2011年8月 兵庫県教育委員会への要望書
2011年8月8日
兵庫県知事
井戸 敏三様
兵庫県教育委員会
大西 孝様
障害者問題を考える兵庫県連絡会議
代表 福永年久
要 望 書
国会では障害者基本法改正案が衆・参議院で可決されました。この障害者制度改革の流れは、何よりその基調として国連・障害者権利条約の理念、すなわち障害のある人もない人も平等な権利が保障される社会の実現が求められ、どんな障害を持つ人でも地域で生活する権利、同じ場で共に学ぶインクルーシブ教育の実現、その他情報保障、就労保障等、全般にわたって、その権利を保障していく事が求められています。
しかし、兵庫県においては特別支援学校が増加しており、国の制度改革の流れとは逆行する状況にあります。とりわけ私たちや多くの県民の反対にも関らず、阪神間の定時制高校が来春にも募集停止され、新たに設置される多部制単位制高校と同じ敷地内に特別支援学校が設置される事については多くの問題があります。障害者施策の大きな転換を踏まえた、今後の障害児の教育について、改めて、以下要望ならびに質問するものです。
【阪神昆陽特別支援学校(仮称)について】
平成24年度開校予定の阪神昆陽特別支援学校(仮称)は県立阪神昆陽高等学校と同じ敷地内に設置されると聞きます。そして従来以上の交流・共同学習を行う事により、兵庫県教育委員会は「ノーマライゼーションの礎になる学校」と位置付けられていますが、その点について下記の点に回答されるようお願いします。
① 6月末に示された概要には、設置趣旨として、「兵庫県特別支援教育推進計画に基づき・・」とありますが、同計画に具体的には、「高等部を中心に在籍者の増加が著しい阪神地域の規模過大校への対応」とされ、「高等学校との連携」の項に「調査研究協力校」を指定しての「共同学習・施設の活用」とされているだけです。「ノーマライゼーション」と位置付けられるなら、計画全体の基調として「ノーマライゼーションの進展」について位置付け、短期・中長期の具体的な推進の見通しを計画の中で触れるべきではありませんか。改めて兵庫県教育委員会として「ノーマライゼーション」とは何かを答えて下さい。それを進展させるとは、具体的にどういう事なのか述べて下さい。
② 私たちは概要を見る限り、「ノーマライゼーションの礎」とは全く思いません。両校の生徒は同じ校歌を歌うのですか。なぜ玄関は別々にあるのですか。
③ 仮に「ノーマライゼーションの礎」だとするなら、自力通学が可能で、一般就労を目指す「知的」障害児だけに「ノーマライゼーション」が実現されることは、障害種別や能力に基づく差別と言えます。兵庫県教育委員会自らが「礎」とされるなら、今後どのように県下すべての特別支援学校にも「ノーマライゼーション」を実現されるのか、具体的な計画を述べて下さい。
④ これまでも多くの障害児・者が定時制高校で共に学び、現在も宝塚良元校に住田雅清さんが通学しています。これらは「ノーマライゼーション」の実践だとは言えませんか。毎日、机を並べ共に学び生活する事を通じて、しかしそれでも容易ではありませんが、初めて「共に生きる」関係が生まれるのです。分け隔てられた中での「交流」「共同」では、共生の礎にはなり得ません。
⑤ 仮称・阪神昆陽高等学校、同特別支援学校、そして来年度から3年間に限りますが市立伊丹高校の生徒と、同じ敷地内に三つの学校の生徒が存在する事は正常な状態だと考えられますか。元々、旧武庫之荘高校跡地は極めて交通アクセスにおいても悪い条件にあり、経済効率のみを優先した施策であり撤回を求めます。
【今後の施策について】
① 兵庫県教育委員会は、「特別支援学校の希望者が増加している」と昨年度の対話集会で回答されました。なぜ増加しているのか。それは、地域の普通学校に通う事が可能であるとの積極的な広報や普通校で障害児を受け入れるための積極的な条件整備が図られていないと言う、貴局の基本姿勢によるものだと、私たちは認識している。見解を述べられたい。
② 改正障害者基本法には、「年齢・能力に応じ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるよう、障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ・・・」とある。6月16日国会衆議院での質疑に対して文科省副大臣は「可能な限り同じ教室で共に学ぶ事を目指すもの」と答弁している。兵庫県教育委員会として、「共に生きる教育指針」(仮称)を策定して下さい。
③ これ以上、特別支援学校を新設しないでください。そして現在、特別支援学校に在籍する生徒が、居住地の地域の普通学校に通えるための条件整備を具体的に検討して下さい。
④ 特別支援教育においても、ノーマライゼーションを推進するとの決意を兵庫県教育委員会として持たれているなら、「同じ教室で共に学ぶ教育」の実現を目指すために、特別支援教育推進計画を大幅に根本的に見直され、その条件整備等も含めた長期計画策定に向けた検討を開始して下さい。
9月 16, 2011