教育

定時制高校問題「伊丹市高生徒の教育条件を保障せよ!」

伊丹市教委は、一括移転させた

伊丹市高生徒の教育条件を保障せよ!

 

兵庫県教委と伊丹市教委は、夜間定時制高校3校(県立川西・同宝塚良元校・伊丹市立)を募集停止にし、今年4月、新3部制・阪神昆陽高校を開校するとともに、伊丹市高在校生(2~4年生)を阪神昆陽高校校舎に一括移転させました。

慌ただしく過ぎた4月からの1学期(阪神昆陽は前後期の2期制)を振りかえると私たちが指摘してきた「一括移転」の問題点がほとんど改善されておらず、また県教委・伊丹市教委が宣伝してきたこととは程遠い実態であることがわかってきました。また昨年末からの「3億6000万円負担金」をめぐる伊丹市議会の動きと伊丹市に対して行った監査請求によって、県教委と伊丹市教委の合作である今回の統廃合計画推進の舞台裏・意図も見えてきました。あらためて県教委と伊丹市教委に対して強い憤りをもちます。

 

不便な通学・「間借り生活」を強いられる夜間定時制生徒たち

無視される通・就学の生命線

伊丹市高在籍生徒数(5/1)
11年度 12年度
1年生 107
2年生 117 77
3年生 92 90
4年生 75
合 計 316 242

伊丹市高在校生たちは4月から新多部制・阪神昆陽高校の校舎での新学年が始まりました。しかし、昨年316人いた1年生~3年生のうち(3年制で卒業した13人を除いて)、新学年を迎えることのできた在校生は242人だけです。61人もの生徒が学校を去りました。交通不便な新多部制校舎への通学を諦め、やめた生徒たちが少なくありません。

「入学した学校、今の場所で学び卒業したい。それが無理なら入学後に統合計画を知った生徒が卒業するまでの1年間だけでも延期してほしい」という生徒たちのささやかな願いにすら応えることなく伊丹市教委は、「阪神昆陽とは同じ定時制に学ぶ者どうし交流が深まり伊丹市高のよい伝統を引き継いでもらえる」などと言って在校生を一括移転させました。しかし、その実態は交流どころか、「間借り生活」の窮屈な思いをさせられているのです。以下、伊丹市高生徒たちはその悔しい思いを訴えています。

<学校生活すべてが、阪神昆陽の「邪魔にならないように」という規制を強いられています。阪神昆陽高校の授業時間帯に合わせるために始業時刻が18:00から17:25に、35分も早められ、遅刻せずに登校するのが大変です。阪神昆陽は前後期の2学期制で、3学期制の伊丹市高とは定期考査期間も異なります。考査後の放課後でも阪神昆陽の授業が終わる21:00までクラブ活動もさせてもらえないのです。また、理科・家庭科・芸術などの授業で特別教室が十分に活用されていない現状があり、さらには文化祭や体育祭などの学校行事の校内実施ができるのか、クラブ活動の練習時間や場所などについても大きな不安を抱いています。>

入学した時とは異なる通学条件の悪化と不備の下で、悩みながらもがんばろうとしている伊丹市高在校生に対して、県・市教委に、悪条件を早急に解消し、県立の阪神昆陽高校生徒と対等に教育を受けられるようにする責任があることは、言うまでもありません。

 

「密約」を覆い隠すために市高生徒を犠牲にした一括移転

辻褄合わせの3億6000万円負担金理由

 

私たちは5月28日(30日受理)、「県知事と市長の密約に基づいた3億6000万円の統合負担金の支出は違法である」として伊丹市に監査請求を行いました。しかし、市監査委員は7月25日付け文書で、「請求を棄却する」と通知してきました。

県教委は新多部制設置について、地域説明会でも「定時制といえども全日制と同じように多様な教育課程を配置し多様なニーズに応える必要がある。小さな夜間定時制ではそれができない」と強弁してきました。新多部制高校設置は、県立の川西高校(2学級)、同宝塚良元校(1学級)だけで複数学級の3部制ができるはずもなく、財政的にも成り立ちません。全日制・定時制の分離(全定分離)を急ぐ伊丹市に一定の財政負担を約束させることで県教委が強行したものです。

しかし、「一定の財政負担」が3億6000万円もの巨費であることは、昨年の12月市議会直前まで伏せられてきました。当議会で否決されたように、負担金問題で計画が頓挫することを恐れたからです。在校生が卒業するまで3年間市高校舎で学び続けていたら、3億6000万円という巨額負担がいかにも不自然になります。その不自然さ・不当性を覆い隠すために行ったのが「在校生の一括移転」だったのです。それゆえ、「入学後に統合計画を知らされた生徒が卒業するまで、せめて1年だけでも移転を延期してほしい」との切実で当然な願いさえ市教委は無視したのです。県立の場合(来年度実施される尼崎市立工業定時制の統合についても)、入学した学校・場所での教育を卒業まで保障していくことが最低限の責務として行われていますが、伊丹市がそれすらしなかったのは負担金の「密約」があったからです。

昨年末の市議会で負担金支出は否決されましたが、1月の臨時市議会で可決されました。その間に伊丹市は県教委と協議し、3億6000万円の負担理由を大きく変更し、支払いも4回の分割払いとしました。

12月議会で噴出した疑義―新多部制建設・改築費の3分の1ではないのか、県立学校の管理者である県が負担すべき維持運営費の一部負担は地方財政法に抵触するのではないか、3億6000万円の算定根拠―などにまともに答えられなかった市当局は、負担理由を「伊丹市の教育を良くするための投資・教育施策の継承」であると変更しました。この変更は、県・市間における経費負担の転嫁を禁止する法令違反を免れるための辻褄合わせであり、分割払いによって「財政負担割合の軽減化」、つまり市民による監査請求・住民訴訟等の法的措置にそなえた対策であったと言えます。

育友会や生徒会にさえ秘密にして計画を推し進め、問題の本質が市議会でも大きな問題になると、法的対策だけを行い、「時間切れ」を利用し、「県・市間の関係を悪くする」「生徒に被害が及ぶ」と脅してきた市と市教委を私たちは許すことができません。一括移転によって実際に被害を受けたのは伊丹市高生徒たちでした。今回の監査委員の「請求棄却」は、市と市教委の言い分を丸のみしただけの典型的な行政内部判断であり、とうてい納得できるものではありません。

 

 

交通不便なままの新多部制高校  県教委の責任は重大

川西・宝塚分教室がなくなったら通学できません!

新多部制・阪神昆陽高校(旧武庫荘高校)は交通が不便でとりわけ「川西市の北部や猪名川町からは通えない」という声が地域説明会でも強く出されました。県教委は「新交通路線の開設を要請する」と答えていましたが、実際に開設された新路線は伊丹市バスによるJR中山寺⇔池尻南口(学校にはさらに徒歩10分)だけで、3部・夜間部の登下校に活用できるのは1本だけというものでした。全く意味がありません。また、通学路が狭く曲がりくねっているうえに夜間は暗いのに、カーブミラーや街路灯の整備がほとんどなされていません。登下校時の事故やトラブルに対する安全対策が放置されたままとなっています。

県教委は川西高校と同宝塚良元校を募集停止にしましたが、存続運動の結果、3年間は阪神昆陽高校の川西教室と宝塚教室として存置するとしましたから、今年はそれぞれの分教室に15人ずつ入学し学習できることになりました。閉校が予定されている分教室に15人も入学してくるということ自体が、廃校になったら困るという切実な事情を明瞭に示しています。必要な単位を取得すれば3年で卒業することが可能なので、今年入学した川西分教室・宝塚分教室の生徒はがんばれば阪神昆陽本校まで通うことなく卒業できます。しかし、分教室が3年で廃止されれば来年度からの入学生は、2、3年目からは本校に通わなければ卒業できません。夜間定時制には、仕事や生活上の困難、身体的ハンディなどをもっている人が多く通っています。通学時間は学校生活の継続にとって生命線であり、通えても長い時間かかるような場所に行けるはずがありません。川西教室・宝塚教室を3年で廃止させてはなりません。

 

 

「高校教育改革」の名による弱者切り捨ては許せない

夜間定時制つぶしは高校教育のセーフティーネット破壊

兵庫県教委は2001年度に兵庫県で初めての3部制・西宮香風高校を設置し、4校の夜間定時制を廃校にしました。(その後、姫路地域、北播地域に3部制を開設し周辺の夜間定時制を廃校にしました。)その結果として阪神地域に残された夜間定時制は1次募集で定員オーバーする事態にさえなってしまったのです。この現実を無視して県教委は、「小規模な夜間定時制では多様なニーズの教育に応えられない」と強弁して4年前、阪神地域2校目の新多部制(阪神昆陽)設置と引き換えに夜間定時制3校(川西、同宝塚良元、伊丹市立)をつぶす統廃合計画を発表しました。それ以来、私たちは阪神5市中心に県下で存続運動を繰り広げてきました。地域に根差した小規模な夜間定時制がかろうじて高校教育のセーフティーネットになっており、夜間定時制つぶしは高校教育のセーフティーネットの破壊であるとの共通認識で、私たちはともに手を携えてこの存続運動に取り組んできました。

伊丹市教委が今回の統廃合において定時制生徒を厄介者扱いし、「引き取ってもらうためには違法が疑われる巨額負担もいとわない」という醜い姿をさらけ出しましたが、地域になくてはならない定時制を切り捨てようとする県教委の統廃合計画も本質は同じです。

 

大学区移行は定時制つぶしの「全日制・全県版」

夜間定時制つぶしだけではありません。県教委は「全日制高校の学区を5学区(阪神地域は丹波地域と合わせて1つの学区)に統合する大学区制を2015年度(現在中1生)から実施すると発表し準備を進めています。大学区移行は夜間定時制つぶしの全日制・全県版といえるもので、「高校教育改革」という名の、学校の公共性の劣化・破壊をもたらすものといわねばなりません。自由競争の名のもとに全国的に実施され、郡部を中心とした定員割れの高校が次々に統廃合されて来たのです。

郡部の市町においては小規模であっても高校の存在は地域活性化の要の一つです。地域の子どもたちが通い続けられる高校を維持するため、市町をあげてさまざまな取り組みが進められています。郡部で繰り広げられている地域の高校を守る運動と都市部での夜間定時制存続運動が、<地域に根差した地域の学びの場を守り育てる>運動として結合され繋がっていかなければなりません。

 

伊丹市高生徒の教育条件確保を求めます

私たちは、以下のことを要求して運動を続けていきます。みなさんのご理解とご協力をお願いします。

 

 

伊丹市教委に対して、

①  市教委・市高管理職は、県立阪神昆陽高校に「間借りさせてもらっている」という卑屈な意識・態度を改め、市高生徒の教育を保障するために県教委・阪神昆陽高校と対等に協議すること

②  始業式・終業式・卒業式は体育館で行なうこと

③  文化祭・体育祭・球技大会など学校行事は、生徒の意見を聞いて学校内で行なうこと

④  特別教室に冷暖房機を設置し、使用できること

⑤  学校施設・教室の管理を阪神昆陽高校に一元化せず、市高が必要に応じて使用できること

⑥  自転車置き場に屋根を設置すること

⑦  わかりやすい市高の校舎案内を設置すること

⑧  エレベーターの必要な生徒の利用を可能にすること

⑨  通学路の安全のため、役に立つ街路灯・カーブミラーを増設・整備すること

⑩  通学路脇の側溝の安全対策(蓋・柵など)をとること

⑪  車道の見通しを遮って歩道にはみ出している民家の庭木への対策を講じること

⑫  移転によって新たに路線バスを利用しなければならなくなった生徒にバス乗車券を交付すること

⑬  その他、通学・教育条件などについて、市高生徒・育友会の意見要望を十分に聞くこと

 

兵庫県教委に対して、

① 川西分教室、宝塚分教室を3年で閉じないこと

②   阪神昆陽高校への交通機関の改善を伊丹市(伊丹市バス)に任せず、責任をもってとりくむこと

③   街路灯・カーブミラーの設置・側溝蓋など通学路の安全対策について、市教委と協議して対策を講じること

 

県教委は、川西分教室、宝塚分教室を

3年間で閉じるな!

 

2012年9月

伊丹市立高校(定時制)を守る会(伊丹)

兵庫県立川西高校・同宝塚良元校の存続を求める会(川西・猪名川)

宝塚良元校・川西高校の存続を求める会(宝塚)

定時制高校の存続を求める西宮市民の会(西宮)

全ての子に高校教育の保障を求める尼崎市民の会(尼崎)

連絡先:0797-86-1356(宝塚良元校・川西高校の存続を求める会)

連絡先:080-5318-5527(北川早苗)

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