優生思想

【優生保護法問題】  国会が不妊手術の調査報告書を提出~兵庫第三次訴訟が7月に第一回口頭弁論

障問連事務局
◆兵庫第三次訴訟~7/11に第一回口頭弁論
 3月23日、画期的な大阪高裁判決に対し国は上告し、東京・札幌・大阪訴訟と共に最高裁での審理を迎えていますが、情報は入ってきていません。
兵庫では聴覚障害者を原告に第三次訴訟が提訴され、7月に神戸地裁で第一回口頭弁論が行われます。
・日時:7月11日(火) 午後3時~3時30分   神戸地裁101号法廷
・裁判傍聴される方・・・午後1時に神戸地裁に集合、抽選があります。
・報告集会は午後4時15分頃(予定)~  場所:アステップ神戸セミナー室1
・問い合わせ・・・「優生保護法による被害者と共に歩む兵庫の会(歩む兵庫の会)
TEL:078‐341‐9544(平日10時~17時)」にお願いします。

◆強制不妊手術の実態調査報告書が公表 理不尽な実態が明らかに
衆参両院の事務局は6月12日、立法経緯や被害実態をまとめた調査報告書の概要版を公表しました。不妊手術を強制された被害者40人に実施した聞き取り調査で、約7割にあたる27人が「子どもができなくなる手術と説明を受けていない」と回答したことが明らかになり、不妊手術を強制された当時の理不尽な実態が改めて浮き彫りになりました。
今回の報告書は「被害者救済法」に基づき、国の対応が遅れた経緯や社会的背景を解明するため、厚生労働省や自治体、当事者、医療関係者、福祉施設、障害者団体等に対し調査が行われた。
報告書には、以下のような内容が報告されています。
・「福祉施設の入所条件だった」「経済状況から育児困難」「家族の意向」
・「手術を受けた最年少は9歳」「不妊手術は2万4993件実施、1955年がピーク」
・「約75%が女性。都道府県別では北海道が最多で宮城県が続き、最少は鳥取県」
・「生理時の手間を省くことを理由に子宮摘出が勧奨された他、別の手術と偽って不妊手術が実施されたケースも確認」
・「不妊手術の適否を判断する都道府県優生保護審査会は定足数を欠いて開催されたり、書類による持ち回りで審査されたりもしていた」
・「会議録や政府資料を分析したところ、当時の国会審議では不妊手術に対して批判的な観点から議論された形跡はなかった」
・1975年の高校教科書には「子孫に不良な遺伝子を残さないことを優生といい、国は国民全体の遺伝素質を改善、向上させるため、国民優生に力を注いでいる」と記載。
などが明らかにされています。毎日新聞社説(6月21日)では「政府は談話や国会答弁で反省とお詫びを表明してきた。しかし、立法や施策の実行に関する国の責任は明確になっていない・・・(中略)・・・調査結果を重く受け止め、国の責任を明確にして、被害者に向き合う。それが政治の役割である」と指摘している。
報告書原案を受け取った三ツ林裕巳・衆院厚労委員長は「国会に身を置く一人として真摯(しんし)に反省し、そして心からおわびを申し上げたい」と述べ、また自民党の山田宏参院厚労委員長は「当事者が味わった苦痛を共有し、全ての人が共生できる社会に向けて、負の歴史を踏まえる必要がある」と述べた。この報告書は6月19日、衆参の厚労委員長から衆議院・参議院両院の議長に提出されました。それを踏まえ、裁判闘争と並行し、原告団弁護団によるロビー活動、議員連盟がどう働きかけ、国会としてどう検討していくのか、その結果、一時金支給法の増額措置などが図られるのか、注目です。

◆「被害者の苦難、受け止めよ」 「国と国会連携し制度を」と報道で強く指摘
毎日新聞(6/23)で優生保護法問題の現状について大きく報道されている。6月1日の仙台高裁判決では、判決理由を一切述べず「控訴を棄却する」とたった一言述べ立ち去った石栗正子裁判長に対し法廷では抗議の怒声が飛び交い、立ち会った仙台支局の遠藤記者もその判決に「一瞬、耳を疑った」と強く批判する。原告の1人、飯塚淳子さん(活動名)は16歳でもう1人の知的障害者の原告も15歳で手術を強制された。飯塚さんが術後間もなく「両親の会話から自分が受けたのは不妊手術だと知った」、この事実をもって判決では「提訴することが不可能であったとまでは言えない」と除斥期間を適用し被害者の訴えを認めなかった。この間の地裁、高裁での7つの勝訴判決、とりわけ3月の大阪高裁判決では「国が憲法違反と認めた時など」まで除斥期間の適用を制限するとまで断じ、勝訴判決の大きな根拠は、「提訴の前提となる情報や相談する機会にアクセスすることが困難」という障害者が強いられた苛酷な差別の実態を真摯に受け止めたからである。
 同日の毎日新聞で、新里弁護士(全国弁護団共同代表)は「・・・一方で逆説的ですが、こうしたおかしな司法判断が、政治解決の必要性を浮き彫りにしたとも言えます。当事者の多くは高齢化しており、最高裁の判断を待つ時間的余裕はありません。我々が第一に求めているのは首相からの直接の謝罪です。司法での闘いと並行して、国会に対して十分な救済を求める活動を行っていきます」としている。
裁判での闘いと同時に、国会での調査結果を踏まえた政府が真摯に対応する事が強く求められます。

◆北海道のグループホームでの不妊手術問題
 北海道江差町の社会福祉法人「あすなろ福祉会」が運営するグループホームで、結婚や同居を希望する知的障害者が不妊手術や処置を受けていた問題について、北海道としてこの間、総合支援法に基づく監査が実施されていました。当事者を含む関係者56人から聞き取られ、結婚などを希望した10組20人のうち13人が処置を受けていたことが明らかになった。この監査結果を踏まえ北海道として「あすなろ福祉会」に対し「意思決定支援への配慮が不十分」「一部の相談記録がなかった」として、改善するよう指導した・・・と毎日新聞が6月21日、22日に報道しています。
 しかし調査では、処置を受けた障害者の1人が「強制されたように感じた」と証言、施設職員と長時間接する中で処置を決め施設側が「処置を選択せざるを得ない」と説明した事実は確認できず、「不妊処置をグループホーム入居の条件にしたり処置を強制したりした事実は確認できなかった」とし、最終的には本人の意思で決めたと、北海道として判断しています。
監査指導の文書を受け取った樋口理事長は報道陣の取材に対し「本人らが了承してのことだと申し上げた。われわれや利用者が決定したことを監査は尊重してくれた」と話した。昨年、共同通信がこの問題を報道した翌日、12月19日の記者会見で樋口理事長は「子どもがいじめられる可能性がある。起こり得ることを話して選択してもらう」と説明していた。
新聞報道以外の情報が無いため断定はできませんが、事故責任や否定的な事ばかりを強調されると同意せざるを得ません。「こうしたら子どもを産み育てられるよ、応援するよ」のような前向きな説明、情報提供や励ましはあったのでしょうか。意思決定支援が支援者の都合や思惑で誘導してはならないはずです。地元北海道のピープルファーストがこの問題について取り組んでいます。優生保護法は廃止されたのに、なぜこのような事態になるのか、知的障害者の現実の厳しさ、問題の根深さを思います。

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