2012年度 精神障害者問題に関する兵庫県への要望書
2012年7月6日
兵庫県知事
井戸 敏三様
兵庫県教育委員会
大西 孝様
障害者問題を考える兵庫県連絡会議
代表 福永年久
2012年度 精神障害者問題に関する要望書
歴史的に、精神障害者への処遇は長らく「精神衛生法」の下で、福祉の対象ではなく措置入院等により社会防衛として治安管理の側面から、本人の人権を無視した施策が長らく講じられてきました。1995年「精神保健福祉法」の制定により初めて福祉の対象とされ、福祉サービス等については2006年障害者自立支援法により、ようやく三障害共通のサービスが実施されるに至りました。精神障害者の福祉施策が、このような歴史的背景により「立ち遅れている」事実があるからこそ、他障害と区別した緊急的な施策が求められ、国においても平成16年から概ね10年間の更なる改革に向けて「精神保健医療の改革ビジョン」が示されています。そして、2011年8月に公表された、障害者制度改革推進会議の総合福祉部会による「骨格提言」においても、「(4)放置できない社会問題の解決」として、「多くの精神障害者の社会的入院の解消」が上げられているのです。
このような背景を踏まえ、私たちは兵庫県での精神障害者施策がより一層拡充する事を要望すると共に、以下の要望に対して真摯に回答されるようお願いします。
【精神障害者の現状~基本姿勢】
① 「兵庫県第三期障害福祉計画」の「障害者手帳所持者の推移」(P,9~12)には、「精神障害者手帳所持者の著しい増加」と記されています。平成19年から3年間で1級が約800人、2級が約4000人と他障害と比べ極めて高い増加率が示されています。身体障害者については高齢化に伴う増加、知的障害者については発達障害の障害認定等、ある程度理由は明確ですが、精神障害者の著しい増加率の要因を、貴職としてどう分析されるのか、回答されたい。
② 「兵庫県第三期障害福祉計画」では、「介護」「グループホーム」「就労」等の各施策の数値目標も精神障害者に特化した数値は「精神科病院からの退院」以外は明らかにされていません。また、就労後の職場環境等による精神疾患を発病する人の増加等、明らかに他障害とは異なる状況にあり、(はじめに)で記したような歴史的背景、国における「精神保健医療福祉の改革ビジョン」や「骨格提言」に則り、「入院医療中心から地域生活中心へ」を基本理念とし、兵庫県として当事者も参画した何らかの「検討会」を設けられ、精神障害者施策に特化した基本姿勢(ビジョン)を明らかにされたい。
【教育】
精神障害者が苦しんでいるのは、周りの人が自分の存在を認めてくれないからだ。そこに友人がいて分かり合える人の存在があれば精神障害者は安心して心を開き、互いの理解が生まれ、互いに支え合う雰囲気があれば、精神障害者は安心できる。そういう教育の場を築かれるよう要望する。「ひょうご障害者福祉プラン」P69には、「統合失調症やうつをはじめ、誤解や偏見が残る精神疾患・精神障害についての理解促進など、学校における福祉教育を推進」とあるが、具体的にどのように取り組まれているのか、報告されたい。
【地域移行~退院促進】
① 兵庫県として、「社会的入院は人権侵害である」という認識を明らかにして下さい。
② グループホームの設置が進まない現状が、第三期兵庫県障害福祉計画に記され、今後の数値目標も示されているが、精神障害者のグループホームは、平成23年度末の時点で、各市町毎に何ヶ所あり、何人利用しているのか、資料を持って回答されたい。
③ 精神病院から退院後の地域生活の受け皿については「地域移行型ホーム」「精神障害者退院支援施設」などの敷地内設置や病棟転用は、県として認められない事は既に確認しているが、現在、県内に敷地内設置や病棟転用の同ホームまたは同支援施設は何ヶ所あるのか、回答されたい。また何故、設置を認めたのかについても併せて回答されたい。
④ 社会的入院の解消は、受け皿としてグループホーム等が欠かせないが、院内設置の「B棟」が多く、地域生活には不便であり、人員配置が適切でなかったり、第一に人権に対する配慮がない。社会的入院者が真に社会参加し地域で生活するためには、上記の改善が急務だが、現実はそれとは程遠い。今後どのように取り組まれるのか回答されたい。
【精神障害者の介護保障等、地域生活】
① 居宅介護等の数値目標は示されているが、精神障害者に特化した数値目標や現在の状況は示されていません。「兵庫県第三期障害福祉計画」P,38に訪問サービスの「精神障害のある人のサービス基盤が十分でない」と記されているが、具体的に各市町毎に平成23年度末の時点での精神障害者に特化したホームヘルプサービスの利用者数・利用時間について資料で持って回答されたい。
② そこから、どのような課題があり、どのような地域格差があるのか、その実態についてどう分析されるのか回答されると共に、制度自体の周知徹底ならびに効果的な利用促進策を回答されたい。
③ ①、②と同様に、精神障害者の移動支援(ガイドヘルプ)についても、精神障害者に特化した平成23年度末の各市町の利用者数と利用時間について資料で持って回答され、どのような課題がありどう分析されるのか、地域格差があるなら、どう解消され、効果的な利用促進策について回答されたい。
【就労】
① 精神障害者の就労支援、特に就労した後の支援について現状と今後の見通しを示すこと。とりわけ社会適応訓練事業について、一般就労への定着率を明らかにするとともに、事業終了後の支援について県の見解を示すこと。
② 「兵庫県第三期障害福祉計画」P,27には、県・市町の行政率先行動として「知的・精神障害者の雇用等(176人・35市町)」、検討課題として「精神障害に対応した多様な働き方」と示されている。具体的にどう推進されるのか回答されたい。
③ 就労後、精神疾患を発病する人が増えている。背景には企業側の「労働者の使い捨て」感覚からの「名ばかり管理職」「サービス残業」等があり、精神的に追い詰められ発病を余儀なくされている。それに対応できるように、小中高校から労働者の権利について習得する必要がある。各企業に対してどのように指導されるのか、貴局の見解を回答されたい。
【セルフヘルプグループ ピアサポーター】
「兵庫県第三期障害福祉計画」P,23に、「ピアサポーターの活動支援」と記されているが、具体的にどのように支援されるのか回答されたい。障問連に加盟する「いこいの場ひょうご」は精神障害者当事者会であり、病院訪問やピアサポーターによる相談・ピアカウンセリングの活動を行っているが、ほとんどが会員個々人の持ち出しにかかっています。その為、会員も少なく運営は極めて不安定です。しかし、それとは逆に社会資源としての当事者会は注目を浴びています。しかし民間からの補助金は少なく、当事者会の努力にも限界があります。同「計画」に示されている「ピアサポーターの活動支援」の一環として、「いこいの場ひょうご」を始めとした当事者会に対する補助金を要望します。
【保健・医療・衛生について】
① 精神科病院で、面接・面会を拒まないように指導すること。とりわけ、知人・友人・当事者会の面会に対し、きちんと対応しない事例がまだまだある。また看護士への啓発も含めた研修を当事者も参加して実施できるよう検討されたい。
② 障問連の共闘団体である兵庫県精神医療人権センターとして、県内病院の情報開示を求めているが応じてもらえない。大阪府においては毎年公開されている。速やかに開示するよう要望するとともに、情報を分析され、ゆゆしき実態があるなら改善するよう指導されたい。
③ 医療費の減免を中軽度の障害者にも適用するよう、医療費助成を精神障害2級まで拡大するよう、県として各市町に指導されたい。
④ 精神疾患治療のための入院費を助成して下さい。
⑤ 平成24年4月1日施行予定の精神保健福祉法の一部改正により、都道府県の救急医療体制の整備の努力義務が規定されている。兵庫県としてどのように実行しているのか回答されたい。
⑥ また、精神科救急は、都市部でもそうだが、特に山間部で「輪番制」のため、思わぬ悪質病院に搬入されてしまう現実がある。精神科の救急医療を充実させるため、主要な県立病院に精神科救急のためのベッドを設置すること。
⑦ 国における精神保健医療福祉改革のビジョンにおいても、「地域で生活する」ことを前提とした支援体系として、アウトリーチ支援が検討されている。兵庫県においても具体的にどのように進展していくのか、回答されたい。また、「人権に配慮して訪問介護を」とあるが、実態はどうなのか。受ける側の当事者・家族の思いはどうなのか。治療が優先しているのでないか。医療チームの夜間体制はどうなのか。家族はその時どうするのか。率直な見解について回答されたい。
7月 6, 2012