市・町の制度

「神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例の一部改正(案)」について意見を送らせていただきます

【神戸市グループホーム問題】 「神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例の一部改正(案)」について意見を送らせていただきます

田中義一(NPO法人生活支援研究会)

障害者があたりまえに地域で暮らし続けること。神戸市がそれを実現する街であってほしい。私はそういう思いでずっと障害者の地域生活を支援しながら神戸で生活してきました。

グループホームは、平成元年の国制度開始から、「障害のある人たちが地域の中で普通の暮らしを営むことを実現する」ということを目指して運営されてきました。また、そこで生活している入居者の人たちにとっては、グループホームはまさしく「家」なのです。神戸市でも先駆的に制度化が行われ、多くの既存住宅が利用され、4~5名定員の小規模なグループホームが多く開設されました。

「グループホームとして使用する住宅は、原則として一般住宅敷地内に位置し、その外観は一般の住宅と異なることの無いよう配慮されていなければなりません。」と制度開始時に厚生省作成のハンドブックにもわざわざ掲載されています。

小規模ゆえに意味があり、なおかつ一般の住宅を利用することで、作りやすい。

当事者や家族が、地域での生活をイメージする上で、グループホームが大きく期待されている理由はそこにあります。

今回の改正の背景に、「グループホームは建築基準法上の用途は寄宿舎として取り扱われる」「グループホームを整備するにあたり、建築基準法上の規定に加えて、建築安全条例の規定が適用され、改修困難、整備断念」とあります。グループホームを作りやすくするために条例を改正。ありがたい話ではあります。しかし、意見を言っていいならば、そもそもいつから、グループホームは寄宿舎になったのか。小規模で一般住宅利用、あたりまえの生活の場を地域にたくさん作ろう、そんな当事者・家族の思いが無視され、いつのまにか、安全・安心を第1にした、ミニ施設を大金かけて作るしかない状況に追い込まれてしまったのです。それは仕方がないことなのか、施策の担当者には、当事者のその無念を認識していただきたい。確かに廊下幅の規制は既存住宅を利用できるかどうかの大きなハードルになってきました。しかし、廊下幅はクリアしても、壁を屋根裏まで改修する等等の大事業が基準法でたちはだかるのです。大金がなければ、グループホームはできない、その状況にかわりはないのです。グループホームができなければ、どれだけの障害者が住みなれた街を離れていくことになるのか。

神戸市においてグループホームが厳密に寄宿舎あつかいされ始め、既存の住宅が寄宿舎基準に該当しないといきなり却下され始めたのが平成23年になってからです。当事者・家族にとっては突然の制度解釈の変更でした。それまで障害福祉と建築安全がお役所たてわりの影響で何もやりとりしてこずに、平成22年の札幌市の認知症高齢者グループホームの火災を機に、類似施設の安全性確保が問題になり始め、急に障害福祉がお伺いを立て始め、建築安全が、施策背景を考えずに厳密な解釈を行い始めたのではないでしょうか。

この問題は全国的な問題であり、全国の自治体も大きく対応がわかれています。個別のグループホームで防火・安全対策を検討することで、一律規制しない個別対応の自治体と、率先して厳密に対応する自治体があります。兵庫県内では、ここまで厳密に寄宿舎基準を理由に既存住宅を却下している自治体は神戸市だけです。個別対応ではなく、独自の基準をうちだして福島県・鳥取県・愛知県ではすでに既存住宅でグループホームが作れる踏み込んだ運用が公になっています。国土交通大臣も36日の参議院国会答弁で、「安全ということをどう確保するかということをみたうえで、建築基準法についても何らかの緩和をしていく」「スプリンクラー設置や小規模で速やかに逃げることができる場合は、間仕切壁の防火対策の規制を緩和することを本格的に検討する」と答弁しています。国もこのままでは問題があると認識しており、各地でもふみこみ始めている中、神戸市の踏み込みは、条例の「廊下幅の規制緩和」にとどまっていいのか。この改正で既存住宅を利用したグループホームは増えていくのか。縦割り関係なく、障害福祉・建築安全・消防が共同で、しっかり検討し続けていただきたいです。

安全性など、どうでもいいといっているのでは、ありません。安全・安心を重視しすぎることで、グループホームができなくなってしまったら元も子もないのです。

今回の改正は、グループホームを作りやすくするという観点から賛同します。その為にも明らかにされていない、緩和の条件になる「一定の防火避難規定」はできるだけ簡易なものにする必要があります。また、これでおわるのではなく、今回の改正がグループホーム数の増加にどう影響するか、しないか、しないのであれば追加でどんな対応を検討するか、国の動向もおさえつつ、建築安全部署の主体的な関わりの継続を強くお願いいたします。

以上

兵庫県のグループホーム問題の速報

詳細はわかりませんが、兵庫県が以下のように国に対して、新たにグループホームを作りやすくするため建築基準の柔軟運用に向け、特区申請する方向と報じられています。県、神戸市とも内容は異なりますが、動き始めています。

 

新聞記事 国に構造改革特区の条件緩和10項目提案へ 兵庫県 (神戸新聞NEXT 2014/4/10

http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201404/0006850815.shtml

兵庫県は、地域限定で規制を緩和する国の構造改革特区に、空き家などをグループホームに活用する際の条件緩和など計10項目を提案することを決めた。

新規はグループホーム関連の1件で、残る9件は以前にも提案して実現していない項目。4月中旬に国に提出する。

空き家などをグループホームとして整備する際、法律上は寄宿舎の扱いとなり、廊下幅の下限や階段の設置数などが定められている。改造に多額の費用が掛かるため、空き家活用の促進を妨げているという。

このため、火災対策などで一定の要件を満たす戸建て型グループホームは寄宿舎扱いせず、一戸建て住宅と同じ基準を適用するよう求めている。

再提案では、臨床研修医の定員枠の決定権を国から都道府県に移譲することや、認定こども園の一部に設けられた有効期限の廃止などを求めた。

構造改革特区制度は2002年度にスタートし、今回の提案募集が25回目となる。(三木良太)

愛知県既存の戸建て住宅を障害者グループホームとして活用する場合の事務手続きについて

http://www.pref.aichi.jp/0000069631.html

障害のある人が住み慣れた地域で自立した生活をするためには、グループホーム等の住まいの場の確保が重要となっており、第3期愛知県障害福祉計画(2426年度)において、平成26年度に定員数を22年度の定員数の2倍とすることを目標に、促進を図っているところですが、新築により整備を進めることは建設費用の点で容易なことではありません。

また、既存の戸建て住宅を活用してグループホームを設置するとしても、現在、グループホームは、一般的には建築基準法上「寄宿舎」の規定が適用されるため、防火間仕切り壁の設置などが必要となり、大規模改修工事を行わなければならない場合があるなど、活用がしづらい状況となっております。

このため、既存の戸建て住宅を有効に活用し、障害者のグループホームの設置を促進するため、行政機関、学識経験者及び事業者等を構成員とする連絡会議において議論を進めてまいりました。

また、取扱い案について、平成251028日から1127日までの間、県民の皆様から意見の募集(パブリックコメント)も行いました。

こうした手続を経て、「既存の戸建て住宅を障害者グループホームとして活用する場合の取扱要綱」を策定し、充分な防火・避難対策を講じた既存の戸建て住宅については、建築基準法上の「寄宿舎」への用途変更の手続きを要しないこととし、「寄宿舎」とした場合に求められる防火間仕切り壁の設置等を不要とする取扱いを、平成2641日から実施することといたしました。

戸建て住宅を活用する 「グループホーム等」 の建築基準法上の取扱い

福島県土木部建築指導課

http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/918.pdf より抜粋

平成2171 日より、戸建て住宅を活用するグループホーム・ケアホ…ム (以下「グループホーム等」という。) の建築基準法上の取扱いは、当該建築物が一般的な住宅の形態となっており、以下を全て満足する場合において「住宅」として取り扱うこととします。

なお、この場合は、グループホーム等を計画する段階において、 下記の建築基準法所管行政庁と裏面の「建築基準法上の取扱いに関する所管行政庁との協議書」により協議を実施し、当該協議書をグループホーム等の指定申請等に添付してください。(中略)

<住宅と取り扱う場合の基準>

既存住宅を活用する際、当該建築物が適法な状態 (既存不適格を含む) であること。

既存住宅を活用する際、構造耐力上の危険性が増大しないこと。

階数が2階以下 (地下を有しないこと。) で、 延べ面積が200 解未満のものであること。 (別棟を除く。)

各寝室から廊下、階段及び屋外通路を経て道路等の敷地外の安全な場所に避難できる構造であること。

原則として、定員が浄化槽処理対象人員を超えていないこと。

消防法に基づき、住宅用火災警報器を設置していること。

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