精神障害者

【精神障害者問題】 神出病院での虐待事件を追及する

障問連事務局 

神出病院での強制わいせつ、暴行事件に対して、精神障害当事者団体である加盟団体の「いこいの場ひょうご」が、神戸市に対して要望書を提出されました。以下、要望の内容です。

 

 

神戸市長 様

兵庫県西宮市宮西町7-3

いこいの場ひょうご

代表 吉本広志

要望書

私たちは「ひとりぼっちをなくそう」と1999年から精神障害者の、人としての尊厳と権利を守り、地域での自立生活を進めている精神障害当事者団体です。

2020年3月4日よりの報道の通り、神戸市西区の神出病院での入院患者に対する強制わいせつ行為などで看護師6名が兵庫県警に逮捕され、さらに3月24日には看護師ら3名を準強制わいせつ・暴行容疑で兵庫県警が再逮捕しました。内容は既に報道されている通りなので省かせてもらいます。治療の場としての病院内で事件が繰り返されることに私たちは医療の名に値しないこのような精神医療に以前より強い憤りと不安・不信感を抱いております。今回の事件によって浮上してきた事実によって改めてその思いを強くしております。

なぜ精神科病院の事件が続発するのか、なぜ私たちは精神科病院での治療を安心して受けられないのか、以上のことから私たちは下記の通り要望します。

1,  神出病院に対して、被害者に心からの謝罪と十分なケアを行うよう指導して下さい。

2,  事件を起こす精神科病院は後を絶たず、それは地域や社会からの精神病者への差別・蔑視・偏見があり、病院側も罪の意識が薄く、さらに神戸市も見て見ぬふりをしていたのではないでしょうか。そういった隠ぺい体質に真摯に向き合って解決して下さい。

3,  私たち「いこいの場ひょうご」は30年にわたり、兵庫県、神戸市と行政交渉を行っています。その中で「7歳位からの子どもに向けて精神医療、精神保健、精神病、精神障害者問題について出前授業」をと提案しています。話題提供者は精神障害当事者です。そのことによって成長してから精神病になった時に困らなくて済みます。自殺、いじめ、引きこもり者・・・といった諸問題も解決できます。一緒に考えていきましょう。

4,  所謂、精神科特例で他科と差別された人員配置の件で国に見直しの提言をして下さい。

5,  これを書いている私は精神障害者です。頑固な不安・妄想・不眠・対人関係の悪化等があり、服薬とは縁が切れません。他者任せにもできず要望書作りをしていますが、これは障害者虐待です。こういった実態を多くの市民に知ってもらいたい思いで胸が溢れそうです。

 

以上

 

◆上記の要望書は、4月初旬に神戸市に提出され、4月18日に話し合われる予定でしたが、新型コロナウィルス感染予防により延期されました。

◆障問連としても毎年のオールラウンド交渉で、神戸市は実地指導している、問題はないとの回答に 終始していました。全く異なる実態が明らかにされました。今後とも追及していきます。

◆同交渉では精神科病院での身体拘束についても取り上げています。603調査によれば、兵庫県、神戸市合わせて376件にも及びます。下記に新聞報道(連載)を紹介します。ぜひ一読ください。

 

【くらしナビ・社会保障 精神科病院と身体拘束/上 患者と信頼築き削減目指す】

毎日新聞2020年4月2日 東京朝刊

 

精神科病院でベッドに手足をくくりつけるといった身体拘束を受ける入院患者が増えている。2006年からの10年で1・8倍となり、中には突然死の事例もあることから、患者の権利を守る観点から厳しい目が向けられている。医療現場では、削減に向けた取り組みも始まっている。

身体拘束は患者の胴・手・足を特殊な拘束帯を用いて動きを抑制する行為。精神保健福祉法で拘束が認められるのは、本人を傷つける恐れがあるなど指定医が「他に方法がない」と判断した場合のみ。医療現場では、転倒防止や点滴チューブを抜いたり、暴れて治療ができなかったりする場合に身体拘束を行うケースが多い。背景として、認知症を抱えた高齢者が増えていることなどが指摘されている。

全国の精神科病床での身体拘束は、16年(6月末時点)は1万933人で10年前の1・8倍。翌年から集計方法が拘束数から「拘束の指示」の数に変わったことで、さらに増加基調にある。

また、17年に神奈川県の病院で身体的を受けていたニュージーランド男性が死亡し、海外からも注目された。拘束が理由で患者が死亡したとして病院側に損害賠償を求める訴訟も複数起きている。

行動制限をなくす取り組みで注目を集めるのは東京都立松沢病院(世田谷区、890床)だ。12年に就任した斎藤正彦院長が「身体拘束ゼロ」を掲げた。入院患者のうち拘束した人の割合にあたる「拘束率」は、病院全体で17・7%だったのが19年に3・1%に。医師や看護師らが集まって毎月目標を設定し、拘束に至る原因を分析し、そうしたら拘束せずに済むか知恵を出し合った。

興奮した患者でも、医師が治療を受けてもらうよう時間をかけて説得する。環境面では、転倒予防のために拘束するのではなく、転んでもけがをしないように保護室にクッションを貼った。また、点滴のチューブを引っ張るのを防ぐ目的から「点滴と拘束はセット」だったが、薬剤をガムテープで壁に貼るといった体験を積み重ねた。今井淳司精神科医長は「最初は無理かと思ったが、拘束をなくす議論の過程で、拘束が患者さんとの信頼関係を損ねていたことに気づき、医療者の意識が変わった。患者さんとの関係も良好になった」と振り返る。

本人のみならず、家族にも転倒リスクを説明したうえで「拘束しない同意書」を入院時に書いてもらう試みも始めた。法的な裏付けはないが、理解を得るのに役立つという。

拘束を減らす代わりに鎮静剤の使用が増えないかも危惧されたが、12年と16年の奇数月を比べたところ緊急措置入院患者の拘束率は66%から2%に減ったが、経静脈鎮静も75%から65%へと減少。一方、経口服薬に同意する患者が8%から34%に増えた。「納得して医療を受けられたと患者が感じることで、早期受診、早期治療に結びつくようになった」と斎藤院長は話す。

 

●突然死24年で43件

身体拘束は、肺の血管に血の塊(血栓)が詰まって突然、呼吸困難や心停止を起こす肺血栓塞栓症のリスク要因であることも知られている。1994~2017年度に日本精神科病院協会医療安全委員会に提出された事故報告書5933件について桜ヶ丘記念病院(東京都多摩市)の岩下覚院長が分析したところ、137件の拘束事例のうち突然死は43件。死因が明記されていた13件中8件が肺血栓塞栓症だった。

岩下院長は「身体拘束は患者の生命保護と医療事故予防が目的だが、逆にそれに由来する医療事故が起きていることも事実。精神的にも身体的にも負担が大きい身体拘束を行う以上、事故予防に細心の注意を払うことが義務付けられる」と指摘する。

 

 

【くらしナビ・社会保障 精神科病院と身体拘束/下 患者の権利擁護へ支援模索】

毎日新聞2020年4月9日 東京朝刊

 

ベッドに手や足をくくりつける身体拘束は、患者の心身に大きな負担を与える。精神疾患を抱えた患者が自分の意思を伝えるのは難しい場合も多く、本人の立場に立った権利擁護のシステムが求められる。支援する団体も少しずつ増えている。

「何人もの職員に押さえつけられ怖かった」「いつまで続くか不安」「(拘束中)尿や便はおむつで垂れ流すしかなかった」。精神医療に関する相談や病院訪問などを行うNPO法人大阪精神医療人権センター(大阪市)には、身体拘束の相談も多く寄せられる。2018年度に受けた電話相談1021件中、54件が身体拘束に関するものだった。

センターは看護職員らの暴行で患者2人が死亡した1984年発覚の宇都宮病院(栃木県)事件をきっかけに、患者、医療従事者、弁護士らが翌年に設立。入院患者への面会、府内の精神科がある60病院への訪問を続ける。当事者や弁護士、ソーシャルワーカーら4~8人が約3時間かけて病棟を視察し、病院と環境改善を協議する。上坂紗絵子事務局長は「外部の目が入ることで、風通しや療養環境がよくなる。病院からも具体的な改善点に気づくことができると言われる」と話す。

精神疾患で入院した人が病院に対して声を上げ、受け止めてもらうには困難な場合も多い。退院の可否や処遇が適正か否かを審査する組織として、自治体による精神医療審議会がある。ただ、本人や家族の請求に基づいて判断する場で、それ以前の本人の意思決定や表明を支援する仕組みではない。欧米では病院や家族会、行政からも独立した第三者機関によるアドボケイト(代弁者)の制度があり、国内でも導入を望む声がある。

厚生労働省は12年から精神障害者の意思決定支援に関する調査研究を行う。日本精神科病院協会(日精協)は15年度のモデル事業でガイドラインを作成。現在、国立精神・神経医療研究センターの研究班が、日精協や大阪精神医療人権センター、当事者団体などに意見を聞きながら新しいモデルづくりを進める。

藤井千代・精神保健研究所地域・司法精神医療研究部長が調査した英国では、精神科で矯正処遇を受けている人は誰でも無料でアドボケイト支援を受けることができる。また、第三者機関が病院の医療の質を抜き打ちでモニタリングし、評価をウェブ上で公開する仕組みがある。藤井研究部長は「権利擁護のためには、医療を受けるかどうかの選択も含めて本人の味方として活動する制度が必要」と話す。

 

●背景に人手不足も

身体拘束や隔離などの行動制限を減らす取り組みとして、厚労省は04年度の診療報酬改定で、行動制限について月1回検討する「行動制限最小化委員会」を置くなどした病院に報酬をつけた。しかし、その後、入院患者は減る一方、身体拘束は増え続けている。

身体拘束が減らない背景として病院側の人手不足も指摘される。病院の医療スタッフを何人配置すべきかは、患者の数に応じて国が決めている。厚生省(当時)が1958年に出した「精神科特例」により、一般病棟と比べて精神科の医師数は3分の1、看護師・准看護師は3分の2でよいとされた。身体拘束の問題に詳しい長谷川利夫・杏林大教授(精神医療)は、「精神科特例を見直し、職員配置を他の診療科並みにすることが大前提。病床削減を進めることで、人は確保できる。厚労省は身体拘束削減に取り組む病院を後押しし、不要な行動制限をなくすため実効ある施策を示すべきだ」と指摘する。

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