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政権交代して、どうなる差別禁止法?! 政策委員会により「新障害者基本計画」の意見が取りまとめられる

【国の制度/動向+その他】

政権交代して、どうなる差別禁止法?!

政策委員会により「新障害者基本計画」の意見が取りまとめられる

障問連事務局

■差別禁止法

衆議院総選挙により自民党/公明党を中心とした政権へと交代する事が決まった。民主党政権の下で「自立支援法の廃止」から障害者制度改革の流れが国政においてどうなるのか、大きな今後の課題となる。厚生労働大臣には40歳代の田村憲久議員が就任した。伯父・祖父が国会議員を努めた三重県選出の世襲議員。12/28新聞記事で「生活保護費 生活扶助最大1割カット/厚労大臣」と報じられた。「1割カット」は自民党の選挙公約である事を踏まえた発言だが、詳細を見るとその他の問題でも慎重な意見。また、公明党から副大臣として桝屋敬悟議員が就任した。

選挙の前の政党アンケートでは自民党は差別禁止法に関しては「施策の充実」とのみ回答し法案の是非については言及していない。一方、公明党は差別禁止法制定に前向きな発言。今後、公明党を中心としたロビー活動が重要になって来るだろう。

地方の取り組みとして、ADF(愛知障害フォーラム)の働きかけにより、後掲資料のように名古屋市議会で12/10、「 障害を理由とする差別の禁止に関する法制度確立を求める意見書」が全会一致で採択された。年明けにも開会する次期通常国会、例年通りなら3月内に閣議決定、6月にも法案成立の流れになるが、総合福祉法制定要求時と同様、地方の取り組みも求められるだろう。

 

■難病の範囲に関するパブリックコメントが募集中

難病者等の中には、障害に認定されず福祉サービスを受けられない深刻な「放置できない谷間」の問題について、改正障害者基本法の中でも、「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」とされ、また「医学モデル」でなく病名を列記するのではなく、一人ひとりの状態像により判断する「社会モデル」が従来から求められてきました。

しかし、厚労省は今回、130の病名を列記した「案」のパブリックコメントを求めています。「病名列記」すれば、必ず対象外、新たな「谷間」が生まれてしまいます。11/19発表、1月5日(程度については1/12)で、今ニュースでは間に合いませんが、是非注目、応募をお願いします。

 

障害者総合支援法の対象疾患一覧(案)

 

パブリックコメント:意見募集中案件詳細 「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(案)に関する意見募集について」

 

 

■障害者政策委員会 ~新「障害者基本計画」策定の意見取りまとめられる~

12月10日に第4回、17日、衆議院選挙の翌日に第5回内閣府障害者政策委員会が開かれ、国の新「障害者基本計画」策定についての意見がとりまとめられた。政権が交代したとはいえ、障害者基本法は生きており、障害者政策委員会も今後も継続し、厚生労働省/政権与党との攻防は続く。以下、全68ページにも及ぶ意見(案)の冒頭の基本的な姿勢の部分を紹介する。平成25年度からの基本計画になり、これを下に各都道府県・自治体で基本計画の策定が行われる事になり、極めて重要なものである。これまでの総合福祉部会の骨格提言等に則った内容であり、政策委員会のこの意見を踏まえた「新障害者計画」が策定されるよう厚労省、与党に対して強く求めていかなければならない。

 

新「障害者基本計画」に関する障害者政策委員会の意見(案)

障害者政策委員会は、障害者基本法に基づき、障害者基本計画についての内閣総理大臣への意見を以下のとおり取りまとめる。今後、政府において、本障害者政策委員会意見を十分に踏まえ、計画を策定するよう望むものである。

Ⅰ、新しい障害者基本計画に向けて

(前略)・・・このような状況を踏まえて、次の新しい障害者基本計画(以下「新基本計画」という)を展望するに当たって、留意しなければならないことは、現行の計画期間において問題とされた重要な課題の多くは、新基本計画の計画期間においても、依然として重要な課題であるということである。平成25(2013)年度から始まる新基本計画は、引き続きこのような課題に立ち向かうためものとして、成果物である推進会議及び障害者政策委員会が取りまとめた4つの意見書(第一次意見、第二次意見、障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言、「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見)を踏まえ、障害者権利条約批准に向けた法整備と批准後の条約の実施を想定したものであることが求められる。また、この新基本計画は、改正された障害者基本法の下で策定される初めての基本計画となるが、基本計画は、障害者基本法第32 条第2項第3号の規定により、障害者政策委員会によりその実施状況が監視されることになり、必要があると認められるときは、内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告することができることになっていることに鑑みると、基本計画の策定に当たっては、その実施状況を検証できる期間、形態、方法が採用されるべきであり、そのための客観的な統計資料の収集も基本計画に織り込まれることが求められる。

 

1、基本理念

「障害はあってはならないもの」ではなく、人間の多様性及び人間性の一部としてその差異と固有の尊厳が尊重され、障害者が社会に受け入れられることは人類の普遍的原理である。新基本計画では、かかる普遍的原理が実現される上で、障害者権利条約が示す他の者との平等を基礎とした障害者の権利が確保されることを重要な理念として取り上げるべきである。その上で、この理念に基づいて、障害者の権利が実効的に確保されるためには、合理的配慮によって権利の実現を阻む社会的障壁が除去されるとともに、障害者の自立と選択及び社会参加を可能とする公的支援の提供が必要不可欠であること、さらに、このことにより、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生できる社会の実現が図られるものであることが確認されるべきである。なお、ここで、他の者との平等とは、障害のない人との実質的な平等という意味であり、それを実現するには、合理的配慮の提供が必要であることも含め、障害者が直面している課題とそれを解決するための方策についての国民の理解を促進することが求められる。

 

2、基本原則

新基本計画を策定するに当たり、以下を全ての障害者施策の基本原則とすべきである。

(1)地域社会における共生等

地域社会における共生を基本原則とする障害者基本法第3条を踏まえ、障害者施策は、障害の有無によって分け隔てない社会というインクルーシブ社会の理念と現実との間にある大きな格差を埋めるため、あらゆる分野の活動に障害者が障害のない人と分け隔てなく参加する機会の確保、どこで誰と生活するかについての選択の機会の確保、意思の疎通又は情報の取得や利用に必要な手段を選択する機会の確保に資するものでなければならない。

(2)差別の禁止

差別の禁止を基本原則とする障害者基本法第4条を踏まえ、差別禁止に関する法律を制定することが求められるとともに、条例による地方自治体の取組が期待されるところである。同時に、国のあらゆる障害者施策が差別的な、又は差別を助長するものであってはならず、いわゆる障害を理由とする欠格事由を規定する条項や差別的であると指摘されている法制度の在り方については、かかる観点からの見

直しがなされるべきである。また、近年、多くの国民が障害を理由とする差別や偏見が改善されてきて

いると感じている一方で、障害を理由とする差別や偏見があると感じる国民が増えてきているという調査結果があり、新基本計画の期間においては、このような状況も勘案し、障害を理由とする差別や偏見を解消するためのより積極的な施策の展開が求められる。さらには、女性障害者への複合差別については、すべての施策に複合差別を解消する視点が盛り込まれる必要がある。

(3)国際的協調

国際的協調を基本原則とする障害者基本法第5条を踏まえ、国内的には障害者権利条約の批准並びにその実施を通して共生社会の実現を図るとともに、対外的には、新アジア太平洋障害者の十年を推進し、仁川戦略に積極的に取り組むことが求められる。

(4)政策決定過程への障害者等の参画

障害者権利条約を踏まえると、障害者施策の策定や検証などの過程においては、「私たち抜きで私たちのことを決めないで」という理念に基づき、その過程に参画する委員等の過半数は障害当事者とすべきである。その際、障害の多様性とジェンダーバランスに配慮することが求められる。また、障害に特化しない一般施策であっても、障害者の生活に大きな影響が及ぶことも多いため、その決定過程である国や自治体の審議会等について障害者の参加を確保する方向性が必要である。

 

Ⅱ 共通して求められる視点

新基本計画を策定するに当たり、以下に掲げる事項は、すべての施策の策定及び検証に当たって共通して求められる視点である。

1、インクルーシブ社会(障害の有無によって分け隔てない社会)の構築

障害者基本法は、多様性を包摂し、障害の有無によって分け隔てない社会、すなわちインクルーシブ社会の構築を目指している。今回の改正によって新たに付け加えられた「分け隔てられることなく」「共生する社会」を全ての施策の共通視点として展開されるようにすべきである。

2、社会モデルに基づく障害者の定義

障害者基本法では、障害の社会モデルの視点から、障害について制度の谷間を生じないよう「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害」と包括的に規定した上で、障害者を「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」としている。かかる障害者の定義を踏まえた視点が、全ての施策の基本に置かれなければならない。

3、アクセシビリティ(使用したり利用できる状態)の拡大

物理的環境、公共交通、知識、情報、コミュニケーション、民間サービス、公的サービス、公的手続等へのアクセス(これらを使用したり、利用できること)はインクルーシブ社会において障害者が自らの権利を実現するための前提条件であること。

4、障害者の自己決定の保障と意思決定支援

障害者の自己決定を保障する観点から、本人の意思を聴き取ること、判断をするために必要な情報をわかりやすく伝えること(情報のバリアフリー化等)、エンパワメントの機会が確保されることなどによる本人主体の意思決定に向けた支援が重視されなければならないこと。

5、格差の是正

すべての障害者施策が、障害者と障害のない人との間に存する格差を是正するものであることを前提として、障害の種別・程度の谷間や男女間の格差を是正するため、谷間に置かれた障害者や女性障害者に配慮した視点を全ての施策に盛り込むこと、及び地域間の格差の発生を事前に防止し、事後に是正するための仕組みを設けること。

6、関係機関の連携等

障害者に関連する施策は各府省にまたがる中で縦割り行政の弊害(制度の谷間、施策の方針のずれ等)をなくすためには、各府省間のパートナーシップが重要であること、また、地方主権を踏まえて、国がマクロな視点で方向を示しつつ、地域における共生という視点から、国が密接に地方公共団体と連携すること、さらには、国が策定する計画と地域福祉計画や障害者自立支援法に基づく障害福祉計画等、市町村が策定している他の計画と連携を保つこと。

 

Ⅲ 先送りできない重要な課題

1、 谷間や空白の解消

(1)精神障害

○ 精神障害者の社会的入院問題の解消及び地域移行を促進すること

○ 保護者制度の廃止を含む医療における適正手続を担保すること

○ 精神障害者への偏見を除去すること

(2)難病

○ 障害と病気の関係を整理し、障害者施策による支援の仕組みの構築に向けてさらに検討すること

○ 難病患者への支援を拡充すること

(3)高次脳機能障害

○ 障害者施策にどう位置づけるのかについて検討すること

○ 基本計画の中に盛り込むべき事項について検討すること

(4)認知症

○ 高齢者施策と連携しつつ、在宅のままで生活を継続するための支援を整備・充実させるため、障害者施策の中での新たな位置づけについて検討すること

2、積み残してきた課題

(1)欠格条項の見直し

(2)身体障害者福祉法の別表を含む障害者手帳制度の在り方

(3)成年後見人制度に関わる課題

(4)家族の介助や経済的負担を前提としない支援制度の確立

3、障害者制度改革に関する課題

「障害者の権利に関する条約(仮称)の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革の推進を図る」として、平成22 年6月29 日に「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」が閣議決定されている。この閣議決定で横断的な課題として示された(1)障害者基本法の改正と改革の推進体制(2)障害を理由とする差別の禁止に関する法律の制定等(3)「障害者総合福祉法」(仮称)の制定の中で、差別禁止法制の実現及び総合福祉部会骨格提言の計画的段階的実施を具体化するための当面の課題としての障害者総合支援法附則の検討が大きな課題として残されている。

 

 

《資料 名古屋市議会の意見書》

障害を理由とする差別の禁止に関する法制度確立を求める意見書

平成18年12月、第61回国連総会において障害者の権利に関する条約が採択され、平成24年10月現在、125カ国が批准を終えている。我が国は、平成19年9月にこの条約に署名はしたものの、関係する国内法が未整備のため、現在のところ批准には至っていない。

この間、政府は障害者の権利に関する条約の批准に必要な国内法の整備と障害者施策の統合的かつ効果的な推進を図るため、障がい者制度改革推進本部を設置し、同本部の下に障害当事者、学識経験者等からなる障がい者制度改革推進会議、さらには総合福祉部会と差別禁止部会を設置し議論を重ねてきた。先の障害者総合支援法制定に際しては、総合福祉部会が取りまとめた骨格提言の内容がことごとく後退させられたという意見もある中、障害を理由とする差別の禁止に関する法制度がどのように編成されるかに注目が集まっている。

こうした中、平成24年7月に、障がい者制度改革推進会議の機能を発展的に引き継ぐのもとして障害者政策委員会が発足したことから、障害を理由とする差別の禁止に関する法制のあり方検討の場も政策委員会の下に設置された差別禁止部会に移された。そして、多くの議論を重ねた末に、9月14日には、部会意見がとりまとめられるに至った。

障害者とその家族はもちろん多くの国民が待ち望む中、国は「すべての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進すること」を目的とする障害者権利条約への批准に向けて、差別禁止部会の部会意見を踏まえた上で、障害を理由とする差別の禁止に関する法制度の早期制定を行う責務がある。

よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、次の事項を実現するよう強く要望する。

1,障害者政策委員会差別禁止部会が取りまとめた部会意見を最大限尊重し、法制度に反映させること。

2,法案策定過程においても、障害者の権利に関する条約の理念を踏まえ、差別禁止部会の参画を図ること。

3,新たな法制度の施行に当たっては、法制度を円滑に進めるための地方自治体の財源の確保について十分に配慮すること。

 

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成24年12月10日                          名古屋市会

 

衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 厚生労働大臣 宛

(理由)この案を提出したのは、国会及び政府に対し、障害を理由とする差別の禁止に関する法制度確立を求める必要があるによる。

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