2012年度 兵庫県への要望書
2012年7月6日
兵庫県知事
井戸 敏三様
兵庫県教育委員会
大西 孝様
障害者問題を考える兵庫県連絡会議
代表 福永年久
2012年度 障害者問題に関する要望書
貴職におかれましては、障害者の権利実現を基本とし、自立と社会参加の推進など障害者福祉の向上のため日々尽力しておられることと存じます。
国における障害者制度改革は2011年8月に障害者基本法の抜本改正が行われ、障害者総合支援法の成立が通常国会内に見込まれ、来年度には障害者差別禁止法の制定の予定とされています。障害者総合支援法については、推進会議・総合福祉部会により2010年8月に「骨格提言」がまとめられ、それを踏まえた新法制定が関係者から大きな期待が寄せられましたが、60項目の提言のうちわすが数項目しか反映されておらず、多くは今後3年内の検討とされ不十分な内容となりました。しかし、同「骨格提言」は55人もの当事者団体・家族・関係団体の総意としてまとめられたものであり、日本の障害者福祉の歴史において、障害種別や立場を越え初めて成し遂げた成果です。私たちは、「骨格提言」の中味が今後の国の制度改定の中で盛り込まれていく事を望むと同時に、「骨格提言」が示す理念や施策は、兵庫県に在住する多くの当事者・家族・関係者の願いである事を踏まえ、兵庫県の今後の障害者施策に反映される事を強く求めるものです。何より、国における障害者制度改革は、国連・障害者権利条約の批准のための国内法整備として位置付けられ取り組まれており、「どこで誰と生活するかを決める権利」「障害のある者もない者も共に教育を受ける権利」「障害のない者と差別なき同等の権利保障」等、権利条約の理念が、この兵庫県においても実現していくためにも、貴職が下記の具体的な要望項目にあるような諸施策を積極的に講じられる事を強く要望するものです。
【障害者計画 障害者福祉審議会】
改正障害者基本法では、都道府県において「障害者政策委員会」の設置が義務付けられています。同法に謳われる、障害のある人とない人との平等、共に生きる教育、地域生活する権利等の内容は、私たち障問連が30年にわたり取り組み、貴局に提言し続けてきた理念や施策です。また、昨年度交渉において「すこやか兵庫県障害者福祉プランは既に改正基本法の趣旨を踏まえており改定の必要はない」との回答がありましたが、以下のように改正障害者基本法の趣旨に反する内容があります。それを踏まえ、障害者福祉審議会に関する事と、「すこやか兵庫障害者プラン」について、下記要望します。
① 【障害者福祉審議会】改正障害者基本法に基づく新たな「障害者政策委員会」の設置のため、「障害者福祉審議会」を改められ、今回の国における制度改革推進会議と同様に当事者が過半数を占めるよう、新たな「障害者政策委員会」として改編する事を要望すると共に、障問連が推薦する障害当事者または関係者を委員とするよう求めます。またこの点について同審議会での検討状況を報告されたい。
② 【すこやか兵庫障害者プラン・基本理念】P17に基本理念として「障害のある人が自らの能力を最大限発揮し・・・」とありますが、なぜ障害者にだけ「能力の最大限の発揮」が強調されなければならないのでしょうか。教育においても障害児者の機能・能力の伸長を強調する中での分離教育が推進され続け、就労や地域生活においても「能力」による処遇の格差を強いられている現実があり、一方改正基本法では障害の捉え方が「医学モデル」から「社会モデル」へと転換とされる中で、基本的な障害者観のあり方として見過ごせません。表現として「その人らしく」あるいは「その人の望む」等の表現に変更する事を要望します。
③ 【同・家族の高齢化】P17に「プランの視点」として④「家族の高齢化を支え」とあり、P18には「親亡き後の受け皿づくり」、P27には「高齢の親と障害のある子どもが一緒に住めるケア付き住宅の普及」とあります。家族がわが子の障害者の面倒を見るべきだとの旧来の観念や、家族が見ざるを得ない実態を追認し、それを前提としたものです。経済不況も伴い障害者家族の不幸な事件も起きており、日本型福祉社会として家族に責任を負わせる意識は今なお根強くあります。「家族が高齢化したから」問題なのではなく、障害者も当たり前に成人すれば親から独立し生活できる社会の実現こそ不可欠です。改正基本法が示す「障害のある人と無い人との同等の権利」「誰とどこで暮らすかの自由」の理念に反する上記の点について変更されるよう要望します。
④ 【同・自立生活】P22に「障害のある人が自立できる社会」とあり「その人らしい自立した生活の実現」とされているにも関わらず、P21~22の「(1)くらし・自立支援」や「(2)すまい」には、居宅介護・重度訪問介護等を活用した地域でアパート等での自立生活には一切触れられていません。県内都市部だけでなく地方市町でもこのような自立生活を送る障害者は増加しているものの、少数であり市町によれば皆無、また地域格差もあり重要な課題です。まさに改正基本法が示す理念実現のためには不可欠の課題であるにもかかわらず欠落しており、この内容を盛り込むよう求めます。
⑤ 【同・教育】P66の「特別支援教育推進」の項については全面的な改訂を求めます。「障害者権利条約第24条」によれば、インクルーシブ教育システムとは、「・・・障害のある者と障害のない者が共に教育を受ける仕組みであり、障害のある者が教育制度一般から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な合理的配慮が提供される事が必要とされている」である。審議会でこの点についてどのように議論されたのか報告されると共に、居住する地域の学校で障害のある児童もない児童も共に学ぶ教育システムが、このプランの根底にある障害者理解の促進や地域生活・就労とあらゆる場面での共生社会の礎になる事を、プランにおいて明記されるよう求めます。何より改正基本法において示される「共に生きる教育」に沿って全面改定されたい。
⑥ 【同ならびに第三期障害福祉計画・差別禁止条例】第三期兵庫県障害福祉計画には地域格差が大きく取り上げられ、一般就労の停滞・離職率の高さ、グループホーム未設置の市町の課題が上げられています。地域格差解消のための諸条件整備は時間を要する事ですが、まず県民の意識変革や仕組みが求められ、そのためにも他都道府県でも実現されている差別禁止条例の制定について、県内市町の自立支援協議会も活用して実現されるよう要望するとともに、同プランならびに第三期障害福祉計画においても検討課題として盛り込まれる事を求めます。
【 1.教育 】
① 【基本理念】障害者基本法では、「年齢・能力に応じ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるよう、障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ・・・」とあります。「共生・共学」の実現を目指す教育課程の編成等、インクルーシブな学校作りを目指して、兵庫県教育委員会として「共に生きる教育指針」(仮称)を早期に策定して下さい。また、平成24年度からの兵庫県特別支援教育推進計画の中に、ノーマライゼーションの実現を図るべく、「同じ教室で共に学ぶ教育」の実現を目指すための条件整備等を含めた長期計画を盛り込むこと。
② 【特別支援教育推進計画】上記に指摘したよう、改正障害者基本法の趣旨、障害者権利条約第24条ならびに現在文部科学省中教審「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」で検討されている内容も踏まえた平成24年度からの兵庫県特別支援教育推進計画策定にあたり、県内の当事者・保護者・教員団体・障害者団体・研究者等に対してヒアリングの実施または検討会の開催等、当事者も含めた県民の声を聞く機会を必ず設けられる事を要望します。
③ 【通学・校外活動】障害児の通学・就学に関して、地域の普通校への通学にも必要な施策を講じること。また、遠足・修学旅行等の校外活動にも保護者に介助させたり責任を押し付けないことを各市町教委に文書で持って改めて通知されたい。学校長と保護者・本人との協議が不調な場合には、迅速に県教委が責任を持って指導・対応すること。
④ 【医療的ケア問題】普通学校における医療的ケアを必要とする障害児が保護者の負担なく安心して学校生活がおくれるよう、医療行為有資格者や看護師の確保、及び医療機関との連携など、必要な施策が講じられるよう市町教委を指導すること。また今年4月から施行されている「医療的ケアの法制化」を踏まえ、医療的ケアが必要な児童・生徒の学習権を保障するため、県教委としての医療的ケアの在り方に関する指針を明らかにすること。また、通学や学校外での教育活動において医療的ケアが必要である事を理由に保護者に負担を強いたり、当該児童を排除するような事がないよう、どのように運用されるのか、併せて貴職の方針を回答されたい。
【定時制高校問題】
私たちは、障害児・者の行き場としてあり様々な立場の生徒が共に学ぶ、まさにインクルーシブな教育を実現してきた定時制高校の存続を求めてきました。多くの地元関係団体・関係機関の存続要望にも関わらず、川西高校、同宝塚良元校、伊丹市立高校の募集停止が今春強行された事を、私たちは怒りを持って受け止めています。その上で、以下の質問に回答されたい。
⑤ 【分教室】阪神昆陽高等学校の分教室として設けられた川西高校、宝塚良元校、各分教室の地域別の生徒数を回答されたい。また、今後、3年に限定して設けられる川西分教室、宝塚良元分教室については、地域の学校として年限を設けず存続されるよう要望します。
⑥ 【阪神昆陽高校】県立阪神昆陽特別支援学校ならびに県立阪神昆陽高等学校の4月以降の状況を報告されると共に、両校でノーマライゼーションがどのように取り組まれているのか報告されたい。また阪神昆陽高校には障害を持つ生徒は入学しているのかも併せて回答されたい。
⑦ 【阪神昆陽高校】同校の開校に当たって、交通が大変不便である事が強く指摘されていた。とりわけ障害を持つ生徒が通えるような、バス路線等の交通面の確保は必要である。県としてどのような施策を実施されているのか回答されたい。
⑧ 【統合負担金】伊丹市立高等学校(定時制)の募集停止ならびに阪神昆陽高等学校の開校に際しての統合負担金について重大な疑義が指摘され、平成23年12月伊丹市定例市議会で予算案が一旦否決される事態にまで至り、12月市議会では「今後20年間の学校維持運営費」との根拠が、1月伊丹市議会では「伊丹市立高校が果してきた役割(伝統)を引き継ぐため」と変更されている。このような事態も含め、以下、質問する。
伊丹市長は伊丹市議会12月定例会総務政策委員会(平成23年12月15日)において、「(知事が)市立の定時制を受け取るんであれば、一定の負担はしてもらわにゃいけませんなという話は最初の段階からありました。」と答弁しているが、兵庫県知事が「一定の負担」を伊丹市に求めた理由は何か。
⑨ 【統合負担金】県が伊丹市に求めた統合負担金の金額、3億6千万円の算出根拠を示されたい。
⑩ 【統合負担金】この統合負担金は県の一般財源に入ると聞くが、3億6千万円の使途について説明されたい。また、阪神昆陽特別支援学校のためにも用いられるのかも併せて回答されたい。
【 2.街づくり・交通・移動について 】
① 【駅舎等のバリアフリー】公共交通機関の駅舎・ターミナルのバリアフリー化について、具体的に民間事業者の駅舎等の改築に際して、建築予定段階で障害当事者の意見を必ず聞く場を設けるよう、県として公共交通事業者部会に申し入れて下さい。
② 【駅舎等のバリアフリー】平成23年3月31日、国土交通省等より示された「移動円滑化の促進に関する基本方針」には、一日当たりの平均利用者数が3000人以上の鉄道駅において、平成32年度までにエレベーター・スロープ等の整備が原則、すべて整備されることとされている。兵庫県内の昨年度からの進ちょく状況を資料をもって事前回答されたい。
③ 【駅舎等のバリアフリー・視覚障害者】視覚障害者の駅舎ホームからの転落事故は毎年起きています。平成23年3月31日付国土交通省による「移動等円滑化の促進に関する基本方針」にあるホームドア又は可動式ホーム柵の整備を進めて下さい。「ひょうご障害者福祉プラン」の「バリアフリーのまちづくり」には鉄道駅舎の整備事項として取り上げられず、「内方線の敷設促進」しか上げられていない。同プランの当該個所を「ホームドア又は可動式ホーム柵の整備」を盛り込まれたい。
④ 【駅舎等のバリアフリー・視覚障害者】「公共交通事業者部会」に対して、上記③の問題について県として提起して下さい。また解決するまでの期間は、安全確保のための駅舎ホームに何らかの人員を配置するよう同部会に申し入れて下さい。
⑤ 【バス問題】ユニバーサル社会作りの観点から「公共交通事業者部会」が設けられ、バス事業者にも参加するよう兵庫県バス協会にも申し入れていると昨年度交渉で回答があったが、その後の進ちょく状況について回答されたい。
⑥ 【バス問題】県内各市営バス、県内民間バス会社ごとのノンステップバスの導入率に関する資料を提示されたい。導入率の低い市、民間バス会社について、どのように県として指導し解決を図るのか、具体策を述べて下さい。
⑦ 【バス問題・淡路】毎年要望している懸案事項である明石海峡大橋を走るバスに、車椅子のままで乗車できない問題について、車椅子障害者の移動権の侵害であり多大な不利益を被る差別である旨の兵庫県としての見解を明らかにし、兵庫県バス協会に同見解を示し、具体的な解決策の検討を始められ、兵庫県のバリアフリー基本構想にこの問題を位置付けられたい。また障問連と兵庫県バス協会、県障害福祉課の三者による研究・協議の場を貴局の責任において設けられたい。
⑧ 【音声ガイド】視覚障害者にとって、駅や公共施設の出入り口に音声ガイドの設置、音声信号機は必要であり、地域住民などに視覚障害者への理解も促進しつつ、その普及を徹底することを要望します。「すこやか兵庫障害者プラン」においても同問題を盛り込まれる事を要望すると共に、県下各市町でどのような計画で推進されるのか、進ちょく状況と共に報告されたい。
⑨ 【精神障害者の割引問題】精神障害者が、公共交通機関・タクシーを利用する際の運賃割引の現状に関して、兵庫県としての見解を明らかにすると共に国ならびにJR・私鉄各社に対して働きかけて下さい。また「公共交通事業所部会」でも検討課題として取り上げて下さい。
【 3.労働について 】
① 【県職員採用・自力勤務条件】毎年課題となっている県職員採用における「自力勤務」について、昨年度も「行革の中では非正規職員として介護者を採用する事は財政上困難」は、「すこやか兵庫障害者プラン」P,18にある「職場の環境を変える・・・障害ある人の参画」の実現を拒む事になり撤回されたい。また昨年度交渉での「地方公務員法上、守秘義務の課せられる公務員とそうでない者が一緒に働く事は困難」との回答について、それは国・政府の見解であるかどうかを回答されると共に、そうであるなら、改善されるよう国に働きかけたい。
② 【県職員採用】県職員採用試験について、点字試験や音声パソコンによる試験など、障害に配慮した試験方法等、行政が率先して実施すること。
③ 【県職員採用】「兵庫県第三期障害福祉計画」P,27には、県・市町の行政率先行動として、「知的・精神障害者の雇用等(176人・35市町)」とあるが、ここに県職員の雇用は含まれているのか。含まれていないなら、なぜ含まれていないのか回答されたい。
④ 【離職者対策】「兵庫県第三期障害福祉計画」P,25には、平成18年から23年の期間に、約9393人離職したと報告されている。障害種別毎の離職者数ならびに離職理由について回答され、その分析の上での対策について回答されたい。
【 4.自立生活支援に関して 】
1.介助に関連して
① 居宅介護、重度訪問介護について
私たちは県内における介護支給時間に関し大きな地域格差があると認識している。以下、各項目に回答されたい。
ア、 【ガイドライン】支給決定に関わるガイドラインは基準であるにも関らず上限とし、当事者の要望や生活実態を踏まえた支給決定を行っていない市町村に対し、県として指導すること。市町の中には、ガイドラインの中に「最大値」あるいは「国庫負担額が基準」とする市町に対し、ガイドラインを変更するよう県として指導されたい。
イ、 【ガイドライン・重度訪問介護】重度訪問介護について、「見守りを支給時間に含めない」姫路市、また「単身かつ夜間の見守り等継続的な支援が必要な場合は重度障害者等包括支援利用」とガイドラインに明記している西脇市をはじめとした北播磨各市に対して、本来の制度に則った運用がされるよう県として強く指導されたい。
ウ、 【ガイドライン・介護保険】県内各地で65歳を迎える障害者の介護保険適用が問題化されている。厚生労働省からも「障害者自立支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係について」(平成19年8月28日障企発0328002号)、利用者の意向を丁寧に聴取し、実態把握した上で必ずしも一律に適用しなくて良い旨の通知が出されています。しかし市町においては当事者の実情を踏まえない対応がされている。重度訪問介護利用、日中活動通所、利用者負担など課題は多岐にわたります。県として見解を示されたい。また改めて国通知を踏まえた各市町を指導されたい。
エ、 【国庫負担基準の改定】国庫負担基準を越えて支給する市町に対し、超過分を国が半額、県と市町で4分の1づつ負担する「重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援事業」が今年度から補助金化されました。昨年度の当該事業の対象市町名ならびに超過時間数を回答されると共に、今年度からの補助金化ならびに国庫負担基準の改訂を各市町に周知し、ガイドラインを改定するよう市町に働きかけたい。
オ、 【サービス利用計画】今年4月からの国の制度改正により、今後3年以内に全利用者に対して「サービス利用計画作成」を義務付けられます。各市町での運用状況を回答されると共に、「サービス利用計画」を作成する相談支援事業者に対して、障害当事者の希望を尊重し、セルフケアプランを認め、そして各市町の支給基準のガイドラインを上限とした計画作成を行わないよう、県としてとのような推進方策を行うのか回答されたい。
② 移動支援ならびに入院時の介護保障
ア、 【同行援護】
1, 視覚障害者はただ安全に移動できて目的地に着けばいいというだけでなく、目的地に着いてから
何をするのか、適切な情報保障がなければ目的は達成されません。そのような「移動+情報保障」という障害特性による支援の必要があるからこそ移動支援から同行援護に変わりました。宝塚市においては、必要な理由を申し出れば必要な時間数が支給される柔軟な運用が行われています。ガイドラインが上限でなく、本来の制度の趣旨に則った運用が各市町でされるよう指導して下さい。
2, 病院内での中抜きはしないように各市町に指導されたい。大病院では番号での呼び出し(画面での
掲示)、受付や支払などのタッチパネル化等、視覚障害者にとって、動きにくい環境となっていること、またずっと看護士などが付いてくれているわけではないので、誘導された座席から移動してトイレにいくこともできない点などを考慮すること。
イ、【入院時コミュニケーション支援事業】
①県内で地域生活支援事業において重度障害者の入院時コミュニケーション支援事業を実施している市町名ならびに同制度の利用状況(利用人数 利用時間)について情報提供されたい。また未実施自治体に対して同制度の意義を周知させ積極的に制度創設するよう働きかけて下さい。
②また、せっかく同制度が設立されたにもかかわらず、対象者を厳しく制限しているため、利用が促進
されていないと聞く。利用者の実情や問題解決を図るため、同制度の柔軟運用を各市町に働きかけて下さい。
ウ、【通所・通学におけるガイドヘルプ】「ひょうご障害者福祉プラン」には、「通学・通所を支えるガイドヘルパーの派遣」とありますが、具体的にどのように運用されるのか、各市町の実態と共に県としての方針を回答されたい。
エ、【ガイドヘルプの車使用】郡部等においては公共交通機関も少ない上にバリアフリー化されておらず、また民間の車椅子輸送の介護タクシーも少なく、移動権が侵害されている。「ひょうご障害者福祉プラン」P73でも指摘されているが、具体的な方策が示されていない。総合福祉部会の「骨格提言」にも示されているよう、ヘルパーが車を運転する事を認める柔軟運用について、地域格差の解消のためにも、不便を強いられる郡部等の障害者の実情を踏まえ、検討されたい。
③ グループホーム・ケアホームについて
ア、 【国への要望】日中活動の休日等において、グループホーム等の利用者の支援は大きな課題です。「住まい」とされながらも、本人の意思ではなく事業所都合により土日は実家に帰省させられる事も聞くが、本来あってはならないと考えます。障害の重い人が入居するケアホームの運営の困難さの解消のため、平成26年4月1日からの制度改正施行に向け、実態に見合った制度のあり方、報酬増等、国に積極的に働きかけて下さい。
イ、 【ホーム入居者の移動支援】国において解決されるまで、通所施設等が休みの土曜・日曜・祭日等において、共同生活でなく個人の余暇活動等のための外出をホーム職員が担う事は実質困難であると私たちは考えます。ホーム入居者が、通所施設が休みの土曜日曜等の日中に移動支援利用する事はホーム利用とのサービスの重複利用になるのかどうか、県としての見解を示して下さい。
ウ、 【ホーム入所者等の移動支援】通所施設が休みの土曜日曜等に共同生活でなく個人の外出等支援は「豊かな生活」「自己実現」のためには不可欠であり、各市町に対しガイドラインを上限とせず、移動支援の利用促進を図るよう県として指導して下さい。
エ、 【建築基準】昨年度交渉において、口頭で申し入れた事項だが、民間で小規模な事業所がグループホーム等の開設のため、賃貸物件を確保し、障害福祉サービス事業の指定申請には何ら問題がないにもかかわらず、建築基準上に問題とされ、開設を諦めざるを得ない事例について、県のグループホーム等の増設を阻害するものとの認識はあるのか、見解を示して下さい。施設でなく街の中の小規模な「住まい」が多く設立される事が、地域での共生社会の創出であると私たちは考える。県内各市町で、どのようにこの問題が運用されているのか、用途変更を義務付けているのか否かも含め調査して報告して下さい。
オ、 【大規模ホーム】入所施設の近隣にグループホーム等を設置したり、大規模なグループホームを設置する事は、地域移行の本来の趣旨から逸脱する事となる。そのような実態について調査され報告して下さい。
カ、 【公営住宅の活用】近隣の大阪府においては1300戸のグループホームがあり、そのうち約400戸は府営宅住宅が活用されている。兵庫県においてはどのような状況にあるのか、昨年度からの進捗状況を示されたい。
④ 医療的ケアについて
今年4月から医療的ケアの法制化が始まりました。医療的ケアが必要な者が看護士等の有資格者でなくとも、介護職員や学校教員等、身近な者でも実施できる目的として実施されています。とりわけ医療的ケアを必要とする障害者の地域での自立生活には、ヘルパーでも可能となる事は大変大きな意味があります。しかし、今年4月から「医療的ケアの法制化」が実施されるにもかかわらず、兵庫県は他府県に比べても研修が大変立ち遅れ、障問連が関わる事業者の介護者が申し込んでもほとんどが受講できなかった。なぜ兵庫県看護協会にしか研修実施を委託されないのか。重症心身障害児者への医療的ケアについては、より身近に関わる訪問看護事業所もあり、「特定の者」対象の研修については、個別具体的な指導が求められます。兵庫県第三期障害福祉計画においても医療的ケアについては重点課題として掲げられているにも関わらず、それに反する県の現在の施策は矛盾しています。現場は大変混乱しており、何より当事者が安心し、実施する介護者・事業者も安心してケアに関われるためにも、以下、要望します。
ア、 国の要綱に則り、DVD視聴による指導者研修とみなす事、そして「特定の者」対象の研修については、兵庫県看護協会だけでなく一定の要件を満たす民間事業所を研修実施機関と認める事。
イ、 「実質的違法性阻却」は今なお継続している事を県として事業者に周知して下さい。これまで実施していたのにこの4月を機に、「できません」と対応する事業者が多くあり、当事者が困窮しています。正確な情報を各事業者に提供して下さい。
【5.地域移行に関する課題】
① 地域移行に関する県の基本的な考え方
ア、 【県の基本認識】「本人が望まない入所は無いと思われる」と昨年度交渉で回答されたが、それでは地域移行の必要性はないと県は認識していることになる。地域社会で生活できる条件整備が図られず、選択肢がない事自体、実質的な「強制」と県は認識されないのか。昨年度回答を撤回し、なぜ地域移行を促進する必要があるのか、改めて県の基本姿勢について回答して下さい。
イ、 【「真に入所が必要な方」について】第三期兵庫県障害福祉計画に「真に入所が必要な方」とあるが、一体どのような人なのか回答して下さい。計画素案の段階では想定される入所待機者は程度区分4以上とされ、パブリックコメントでの批判を受けて表現は変更されたが、障害の重い人=入所の必要な人との認識を持っていたと考えられる。どのように総括され変更されたのか回答して下さい。
ウ、 【入所定員数】地域移行の意義は、特別支援学校等の卒業生を初めとした若年の障害者が地域社会の中で生活し続ける事、新規入所者を極力抑制する事が重要である。しかし第三期兵庫県障害福祉計画では、入所者定員数は現状維持するとされている。それでは地域移行や地域生活促進のインセンティブとはならない。計画の数値について見直されたい。
エ、 【入所者等の移動支援】地域移行のためには、入所中・入院中の障害者の移動支援が重要である事は「第三期障害福祉計画」にも述べられています。しかし同計画P,21には「訓練的活用」と書かれていますが、社会資源等の貧困また障害者への差別偏見という社会的な要因により入所、社会的入院せざるえなかったのであり、「訓練」という表現は不適切であり表現を改められたい。
オ、 【入所者等の移動支援】昨年度交渉で、施設入所者の移動支援実施市町名を示されたが、新たに実施している市町があれば市町名を回答されたい。また既に実施している各市町で対象とされる障害種別、障害程度、利用目的等の各市町の制度内容と昨年度の利用状況(利用者数 利用時間)について、資料を持って事前に回答されたい。
② 相談支援事業について
地域移行や地域での自立生活実現のためには住宅確保は重要である。今年4月からの法改正により相談支援事業は大きく変わったが、各市町ならびに各圏域において、「住宅入居等支援」がどのように実施されているのか、進ちょく状況と共に回答されたい。
【 6.生きる場・作業所について 】
第三期障害福祉計画において、今後も日中活動の場の増設は必要とされている。既存の事業所の定員増により賄われる事には限界があり、卒業後の日中活動の場の確保、とりわけ重度障害者の進路保障は緊急の課題である。神戸市東部では生活介護事業の新規受け入れは大変厳しく、保護者の不安は大きい。一方、新規に定員20名の事業所設立は大変困難であり、そのためにも小規模作業所から開設し体制を整備しながら自立支援法上の体系へと移行する事が今後も現実的に有意義であると私たちは考える。その認識に立ち以下の質問に回答されたい。
① 第二次行財政改革プランとして、小規模作業所施策において、「市町に対する地方交付税措置と市町の実費負担額との乖離を踏まえ、県の支援のあり方を見直す」とされているが、平成23年度実績に基づき、平成24年度から県補助が廃止または削減される市町名を回答されたい。それにより小規模作業所補助を廃止する市町はあるのか、あればどこの市町か回答されたい。
② 新規卒業者だけでなく地域移行した障害者の日中活動も必要であり、県として、今後も年限を設けずに小規模作業所補助事業を継続して下さい。
【7.情報保障】
手話通訳、要約筆記の費用を、個人や主催者負担にせず、目的に関わらず全額公費負担することで、盲ろう者や聴覚障害者の社会参加を積極的にすすめること。
【8.その他】
ア、地域生活定着支援センター「ウィズ」の平成23年度の実施状況ならびに平成24年度の実施見込みならびに検討課題について回答して下さい。
イ、お笑いタレントの家族の生活保護受給問題を機に、生活保護受給に際して親族の扶養義務を強化する動向が顕著になっている。障害者の所得保障施策が不十分な現在、就労が困難な障害者にとって、自立生活を実現するには生活保護しかありません。扶養義務の強化は障害者の自立生活を阻害するものであり、拙速な扶養義務強化しないよう、兵庫県として国に対して申し入れられるとともに、各市町に窓口対応での扶養義務に関して文書で持って指導されたい。
ウ、医療機器を用いる障害者にとって計画停電は生命をも脅かす事態を招きます。正確な情報提供と事前対策について県の見解を求めると共に、必要に応じて利用者や施設等にバッテリーや自家発電機を無償提供または貸出できるよう、県として関西電力に求めて下さい。また高層住宅等のエレベーターのある住宅に居住する障害者は停電によりエレベーターが使用できなくなる。県としてどう解決されるのか回答されたい。
7月 6, 2012