事業所交流会

【事業所交流会】 新型コロナウイルスに関する事業所アンケート結果

障問連事務局

 

5/8に事業所交流会事務局から、新型コロナウイルスに関する事業所アンケートを送付させていただきました。28事業所に送付し、7/3時点で22の事業所から回答いただきました。ニュース6月号に速報版として選択回答の数値を掲載させていただきましたが、今回、完成版を掲載いたします。障問連事務局として、この結果をもとに兵庫県や神戸市に対する要望内容を検討していきたいと思います。

 

【感染予防の物品等に関する課題】

・マスク 不足7  やや不足9  足りている6

・消毒液 不足6  やや不足9(次亜塩素酸水を法人内で配布1)  足りている7

(意見)次亜塩素酸水の効果について市に問い合わせても不明瞭な回答

(課題)→ 4月末~5月初旬の状況として・・・22事業所中、約7割の事業所が不足している

 

【通所事業の課題】

・通常通り実施 6 ・一部の利用者の通所継続8 ・訪問して支援し通所カウント2 ・閉所 1

・工賃について

従来通り支給4   補填して支給5   減給して支給2

 

【グループホームの課題】

・通常通り実施 6  ・一部の利用者の利用継続 2

 

【訪問系サービス/移動支援の課題】

・通常通り実施 8

・一部の利用者の利用継続 6

・全面的に中止(移動支援) 2

・訪問系の事業者の休業により、日中活動の職員が居宅、移動の支援をしている

 

【職員、ヘルパーの課題】

・感染予防等に関わり休業されている職員(ヘルパー含)の状況

なし9   あり11(数名、1人1日ずつ)   変則勤務1    無回答1

・関係者での感染等はありましたか?

なし20  不明1  無回答1

(意見記述):

「関係者の別のバイト先で感染者→休業利用者宅に出入りする他業種の人に濃厚接触者と接触した人がいた疑コロナ」

「別居家族が感染」

「PCR検査が受けられない」

「役員の別居親族に感染者」

「ヘルパーの家族と接触のあった人がPCR検査を受け陰性」

 

・もし今後あった場合の対処方法を用意されていますか?

ある10   なし2    考えている6    無回答4

・休業している職員・ヘルパーへの休業保障について

10割7  8割2  6割3  「正職員10割・ヘルパー8割1」 「正職員有給、ヘルパー6割1」

学校等休業助成金を使用2  有給+特別休暇1  (検討中2/未定2 無回答2  しない1)

・雇用調整助成金の活用について

予定なし9   活用予定7   検討中2   無回答3

(課題)休業職員のいる事業所は半数だが、雇用調整助成金申請が困難で休業保障に苦慮している実態がある

 

【事業運営に関する課題】

・オンラインミーティング等を活用

していない13    している9

(意見・課題)・・・聴覚障害職員への情報保障

 

【事業経営の課題】

・訪問系では、重度訪問介護関係は10~15%減移動支援では4割~5割の収入減というところが多かった。

・重訪利用者は「ヘルパーを使わざるを得ない」が、移動支援はキャンセルが多くなったと考えられます。

通所系はまちまちで、ほとんど減収なしのところから、15%減のところまであります。

・なかでも就労系は、事業所での生産活動の売り上げが2割減からほぼゼロのところまであります。

児童デイサービスでも3割~4割の収入減。

グループホームも減収2割強です。

 

〈主な意見~行政や国に関する要望~〉

【感染予防の物品等に関する課題】

・マスクやアルコール消毒液、ハンドソープ、防護服、キッチンペーパー、介護用エプロンは、備蓄用として行政で保管、優先的に配布してほしい。

・高齢者、障害者の感染リスクが高いことを理解していないのではないか?常に濃厚接触状態なのが想像できないのか?感染予防を理解しづらい人もいることがわからないのか?

・福祉サービス担当課の対応がまだ決まっていない段階で通知がでてしまうので、現場が混乱している。

・神戸市に消毒液配布の希望を出したが、「訪問介護サービスは対象にならない」とされた。しかし、事務所の感染予防も必要である。

・買い占め予防のアピールを国として、しっかり社会の人々に、伝えてほしい。

・厚労省の通知は大量過ぎるし、ベストを指示するものではあるのだろうが、到底実践できるものではない。…しかし連日荒れたり、飛び出していく利用者に対応している私たち事業所においては現実的ではない。頻回の室内消毒、手指の消毒、換気などを行いつつ、感染リスクへの不安を抱えながら活動するしかない。感染予防のツールの支給もあってしかるべき

 

【通所事業の課題】

・今後在宅勤務や在宅待機、自粛が進めば、日中支援が必要になります。本来無報酬になっている日中時間帯の補償が必要。

・現状のコロナ対策の運用がどこまで他市と違いがあるのか不安。

・緊急事態なので電話対応などせずとも、前年度の利用実績に照らし合わせて支給してほしい。

・児童デイサービスに公的補償をお願いしたい。

・工賃に対する補償。

・就労A型と違い、就労B型だけ雇用調整助成金等の対象にならない。

・当事者ないしはその家族が感染した場合の対策がまだ不十分。感染した場合、神戸市ではしあわせの村内に場は確保したが、そこまでの搬送をどうするのか、誰が介助を担うのか、未確定(未確定であることは市に確認済み)。

 

【グループホームの課題】

・グループホーム内で感染者が発生した場合の対応

 

【訪問系サービス/移動支援の課題】

・移動支援での自宅内支援は大丈夫とのことだが、行動援護ではできないと言われています(神戸市)。国の制度のためとの理解はありますが、同じ外出支援に違いはないので、許可していただきたい

・移動支援の外出自粛要請の中で,外出範囲等のガイドライン示してほしい。

・知的障害者の人も楽しめる場所が欲しい。生活のバランスが狂い、ストレスがたまり体調を崩す当事者も出てきている

・コロナ感染・感染疑いのある人の自宅待機を指示するが、入院までの介護は必要だが、そこへの配慮は全くないのはなぜか?

・感染疑われる人が生じた場合、感染拡大防止の為、その方に関わったヘルパーは他の方のヘルプにも入れない、単身者でなければ家にも帰れない、交通機関利用もできない。

・万が一事業所内でコロナ発生時に、利用者の居宅への派遣継続が難しくなると思う。その時に速やかに当施設の利用者の引受先などの紹介などの受け皿の確保を準備してほしい。

・(神戸市では)ガイドの室内利用は事前に区役所に連絡必要とのことで当日に柔軟に対応しにくい印象あり。

・デイ通所1本化(複数使用禁止)に伴うヘルプ増量をスムーズに行ってほしい

・知的と身体の重複重度障害者(区分6)の利用者が肺炎の症状で入院。誤嚥性肺炎と診断されたものの、コロナ感染の検査はしてもらえず。重症化の危険のある重度障害者は、本人や関係者の希望あれば検査をすべきではないのか。

 

【職員、ヘルパーの課題】

・医療の話はよく出ていますが、介護の現場も追い込まれてきているのではないかと思います。介護の現場はテレワーク出来ないので、精神的な負担も含めたケアが必要ではないでしょうか。事業所の救済措置も検討をしていただきたい。

・感染予防策を徹底とか、患者に対しては特定の職員、隔離できる環境設定など書いてあるが、平時からそれを整えられるだけの制度設計と予算をつけてほしい。

・感染のリスクに向き合いながら介助にあたっているヘルパーさんたちにも一時金支給して欲しい。

・経験者なら無資格でもいいとしているが終息後の保障の道筋を示してほしい。

・早期検査の実現。発熱後、陽性とわかるまでの間にタイムラグがあり、結局検査してもらえないことのほうが多い。濃厚接触者の特定も遅れ、感染拡大の危険を感じる。しかし先回りして濃厚接触者を自主的に休業させる人的余裕がない。

 

【事業運営に関する課題】

・生活介護事業所は、利用者が来なくても電話等で支援した場合は利用とみなされるけれど、グループホームは利用者が来ないと利用にならないので大きく減収してしまう

・早急に神戸市と同様に一時金の給付を至急に要望して欲しい。その後事業規模等を勘案した第二段の給付を要望して欲しい。

・日によって活動時間が異なる登録ヘルパーでもそれぞれの日額を算出し、補償はその日額の6割を超えていないと支払っても助成金対象にはならない。計算が煩雑である。

・赤字続きの中で、改善努力をしてきたが、コロナの影響で更に事業継続の不安は増。

・グループホーム利用者や知的障がいの人たちは、休日等過ごし方に移動支援しか使える福祉サービスを持っていない人が多く、コロナ対策の外出自粛で出かけられず、その間居宅で見守りなどをしても、請求することが出来ないので、今の間は移動しなくてもサービスを提供したとして請求させてほしい。

・実際にコロナ感染者が出た場合、(利用者・介助者どちらの場合でも)介護崩壊がおきないか心配(事業崩壊)。

・県下では数日新規感染者は出ていませんが、自粛要請が解除された5月25日以降、人の移動は明らかに増えています。2週間の潜伏期間が過ぎた後の6月中旬以降の感染が増えた場合、また秋にも予想される第二波・第三波が発生した場合、防護ツールが不十分なままでは、当事業所でも感染者が出ることは想定しておかねばならず、その際、離職する職員が出る可能性があります。その際、事業を同程度に続けることは困難になることを恐れます。4月当初は、実際、倒産?も頭をよぎりました。

 

【事業経営の課題】

・年度初めに予算申請し、2回に分けて受け取り、年度末実績に応じて最終調整する補助金事業なので、月ごとの減額や前年度同月との比較はできない。が、現在自粛している利用者が最終的に実績に上げられない予想を立てると、当初予算と比べて年間およそ20万の減額。補助金事業(やりたかったらやれば、補助してあげるから的なやつ)で年800~900万規模なので、毎年人件費だけで赤字になる金額。寄付金や基金を投じてきたが、今年度で底をつく予定(地域活動支援センター)。

・移動支援のキャンセルが大きな収入減で、その他は大きくありません。通所の利用自粛もありますが、可能な限り在宅支援で対応はしています。

・法人としては、通所で対応できない利用者はヘルパー派遣で対応する等の支援体制があるので、請求額的には大きなダメージにはなっていません。

・扱っている商品が急ぎ必要とするような生活必需品ではないものが中心であるので、購買意欲が大きく低下しているものと思われる。請負の作業は、業務発注元の営業自粛等により、弊事業所もその影響を受けた。今後のコロナ感染第2波、第3波と来た時、売り上げ確保がさらに難しくなることが予想される。

・食パンなどの製造は3月初頭からストップしており、ほとんど売り上げはない中、事業費から補填して工賃を支給。

 

【自由記述】

・福祉事業所への救済措置はお願いしたい。

・PCR検査に関して、保健所の対応など、生活支援課も知らないことだったらしく、経過を教えてほしいといわれて今まとめている最中です。とにかく発熱やその他の風邪症状でも通院自体がむずかしいことを実感。検査するのに待ち時間3時間とか本当に無理です。

・失業者の増加をチャンスととらえ、オンライン研修など、介護現場への人材の流入を積極的に行ってほしい

・憲法で私たちは健康で文化的な生活を送ることを保証されています。まず、健康で生きるために訪問先の利用者にうつさないために介護職のPCR検査を優先的に実施してほしい。

・コロナ疑いのある場合の派遣に関する判断は全て事業所判断と保健所から言われる。判断基準を示してほしい。

・医療従事者には手当を厚く出すとか感謝の話を聞くが、高齢者、障がい者を支える介護従事者も全く同じなので、手当てを厚く出すなどしてほしい。地方自治体で差が出るのは納得しかねるので、国として全国一律で考えてほしい。

・介護崩壊を防ぐこと、そして介護崩壊を想定してどう対応するかの準備を自治体にはとにかくお願いしたい。物資・避難先の確保、発熱者(利用者、介護者)の検査の確保、資金繰りの相談体制などに道筋をつけてほしい。また感染した利用者の入院の確保と、医療・福祉の連携体制が必要。制度運用には柔軟さを出してほしい。

・陽性と診断されたものの軽度の場合、一般の人は自治体が契約してるホテル等へ行くことが奨励されているが、重度障害者の場合、どうなるのか?

・各事業所、各地域によって同じ懸案でも全く置かれる状況が違ってしまうことが多々あります。制度1つにおいても各自治体の事情によって活用の仕方が異なることがある

・感染リスクに不安を感じながら介護事業を担っている職員にも危険手当。

 

※新型コロナウイルスと障害者に関して、「自立生活センターリングリング」の石地かおるさん、加盟団体自立生活センター神戸Beすけっとの藤原久美子さんの声が紹介されています。ぜひ一読ください。

 

◎(新型コロナ)障害者は問う、「命の選別」起きはしないか

朝日新聞6月24日掲載  https://www.asahi.com/articles/DA3S14523747.html

 

 

新型コロナウイルスの第1波をきっかけに、障害のある人たちが「命の選別」を危惧しています。感染拡大により医療が崩壊する事態が起きたとき、障害者の命が軽視されることはないのか。今なお社会に残る優生思想や障害者の置かれた現状から、当事者たちは危機感を訴えています。

 

■救命治療での差別、「容認」の懸念

新型コロナの大流行が今後起こったとき、自分の命を救うために力を尽くしてくれるのか。神戸市の石地かおるさん(52)は不安をぬぐえない。筋力が徐々に弱る進行性の脊髄(せきずい)性筋萎縮症で、24時間介助を受け、車椅子を使う。呼吸器が特に弱い。感染した場合、早く適切に治療しなければ命が危うくなる。

不安のきっかけは第1波が世界を襲っていたころ、ネットやSNSを通じて知った欧米の動きだ。海外メディアによると、米アラバマ州は人工呼吸器が不足した場合、障害や病気のある人にはつけない可能性があるとする指針を策定していた(後に指針は撤回)。英国立医療技術評価機構が公表した救命医療の指針に対しては、「身の回りのケアを他人に頼る人が治療を受けられない恐れのある内容だ」と障害者の親や人権団体が抗議し、指針は修正された。

海外の障害者団体は、ルーマニアの障害者施設における集団感染で、職員は医療機関で治療を受けたが、入所者は医療不足の施設に残され、対応の違いへの説明もなかったとして、ルーマニア政府に抗議した。日本でも大流行による選別が起これば、元々の病気が進行していく自分は後回しにされるのか。「それは人間の価値に優劣をつける優生思想だと問いたい」。いてもたってもいられなくなった。

「心身の障害や病、高齢を理由に、救命治療から排除されることを認めない」。石地さんがメンバーの市民団体は4月末、国や医療関係者に要望書を送った。

石地さんは、重い障害のある19人の命が奪われた2016年の相模原事件以降、事件を風化させてはいけないと訴えてきた。出生前診断や、障害者らに不妊手術を強制した優生保護法の問題にも取り組む。伝えたいことは一つだ。障害者の命を軽んじてはいけない。「それはどんな状況でも変わらないはずだ」

DPI女性障害者ネットワークには、新型コロナに関して「入院が敬遠されないか不安」といった声が寄せられている。不安の背景には、日常生活で「障害者に対応したことがない」「車椅子が入れない」との理由で入店やサービス利用を断られるなど、差別を感じた体験があるという。

代表の藤原久美子さん(56)は、それでも平時には「差別はいけない」という一定の歯止めが社会にかかっていると考えている。「非常時に『非常時だから仕方ない』と差別がいったん容認されれば、加速したり、危機が過ぎても定着したりしかねない」と懸念する。念頭にあるのは、戦後の人口急増を理由に制定され、半世紀続いた優生保護法だ。

 

■「呼吸器つけて、と言える世の中か」

人工呼吸器の配分については、国内でも議論の提起があった。医療倫理を研究する医師や弁護士のグループが3月末、呼吸器不足時を想定した試案を公表。医療資源の確保に最大限努めることを大前提に、医学的な適応と患者本人の意向を中心に判断するとしている。試案をまとめた東海大医学部の竹下啓教授は「障害を理由とした選別はあってはならない。そうしないためにも公正な指針をつくる必要がある」と議論を求める。

全国自立生活センター協議会(JIL)の今村登副代表(55)は、議論の必要性は理解できるとした上で、「今は障害のある人が意思を聞かれて、生きたい、人工呼吸器をつけてほしいと言える世の中だろうか」と投げかける。

29歳の時に事故で首の骨を折り、四肢まひになった。02年、仲間と共にNPO法人を設立。障害のある人が自分の住みたいところに住み、やりたいことに挑戦できる「自立」を支援している。

だが、例えば利用者の24時間介助を行政に求めても、認められないことが多くある。家族の介助が前提とされていることや、社会保障費抑制のためだ。経費、社会に頼りづらい現状……。患者の選択には、「どんな状況でも生きていいんだとはなっていない、今の世の中」の価値観も反映されると感じている。

「優生思想につながる命の選別が推進されることがないように」。国内外の動きを受けて、JILなど障害・難病患者7団体は4月、国への要望を提出。研究者らで構成する障害学会も声明を発表した。

障害学会の会長を務める立命館大大学院の立岩真也教授は、「呼吸器がいらないとは死を選ぶ意思表示でもある。障害者のそうした意思表示を、そのまま『ありがとう。では、いただきます』と受け入れてよいのか」と警鐘を鳴らす。

「社会には生産性確保のため、働けない人や、人に世話される人を除外する傾向があり、その傾向は危機的状況ではさらに強くなる。障害者の意思表示は、障害に対するネガティブな価値観を受け入れてのものでもある。こういう問題であることを認識しないまま議論するのなら、その議論自体、危険な面がある」(田中陽子)

« »