国/県の制度 差別禁止条例

【報告】 兵庫県障害福祉審議会/各分科会が開催される

【報告】 兵庫県障害福祉審議会/各分科会が開催される

障問連事務局

今後6年間の障害者プラン/福祉計画を策定する兵庫県障害福祉審議会、各分野ごとの分科会が5/16から開催されています。事務局としても傍聴体制を組んで臨んでいます。以下、計画の概要ならびに5/16「しごと支援分科会」、5/22「基盤整備分科会」の傍聴報告を掲載します。なお、6/2には「安全安心分科会」が開催され、凪裕之委員の代理として藤原久美子さんが委員として出席、また6/3には「教育社会参加分科会」、6/10には「くらし支援分科会」が開催されますが、報告は次号で行います。

■次期ひょうご障害者福祉プラン・兵庫県障害福祉計画の考え方

○基本理念

【自己決定】

障害のある人が必要な支援を受けながら、可能な限り自らの決定に基づき、社会の様々な活動に参加できる社会の実現

【共生】

障害のある人が地域の一員として生涯安心して当たり前に暮らし、誰もが共に支え合う社会の実現

○プランの視点

① 障害のある人ができる限り自分で決定を行える環境を整え、その結果を尊重する視点

② 障害特性等に配慮した「その人のため、本人中心視点」意識を持ち、自助・共助・公助の支え合いを実践する視点

③ 障害のある人が、住み慣れた地域でストレスなく日常生活を過ごすことができる差別のないユニバーサルな社会をつくり上げること

《評価》

・基本理念の部分でもはや後退が見られる。国の基本計画でも「障害者の自己決定」が謳われており、3/3審議会での「案」では、「障害のある人が自らの思いや希望のもと、自ら決定することにより・・・」であったのが、重度知的障害者には自己決定は厳し過ぎるとの一部委員の意見を反映してのことであろうが、「可能な限り」の文言が挿入されている。5/22分科会での説明ではこの点には触れられていない。

・「共生」の項では、現行プランの文面に「生涯安心して」が加えられている。この点も説明はないが、障害者及び家族の高齢化を念頭に置いた文言だと考えられる。

・「プランの視点」では国の基本計画をベースにしたものになっているが、国計画では「自己決定の尊重および意思決定支援」と明確になっているのが、ここでも「できる限り・・・環境を整える」とされている。

・また、国基本計画では「権利主体」「差別禁止」が明確に謳われているが、「自助・共助・公助」が盛り込まれ、差別のない社会の定義が「ストレスなく日常生活を過ごす」とされ、差別と権利との関係が曖昧にされている。

《今後に向けて》

本来、各分科会の前提となる、これらの理念や視点がほとんど議論されないまま分科会がスタートしている。また、現時点では分科会が終了すれば、9月審議会でまで審議会は開催されず、9月審議会では「計画骨子案」の検討になる。新たな計画の枠組みや理念や視点の一部は確かに国の基本計画をベースとしているが、肝心の中味は骨抜きにされかねない。障害者本人の自己決定に基づき、それを実現するための環境整備がなかなか整わない、あるいは時間を要する事もあろう。具体的な施策の項で「可能な限り」と言うのはまだ理解できるが、「理念」の中にわざわざ「可能な限り」との文言は入れるべきではないだろう。予定では、9月審議会 → 12月審議会で計画素案は決定される。障問連として、審議会の中で、あるいは県との交渉の中で、この点も含め要望していきたい。

■しごと支援分科会報告(5/16)

○県の考え方

① 障害特性や能力に応じた多様な就業環境と自己選択の確保

② 適性に応じて能力を発揮できる一般就労の場の確保

③ 福祉的就労における工賃水準の向上

④ 就職相談や職業訓練の充実

⑤ 一般就労と福祉的就労、就労と福祉の連携の強化

○5月16日分科会報告

まず冒頭に、「次期ひょうご障害者福祉プラン・兵庫県障害福祉計画の考え方」の説明が県の担当者のほうからなされた(上記報告)。委員からは、自己決定に関する説明を求める意見があり、それに対し県側は個々の状況や能力に応じた自己決定によって自己実現に向かうと説明した。個々の障害者が「可能なかぎり」「必要な支援を得ながら」自己決定するイメージだということだった。

その後、委員とのやりとりがあったので、そのなかからいくつか主だったところを紹介する。ダイバーシティ経営の実態として、姫路のエス・アイという会社が、兵庫県障害者雇用促進協会より複数回受賞もしており、障害者雇用に取り組んでいる、経産省のダイバーシティ経営100選にも入賞したとのこと。障害者手帳未保有者に対して、生活困窮者支援の枠組みで対応していくという話しがあった。ハローワークと職業訓練、労働行政とがうまく連携されておらず、その結果、社会適応訓練期間のほうが障害者本人に手当が出て、実際に就職が出来なければ給料がもらえない不安から、訓練を受けない例もあるという話しがあった。ジョブコーチ制度と支援のあり方に関して、企業との連携も含めた問題で、全国に1230名いるジョブコーチのうち常勤が1割、つまり9割は障害者の仕事の支援だけの仕事では自分が食べて行けない状態にあるという話しがあった。特別支援学校に在籍する発達障害や軽度の知的障害生徒に対しては、職業訓練やあっせんなどがなされるが、普通校に通っている障害をもつ生徒に対しては卒業後の職業支援がなされていないという問題が指摘された。職親制度や特例子会社制度をより使いやすくしてほしいという話しがあった。せっかく就職しても、精神障害者の就業の定着が少ないという問題が指摘された。当事者の仕事の職域拡大のためにも、ピアサポート制度に国から助成を受けるような仕組みを作ってほしい旨の意見があった。

《感想》

障問連が意見書として出したものに、「差別解消法に基づく合理的配慮の推進」があったが、それにはひとことも言及がなかった。また、精神障害者の雇用の厳しさについては議論されたものの、2013年度の障害者雇用促進法改正による20184月からの精神障害者雇用義務化の話しは出されなかった。上記の委員とのやりとりを見てもわかるが、雇用状況そのものが厳しいなか、障害者の労働問題に関しても、一定の認識は得られているという評価をすべきだとは思う。ただ、現行プランの理念として掲げられている「障害のある人が生き生きと働き続けられる社会」から、次期プランでは「障害のある人が適性や能力に応じて生き生きと働き続けられる社会」と変わったところに、障害特性を個人のものとして見るような見方が加わっていると言えるだろう。これは、障害者権利条約や差別解消法に逆行するものであると言わざるを得ない。また、努力目標や数値目標、罰則規定などの議論もなく、話しの内容が非常に中途半端に終わっている感が否めなかった。安倍政権の「女性の活用」に見られるように、「適性や能力に応じて」という文言が、「使える障害者は使う」というようなアベノミクスの成長戦略と符合しているようにも思える。「働きたい障害者が働き、それを社会が支える」という基本的理念と、合理的配慮を基軸とする差別禁止による数値目標の設定やその実現のためにも、「しごと支援分科会」の今後の動きには注目していきたい。

■基盤整備分科会報告(5/22)

○県の考え方

① 障害福祉サービスを担う人「財」力を強化し、障害のある人が地域で適切な相談が受けられる体制の構築 → 相談支援体制の構築と人材の養成

② 障害のある子どもを地域で支え、健やかに成長できる支援基盤の確保 → 障害児支援の充実

③ 地域特性を踏まえた質の高いサービスを受給できる環境の実現 → 障害福祉サービスの充実

④ 障害特性に応じた重層的な保健・医療が提供できる基盤の整備 → 保健・医療体制の充実

⑤ 難治性疾患者が安心して地域で暮らすことができる支援体制の整備 → 難病患者への総合的な支援体制の強化

○5/22分科会報告

冒頭、県の担当者から上記のプランの考え方や実態調査結果に関する説明等が行われ、その後、分科会が始まった。計8人の委員、うち兵庫県医師会副会長は欠席により7人。「兵庫県精神科病院協会長」「重症心身障害児(者)を守る会会長」「兵庫県社協常務理事」「県市長会副会長(代理:高砂市障害福祉課長)」「NPO法人ピュアコスモス理事長」「公募委員の聴覚障害者」「神戸大学精神医学分野准教授」らの方々により構成される。

県の担当者が分科会審議を促したが、口火を切る人がおらず、県の計画案を策定するための別途審議会に設けられている「障害者施策委員会」の委員である田中究さんから意見が出され分科会は始まった。田中氏自身が医師として主に精神障害者と関わる中で、本当に本人のニーズに合った相談/計画が作成されているのか非常に心もとない、法人による囲い込み、相談窓口の障害種別に応じた相談の不十分さが指摘された。以下、委員から出された意見を列記する。

・「児童デイサービス」・・・拡充が必要だが質的な担保が不十分

・「相談支援」・・・聴覚障害者専門の相談機関が県に一ヶ所(神戸市灘区)にしかない。但馬地域等の遠隔地からはとても行けない。せめて県民局単位で身近な場所での相談体制を求める。

・「相談支援」・・・知識を持つより様々な障害者と直接関わった経験のある相談員を求めたい

・「高齢化」・・・聴覚障害に特化した特別養護老人施設を考えて欲しい。

・「高齢化」・・・身体は元気でも心の拠り所が必要、介護保険適用になると就労系施設に通所できなくなる。高齢になっても働く場は必要。

・「退院促進」・・・県から人権擁護の観点から委員に質疑されたが、委員の回答は審査会の基準が厳しくなった。地域で暮らす情報提供が不足しているのでは。

・「施設拡充」・・・重症心身障害者父母の会の委員から、「国の方向性も一時は施設は要らないとの誤った方向が示されたが、今は改善されホッとしている。今後とも兵庫県でも施設整備に努めてほしい」

《感想》

確かに各委員それぞれの立場に立った意見が述べられるのは自然だが、分科会の様子はまるで団体から県への陳情のような様相を呈しており、委員相互で合議して計画の骨子を作成すると言った雰囲気は全く感じられなかった。羅列的に各委員から意見が述べられ分科会としてのまとめ的なものも提案されなかった。そして「基盤整備」と言うなら、視点は「地域で生きる」ための条件整備をどう図って行くのかが何より重点課題になるが、重度障害者の自立生活、そのための介護保障等には一切触れられなかった。また大きな課題として論議された相談支援についても、「より身近な」「障害種別への配慮」そして「専門的知識より経験のある人」と各委員から指摘されたが、本人に寄り添った支援が切実に求められているのだろう。その背景には、形骸化した計画相談や西宮市で実践されているような「本人中心の支援/計画」が、県内各市町ではなかなか実践されていない現実があるのだと改めて感じた。県の考え方の中に、「人材」をあえて「人財」と表現され相談支援体制の構築とされているが、具体的にどう実現するのか、全く論議されなかった。

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