップに持ってくるべきとの意見が出された。
そして、藤原委員が最も強調したのが「条例制定」。「手をつなぐ育成会」「知的障害者施設家族会連合会」「精神保健福祉士協会」等の委員からも条例制定に賛成の意見があったが、視覚障害者団体の委員からは、一定の合理的配慮の必要性は述べられながらも権利性の強調、条例には否定的な意見であった。また、有識者委員から「審議会で条例に関する議論がなじむのか? 条例には憲章的なものがあったり、どこまで拘束できるのかという問題があったり、また、条例を受けて県がどれだけ予算化できるかという問題もあり、どこまで盛り込めるか難しい。文言としては条例を妨げるものではない程度にすべきではないか」との意見。そして県事務局に見解を求めたところ、「内閣府が策定する基本指針が秋以降と聞いており、その動向を見守る必要があると考えている。例えば、手話言語条例の要望に対しても、知事は県議会答弁で国の動向を見守る旨の答弁をしている。また、条例化ありきでは中身の議論が進まない懸念がある。補足だが、県には指針というものがあり必ずしも条例という形にしていない。実際、例えばユニバーサル社会づくり指針に基づき、予算化も行っており、迅速に動けるという利点もある。条例を否定するわけではないが、国の指針を待つ必要がある」と説明した。県事務局としては中立的な立場での意見に留意したのであろうが、ニュアンスとしては否定的な印象であった。その他、市民後見人のあり方に関しても意見交換が行われた。
他の分科会と比べ、藤原委員が積極的に他委員にも意見を求めたり、それぞれの課題について委員同士の合議が行われたと感じたが、やはり時間的に制約があり意見が尽くされたわけではない。
■「教育・社会参加」分科会報告(6/3)
○県の考え方
〈理想像〉障害のある人が適切な教育が受けられ、地域活動への参加が促進される社会
① 障害の有無を問わず、皆で共に学び、共に分かり合えるシステムの確立
② 児童生徒が住み慣れた地域で安心して学習できる教育環境の整備
③ 特別支援教育を支える教職員及びサポートスタッフの能力強化等を通じたワンランク上の教育体制の実現
④ 障害のある人の交流活動を促進し、芸術文化やスポーツ、ツーリズムを満喫できる支援体制の構築
○分科会報告
宮田委員から「知的障害者等の意思決定支援について」(「発達障害研究 第34巻第3号」より)の追加資料が配布説明された。3月審議会で知的障害者の自己決定に関し否定的な意見が述べられたからであろう。それを踏まえ「プランの理念」(県案)の「自己決定」に関する意見交換が行われた。親の立場の委員からは「自己決定」の前に「思いや希望の下」を入れて欲しい。町村会を代表する委員からは、「障害は明日は我が身として考えるべき。当事者の立場になりきること。可能な限りは行政的用語」。精神障害者の公募委員からは、「精神障害者は周囲の環境次第で能力は発揮できる。知的障害者の場合でも周囲の工夫・支援による意思決定支援は重要」等の意見が述べられた。
本テーマの大きな課題である教育について、県教育委員会の竹内教育次長から配布資料「第二次特別支援教育推進計画」を下に説明された。教育については、既に計画済みのものであり議論は活性化しないと思っていたが、複数の委員から地域で共に学ぶ重要性が訴えられた事は意外だった。「兵庫県自閉症協会」の委員から、「この少子化の時代になぜ特別支援学校が増加するのか。自分の娘の事を地域、近所の人に知って欲しいと地域の学校に通学させた。特別支援学校は地域から離れてしまう事を危惧する」。また「肢体障害者福祉協議会」の委員からも「地域の子は地域で育てるべき。赤穂市で聴覚障害を持つ児童が最初は受け入れ態勢がないと地域の学校から断られたが時間をかけて行けるようになった。障害者は別の学校という考え方が昔からあるが一緒に学べる地域づくりを推進すべき」。これらの意見を踏まえ、9月審議会でも教育についてはさらに障問連からの意見を積極的に提案していきたい。
またスポーツや芸術活動に関して親の立場から、「パラリンピックや芸術にしても能力差はあり遠い世界に感じる。そこまでいかなくてもガイドヘルパー等を活用することで経験を積んで行けた」等の意見が出された。
■「くらし支援」分科会報告(6/10)
まず冒頭に、「次期ひょうご障害者福祉プラン・兵庫県障害福祉計画の考え方」の説明が県の担当者のほうからなされた(先月号も参照)。委員からは、「新しい公共」の位置づけとして、「地域で支える共助の推進」を謳っているが、先に公助の必要性について明記した県への評価、他福祉施策との整合性などが質問されつつ、この順番を崩さないでほしい旨意見があった。次に、言葉の問題(国の受け売りか市独自か、横文字が多すぎるなど)が提起された。知的障害者の施設協会長からは、自己決定できない人たちの暮らしのこと、代理決定はどこまでが認められるのか、施設を出るとは言うけれど、そのときに生活は誰が管理するのか、公平な県の支援機関を設置してほしい、本人と家族とで利害関係が一致しない場合も多いので、家族を支援する組織があってもよいのではないか、という意見があった。
○県の考え方
続いて、県側からくらし支援カテゴリーの内容説明があり、実現したいこと、政策、施策、実現していく事業の順で説明があった。実現したいこととしては1.多様なニーズや生活設計に合わせたすまい環境、2.必要な支援のもとでの地域生活の満喫、3.ユニバーサルな設計指針に基づいたまちづくり、4.必要な情報にアクセスし意思を伝達できる環境の整備、5.罪を犯した障害者が福祉的支援により社会復帰できる生活支援体制づくり、といったものが挙げられた。
○分科会報告
その後、委員とのやりとりがあったので、そのなかからいくつか主だったところをご紹介。グループホームやデイケアが経営難のため新規に創設するのが難しい/「地域に戻す」とあるが、6年間で施設をゼロにするのか、その間、施設入所者の生活はどうするのか/「地域移行」とあるが、障害者が住み慣れているのはどこなのか、理念を明確にしてほしい/グループホームは施設と何が違うのか、規模かサービス内容か/グループホームは世話人がいなければ食事は「作り置き」でも許されるが、施設は毎回栄養士が作っているのでそんなことは許されない/ユニバーサルと言うが、わからない知的障害者にはルビを振ってもわからないので無意味なのでは/こうしたことを考えれば、「施設から地域へ」というよりは「施設の改善」のほうが現実的でよいのではないか/50~70人ぐらいのユニットで施設を作ってそのなかにグループホーム的なものを作ればよい/警察に福祉を学んだ人を/難病の就労支援については、障害者手帳がなくても雇う企業があり、雇用率うんぬんより個々に柔軟な対応を/小児難病の人はなおらない、一生難病者として生きるため、それなりの施策を/ICTなど情報機器を利用しやすい社会整備を/触法障害者になる前に福祉サービスの充実を、などの意見が出た。
まずは全体的に県への各団体からの要望を聞いているようで、およそ分科会という、何かを議論して委員内で意見をまとめ、親会議で提案するというような性質を持つものではなかった。また、上記の知的障害者施設協会長が多く発言し、それも私たちには前近代的としか思えないようなもので唖然とした。いくら施設協会長で、施設を代表して発言しているとはいえ、「わからない知的障害者にはルビを振ってもわからない」というのは明々白々な差別発言であろう。施設という形態が、障害者を地域から隔離するものであり、そうした形態そのものが差別であるという当事者たちのいのちを賭した運動が、まったく通じていないことがわかり、ため息をつくばかりであった。障害者権利条約の第19条にも、「すべての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を認める」とあり、障問連としては、地域社会で生活することは障害者の権利であることを改めて強く認識するとともに、引き続き兵庫県にも、そのような認識を浸透させる必要があると考える。
7月 2, 2014