人権シンポジウム

【報告】  2020年度 障問連人権シンポジウム コロナ禍でマイノリティがどんな困難を強いられたか

障問連事務局

 

1月30日午後、総会後に同じく神戸市勤労会館において、表記をテーマに人権シンポジウムを開催しました。80人定員の会議室に参加は20人弱。距離を十分に保ち消毒液も受付に置き、感染予防に留意して開催しました。またオンラインを活用しましたがZOOM設定、カメラ等の機材については部落解放同盟兵庫県連の事務局の皆さん、特に今西さんに大変お世話になりました。ありがとうございました。

シンポジウムは野橋事務局次長の進行により石橋事務局長の開会あいさつの後、4人のシンポジストからの報告・問題提起を受け、質疑応答、別紙のよう介護保障の「理由付記裁判」特別報告が凪裕之さんから提起され、最後に兵庫県教職員組合の西山さんから閉会挨拶をいただきました。以下、報告します。

 

◆就労継続支援B型事業所のコロナ対策について     報告者:太田晃幸(サニーサイド)

太田さんからは「メディア情報による不安」そして不安から事業所内でも考え方やとらえ方により意見が二極化してすれ違いが生じたが、利用者職員含めて「困ったときは助け合おう1」の空気を日々作ってきたこと、「無理に『これが正しい』を全員にあてはめず」、個々の利用者が困らないように訪問したりしてきた事、感染が広がり始めた当初より予想以上の対策や利用者支援に影響が大きかったと語られました。また感染予防について細かく説明され、昨年11月に2名の利用者に陽性者が出たが、すぐに保健所に連絡し検査キットを持ち帰り自分たちで検査し届け結果ほかの利用者職員は陰性であったこと、そして日々の感染予防をしっかりしていれば「濃厚接触者該当なし」と保健所からも結果が通知され、日々の取り組みの重要さ、いざという時に困らない「事業所としての対応」を利用者やスタッフに知らせておく大切さが報告されました。

 

◆障害当事者の立場から              報告者:野橋順子

① 緊急事態宣言の時に作業所、生活介護などが機能しなくなり障害者が行き場を失った。

② ヘルプを付けて外出するのが難しくなった。

③ 自分やヘルパーがいつコロナにかかるかわからない不安が大きかった。コロナにかかればヘルパーに来てもらえず、自分の自立生活の崩壊の危機を感じて常に緊張感があった。

④ 自分がコロナにかかるとヘルパーにも感染の可能性が出て、そのヘルパーが入っている他の障害者にも感染の可能性が出てくるので、全体的に迷惑をかけてしまう。自分一人の問題ではなくて他の障害者の自立生活(感染による介護者不足)にも影響が出てしまう。

⑤ コロナではなく障害者が病気などで入院した場合、介護者を付けることができない。重度障害者の人は自分で意思を看護師などに伝えるのは困難である。介護指示ができず、実際に困ったケースがあった。大きい問題であると思う。実際に障害者が介護者をつけれなくて指示ができず体が衰弱していき、そのせいかどうかは断言できないがお亡くなりになったケースがある。是非、この問題はみんなで交渉していき改善していきたい。

⑥ コロナでマスク着用を強要されていて、マスクをつけられない知的障害者もいる。障害状況を社会に理解してもらうのが難しい。マスクを着けていないと周りから嫌な顔で見られることがある。

⑦ コロナによるマスク不足など必要な物品の情報が聴覚障害者の人にはわからないことが多い。また、視覚障害者の人は外出先にある消毒や検温の位置が分からず困っていたり知的障害者の人は買い物をするときに支払いがキャッシュレスや手渡し不可になり様々な弊害が出ている。

コロナ禍で障害者が安心して生活していくために万が一陽性になった時のシュミレーションを考える。重度障害者が入院した後のことを考える。社会から障害者に対して差別的な視線にどう向き合うかを考える。・・・などを一人で考えるのは大変なので、是非みんなで考えていきたい。

以上、野橋さんから報告され、最後に「最近の感染拡大で心配になり保健所に電話相談したら、現在は入院そのものがむずかしいとの返事だった。県交渉で兵庫県は『原則入院』と回答したが、状況が変わっている。県にも再度確認したい」と報告されました。

 

◆被差別部落の状況と課題       報告者:北川真児(部落解放同盟兵庫県連合会)

北川さんからは、昨年5月に「部落解放・人権研究所」により「コロナ差別を考える」シンポジウムが開催され全国各地からコロナ禍においての差別の実態、インターネット上で頻発する差別書き込みなどが紹介されました。また解放同盟中央本部としても6月に全国的なアンケート調査が32都府県で行われ、内容は、県内85か所の隣保館の運営状況、特別定額給付金の申請やサポート状況など。「マスクをせずに走っている者がいる。そんなことをするのはここの者やろう」「休業拒否するパチンコ屋は部落か朝鮮」等の差別事例も紹介されました。

見えてきた課題として、ネット社会での悪質な差別的な書き込みや動画がコロナ禍でより強まっていること、元々ある差別が悪質に顕在化していること、そしてコロナに係る助成や様々な情報や手続きがネットで多く行われるため「情報格差」(デジタルバイド)、部落内の高齢者には非識字者もおり問題は大きいこと、母子家庭の経済格差がコロナ禍で深刻になっていること、そして「自粛警察」が問題になっているが、かつてのHIVや「無らい県運動」が行われ過酷な差別や強制隔離を強いられたハンセン病問題など過去の反省から学ぶべきことが大きい、最後に「コロナ差別」のみの対策では問題の本質は解決されない、元々ある差別や格差こそ解決していかなければならないと話されました。

 

◆コロナと在日朝鮮人問題        報告者:朴 勇黙(神戸朝鮮高級学校教員)

最初に自己紹介として在日3世の特別永住者であること、そして朝鮮高級学校は創立70周年を迎え、「われらの学校 ウリハッキョ」と紹介されました。コロナ禍では4月から2か月の休校を余儀なくされたが、生徒ごとに課題を作り家にポスティングしたり、休校中に校舎の補修やオンラインの機能を教員自らが行われたこと、そしてマスクや感染予防の物品は多くの在日同胞から届けられたこと、厳しい環境の下でも、みんなで支えて行こう、まさに「ウリハッキョ」として誇りをもって存在していることが改めて感じました。しかし日本の敗戦後、自ら立ち上げられた学校が米軍占領下でGHQにより閉鎖命令が出され、このシンポジウムを開催している神戸で阪神教育闘争として激しく闘われた歴史を思い、私は朴さんの話を聞いていた。

そして「朝鮮学校が抱えている問題」として、「高校無償化」「幼保無償化」からの排除、その上にコロナ禍において下記の新聞報道にあるよう「埼玉朝鮮幼稚園へのマスク支給問題」「朝鮮大学校への給付金支給問題」、そしてユニクロが各学校に対してマスクを寄付するのに申し込んだところ対象外とされたことが話されました。

 

〇署名のご協力をお願いします

最後に署名のお願いが朴さんから呼びかけられた。

「日本政府は幼保無償化制度の対象外とした施設の一部を調査し、2021年度から幼児教育類似施設に関する『新たな支援策』を実施しようとしています。しかし朝鮮幼稚園が対象外とされるかもしれません」と朴さんは語り、「すべての外国人学校幼稚園も対象にするよう求める」署名に協力いただきたいと呼びかけられました。

私は、かつて関わった障害年金の国籍条項問題と重なった。国籍以外にも学生や主婦時に加入していなかったため無年金になった障害者もおり、無年金障害者問題が国会でも取り上げられ救済制度ができた。しかし、その制度からも再び外国人は排除された、それと重ねて朴さんの話を聞いた。署名用紙を同封しています。ぜひご協力をお願いいたします。返送先は下記。

〒655-0017

神戸市垂水区上高丸1-5-1 神戸朝鮮高級学校 朴勇黙 宛

 

《新聞報道より》

■朝鮮学校にマスク配布せず さいたま市が対象から除外 (神奈川新聞 2020年3/12)

 

新型コロナウイルスの感染を防ぐため、幼稚園などの子ども関連施設に備蓄のマスクを配布しているさいたま市が、埼玉朝鮮初中級学校(同市大宮区)の付属幼稚園を配布対象から外していることが12日、分かった。同園関係者らは差別政策を直ちに撤回し、対象に含むよう求めているが、市は決定を変更していない。
市が幼稚園や保育所、放課後児童クラブなどの職員用にマスクの配布を始めたのは9日。朴洋子園長が10日に問い合わせたところ、「市が指導監督する施設が対象なので朝鮮学校は該当しない」と回答した。朴園長や保護者らは11日、市を訪れ抗議文を提出。平等な扱いを求めたのに対し、子ども未来局の局長は「検討する」と応じたものの、決定の撤回と変更は明言しなかった。
市が対象を指導監督する施設に限った理由について担当者は「不適切に使用された場合、指導監督できないため」「(転売を含む)不適切使用の恐れがある」と園側に説明。配布先の施設にマスクの使用状況を確認することはないとしながら、朝鮮学校に対してのみ根拠もなく疑念を向け、排除の理由にする差別に園側が抗議したところ、市は「担当者の発言は不適切だった」と謝罪した。
同校の朴成文教務主任は「無償化除外や補助金停止など朝鮮学校の不当な排除は以前からだが、子どもの命に直接関わる問題でも差別するとは」と言葉を失う。検討結果の説明を求めて12日も市を訪れた朴園長は「朝鮮学校の子どもはウイルスに感染しても構わないと言っているのと同じ。緊急を要するのに決定を変えない市の姿勢は理解できない」と話した。

 

 

■「朝鮮大学校に学生支援給付金を」同志社大教授ら文科省に要望書  京都新聞2020年11/30

 

新型コロナウイルスの影響で困窮する学生向けに政府が5月に創設した「学生支援緊急給付金」の対象に朝鮮大学校(東京都)が含まれていないことを受け、公平な支給を求める大学教職員の声明を取りまとめた同志社大の板垣竜太教授が30日、国会内で文科省担当者に要請書を手渡した。

この制度は学びの継続のため、アルバイト収入の激減や実家の家計急変があった学生に最大で20万円を給付する。国公私立大や短期大、専門学校のほか日本語教育機関や外国大学の日本校も対象としているが、各種学校の朝鮮大学校に関しては認められていない。

声明では、大学校の卒業生は国公私立大の大学院から入学資格が認められるなど高等教育機関として社会的に認知されており、「公平性を欠いた政府の恣意的な線引き」などと批判。呼び掛け人に京都大の山極寿一名誉教授や駒込武教授らが名を連ね、賛同人は11月27日時点で709人に達した。

衆院議員会館であった立憲民主党の会合にオンラインで参加した朝鮮大学校の女子学生は「連帯が必要とされる新型コロナの中で差別を受け、悲しかった。日本社会のどんな問題につながっているか、共に向き合って考えて」と訴えた。朝鮮近現代史に詳しい板垣教授は「政府与党は冷戦期の治安管理的な思考や現在の外交的思考で考えるのでなく、人道的な見地、歴史的な実態と実績に即した見地から対象に含めてほしい」と呼び掛けた。

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