国/県の制度 差別禁止条例

安部政権が本格始動 通常国会始まるが、生活保護削減を閣議決定

【国の制度動向】 安部政権が本格始動

通常国会始まるが、生活保護削減を閣議決定

障問連事務局

■差別禁止法の今後

12月に政権が変わり、障害者制度改革が今後どうなるのか、大きな不安が募る。通常国会がようやく始まったものの、障害者施策に関する動向は全く伝わってこない。昨年秋に差別禁止部会による意見書がまとめられ、今通常国会での成立を期すならば、1~2月には法案が提示され、3月内には閣議決定されなければ、今通常国会会期末(例年6月)には間に合わない。一昨年の障害者基本法、昨年の総合支援法の成立に際しても同様で、ちょうどこの時期に様々な取り組みや国会ロビー活動が行われていたのが、2月を迎える現在、政府として同法制定に向けた動向は何も聞こえて来ない。

DPI日本会議三沢了議長は、同機関誌において「・・・私たちはどのような政権になろうと、あるいはどのような政治状況になろうとも、これまで主張し続けてきた障害者権利条約の批准に向けた歩みを着実に進める事を求めて参ります。・・・(中略)・・・障害者差別禁止法の骨格となる意見は政策委員会でまとめ上げられました。これを政府が一刻も早く法律にする作業に移して欲しいと願いますが、差別禁止法を受け入れようとしない勢力、市民の権利の保障を認めようとしない人たちがまだまだ大きな勢力として存在している現状を省みる時、差別禁止法はそれほど簡単に成立するものとは思えません。しかし、これまで多くの差別や偏見と闘い続けてきた障害者は差別禁止法の制定を求めています」と新年あいさつで述べられています。

■障問連の取り組み

昨年12月、障問連総会後に開催したシンポジウムでも、日本の人権運動の先駆者である部落解放運動の長年の悲願である人権擁護法案も閣議決定されながらも、「受け入れようとしない勢力」の壁に阻まれ廃案にされてきた。自民党の中でも安部首相はその最たる人物であり、障害者差別禁止法も極めて厳しい情勢にある。DPI日本会議やJDF等、中央での取り組みと連動し、各地域でのこれまで以上の取り組みが求められます。私たち障問連として、毎年開催する「障賀者春闘」、今通常国会での同法制定のメドが明らかになる3月に開催するが、兵庫の地から「差別禁止法制定 骨格提言の実現」の声を力強く上げていく、そのような内容で開催したいと思います。

【日時:3月30日(土)午後  場所:三宮勤労会館 で開催します。是非、ご参加ください。】

■新障害者基本計画~国の計画策定と各地での取り組み

前号で紹介したように2013年度からの新「障害者基本計画」に関し、「障害者政策委員会」の意見がとりまとめられ政府に提出された。同計画についても3月までに閣議決定されることになるが、どこまで政策委員会の意見を反映したものになるのか、予断を許さない。改正障害者基本法に則った初めての基本計画となり、また総合福祉部会が取りまとめた「骨格提言」の内容や、教育に関しても「障害者と障害のない人が共に学ぶインクルーシブ教育システム」等、画期的な内容も盛り込まれており、是非、実現が求められる。

また、意見書の最後に述べられているように、各地の都道府県、市町村でも次期の改正年次を待つことなく、国の新基本計画を踏まえた計画策定が求められています。障問連として、特に兵庫県の「障害福祉審議会」に当事者部会が設けられ、障問連からも委員を送り込むべく検討を重ねており、兵庫県でも新たな計画策定に向け要望取り組みを強化したいと思います。

■許せない生活保護削減の動向

政府は、生活保護費のうち月々の日常生活費に相当する「生活扶助」の基準額について、2013年度から3年間で670億円(約6.5% 国費ベース)減らす方針を決めた。さらに年末に支給する「期末一時扶助金」(一人1万4000円)も70億円カットする。削減は2004年以来、9年ぶりで下げ幅は過去最大。下記の表を参照願いたいが、特徴点を列記する。

・安価な後発医療品の使用を原則とする。

・就労に必要な費用の減額、その代わり就労意欲の高い人に新たに支給

・96%の世帯で保護費が減額する

・70歳以上の単身者は3000円減。

・都市部の40歳代夫婦、小、中学生4人世帯で現在より2万円の減額

今回の生活保護削減の意味は重い。小泉内閣の社会保障費年2000億円の削減や、暴力団の不正受給を口実とし水際作戦と称した受給希望者を窓口で追い返す等、これまでも削減されてきた。総額の抑制を企図したものであったが、今回は生活保護の中味まで大きく手を突っ込んできたのだ。そして、その大きな理由として、「生活保護世帯」と「生活保護を受給していない低所得世帯」の収入を比較して逆転している事を大きな口実としている。この流れは、不正受給ではないにもかかわらず昨年のお笑い芸人家族の生活保護受給のバッシング、とりわけ大阪での公務員の親族の保護受給への非難と一貫している。いわは市民のねたみ意識や劣情を組織しそれを背景としたものである。しかし、「生活保護を受給していない低所得世帯」がいるなら、非正規雇用を改善し賃金を上げる施策、就労策をさらに講じる、それでも困難ならきちんと生活保護が柔軟に受給できるような相談支援/仕組みを講じるべきである。家族主義や自助を強調する思想が根底に流れており、このような施策は、より一層、社会の貧困化を招く事は明らかであり、その点に関し、民主党政権時に内閣府参与であった湯浅誠氏(反貧困ネットワーク事務局長)が、次のように述べている(毎日新聞1/25「くらしの明日 私の社会保障論」)。

「・・・生活保護費が下がれば、住民税を免除する基準も下がる可能性が高い。実際、2004年には生活保護費の引き下げとともに、住民税の免除基準も下がった。3100万人(※住民税免除世帯/推計)のうち、対象者がどのくらいになるかは分からない。しかし、『生活保護の人たちはもらい過ぎ』と思っている人たちが、自分が住民税を支払う事になる事態を覚悟して言っているのか、私は疑問だ。なぜ、そうなるのか。下がるのは『生活保護の人が受け取る金額』ではなく『国民生活の最低ライン』『私たちの暮らしの最低ライン』だからだ。ここを間違えると、影響の大きさを計り損ねる」

昨年の秋には最低賃金が生活保護基準を下回る問題が大きく取り上げられ、都道府県によれば最賃が引き上げられました。しかし、生活保護基準が減額されると最賃の引き上げも必要が無くなります。湯浅さんが指摘されるよう、国民生活の最低ラインが引き下げられ、貧困の連鎖が生じていくのです。

1月22日、生活保護問題対策全国会議や市民団体が、生活保護引き下げに対し、「貧困拡大につながる」と14万人の反対署名を厚生労働省に提出した。しかし同省職員は「政府として判断する」と回答。すでに1/29閣議決定され、今後どのように通常国会で審議されるか注視していきたい。

 

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