国/県の制度

【報告】 2020年度第1回 兵庫県障害福祉審議会開催される

障問連事務局

9月18日、中止されていた兵庫県障害福祉審議会が県農業共済会館において開催された。

◆審議会の在り方を問う意見が出される

新型コロナウィルスの関係で第一回が9月にずれ込んだ要因もあるが、今年度のコロナという事態がなかったとしても、そもそも多くの課題を審議会に詰め込んでいるため課題によれば報告のみで毎年ほとんど議論できず、今回、参加した委員から審議会の在り方の改善を求める強い意見も上げられた。具体的には・・・

○「自立支援協議会」(部会として相談支援部会・就労支援部会・強度行動支援部会)

・毎年だが、駆け足の報告だけで終わり全く審議会では議論できない。

・県自立支援協議会を独立して開催すべき。毎年お願いしている。いい加減にして欲しい。

○「差別解消地域支援協議会」

・差別事例が解決したのか、していないのか?どんな課題があるのかの分析が協議会の役割。「障害者委員会」を拡充してきちんと地域協議会として年に複数回開催するべき。

 

◆活発に出された委員からの意見~数値だけでなく実態を! 共生の理念を!

今回の審議会では、「第5期障害福祉推進計画部分の評価・検証」「第6期障害福祉推進計画 骨子案」という、計画改定年である今回のメインテーマに沿って、県事務局からの提案を受けて各委員から意見が多く出された。以下、羅列的ですが紹介します。

・地域移行の数値は出ているが、どこに地域移行したのか? 親もとか?一人暮らしか?65歳以上なら特養か?サ高住か?、地域での共生と言うならどこに移行したのかも併せて表記して欲しい。

・障害児童の分野では放課後デイや児童発達支援のことは出ているが、地域での共生から考えるなら福祉サービスの事だけ書けばよいというものではない。地域の児童館や学童保育、街の公園で一緒に遊ぶとか、福祉サービスと同時に子ども施策の事も表記しないと共生社会の意味がぼやける。

・教育と福祉の連携というが、今回コロナで学校が休校になった。しかし三密の放課後デイに子どもは通っていた。広い学校がなぜ使えないのか。福祉と教育の連携と言うなら、そういうことこそ連携すべき。

・発達障害者の人数がどこにも全く示されていない。卒業してからの出口、企業や一般の仕事にどうつなぐのか、またコロナ下での働き方の問題とか数だけでなく実態を示して欲しい。

 

◆新型コロナウィルスによる計画の変更

「ポストコロナの新しい生活様式を考慮した『障害福祉サービスのあり方』については、前例がない取り組みが求められ、現状では確固たる方向性が見通すことが難しい」との情認識の下、兵庫県として・・・

・「障害福祉推進計画」(主に数値目標/総合支援法を根拠)のみ今回改訂する。

・「障害者福祉計画」(障害者基本法を根拠)は来年度に改訂する。

とし、以下タイムスケジュールが示された。

・2020年10~12月   課題を踏まえた施策の方向性等の整理

・     12月     障害福祉審議会の開催  計画本文案の検討

・2021年2月     コロナ危機を契機とした社会変革政策発表  (→これは一体、何??)

・2021年3~7月    障害審議会の各分科会を開催

・2021年9月     障害福祉審議会の開催(骨子案)

・2021年12月     障害福祉審議会の開催(本文案)

・2022年1~3月    パブリックコメント・政策会議、計画策定

障問連としても来年度も引き続き特別委員として参画していきます。

◆障害の「害」の字の表記について

以上の様に課題が満載の中で、なぜか「害」の字の表記に関する意見交換が行われ、結論としては「害」のままになった。以下、障問連からの特別委員として出席した凪裕之さんの意見を紹介する。

 

障害の「害」の字は、「害」の漢字のままであるべきです。

障害とは、1980年代から今日にかけて個人(医学モデル)から社会モデルへの転換の意識が少しずつ変わってきました。障害は私たち自身の個人の問題ではなく、社会環境の側の様々な障壁があるからこそ、私たちを「障害者」にしているという意見です。

いくつかの自治体では平仮名表記が多くなってきました。しかし、負のイメージがなくなる反面、これでは社会や環境の問題を曖昧にしてしまう恐れがあります。

また、「碍」の字は、戦前に多く使われ、仏教用語で、社会の問題を問わずに個人の属性を強調することになります。悪または負のイメージでしかありません。社会モデル以前のまだ根深くある個人(医学)モデルのさらに前に使われていた時代に逆行した字であることから賛成できません。

障害者として生きることは、自らを否定することなく、障害を理由として生きることを制限されている社会こそが、まだまだ変えていく、変わっていくべきだと考え、「害」の字だと考えます。

なお、この字を考える議論は以前に審議会でもさせたと思います。今、この字の問題以外に、限られた時間でもっと話し合うべきで、例えばコロナの問題にしても他の直接障害者が日常の具体的な施策に関わってくる計画などに時間をかけるべきだと考えます。そっちの方にできるだけ時間を費やしてください。

 

事前に各委員から提出された意見でも、「害」のままで良いとの意見が多く出されていた。

・民主党政権時代の制度改革推進会議でも当事者を中心に9時間議論されたが「害」のままで良いとなった。表記問題の中に健常者の傲慢さを感じる。

・漢字にしようがひらがなにしようが言葉の遊びに過ぎない。社会への警鐘の意味も込めて最後まで漢字を使い続けると思う。

・「障害」の文字だけを変えても問題解決はしません。まだまだ社会の中に差別や偏見、制度・施策の不備があり当事者の当たり前の生活がしづらいということです。今しなければならないことは、社会の側の障壁をなくし、当たり前の生活ができるような施策作りや教育の充実、啓発がもっと必要だと思います。

 

◆審議会終了後に凪特別委員(障問連)が県に提出した意見書

【地域移行】・・・成果指標で、新たに相談支援体制の充実強化、サービスの質の向上とあり、また活動指標で相談支援実施数や人材育成件数があります。相談支援体制強化でどれだけの施設や病院からの地域移行がどのようになされたかなど質の向上を具体的に踏まえた上での指標も出してほしいです。ただ相談を受けたではなく、相談支援によって本当に本人の望む生活になっているかの指標や検証も大切だと思います。第5期実績で地域移行と施設入所者削減は鈍化傾向ですが、6期計画の新たな指標でしっかり評価しながら数字の目標も改めて見直してください。相談支援の質を含む内容の強化、具体的に詳しく示してほしいです。

 

【教育】・・・分科会議論概要での「特別支援学校の問題、共生社会、エンパワーメント、障害者への理解促進、バリアフリー」の項目などに出てくる内容と関係してきますが、福祉の計画を考えていく上で教育の課題が欠かせません。学校教育で、特別支援学校を増やすのでなく、地域の学校で障害児も教育を受けるという本来のインクルーシブ教育にたって支援のあり方を福祉計画にきちんと盛り込むべきです。障害者も健常者も上辺だけでなく日常から関わる、その最初が教育で、特別支援学校だけで、障害者と健常者が互いに出会わずに大人になっていく社会は、やはりおかしい。本来同じ学校の教室で障害のあるなし関係なく共に学ぶ場の中で学校生活を送ることが大前提で、共に学ぶ場でどういう支援が必要かが本来の特別支援教育ではないでしょうか。計画では、その部分が全く抜けています。健常者と同じ学校で共に学ぶことで、障害者が上辺だけでなく色んな子どもに揉まれ、自身のエンパワーメントにもつながり、さらにバリアフリー、地域福祉もインクルーシブな教育があってこそ、より具体的に知恵も出てきて柔軟にできていく近道になると思います。私のように車いすで見た目でわかる障害者だけでなく、色んな障害者と幼い頃から一緒に生きていることがもっと必要であり、共に学ぶ教育が基本だと盛り込むべきだと考えます。教育委員会との調整も必要になりますが、少なくとも、特別支援学校のことだけでなく、地域の学校に障害者が通う場合、通学や介助支援などどういう支援や合理的配慮が必要かを計画に盛り込むべきだと思います。

 

【知的障害者の地域生活】・・・推進計画にも関連してきますが、知的障害者などの地域での一人暮らしはまだまだ進んでいません。重度訪問介護の対象者を国で拡大したにも関わらず、各市町で知的障害者や精神障害者の人への広がりがまだまだな状況です。グループホームのサテライト型などで一人暮らしへ結びつける取り組みも必要ですが、制限がありまだまだです。重度の障害者の場合、入所施設から外出することさえ、多くの市町で壁があります。

なぜ、知的障害者の一人暮らしが、地域生活が広がらないのでしょうか?当事者や家族もなかなかそのことにイメージしにくいと思いますが、相談支援など支援の側も、市町も知的障害者など重度の人の一人暮らしのイメージが十分にできていないように思います。本人の意思決定のあり方も、成年後見人などが本当に本人の意向を理解しているのか疑問です。当事者の考えを踏まえ、知的障害者の一人暮らしなど地域生活の多様なあり方、支援のイメージを計画の中に盛り込んでください。

 

【新型コロナ関連】・・・障害者本人がPCR検査の早期で簡易に実施できないでしょうか?車いすの場合、検査でタクシーによる乗車拒否があり検査を受けられませんでした。後日自宅で検査ができたものの、時間がかかるのは問題です。介護を使って日々生活しているとどうしても接触が多く、障害者本人のみならず、家族、介護者、関係事業所などの速やかな検査が必要です。

介護が必要な障害者が入院した場合(本人がコロナとは関係ない場合も、介護を病院が断るケースがある)、コミュニケーションが特定の支援者でないと難しい場合はどうなるのか?どのような想定ができるのでしょうか?コロナ感染でないにしろ、重度障害者が入院、病院側の考えでコロナ禍で介護者が病院に入るのが禁止で、本人の症状が悪化したケースがありました。病院の問題ですが、介護が必要な障害者が入院した時に、本当に助かるのか不安になります。

また、強い行動をする障害者の人が感染した場合、グループホームの他の人の感染拡大防止、感染で本人が入院などが必要な場合などの対応の仕方はあるのでしょうか?

 

【差別解消】・・・全国的にもグループホーム建設の際、地域住民の反対で断念したケースが多発しています。兵庫県の差別解消相談センターには、このようなケースに対応できるのでしょうか?できるとすれば、当事者間任せにするのか、どんな方法でどのような解決策が考えられるのでしょうか?また、できないことがあるとすれば、それは何でしょうか?

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