介護保障

【報告:介護保障】 「理由付記」裁判判決を受け県が不服審査会を再開

障問連事務局

昨年秋の「理由付記」裁判で凪裕之さんの主張が認められ、原告が求める理由付記について一言も触れない県の裁決が取り消されました。その後の折衝で、兵庫県は私たちの緊急要望に対し「真摯に受け止める」と述べながらも、今後の審理再開や要望に対する回答は一切答えず、私たちが知らないところで形式的に不服審査会を開催し粛々と棄却裁決を下すのではないかと危惧しましたが、那岐山及び代理人弁護士との粘り強い要請、審理再開を求める書面提出により、以下の報告にあるよう、3月5日、兵庫県民会館において、兵庫県担当者、処分庁である長田区と神戸市障害者支援課担当者が出席し、凪さん本人の口頭意見陳述と弁護士による質疑が行われました。

 

◆3月5日 県不服審査会口頭意見陳述のご報告           弁護士 岡本祐育

令和3年3月5日㈮午後3時より凪さんの審査請求について,再度の口頭意見陳述が行われました。現在,議事録は作成されていません。そこで,口頭意見陳述の概要及び当方の陳述した意見内容,神戸市の主張と回答についてご報告いたします。

 

第1 口頭意見陳述の概要

口頭意見陳述は,凪さんによる陳述から始まりました。その後,弁護団からは主に報告者である弁護士の岡本から神戸市に対して質問し,最終的な意見を陳述しました。その後は,審理員より今後の手続きの進行について調整が行われて解散しました。

 

第2 当方の陳述した意見内容

1 凪さんの主張

まず,凪さんから,中抜けによって介護支給量が足りず,平成28年当時から介護ヘルパーを自費で依頼していたことを主張していただきました。介護支給量の中抜けを作ることに理由がないことについて納得できないことも強く述べていただきました。

2 岡本弁護士の質問

岡本は,神戸市に対して,理由付記制度の存在意義や重要性を理解しているか質問しました。さらに,神戸市に対して,中抜けを作ることは,申請に対する一部拒否処分に当たるため,処分時に理由付記をする必要があると意見し,その根拠となる裁判例や裁決例があることを示しました。

その上で,神戸市に対して,今でも中抜けを作ることは一部拒否処分ではないと考えているのかと問いました。

 

第3 神戸市の主張と回答

1 神戸市の主張と回答

神戸市は,凪さんのような審査請求人の不服申立に便宜を図り,行政庁の恣意を抑制するために理由付記制度が存在すること,つまり,存在意義や重要性については,理解していました。

一方で,凪さんの中抜けは,一部拒否処分に当たらないという主張は今でも変わらないとしました。当方の主張の論拠となった各種の裁判例や裁決例については,存在は認めるが神戸市の解釈と異なるというのです。

 

 

2 回答後の当方の意見陳述

当方は,凪さんの介護支給量について中抜け等を作ることは一部拒否処分であることが明らかであるため,理由付記をしないことは行政手続法8条違反であるから,本件処分は,裁決によって取り消されるべきであると改めて主張しました。

他方,神戸市の採用する「本件処分は一部拒否処分ではない」という主張については,要するに中抜けを作ることに合理的かつ具体的な理由などなく,理由を書かなくても中抜けを作れるから無理な解釈を採用しているに過ぎないと述べました。

 

第4 今後の手続き

当方では,口頭意見陳述に先立ち,主張書面を審理員及び神戸市に対して提出しています。現在,神戸市からの反論書面の提出待ちです。神戸市から提出された反論書面に当方が反論するべき部分があれば再反論書を作成することとなるでしょう。特に不要であれば,その後は,審理員の進行になります。当方としては,審理員に対して,有効かつ充実した審議会の開催を働きかけています。

以上

 

3月5日付の神戸市長田区福祉事務所長名の弁明書は、これまでの主張の焼き直しに過ぎず、理由付記に関しても「…希望する支給量を下回るからと言って不利益処分ではないため、理由付記の必要もない」と、依然と同様の一文しか示していません。岡本弁護士の報告にあるよう、「希望する支給量を認めないことは不利益処分であり、不利益処分である以上、認めない理由を文書により示さなければならない」との過去の裁判判例について、神戸市は「存在を認めるが解釈が違う」と、弁護団が法的根拠を明確に示し理詰めで問う内容に対し、まともに答えようとせず、本当に許せません。引き続き、ご支援をお願いします。

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