国/県の制度

4月号 国の制度動向など・・・

~差別禁止法がいよいよ国会上程の見込み、しかし内容は大きく後退

成年後見人・選挙権裁判が原告勝訴、しかし非道にも国は控訴する!~

障問連事務局

 

■障害者差別禁止法を巡る状況

政権が交代し、差別禁止法の制定が危ぶまれたが、与党内での動きが始まった。

・2/27、自民党・公明党の政策責任者会議で差別禁止法制定に向けたワーキングチーム設置が確認。

・3/4、「公明党障がい者福祉委員会」が開催され、「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」について、障害者団体15団体からのヒアリングが行われた。

・3/7、ワーキングチーム第二回会合が開かれ、各国の同法の内容や国内各都道府県の差別禁止条例に関する検討が行われた。

そして、下記の新聞報道のように動きが活性化し、4月初旬には中間論点整理、法案発表、自公民三党協議と各省庁協議、4月20日前後に閣議決定され、今国会に上程し、秋の国会へ継続審議という流れになる事が予想されている。以下の新聞報道に続けて、公明党ヒアリングでのDPI日本会議の意見を紹介する。

 

【自公の「障害者差別解消法案」 車いすスロープ設置など 企業は努力義務に】《西日本新聞3/29》
自民、公明両党は28日、障害者差別の禁止を法制化する与党ワーキングチームの会合を開き「障害者差別解消法案」(仮称)の骨格をまとめた。車いす利用者のため店舗の出入り口にスロープを設置するなどの障害者への配慮に関しては、公的機関のみに義務付けることとし、企業への義務化は見送る方針だ。
内閣府部会の意見書は官民一律の義務付けを求めていたが、経営体力の弱い中小・零細企業などには大きな負担となりかねないため、努力義務にとどめ、義務化のハードルを下げるべきだとの意見が大勢を占めた。自公両党は同日、民主党との非公式協議を開始。週明けに3党協議を本格化させる。法案内容が決まり次第、政府提出法案として4月中にも提出する。ただ今国会は審議日程に余裕がなく、成立は秋の臨時国会になるとみられる。法案は、障害者権利条約の批准に向けた国内法整備の一環。内閣府の部会では「禁止法案」と呼んでいたが、与党内に「表現が強すぎる」との声があり「解消法案」に改める貝通しだ。骨格では①障害を理由とした不平等な扱い②障害者に必要な配慮や措置をしない・・・を差別として禁止することを盛り込んだ。

【障害者差別:解消法制化で3党合意 民間は努力義務に】《毎日新聞 4/5》

障害者差別解消の法制化を目指す自民、公明、民主3党の担当者が5日、会合を開き、障害に応じた合理的配慮をしないことを禁じる法的義務を公的機関に課す一方、民間事業者は努力義務にとどめる方針で意見が一致した。政府はこれを基に法案を作成し、今国会に提出する。

合理的配慮としては車椅子利用者のためのスロープ設置などを想定。民間事業者については、過重な負担を避けるため努力義務にとどめるが、実施内容に関する報告規定を設け、虚偽報告などには過料を科す方針。国連の障害者権利条約批准のため法整備が求められていたが、昨年秋以降、法案化の動きが遅れていた。

 

公明党 障がい者福祉委員会委員長                   2013年3月4日

高木美智代 様

障害者差別禁止法制定についての要望

(「部会意見」についての意見)

DPI日本会議 議長 三澤 了

貴党におかれましては、平素より障害者の権利の促進や福祉の増進にご尽力いただき、心より御礼申し上げます。

私たちDPI日本会議は、障害種別の壁を越えて、身体障害、知的障害、精神障害や難病の当事者が主体となって活動する、全国89の団体で構成されています。障害のない人と平等に安心して地域で暮らすことができる社会づくりのために活動しており、その一環として、2006年に国連で採択された障害者権利条約の批准のために、この間、さまざまな取り組みを行ってまいりました。その一つの大きな軸が、障害者差別禁止法の制定です。

2012年9月、障害者政策委員会差別禁止部会より「部会意見」が取りまとめられ、日本に置きましても本格的に差別禁止法の議論が政府の審議体で行われました。貴党は、日本の政党としては初めて国会で障害者差別禁止法を取り上げてくださった政党であり、また、かねてより障害者権利条約の批准に関して明確な定見に基づきご尽力頂いており、大変期待しているところです。

DPI日本会議としましては「部会意見」の内容を基本的に支持しておりますが、特に重要であると思われる点につきまして、以下、要望させていただきます。なにとぞよろしくお願い申し上げます。

 

1.障害者権利条約批准のために、障害に基づく差別を禁止する単独法(差別禁止法)を必ず制定してください。

すでに、権利条約の実施状況を監視する国連の障害者権利条約委員会では、条約加盟国に対して、差別禁止法を制定するよう勧告や意見を述べています。また、既存の法制度は差別事例解決手段としては不十分です。障害当事者はもちろんですが、一般国民にとっても、何が差別になり、何が合理的配慮になるのか、国や自治体は何をすべきなのかがわかりやすくするためには、単独の法律として整理することが必要です。そのためにも、障害者差別禁止法の単独立法の制定をお願いいたします。

 

2.国等の責務について

(1)差別や合理的配慮のガイドラインの作成について(p10

・障害差別問題に取り組んできた、また、差別問題に関して国際的状況に詳しい障害当事者や関係者でガイドラインを作成する体制づくりを確保するよう、法律に盛り込んでください。

・事業所などが合理的配慮を実施するための支援を、国等の責務として、必ず法文に明記すべきです。障害者権利条約(以下、権利条約)の第5条3項で、「締約国は、平等を促進し及び差別を撤廃するため、合理的配慮が行われることを確保するためのすべての適切な措置をとる」と規定されています。

 

(2)自治体の条例づくりを促進する規定をお願いします。

現在、千葉県、北海道、岩手県、熊本県、さいたま市、八王子市にすでに障害者差別禁止条例あるいは権利条例ができており、また、沖縄県、京都府、長野県、高知県、神戸市、別府市など、多数の自治体で、条例制定に向けて具体的に取り組んでいます。身近な地域から差別をなくし、地域社会を変えながら、共生社会を実現するという点で、こうした自治体条例は差別禁止法と有機的に連携できる体制が望まれます。立法化にあたっては、国の支援等、各自治体が条例づくりを推進できるようななんらかの規定をお願いいたします。

3.「障害に基づく差別」の定義については、部会意見に即して、明確に定義してください。

 

(1)障害の定義(部会意見 P14)

部会意見で示している通り、手帳の有無にかかわらずあらゆる機能障害を含めるよう、障害者基本法第2条「障害者の定義」に基づく定義を行ってください。

(2)障害に基づく差別の定義(部会意見 P15~28)

・部会意見では、「不均等待遇」と「合理的配慮の不提供」を障害に基づく差別として整理しています。差別禁止部会では、障害に基づく差別について多くの時間を割き、丁寧に議論してきた経緯があり、国際的にもそん色のないものです。部会意見に沿って「障害に基づく差別を定義」してください。

・合理的配慮の定義については、権利条約第2条の定義に即して定義してください。

3.部会意見で整理されている「総則」、10の分野の「各則」、「紛争解決のしくみ」を網羅した法律にしてください。(部会意見 P29~76)

部会では、諸外国の例、国内法制度などの様々な角度から検討を行い、以下、10の領域について、個別具体的なの差別禁止規定が必要であると結論付けています。この領域は、障害者が日常生活、社会生活を営む上で欠かせない領域です。欠かすことの無いように、各則で規定してください。

「情報・コミュニケーション」「商品・役務・不動産」「医療」「教育」「雇用」「国家資格等」「家族形成」「政治参加(選挙等)」「司法手続」

 

4.紛争解決のしくみ

 

障害者差別禁止法において、差別的な事例が起きたときの解決のしくみが必要です。部会意見に提案されているような、以下の①、②の機能を持つ紛争解決のしくみを作ってください。

①身近な場所(地域や職場など)で安心して相談ができ、相談によって相手方となったところに出向いて調整ができる相談機関の設置

②障害者の権利を守り、差別を防止するために調停、仲裁、裁定等ができる公正・中立的な機関の設置

例えば、①においては、障害者虐待防止法で運用されている「虐待防止センター」や「権利擁護センター」、あるいは、千葉県やさいたま市など、すでに障害者差別禁止条例を持っている自治体では、条例で規定されている委員会や相談支援の仕組みなども活用できます。また、障害者基本法で設置が義務付けられている合議機関の利用も考えられます。また、国には、②の役割を果たすことができる機関を設置してください。

 

5.その他

「部会意見」のP11~12には、「国の基本的責務に関して特に留意を要する領域」として、①障害女性について、②障害に関連して行われるハラスメント(p12)、③障害に係る欠格条項(p12)の3点が挙げられています。これら3点について、例えば、障害女性の実態の把握を行い、何らかの措置を取る等、取り組みが可能な形となるように法律に盛り込んでください。

 

■障害者総合支援法~4月から始まる

2011年に障害者基本法が改正され、障害者権利条約に則り、障害者施策の基本理念が大きく転換され、具体的な障害福祉サービスをどう実現するのか、障害者制度改革の中で「総合福祉部会」により2011年8月末に「骨格提言」が示され、とても中味のある内容であり、それに基づく新法が期待されたが、厚労省主導・民主党の野党との妥協もあり期待は裏切られたが、その新法である総合支援法がこの4月からスタートする。しかし、重要な点についてはほとんど積み残され、1年後(2014年4月)に施行される予定である重要な課題が、以下である。

○「障害程度区分」→「障害支援区分」へ名称・定義の変更

・「障害の程度(重さ)」でなく「標準的な支援の度合」を示すもの

・知的・精神障害については、コンピューターによる一次判定が低く判定される傾向があり、その特性が反映できていないため。

また、支給決定に当たっては、障害者の社会的状況(介護者・居住の状況)を考慮する事や総合福祉部会で提言された「協議調整方式」「支援ガイドライン」等についても、3年を目途に検討するとされている。

○重度訪問の対象拡大

・現在の「重度の肢体不自由者」を対象→重度の知的障害者・精神障害者にも対象拡大する

○ケアホームとグループホームの一元化

・自立支援法での障害程度区分により重度の者はケアホーム、軽度の者はグループホームと区分されてしまい、現場で大きな反対があったが、これが一元化される。また、外部サービス利用規制の見直しも検討され、新たな支援形態の一つとして「外部の居宅介護事業者と連携する事により利用者の状態に応じた柔軟なサービス提供」との方向も示されている。

●この4月からの変更内容~難病等の方々が障害福祉サービスの対象となる

総合福祉部会の「骨格提言」でも「谷間の解消」が大きな課題として取り上げられていた。また障害の認定に際しての「医学モデル」からの脱却が上げられ、個別本人の状況とニーズ・社会的環境に基づく「社会モデル」への転換が求められ、今回「難病者」が対象となった。障害者手帳の所持の有無に関わらず、診断書等の証明書を示せば支給申請が可能となる。

指定事業者も「運営規定」の「主たる対象者」に難病等対象者を掲げる事が望ましいとされ、また掲げなかったとしても難病を理由としたサービス提供を拒否する事が無いようにと指導されている。・・・・こう聞けば、難病者にとって朗報となるが、しかし「骨格提言」でも包括的な対象認定が求められてきたが、厚労省は130の疾患が追加されるに留まってしまった。今までより前進かもしれないが、しかし130の列挙から外れた疾患を持つ人は、どんなに支援を必要としていても救済策が無いまま取り残されてしまい、新たに「谷間」が生まれてしまい、総合福祉部会が危惧していた事が現実化してしまった。

 

■成年後見人裁判勝訴

障問連ニュースでも以前紹介した、知的障害者等が成年後見制度を利用して被後見人になると選挙権が剥奪される問題について全国各地で裁判が行われている。その初めての判決が3月14日、東京地裁で下され、「成年後見人が付いた人は選挙権を失う」とする公職選挙法の規定が「違憲、無効」とされる原告勝訴であった。しかし、与党内では人道的配慮から控訴しないよう求める声も強かったが、違憲判決が確定する事を避け、選挙事務の混乱を回避する事を優先し、法改正は急ぐものの、3月27日、国は東京高裁に控訴した。それについてDPI日本会議の抗議声明を紹介する。

 

東京地裁成年後見訴訟控訴に対する抗議声明                   3月28日

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議

議長 三澤 了

 

障害者の社会参加の大きな障壁の一つとして指摘されてきた成年被後見人の選挙権剥奪の問題について、2013年3月14日、東京地方裁判所は、成年被後見人は選挙権を有しないと規定する公職選挙法11条1項1号を違憲であるとの極めて妥当な判決を下しました。DPI日本会議はこの判決を全面的に支持し、同月25日、被告である国に対して、控訴を断念し、関係法令の改正等の必要な措置を取ることを緊急に要望したところです。障害者団体をはじめとするさまざまな団体や個々人から、同様のお願いが多く出されたことと承知しています。また、国会においても、控訴を断念し、公職選挙法関係条項の改正を早急に行うべき、との意見が与野党の議員から出されていました。

しかし、国は、こうした多くの声を無視し、控訴期限直前の同月27日、東京高等裁判所に対し控訴を行いました。今回の控訴は極めて不当であり、厳重に抗議します。

国は、控訴の理由として、立法に関する技術的検討に時間を要するとしていますが、法改正を待たずに成年被後見人を選挙人名簿に登録し、選挙人として選挙事務を行うことは可能なはずです。

また判決において指摘されている通り、後見人制度を借用した選挙権の停止・剥奪を行わないということは国際的潮流です。障害者権利条約批准のためにも、こうした権利侵害状況は早急に解消されなければなりません。

成年被後見人は主権者たる国民の一人です。一日も早く控訴を取り下げ、公職選挙法11条1項1号の削除などの必要な措置を取るべきです。裁判を起こした、あるいは、声をあげたくてもあげることのできない多くの成年被後見人の思いを真摯に受け止め、人権侵害状況を是正し、すべての国民に公正な選挙を実施するよう、改めて要望します。

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