優生思想

【報告】 旧優生保護法裁判 救済法成立から1年を迎えての課題

障問連事務局神戸地裁で行われている旧優生保護法裁判、5月14日に予定されていた第7回期日は、新型コロナウィルスにより中止となりました。裁判所と弁護団により進行協議のみ行われる予定です。

「旧優生保護法一時金支給法」が昨年4月24日に成立、それから1年を迎えての課題が、下記のように報道されているので紹介します。

 

■旧優生保護法裁判 救済法成立から1年を迎えての課題 一時金認定529件のみ

毎日新聞4月25日

 

旧優生保護法下で不妊手術を受けさせられた障害者らへの救済法案が成立してから、24日で1年を迎えた。救済法に基づく一時金の認定件数は伸び悩んでいるが、立法過程で議論された被害者へ直接通知する制度に見直す動きはない。

救済法は、不妊手術を強制された障害者らを救済するため、超党派の議員連盟などによる議員立法で昨年4月に成立した。前文で被害者に対する「おわび」を明記し、国が一律320万円の一時金を支払うのが柱だ。厚生労働省に残る資料では旧優生保護法に基づく不妊手術は約2万5000人とされる。昨年度予算では、一時金の支払い総額などとして、生存率などを勘案して算出した3400人分109億円を計上した。しかし、3月末現在で一時金を支払うと認定したのは529件に過ぎない。手術記録などが乏しいために認定されなかったのは34件で、審査中も合わせても申請総数は890件ほどだ。立法作業に関わった国会議員の1人は「申請件数は伸びていないが、被害が周囲に知られる可能性があり、個別に通知する制度への見直しは考えていない」と話す。

被害弁護団は「法成前から被害申告が難しい現状を指摘し、被害者のプライバシーに配慮した通知の検討を求めていた。少しでも多くの被害者に一時金が届くよう、国は施行から1年の申請状況、認定状況を調査したうえで法律の改正、運用の改善を検討すべきだ」との声明を発表した。

 

 

■強制不妊救済法1年  認定広げる努力をさらに

毎日新聞4月27日

 

旧優生保護法のもとで不妊手術を強いられた障害者の救済法施行から1年が過ぎた。

行政や医療機関に手術記録が残っている約7000人のうち生存者は推定で約3400人とされる。申請は900件近くで、一律320万円の支給が認定された。

認定者は生存者の15%にとどまっている。認定を広げるうえで鍵を握るのは、手術記録が残っている人に対して救済について個別に通知することだ。

被害者側は個別通知を国の制度に盛り込むように求めた。しかしプライバシーを侵害する恐れがあるとして認められなかった。

一方で独自の判断で個別通知に取り組む自治体がある。

毎日新聞が今年1月に全都道府県に聞き取り調査したところ、鳥取、兵庫、岐阜、山形の4県が実施していた。

鳥取県の担当者は「当事者の状況に即した対応をすればプライバシー保護と被害回復は矛盾しない」と指摘する。鳥取県の場合、手術などの記録が残っていた人が21人と少なく、対応しやすい環境だった。900人の記録が残る宮城県の担当者は「マンパワーが足りない」と個別通知の難しさを訴える。

個別に通知ができれば、制度を知らない当事者の救済につながるのは明らかだ。現状のままでは認定者に地域格差が生まれかねない。意欲的に取り組むケースを他の自治体は参考にしてほしい。

認定作業を円滑に進めるため、被害者が多い地域に国が財政的な支援をすることも検討に値する。

社会に潜む障害者への差別意識は見逃せない。知的障害などをもつ被害者が申請するには家族の協力が不可欠だ。周囲の偏見が原因で家族が申請をためらうようなことがあってはならない。

人権を侵害され多大な苦痛を受けた被害者の状況が、多くの人に理解されるような取り組みが欠かせない。国が救済制度を周知するだけでは認定は広がらない。

申請期間は施行から5年間に限られている。認定の状況によっては延長も検討すべきではないか。

国と自治体はすべての被害者が救済されるまで努力を続ける責務がある。

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