介護保障

2011年3月 神戸市への要望書

2011年3月10日

神戸市長 矢田立郎 様

要望書

障害者問題を考える兵庫県連絡会議

代表  福永年久

 

障害者福祉向上に向け、日々ご尽力されている事と存じます。2006年障害者自立支援法の施行により、入所施設からの地域移行が初めて声高に謳われ、そして現在国において、(仮称)総合福祉法制定にむけた審議内容を見れば、ますます障害者の地域生活が権利として保障される重要性が高まってきています。

そのような情勢を踏まえ、神戸市においても今後ますます障害者の地域生活支援施策の拡充が求められますが、今回、要望に至る大きな契機になったのが、垂水区在住のIさんの事例です。昨年12月2日のオールラウンド交渉でも、Iさん自ら参加され訴えられました。障問連事務局としても個別に相談に乗ってきましたが、あまりの垂水区役所の対応の悪さに問題解決の糸口すらなく、Iさんの問題が放置されかねないと判断し、交渉の場で提起しました。その経緯の中で、垂水区がIさんの要望や実情を聞かず、ガイドラインを盾にとったことにより、問題解決の入口すら閉ざす事態となっていると私たちは判断せざるを得ません。よって、下記のようにガイドラインの問題、そしてガイドラインの運用について、下記のように質問ならびに要望いたします。

真摯に検討していただき、話し合いの場をもって回答されるようお願いします。

 

(1)  訪問系サービスの「障害福祉サービスの標準支給量」(以下ガイドライン)について

①    昨年12月2日に市民福祉交流センターにて行われた、障問連と神戸市関係部局とのオールラウンド交渉において、表記のガイドラインについて議論されました。障問連から、ガイドラインの具体的な支給量の根拠について説明を求めたところ、今すぐ回答できないと言われ、持ちこされています。改めてガイドラインが決定された経緯について説明して下さい。

②    ガイドラインには、「単身世帯1」「単身世帯2」「同居世帯」により区分されています。長年にわたる障害者施策において家族に保護責任を課せられ続けた事により、親子心中事件や障害者が親によって命を絶たれるという痛ましい事件が神戸市でもありました。その障害による生活上の困難は社会が責任を持つべきだという認識が普及する今日、また支援費制度・自立支援法により当事者主体、地域生活が謳われる今日において、なぜ家族に責任を課せられなければならないのでしょうか。同居世帯の有無により区分する事は、障害者の自己決定権・当事者主体の理念を侵害するものであると私たちは考えます。家族に介護を求めるかどうかは、その障害者自身が決める事であり、また家族(介護者)の状況は勘案事項として聞き取れば十分です。ガイドライン上の世帯毎の区分を廃止して下さい。

③    単身世帯の重度訪問介護の利用者で、いわゆる最重度(区分6-2)の障害者の標準支給時間が279時間とされています。そして(区分6-2)は、「重度障害者等包括支援対象者」と記されていますが、「重度障害者等包括支援対象」の利用者像とは、「常時介護を必要とする者」であり、「その介護の必要の程度が著しく高い者」であり、医療的ケア等が必要、または最重度の知的障害も重複する障害者とされています。このような障害者が一人で暮らしていても、標準的な支給量がなぜ279時間、一日平均約9時間の介護保障なのか、私たちには理解できません。対象となる方が279時間で、どうやって生活できるのか、ご説明ください。

④    単身世帯の重度訪問介護の利用者(区分6)で、(区分6-2)以外の者が(区分6-1)とされ、186時間が標準支給量とされています。しかし国が定める重度訪問介護の利用者像とは、「重度の肢体不自由者であって、常時介護を要する者」が基本であり、しかも区分6に該当する者は、「歩行」「移乗「排尿」「排便」等に支援がなければ困難な人です。そのような重度障害者が一日平均約6時間で、どうやって生活できるのか、ご説明ください。

⑤    重度訪問介護には、国の通達においても、「見守り」も介護であると明記されています。まさに「身体介護」「家事援助」「移動支援」と言う、個別の介護ニーズとは異なり、「見守り」部分が必要であるからこそ、重度訪問介護は、通常「短時間利用」ではなく「(概ね)一回3時間以上」という滞在型の長時間介護を基本としているのです。神戸市のガイドラインを見るならば、この「見守り」部分を考慮に入れていないとしか思えません。「見守り」介護について神戸市の見解をお示しください。

 

(2)  ガイドラインの運用、ならびに区役所の対応について

①    各区役所において、窓口で当事者・家族に対応する担当職員の認識も含め、どのようにガイドラインを運用していくのかは大きな課題です。また区役所担当者からは、「ガイドラインの1.5倍までは区役所判断で可能、それ以上は審査会に諮る事が必要」と聞きますが、この根拠もあわせ、各区役所担当者に、ガイドラインの運用をどのように周知されているのかご説明下さい。

②    また、各区役所担当者に配布しているガイドラインの具体的な運用に関するマニュアルのような資料があればお示しください。

③    ガイドラインの前文には、「・・・本ガイドラインは標準的な時間数であり、ガイドラインの時間数を支給決定するものではありません」とされています。この解釈について、毎年、貴局と私たちとの間で、「ガイドラインはあくまで目安」、「個々の状況に応じて話し合いに応じる」と確認してきました。しかし、今回の垂水区役所の対応を見れば、ガイドラインが実質上限であるかのように認識されており、私達との確認事項が全く機能していません。改めて、この確認事項の意味について貴局の詳細な見解をお示ししていただくとともに、各区役所に対し今後どのように具体的に周知徹底されるのか、ご回答下さい。

④    また、私たちに関わる障害者の支給量を見れば、ガイドラインと大きく乖離している事は明らかです。このような現状に対する貴局の見解をお示し下さい。

 

(3)  上記、(1)(2)での協議を踏まえ、障害者が安心して地域生活を送れるために、障害者一人ひとりのニーズに応じ支給量が保障されるよう、私たちは実態に即したガイドラインの見直しを求めます。今回の話し合いの場で貴局と障問連との間で合意に達しなかった場合には、今後ともガイドラインの見直しに向け、継続した協議の場を設けて下さい。

 

以上の要望について、障問連との話し合いの場を設け、ご回答いただくようお願いします。

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