国/県の制度 教育

兵庫県下に、また特別支援学校が新設される

~兵庫県下に、また特別支援学校が新設される

私たちは分離教育の推進に強く反対します~

障問連事務局

 

■兵庫県の動向

平成26年、来年4月の開校予定で、「播磨西地域」に特別支援学校が新設される。姫路特別支援学校(旧:姫路養護学校)における知的障害児生徒の急増に対応するためとされ、小・中・高等部を備え、約22億円の県費を投じて新設される。一昨年に阪神特別支援学校生徒の急増に対応して芦屋特別支援学校が新設、そして昨年には職業科をメインに並置される高等学校との共同学習を売り物に阪神昆陽特別支援学校高等部が新設、そして来年度から上記のように播磨西地域での新設と、立て続けに特別支援学校が増設され、私たちは更なる分離教育の推進に断固反対するものである。

3/25、兵庫県教委に前号掲載の要望書を提出した際に、県教委は平成24年度で終了する「兵庫県特別支援教育推進計画」に続く次期計画機の策定が遅れているが、それは国におけるインクル―シブ教育推進の制度動向を見極めるため、平成26年度からの計画を検討委員会を設け、現在策定中と回答したが、しかし、着々とインクルーシブ教育とは逆行する施策が行われている。一昨年の県教委交渉でも、「知的障害児生徒の急増」の根拠を正しても不明、また統計として知的障害者の出生率が高まっているなど聞いた事はなく、結局のところ、新たな「発達障害者」が「発見」され「分離」されているのだろう。

さらに、平成25年度の障害者施策の内、「子育て・教育」に関する主要な施策を見ると・・・

○《拡》「5歳児発達相談」・・・これまで行って来なかった8市町に「5歳児発達問診票による要支援児の把握」と関係者に対する研修

○《新》「発達障害者自立支援促進事業」・・・「発達障害に対する理解促進」「発達障害サポーター養成研修」「発達障害者就労支援構築モデル事業」など、約1800万円を社会福祉法人に委託して実施

→障害者運動は「障害の早期発見」が分離教育の根拠としてしか機能せず、一貫して反対してきた歴史があるが、長年「3歳児検診」が主要であったのが、5歳児検診にまで拡大し実施されている。発達障害が福祉においても対象とされず、周囲の理解を得られない困難さは存在し、そのためにも「谷間」を生まないと総合支援法においても「障害の範囲の拡大」「社会的モデル」が制度改革でも謳われている。しかし、それはどんな障害者も地域で共に生きるために必要な施策であり、分離するためのものではない。

さらに主要な施策の中には・・・・

○「特別支援学校と高校との交流及び共同学習の推進」・・・障害のある生徒と障害のない生徒との一層の相互理解を促進するため、交流及び共同学習を実施

○《新》「インクルーシブ教育システムの構築事業の実施」・・・地域内の小、中、高、特別支援学校が校種を越えて連携できる体制構築のため連絡調整を行うコーディネーターを配置

→私たち障問連は、昨年度開校の阪神昆陽特別新学校が同じ敷地内に県立高校があり、その共同学習を通じて「ノーマライゼーションの礎」になるとの県教委の方針に反対した。「共に生き学ぶ」事は許容せず、部分的にしかも「軽度」の「教育効果」が見込まれるとされる障害者にのみ「共に」が許されるような、障害を種類程度により分断する施策は絶対に許容できず、「ではどうやって重度障害生徒の『共同』は実施されるのか」と問うと沈黙でしか回答しなかったのだ。

→また、下項については、配置されるコーディネーターが障害生徒が「普通学校」にいるために支援したり、特別支援学校から「普通学校」に送り返すために調整するなら大賛成であるが、これまでの主要施策にあるよう、一貫して「障害の発見」と「それに応じた分離教育での個別指導」にしか機能しない事は明白である。

また、主要施策には・・・・

○高等学校における特別支援教育支援員の配置・・・高等学校において、生徒の学校生活における介助業務、学習面における介助業務

→しかし、予定される配置人数は3校に3人しか上げられていない。しかも予算は360万円、一校に120万円。生徒同士の共生を図るためには支援員の存在が弊害になるとの指摘もあるが、大阪府や神奈川県に比べ、支援員の配置数は圧倒的に少ない。普通高校に何らか支援を必要とする障害者が存在しない、というより「入学できない」のだろう。「高等学校には習得できる能力のある者しか入学を許容しない」との日本の教育施策の根幹として「適格主義」があたり前に存在しているが、それと「共に~インクルーシブ教育」の流れには相対立するものであり、県教委はそれを真摯に受け止め、例えば大阪のような具体的施策に向けた検討を行うべきではないのか。

3/25提出した要望書を下に、4~5月に県教委との話し合いを行う予定であるが、上記の平成25年度主要施策も踏まえ、具体的に話し合っていきたい。

 

■国の動向~地方の取り組み

○愛知県~岡山県など

インクルネットから送られてきた情報では、愛知県では医療的ケアが必要な重度障害児の普通学校入学の嬉しい報告もありました。しかし岡山県では、身体・知的障害生徒が高校入学を求めたが、定員割れにも関わらず不合格された事に対し、少数でも果敢に県教への抗議/交渉が粘り強く行われています。身体障害があるため「代筆受験」は認められたものの、しかし知的障害に対応した問題文の「代読」や選択肢による回答方法については一切認められなかった点は合理的配慮の欠如であり差別である事、そして岡山県教委が「定員内不合格は出さないように」と指導しているにも関わらず不合格にした事は、障害を理由に不合格にした事に他ならない事など、強く抗議している。

兵庫でも「親のネットワーク・兵庫」や西宮の親の会にはさ来年度高校受験を控える生徒がいるが、個別に進路については丁寧に相談しつつ、原則的な要求はしていかなければならないだろう。

○国会質疑

3月22日 参議院文教委員会にて、山本博史議員(公明党)により以下のような質疑が行われた。大臣答弁にあるよう、就学先決定仕組みの変更として「学校教育施行令」改正の検討が行われているというが、今なお提示されていない。また【国の動向】で述べた差別禁止法でも教育がどのように取り扱われるのか、就学先決定の仕組みが大きく関わる事であるが、文科省は従来の「特別支援教育推進」=「インクルーシブ教育推進」との方針は変えることなく乗り切る姿勢は明白であり、差別禁止法制定に向けた経過の中で教育がどう審議されるのか注目していきたい。

山本議員

インクルーシブ教育、障害者基本法の16条に、「共に教育を受けられるように配慮する」が入った。中教審でも入っている。まさしくインクルーシブ元年という意義ある一歩を踏み出している。特別支援教育は分離であると批判する団体がある。一方で、早期から障害にあった教育が必要とする意見もある。インクルーシブ教育はこれまでの特別支援教育とどこが違うのか、インクルーシブ教育とは何を示しているのか。

大臣

障害者権利条約で提唱された理念。改正障害者1項、2項、3項、4項が提唱されて整備された。中教審でも報告された。特別支援教育は不可欠であると確認している。インクルーシブ教育システム構築のために特別支援教育充実に取り組んでいく。

議員

一番大きく変わっていくのは就学先決定の仕組みと言われている。決定をめぐっては学校の都合とか障害児本人保護者の意向が十分反映されていないという批判がある。本人・保護者の意向を反映することが大事。どのように見直しをするのか。

大臣

中教審報告において、就学先決定の仕組みにおいて、従来の就学先決定の仕組みを改めて、総合的観点から決定する仕組みとすることが必要とある。現在学校教育法施行令改正の検討を行っている。

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