新聞記事から

【報道】 新聞記事より

■「死にたくない…でも死ぬべき」 植松死刑囚の心境は罪神奈川新聞  2020年04月01日 22:30

https://www.kanaloco.jp/article/entry-317183.html

 

県立知的障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)で入所者ら45人が殺傷された事件で、一審横浜地裁の死刑判決が確定した元職員植松聖死刑囚(30)が1日、横浜拘置支所で神奈川新聞社の取材に応じた。弁護人の控訴を自ら取り下げ、死刑を確定させた現在の心境を「安楽死する人の気持ち」と表現。真意を尋ねると「絶対死にたくない、でも死ぬべきだと思っているところが同じ」と説明した。

控訴取り下げの理由については「二審、三審と続けるのは間違っている」と持論を繰り返した。自らの判断は「自死に近い」とも語った。判決確定後は接見や手紙など外部とのやりとりが制限されるため、「葛藤はあったが、裁判をやめることの方が大きな仕事だと思った」と強調した。

公判の最終意見陳述で「どんな判決でも控訴しない」と明言したことには「調子に乗って言い過ぎた」と苦笑いした。両親は取り下げに反対していたという。死への恐怖については「もう慣れてしまった」と答えた。

遺族らから反省や謝罪を求める声が上がっていると指摘すると「罪とは思っていない。(重度障害者が時間と金を奪っている)現実に向き合っていないのは彼らだ」と気色ばむ場面も。直後に「すぐイライラしてしまう。今が幸せじゃないから」と本音を漏らした。

接見時の植松死刑囚は黒い長髪を後ろで一つに結び、薄い青色のフリース姿。接見終了のアラームが鳴ると立ち上がり、「皆さまには大変お世話になりました」と深々と一礼した。普段は頭を下げたままだが、この日は顔を上げて記者らを見送った。

 

 

■聴覚障害者にマスクの壁 口の形読めず「コロナ感染が広がる中、外してとは言えない」

京都新聞 2020年4月26日 8:00

https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/227035

 

新型コロナウイルス感染拡大で、多くの人が着用しているマスクが、聴覚障害のある人にとってコミュニケーションの壁になっている。口の形や表情でも意思疎通を図るほか、同じ手の動きでも違う意味を持つ手話があるためだ。中途障害の人や子どもたちは手話を知らない場合も多いが、当事者たちは「感染が広がる中でマスクを外してほしいとは言えない」と複雑な思いを募らせている。

京都府の乙訓ろうあ協会長の小森信男さん(59)=京都府向日市物集女町=も聴覚障害があり、「私たちは手話の動きだけでコミュニケーションをしているわけではない」と明かす。

例えば、手話の「あ」と「5」は、いずれも手のひら側を相手に向け、親指を出した握り拳で表現する。判断基準は、口の形だ。直後に「じ」という意味の手話が続けば「味(あじ)」にも「5時」にもなるため、同時に口元を確認している。子どもたちの場合は、口の動きだけでやりとりする「口話(こうわ)」を使うことが多いという。

情報に取り残されるだけでなく、感染した場合に入院先へ手話通訳者が入れるかどうかなど、聴覚障害がある人にとっては、コロナウイルス感染拡大によって日々の不安はより大きくなっている。

小森さんは、発言をする数秒だけマスクを外してもらえるとありがたいが、感染防止対策として着けている危機感も分かるだけに、自分からは何も言えないという。「筆談やスマホを使うコミュニケーションもある。世の中には、聞こえない人も生活しているということを知っていてもらえたら」と話している。

〇自治体 通訳者配置や発言時外す

マスクの取り扱いを巡っては、聴覚障害がある人から対応を求める声が各地で上がっている。自治体も手話通訳者を置くなど、情報を正確に伝える方法を模索している。

「正しくマスクを着用し、感染の広がりを防止することは何をおいても優先すべき行動だが、一部の人には大きな困難をもたらしていることを知ってほしい」。聴覚障害がある当事者らでつくるNPO法人「東京都中途失聴・難聴者協会」は3月、インターネット上で声明を発表した。

聴覚に障害がある人は、表情や口元の動きで多くの情報を得ることなども紹介している。事務局長で、自身も聴覚障害がある宇田川芳江さんは「マスクをしないでほしいわけではなく、話をする時に指さしや首を振る動作など、少しだけ配慮があれば助かる人がいることが伝われば」としている。

各自治体へも要望が届いており、京都府と滋賀県では、知事会見に手話通訳者を入れるようにした。通訳者はマスクを外し、口の形も分かるようにしている。高知県や大阪府では、知事が発言時にマスクを外して答えるように変更したという。

 

 

■視覚障害者の外出支援、コロナで不足…ヘルパー誘導「距離」保てず

読売新聞 2020/04/27 15:25

https://www.yomiuri.co.jp/national/20200427-OYT1T50135/

 

視覚障害者が外出の際にガイドヘルパーに同行援護してもらうサービスが、新型コロナウイルスの影響で利用しづらくなっている。ヘルパーは通院や買い物に同行する際、視覚障害者に肘や肩をつかんでもらって誘導する。感染防止の距離を保てず、外出先での感染を懸念する声もあることから、人材確保が難しくなっているという。

視覚障害がある東京都内の男性(72)は4月中旬、生活必需品の買い物に出るためNPOにサービス利用を申し込んだが、ヘルパーを派遣してもらえなかった。ほとんど見えなくなったのは60代になってからで、一人だけでの外出には慣れていない。買い物は近所の人に頼まざるを得なくなったが、「いつもお願いするのは気が引ける」と戸惑う。

NPOの担当者は「体を離して誘導できないので、依頼を受けたがらないヘルパーもいる。通院にはできる限り同行するなどの努力をしているが、全ての要望には応えきれない」と、頭を抱える。

厚生労働省は3月中旬、都道府県などに、同行援護などを行う事業所や自治体に十分な感染防止対策をしたうえで事業継続を求めるように周知してほしいと要請。事業所側もヘルパーの検温やマスク着用の徹底などの対策をしているが、人材確保が難しくなっているという。200人以上のヘルパーがいる東京都足立区の「otomo(オトモ)」は要望に応じられているが、鈴木貴達社長は「ヘルパーの不安が広がり、担い手不足にならないか心配だ」と話す。

一人で歩いている視覚障害者が声をかけられる機会も少なくなったという。東京都豊島区の全盲の女性(64)は「これまでは通りがかりの人が道案内してくれることもあったが、コロナの感染が拡大してからは声をかけてもらえなくなった」と話す。

全盲で、視覚障害者のIT利用に詳しい石川准・静岡県立大教授は「音声で道順を伝えるスマートフォンのアプリなどもあるが、視覚障害者は歩きながらの操作が難しい。人による支援は必要」と指摘する。

日本視覚障害者団体連合は22日、同行援護が利用できるように地域内でのヘルパーの調整などを求める要望書を加藤厚労相などに提出した。

橋井正喜常務理事は「視覚障害者とヘルパーが互いに気まずい思いをしない距離は必要。サービス継続と感染防止を両立する方法を早急に考えなければならない」と話す。

〇同行援護

障害者総合支援法に定められた視覚障害者の外出をサポートするサービス。養成研修を修了するなどしたガイドヘルパーが外出に同行し、移動の支援や代読、代筆などを行う。

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