介護保障

【報告:介護保障問題】 「理由付記裁判」判決を受け兵庫県が審理を再開する

障問連事務局

◆はじめに~「自助」がもたらす抑圧と生存権の侵害

2月27日毎日新聞で連載「自助と言われても」で「公助願うALS患者門前払い」の記事があった。内容は長野県信濃町に住むALSの小林さんが、年老いた母親の介護が限界になり、行政に介護支給の像を求めた。「かすかに動く左の手のひらの圧力を感知するマウスを使い、視線入力で一文字一文字、パソコンで打ち込んだ」、「何時間もかけて母親と申請書を書き上げ」町に送った。町からの返信に以下のように書かれていた。

・「福祉の考え方の基本は自助→共助→公助です」

・「まず自助として短期入院を利用ください。その上で家族や地域の方の協力そして補完的な役割として『公助』があります」

・「厳しい伝え方で恐れ入りますが、(町としての)返信は、あなた自身やご家族がすべての役割を果たしていただいてからです」

この行政からの回答に驚いたが、昔の話ではなく2017年2月のことである。その後、母親が介護中に転倒しこのままでは命の危険があると判断し、2018年3月、介護保障弁護団の支援を受け提訴に踏み切り、町は当初、重度訪問介護1日9.5時間を打倒と主張したが、小林さんが一人暮らしを始めることを受け、一転して24時間介護を信濃町は認め訴訟は終結し、小林さんはヘルパーの支援を受け自立生活を送られている。

菅総理の言う「自助」の強調がどれほどの抑圧と生存権の侵害を強いるのか、改めて強く感じるとともに、私たちが弁護団の支援を受け取り組む「普通に暮らしたい」を求める介護保障運動の必要性を感じた。

 

◆「理由付記裁判」判決を受けての取組み

昨年10月22日、兵庫県の裁決を取り消す原告勝訴の判決を受け、11月初旬に兵庫県に対して緊急要望書を提出、しかし県は私たちへの回答を拒んだ。しかしその後原告代理人からの「審理再開」申し入れを行い、兵庫県として不服審査の審理再開を決め、3月5日、下記の凪さん自身により口頭意見陳述が行われ、代理人弁護士から神戸市に対して質疑、今後の審査に関すること等、意見が述べられました。

詳しい報告は次号で行いますが、兵庫県は不服審査会で拙速な裁決を出すことなく、最低限、本人が申請する支給量を認めないことは過去の裁判判例にのっとり「一部拒否処分」であり、拒否する理由をきちんと付記することを他自治体と同様、認めるよう、私たちは求めます。

 

◆  口頭意見陳述書              2020年3月5日

凪 裕之

私は、2016年、実際の介護を使っている時間より、この審査請求の対象となる神戸市の重度訪問介護の決定時間が月200時間弱足りなかった。以後、神戸市は外出する場合を加えた時間は認めたが、現在でも依然100数十時間以上足りない生活が続いている。例えば、深夜の時間や昼間での在宅中の重度訪問介護が認められていないままである。夜間の寝ている時間帯のいつ起こるかわからない介護(体温調整、トイレ、寝返り、リモコン操作など)を時間を区切っての巡回の形での支給決定になっているが、現実に毎晩就寝中にヘルパーが何度も私の家に出入りすることはできない。そんな事業所もない。遅くに帰ってきて、入浴や家事、就寝前の様々な整理や片付けなどで深夜の介護も大きくずれ込むことが実際に多い。

また当初、就寝中などにヘルパーがいなかった時間にお漏らしをしたり、エアコンが操作できずに待っていたことがあった。その翌日はほとんど何も活動ができなかった。

また、昼間の在宅中の介護は、外出先での介護と移動以外は、ほとんど介護内容が同じである。むしろ、在宅中の方が外出時と別の介護が必要で、必要なものを家のあちこちから手元にとってもらったり、整理してもらったり、代筆や様々な機器の操作に介護が必要である。家にいてもトイレに行きたくなったり、喉も渇く。寒くもなり暑くもなる。体調や体位も調整しなければならない。介護なしではどうしようもできない。そんな時間が、依然認められていない。外出は認められるのに、家にいるとその時間が抜かれてしまう。足りない時間は十分でない生計の切り崩しも含めて制度外介護を受けた生活を現在も続けている。審査請求をした当時、事業所から1日当たり2時間の協力(ボランティアでの支援)をもらいながら、なおかつ私自身でも知人にボランティアをお願いし、その上に月数万円から10万円ほどの自己負担があった。

そこで不服を県に審査請求したが、棄却、裁判を経て、再度の審査請求になった。すでに4年以上になる、長く待ったが、少しでも早く私の求める支給量により近づくために審査請求している。そして、私が702時間の支給量が必要だと言っているのに、なぜ507.5時間しか神戸市が認められないなのか、それに神戸市は理由を言わなかったこともおかしいと主張した。しかし、県はそれに触れず棄却。裁判の途中で県は職権で一度出した裁決を取り消し、再び棄却。県は私の求めは「勘案事項の一つ」にすぎず、処分は私の求めの一部拒否処分に当たらず、『違法とすることはできない』」とした。神戸地裁判決は県の再度の裁決も棄却した。私は、2016年に審査請求を行い、最初の裁決まで2年もかかった。その間に今日と同じように口頭意見陳述も行ったが、最初の県の裁決書には陳述や請求内容が神戸市の弁明とその結論がほとんどだった。神戸市の処分に理由付記がなかったことに何も触れていなかった。裁判が始まって、急に県は理由付記の判断だけ加えて職権で一旦取り消し、再度の棄却採決をした。長く待って、本当に何を審理したのかわからない審査、次は慌てて職権での再裁決である。県はどういうふうに私の審査請求を扱っているのか、疑問を感じざるを得ない。

そんな中でも私の重度訪問介護と制度外の介護を私の懐事情ややむを得ず行っている生活介護などで制限された生活が続いている。私の生活は切り刻まれた時間の重度訪問介護だが、生活介護以外のほとんどの時間に介護をつけて生活を続けている。理由も記さず神戸市が私の求めている時間より少ない決定が続いていては、今後どうしていいかわからない。私は好んで介護をつけて生活しているわけでなく、極端な介護時間を求めているわけでもない。本当に必要だからである。私の求めている支給量や神戸市の理由が記されないことをおかしいと言うことさえも、ただ「理由がない」とだけで棄却するのは納得できない。私が請求したのと違う結果が出て、理由がない、それで私はどうなるのでしょうか。私はどうにもならないから審査請求をした。行政の都合でなく、私の介護の必要性や生活実態を十分に汲んで審査もやり直してもらいたい。急いでいることに変わりがないが、今度こそ誠意ある審査を行ってもらいたい。

【障害者の介護保障を考える会 例会のご案内】

日時:4月11日(日)午後1時30分~

場所:神戸市障害者福祉センター 会議室BとC

« »