事務局より 新聞記事から

【事務局からの報告+お知らせ】

障問連事務局

 

■5月拡大事務局会議は中止します。

緊急事態宣言が5月末までに延長されました。6月の拡大事務局会議も仮に緊急事態宣言が終了した場合でも、感染リスクの確率が必ずしも低いわけではなく、また福祉センター等の公的施設の利用の可否も含め、5月27日事務局会議で最終判断しますが、現時点では中止の方向を事務局でも確認しました。

4月28日、事務局会議を開催しました。初めてオンラインを活用ました。事務局メンバーに精通した者がいないためなかなか進みません。感染予防に関わらず、遠方のため会議参加が難しい人もオンラインにより参加できます。引き続き検討していきたいと思います。

 

■介護保障問題

○神戸市ガイドライン問題

3月初旬締め切りで、新たなガイドライン案に対するパブリックコメントが行われ、多くのご協力ありがとうございました。提出された意見と意見に対する神戸市障害者支援課の回答が市のホームページで公開されています。しかし、ほとんど「検討する」とし、まともな回答はしていません。

そして決定した新たな「ガイドライン」も示されていますが、昨年度ギリギリまで折衝し、積み残され本格的な見直しを当事者の参画を考慮して行なうと約束しましたが、この状況下では進められていませんが、今後とも求めていきます。

○「理由付記裁判」

第2回裁判(4/16)が延期されました。今後の裁判予定は全く未定です。原告・弁護団として反論の準備書面を現在、作成中です。

 

■その他の課題

○教育、バリアフリー部会、事業所交流会など予定していた取り組みは保留、中止を余儀なくされています。神戸地裁での旧優生保護法裁判~5月14日予定の第7回公判も中止され、進行協議のみが行われる予定です。

 

○2020年度は新たな障害福祉計画を検討する年ですが、兵庫県障害福祉審議会や各分科会、障問連が参画する特別委員の会議も延期されたままです。この状況下でやむを得ないことは理解しますが、どうしていくのか全く示されていません。集まっての会議ができない場合の代替の形式、積極的な行政としての発信を求めたいと思います。

 

■新型コロナウィルスに関して

◇この状況に関して、加盟団体事業所等にアンケートを実施します

・「全国の高齢者通所・ショートステイを実施する858事業所が休業」と4月25日報道、うち834カ所が自主的判断による。

・障害者介護の現場、通所施設、入所施設、グループホームそして居宅介護等、いずれもが厳しい状況にあり、4月9日には宝塚の重度障害者40人が通所する施設で感染者2名、18日まで施設を休所する等と報道されています。

・障問連加盟団体の事業所においては、どのような状況でしょうか?事務局として状況把握できていません。厳しい時こそ支え合っていくことが、阪神大震災や「生きる場作業所」時代からの障問連のモットーでしたが、会うことすらもできない状態に悔しい思いです。

・事務局で検討し、加盟団体だけでなく「事業所交流会」とも連携し、各事業所に対して、新型コロナウィルスに関わる「状況・課題・行政への要望」等に関するアンケート調査を実施したいと思います。アンケート用紙ができ次第、事業所交流会事務局の「NPO法人拓人こうべ」からメールにてお知らせしますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

 

◇みんなで必要な情報を共有し、この状況を乗り切りましょう

・この間、厚労省から事業所に次々と通知が届きます。当初は感染予防策が主でしたが、この状況下での人員基準の緩和の考え方など「臨時的取り扱い」が示されています。直近では4月28日にも主に自治体から厚労省へのQ&Aとして示されました。すでにご存じかと思いますが、主要な内容を下記にお伝えします。

・しかし、その内容は必ず「市町村が認めた場合」とされています。厚労省の通知が次々と出され、市町の担当者も追いついていない状況もあります。先日も下記にある「資格のない者の従事」について加盟団体が神戸市に連絡したところ「その通知は確認できていない。早急に検討する」ということもありました。具体的には福祉サービスの報酬請求に関する内容となり、各事業所におかれましては、行政の対応に問題がありましたら、ぜひ事務局に一報ください。以下、新型コロナウィルスに係る情報をお伝えします。

 

【行政の動き】

○兵庫県が緊急対策~3916億円の補正予算案を発表

・大半の3590億円が中小企業向けの貸付金に伴う金融機関への預託金の積み増し。

・障害者も含む福祉施設にマスク購入や消毒に10億円。

 

○尼崎市が、売り上げが減少した個人・小規模事業所に対して、家賃3か月分(上限50万円)を、市が直接貸し付ける制度を、4/21~受付、7/31まで。

 

○明石市が、個人事業主に100万円を上限に融資する。4/21~受付。

 

○神戸市が独自に「介護・障害福祉サービス事業所」に「1事業20万円」の助成制度の方向。

緊急事態宣言の中利用者への切れ目のないサービス継続に尽力しているので、神戸市障害者支援課として決定し、4月24日付で全事業所に通知、今後、神戸市議会での議決を経て正式に決定される見込み。

 

 

【兵庫県 サービス管理責任者等基礎研修・相談支援従事者初任者研修【延期】

新型コロナウィルスに係り、兵庫県が実施する上記の研修が一部延期になります。

○サービス管理責任者等基礎研修

募集:令和2年4月末~5月初旬の予定が、募集が8月開始になります。

講義・演習:令和2年11月~令和3年3月

○相談支援従事者現任研修

募集:令和2年9月頃開始

講義・演習:令和3年1月~令和3年3月

○サービス管理責任者等更新研修・・・募集も講義も未定。

 

【4/28厚労省からの事務連絡】

通知名は「新型コロナウィルス感染症に係る障害福祉サービス等事業所の人員基準等の臨時的取り扱い(第5報)」。一時的に人員基準等を満たすことができなくなる場合等に対する緩和措置で第1報~4報のまとめプラス新規追加が、Q&Aにより示されています。すでにご存じかと思いますが改めて紹介します。

 

◆人員配置に係る「加算」についして一時的に満たさなくなる場合でも通常の算定は可能か?

(答):「一時的に要件を満たさなくなった場合でも、利用者への支援に配慮した上で、従前の加算を算定することは可能である」・・・(※特定事業所加算・福祉専門職配置加算等が対象)

 

◆一時的に送迎加算の要件を満たさなくなった場合も通常の算定は可能か?

(答):「一時的に送迎加算の人数要件(1回の送迎につき平均10人以上)を満たさなくても可能」

 

◆グループホーム・・自宅に戻った者への支援に関する各種加算の取り扱いについて

・医療連携体制加算・・・看護職員等が自宅に行き支援した場合も加算可能。

・夜間支援等体制加算・・・夜勤職員または宿直職員による自宅への訪問による介護や定期的な巡回がされる場合についても算定は可能。

・重度障害者支援加算・・・自宅に訪問または電話により算定可能。

 

◆事業所が自主的に休業している場合、居宅等で支援した場合、報酬の対象になるか?

(答):「休業する旨を市町に報告(緊急なら後でもよい)」→「利用者の居宅等で健康管理や相談支援等のできる限りの支援を行ったと市町が認める場合」→「通常と同等の報酬とする」

≪解説≫

・福祉事業所が、運営を維持できるよう「柔軟な」取扱いをすることになっている。

・「休業」の場合を基本的に想定しているが、休業でなくても「通所と居宅等」の両方を提供することも可能であるとされている。

※但し・・・事業の種類によっても違った取扱いがある。・・・以下

 

○放課後等デイサービス・・・学校の休業を踏まえて「子供の居場所」を確保することが大きな目的となっていて、教育委員会や学校との連携などもあり、電話やスカイプなどでの支援も通常支援と同じ取り扱いになるなど特例がある。

 

○就労継続支援B型

・工賃について、コロナ感染者の平均賃金計算からの除外など示され、「事業所の職員の処遇が悪化しない範囲で自立支援給付費を充てることをもって、工賃の補填を行っても差し支えない」。

・在宅でのサービス提供が推奨されているが、下記の条件が必要。

・運営規程に在宅で実施する訓練及び支援内容を明記しておくこと。

・在宅で実施した訓練及び支援内容訓練支援状況を市町から求められたら提出できるように。

・在宅利用者が行う作業活動、訓練等のメニューが確保されていること。

・1日2回は連絡、助言又は進捗状況の確認等が行われ、日報が作成されていること。

・作業活動、訓練等の内容又は在宅利用者の希望等に応じ1日2回を超えた対応も行うこと。

・緊急時の対応ができること。

・在宅利用者が作業活動、訓練等を行う上で疑義が生じた際の照会等に対し、随時、訪問や連絡による必要な支援が提供できる体制を確保すること。

・事業所職員による訪問又は利用者の通所により評価等を一週間につき1回は行うこと。

・原則として月の利用日数のうち1日は事業所に通所し、事業所内において訓練目標に対する達成度の評価等を行うこと。また、事業所はその通所のための支援体制を確保すること。

○生活介護

・兵庫県ホームページには厚労省通知の引用以外は具体的に示されていません。下記は大阪府のある市のHPに出ていましたので紹介します。大阪の障大連の細井さんの情報提供では「生活介護は電話だけでは認められないよう」とされていました。神戸市の加盟事業所は「電話による支援」で請求するとのこと。兵庫県の各市でも判断がさまざまに分かれるかと思います。いずれにしても「支援した記録」が重要です。

下記はあくまで大阪府の市町の例です。ここまで整えれば問題はないかと思われます。ご参考ください。

 

【大阪府の○○市の通知内容】

・(届出について)

「新型コロナウイルスへの対応に伴う生活介護事業による臨時的な居宅におけるサービス提供の届出」により、○○市福祉事務所長あてに届出が必要となります。

・(サービス提供について)

居宅で生活している利用者に対して、利用者の意向を確認したうえで、居宅への訪問、電話等により、通常生活介護事業所において提供していた個別支援計画の内容を踏まえ、健康管理や相談支援等、できる限りのサービスを提供した場合、通常提供しているサービスを提供しているものとして、報酬の算定を可能とします。なお、通常生活介護事業所において提供していた支援内容等できる限りのサービスとは以下のようなことが考えられます。

・排せつ介助

・入浴介助や更衣介助

・食事の提供や準備、食事介助

・自宅で可能な生産活動等

ただし、これらは一例であって、あくまで個別支援計画の内容を踏まえた支援を行うことを想定しています。

・(障害福祉サービス費の請求について)

請求方法については従来どおり大阪府国民健康保険団体連合会への請求となります。個別支援計画と併せて、支援内容が分かる実績記録票等を提出してください。通常、事業所にて使用している実績記録票等で差し支えありませんが、できる限り詳細に支援内容を記載してください。また、実績記録票等に記載が困難な場合は別の様式(任意様式)に記載してください。

 

◆訪問系サービスについて

○利用者の同意を得た上で、問時間を可能な限り短くする工夫を行った結果、サービス提供が短時間となった場合。

・居宅介護、同行援護及び行動援護・・・サービス提供が20分未満となった場合であっても「30分未満」の報酬を算定可能。

・重度訪問介護・・・1事業所における1日の利用が3時間未満であっても報酬請求は可能。サービス提供が40分未満となった場合であっても「1時間未満」の報酬を算定可能。

○有資格者の派遣が困難な場合

・一時的なものであり、かつ利用者の処遇に配慮したもので、利用者の同意を得たものであれば、当該資格がない者であっても、他の事業所等で障がい者等へのサービス提供に従事したことがある者であり、利用者へのサービス提供に支障がない場合は、当該支援に従事することは可能。

・個別の事情を勘案し、新型コロナウィルスの影響により一時的にヘルパー資格を持った者の確保ができないと市町が判断する場合であれば、「他事業所等でサービス提供に従事した者」であれば幅広く認める。この中にはボランティア等で一定の介護経験がある者も含む。

 

◆移動支援

・この間、外出を自粛せざるを得なくなり、各事業所でも移動支援が多くキャンセルされています。在宅で家族と一緒に過ごせる人もいますが、そこには我慢や家族の過重な負担も生じます。一人暮らしやグループホームではどうするのか?? 移動ができなくても何らかの支援が必要な場合も多くあります。

・「移動支援」=外出ですが、屋内での移動支援利用ができないか、自治体から要望があげられ、厚労省3月13日に下記のように通知を発出しています。

・しかし、あくまでも市町村事業所ですので、「他のサービスの提供体制、利用者の制度状況等も踏まえた上で、市町村が必要と判断した場合」とされています。

・西宮市・・・事前に市に確認、必要な理由等を伝える。屋内での支援内容や市とのやり取りを記録しておく。

・宝塚市・・・事前の確認は不要。

→ 皆さんの市ではどうでしょうか?? 何か課題や問題があればご連絡ください。

【厚労省からの移動支援に関する回答】

事務連絡 令和2年3月13日    厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 企画課自立支援振興室

※新型コロナウイルス感染症拡大防止等のための移動支援事業の取扱いについて

(問) (・・略・・)やむを得ず外出を自粛せざるを得ない場合に、居宅等において、外出時同様に飲食や安全確保等の必要な支援を行った場合、移動支援を実施したものと取り扱ってよろしいか。

(答)当該地域で新型コロナウイルスの感染症が確認されており、利用者に感染するおそれがある場合等であって、他の障害福祉サービス等の提供体制、利用者の生活状況等も踏まえた上で、実施主体である市町村等が必要と判断した場合には、居宅等での支援についても移動支援を実施したものと取り扱って差し支えない。

 

◆その他

○重度訪問介護養成研修について

オンラインを活用した研修が認められています。加盟団体では活用して取り組もうとしています。

○行動援護の居宅内利用

行動援護は外出がメインですが居宅内利用も一部認められています。移動支援と同様に外出が困難な現在の状況下で居宅内利用を認められるべきかと思いますが、関係事業所から神戸市は認められない、おかしいのではないかと相談の連絡を事務局が受けました。

 

【今後の課題】

・国の通知は、例えば移動支援でも「・・・他の障害福祉サービス等の提供体制、利用者の生活状況等も踏まえた上で、実施主体である市町村等が必要と判断した場合」とされ、何でもOKとされず、上記のサービス毎の緩和措置も支給決定権者である各市町の判断に委ねられ、具体的には各市が区な通知をどのように読み込み、どのような基準を設けるのか、今後の課題だと思います。

・どの事業所も3月にやや利用減、4月緊急事態宣言以降、サービス種別によれば大きな減になっており、報酬は2か月遅れ、6月に入金されるため、各事業所の経営、資金繰り等が6月以降に大きな課題になります。

 

・雇用調整助成金・・・休業せざるを得ない職員やヘルパーの休業補償も大きな課題です。「雇用調整助成金」も現在、一日8330円の上限ですが、その増額が国において検討されています(5/3西村経済再生大臣のテレビでの談話)。

(雇用調整助成金の特例措置)

→ 通常は対象職員が雇用保険加入(6か月以上)の条件がありますが、特例措置により「雇用保険に入っていない職員」も対象になります。

→ 通常の対象事業所は「直近3か月の売上高が前年同期の10%以上減」が条件ですが、特例措置により「直近1か月の売上高が5%以上の減」が対象になります。

→ 今回の雇用調整助成金の特例措置の実施期間(緊急対応期間)は、2020年4月1日から6月30日までです。

・「持続化給付金」・・・現金支給・返済不要。詳細は補正予算の成立後に決定。給付対象は中小企業・個人事業主(フリーランス)で、売上高が前年より50%以上減ったことを条件に、中小企業には最大200万円、個人事業主(フリーランス)には最大100万円が支給されます。

 

状況は厳しいですが、障問連として情報提供に今後とも努めていきたいと思います。

 

 

【報道】 コロナ 訪問介護危機             毎日新聞54

新型コロナウィルスの流行を受け、ヘルパーによるサービスを利用して地域で暮らす障害者らに危機感が広がっている。日常的な人の出入りは感染のリスクを高めるためだ。ヘルパーも不安を募らせながら働く。サービス利用者の生活維持と、利用者・ヘルパーの感染リスクの低減。両立に向けた試行錯誤が続く現場には、慢性的な人手不足ものしかかる。

 

◆  サービス「密」 感染リスク大

「介助がなければ生活が成り立たない。今は何とかやりくりしているが、ぎりぎりだ」。さいたま市桜区で訪問介護事業を手がけるNPO法人「介助派遣システム」の代表、加納友恵さん(44歳)は懸念を口にした。自身も24時間介助を受ける。同じく介助が必要な重度障害者5人にヘルパーを派遣している。3月下旬、ヘルパーの1人が発熱した。感染の有無を調べるPCR検査を受けられないまま、休む日が続いた。

ヘルパーは障害者宅で食事や入浴、排せつなどを解除する。互いに距離は「密接」だ。市は事業所向けにマスクなどの購入費を補助していたが、品薄で入手できなかった。加納さんは「行政には『自力で何とかしろ』と言われている気がする。しっかり支援して欲しい」と訴える。

東京都世田谷区の社会福祉法人「自立の家」では4月7日の緊急事態宣言後、ヘルパー2人が休んだ。それぞれ「家族に高齢者がおり、出勤を控えて欲しいと言われた」「電車で利用者宅まで通勤するのは不安だ」と理由を説明したと言う。施設長の亀山博史さん(44歳)は「通勤するヘルパーのリスクを考え、障害者の家族に介助をお願いしたケースもある」と話す。

独自に感染防止策を取り入れた障害者もいる。ヘルパーの介助を受けて暮らす川崎市麻生区のコラムニスト、伊是名夏子さん(38歳)は4月上旬から▽入室時、玄関で服を着替える ▽荷物は袋に入れて玄関に置く ▽携帯など家の中に持ち込むものも消毒する など11項目の対策手順をヘルパーに求めている。対策は医師に相談して決めたという。

骨形成不全という病気で肺の機能が弱いとされ、感染には人一倍気を付けている。「玄関をレッドゾーンとし、ウィルスを外から部屋の中に持ち込まれないようにしている。全部実行するのは難しいかもしれないが習慣化してもらいたい」と話す。

万が一、自宅でヘルパーを利用する障害者が感染したら・・・「全国自立生活センター協議会(JIL)」は4月、感染した障害者の訪問を継続するためのマニュアルを策定した。ヘルパーの感染とウィルス拡散を防ぐため、利用者の近くで扇風機を回して周囲の空気を輩出することや、介助時に着けたマスクやガウンを適切に処分することなどを盛り込んでいる。

JIL副代表の今村登さん(55歳)は、「感染の疑いがあっても介助は続ける必要がある。マスク不足など課題はあるが、有効と思われる対策は積極的に取り入れてほしい」としている。

 

◆ 人手不足に拍車

訪問系の福祉サービスの現場で働くヘルパーはどう感じているのか。

「テレワークできる仕事ではないので、利用者や家族に感染させてしまわないか心配だ」。東京都武蔵野市の女性(33歳)は悩みながら障害者宅に足を運んでいる。

3月下旬、咳が続いた。「まさか」と思ったが、訪問先には24時間介助が必要な障害者もいる。ヘルパーの代替要員に余裕はなく、「介助者がいなくなれば訪問先の障害者の命に関わる。自分が休んだら他のヘルパーの負担を増やしてしまう」と考えた。熱が出なかったこともあり、職場には症状を詳しく伝えずに勤務を続けた。4月上旬、新型コロナウィルスの感染とは異なると診断を受けたものの「どういう症状の場合に職場に申告すべきか、あいまいでよく分からなかった」と振り返る。

青森市の訪問介護事業所で働く女性(44歳)は「コロナに感染していないという確証は誰も持てない」と不安を漏らす。障碍者や高齢者宅を1日3~7軒程度訪問する。厚生労働省は院内感染を防ぐ手ために電話やオンラインによる診察を可能にしているが、女性が訪問する利用者は通院を続けている。通院への同行も仕事の一つで、10分程度の診察のために混み合う病院で1~2時間待った日もあった。

通所施設が休業したり、高齢者らが通所を自粛したりして訪問介護の利用に切り替えるケースが相次ぎ、事業所への依頼は増えてきている。女性は「接触を減らすのが感染予防になるなら、ある程度サービスを削るなど事業所に対応してもらいたい」と漏らす。

訪問介護の現場では人手不足がかねて懸念されてきた。厚労省によると2018年度の訪問介護職員の有効求人倍率は13.1倍。全職種の1.46倍。介護職全般の3.95倍と比べると人材確保の難しさがうかがえる。一方、アルバイトなどの非正規職員も多い。公益財団法人・介護労働安定センターが同年に介護保険指定サービス事業所のうち1万8000事業所を抽出して実施した調査では、訪問介護職員のうち非正規職員が75.2%だったのに対し、正規職員は21.8%にとどまっていた。

「ヘルパーによる訪問系サービスは人手不足が放置されてきた。このままでは介護崩壊が避けられない」。埼玉県新座市で訪問介護などの事業に取り組むNPO法人「暮らしネット・えん」代表理事の小島美里さん(68歳)はそう訴える。4月10日、旧知の訪問介護事業所の代表者やヘルパー4人と連名で政府に新型コロナ対策を求める書面を送った。感染者が出て事業所が休止した場合に備えた他事業所との連携構築や、ヘルパーの緊急増員などを求めた。

介護問題に詳しい淑徳大学の結城康博教授は「訪問系サービスは従来アルバイトに支えられてきた。感染を恐れて『仕事に行かない』というアルバイトが増えれば介護難民が続出する」と指摘。介護報酬の引き上げが急務だとし、「人材確保のため賃金を上げるべきだ。現場は『密』を避けられないが、事業所の収入が増えれば安全確保のための衛生用品の購入も後押しできる」と話している。

 

【報道】 121人感染 千葉の障害者施設 苦闘の介助現場      427日朝日新聞

厚労省は各自治体に対して障害者入所施設に対して「利用者や家族の生活継続のため欠かせない」とサービスの継続を求めている。しかし入所施設は「三密は避けられない」、空き室がなければどうするのか、施設内のゾーン分け、症状を訴えることが困難な知的障害者らの24時間の見守りなど、現場の苦闘が報道されている。

 

・千葉県:北総育成園 感染者121人(入所者121人 職員40人 家族27人)

・茨城県:ハミングハウス 感染者14人(通所者8人 職員6人)

・広島市:見真学園 感染者50人(入所者36人 職員14人)

 

 

 

 

(読売新聞5月1日掲載)  コロナに負けない ~障害者~

ヘルパー派遣 続けて   福祉、医療 生きるのに必要

玉木幸則さん(兵庫県相談支援ネットワーク代表理事)

 

Q:新型コロナウィルスの感染拡大で障害者として困っていることは?

玉木:僕は脳性マヒの影響で健常者より肺の機能も低下しているので、会話をする時にマスクをつけていると、実はしんどいんです。

悲しかったのは、先日、コンビニエンスストアで店員からレシートを渡された時、手が震えて少し店員の指に当たったら、『わぁー』って汚染されたものに触るような反応をされました。感染に過敏になりすぎているだけで、障害者への差別ではないと思いたいけれど・・・。

 

Q:問題だと感じることは?

玉木:障害者から「感染防止のためにホームヘルパーを派遣してもらえなくなったらどうしよう」という不安な声を聞きます。生きていく上で必要な支援で、止まってしまうと生活できない。継続を考えるのが福祉、医療サービスの役割だと思うので、感染リスクを抑えた上で、通常に近いホームヘルプサービス業務を続けてほしい。

 

Q:心配は?

玉木:自宅で人工呼吸器を使って生活している障害者の事です。メーカーが利用者宅を訪問して機器の保守管理をしっかり実施できているのか。訪問する医師や看護師も動作を確認しているのか。命にかかわることだけに、すごく気がかりです。医療崩壊の恐れも懸念されていて、助かる命を救ってもらえない事態が生じるのではないかという心配もあります。

 

Q:外出自粛が呼びかけられているが、心がけていることは?

玉木:引きこもり状態にならないよう自宅近くを散歩したり、気晴らしで車に乗ったりしている。感染防止のため、人と会う時はマスクを着け、首からぶら下げるウィルス除去のグッズも使います。

 

Q:伝えたいメッセージがあれば?

玉木:外に出ている障害者が周囲から「こんな大変な時に何をやっているんだ」という目で見られることがあります。体力や気力を保つため、外出が必要な場合があるので、温かく見守ってもらいたい。障害者の側も、ある程度の我慢は必要だけれど、困っていることや要望はきちんと伝え、「自粛」の中でもできることを考えていこう、みんなで。

 

※事務局の野崎が、新型コロナウイルスの件で取材を受けましたので、記事を掲載します。

京都新聞 2020/5/2 視点・新型コロナ

障害者が直面する課題 感染時の介護 不安大きく 「命の選別」に懸念

――新型コロナウイルスの感染が広がる中、障害のある人が不安にさらされている。自宅にこもっていても拭えない感染リスクや、入院時に十分な介助が受けられない懸念…。脳性まひがあり、障害学や倫理学を研究している立命館大非常勤講師の野崎泰伸さんが、新型コロナウイルスで顕在化する現代社会の問題点を語った。

――緊急事態宣言が出た中、どのような暮らしを送っている。

「ほぼ自宅に閉じこもっているが週3~4回は介護士に来てもらう。風呂に入る介助など、濃厚接触にならざるを得ない場面は多いので互いに気をつけている。私が利用している事業所には利用者が数十人おり、ヘルパーたちが交代で介助している。利用者とヘルパーのいずれかに感染者がいれば、それだけでサービスが止まる。神経質になりすぎてもいけないと思うが、感染の怖さは常に感じている」

――仮に感染した場合には入院する必要も出てくる。

「入院すればおそらく面会謝絶になるのだろうが、いつものような介護を受けられるのかが分からない。意思疎通には支援が必要だが看護師だけでは手が回らないかもしれない。障害者が入院した場合の情報が少ないこともあり不安は大きい」

――自宅にいると情報を集めるのも難しい。

「私は主にインターネットで情報を得ているが、福祉施設に通ってさまざまな人と交流することで情報を得てきた人もいるだろう。障害のためにインターネットを使いづらい人もいる。障害があることで、健常者よりも情報を得づらくなっているのではないか」

――新型コロナウイルスの肺炎が重症化した場合、人工呼吸器の装着で選別が起こる可能性も指摘されている。

「命の選別が行われることには懸念を抱いている。ただ正直に言って、人工呼吸器の装着の相手を選ばなければならない状況になってしまった時にどうするべきかを語るのは難しい。そのような状態にならないために、行動制限などで医療崩壊を防ぐ必要がある」

――世界中で感染者に対する差別も問題となった。

「歴史を振り返れば、ハンセン病患者など感染症と差別の問題は根深いことがわかる。新型コロナウイルスについてもできる限り感染リスクを下げたいという思いは分かるが、たとえばある大学で感染が起こったからと言って、その大学の学生全員と接触するのはおかしい。非合理的で不当な『タグ付け』だろう。私も感染するのは怖い。しかし障害者差別を考えてきた者として、感染症対策のはらむ差別のリスクについては忘れてはならないと思っている」

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