【報告】 第39回障問連総会と人権シンポジウムが開催されました
野崎泰伸(障問連事務局)
1月26日、第39回総会と人権シンポジウムが神戸市障害者福祉センターにおいて開催されましたので、以下ご報告します。
■第39回障問連総会報告
10時より、神戸市障害者福祉センター会議室Cにて、2019年度(第39回)総会が開催されました。司会の野橋事務局次長のもと、開会が宣言され、加盟31団体のうち、出席12団体、委任13団体、計25団体で過半数となったため、総会成立が確認されました。その後、議長として凪事務局次長が選出されました。
はじめに、2019年度の活動/経過報告がなされ、次に、2020年度の具体的な活動方針が提起されました。続いて、2019年度決算報告ならびに2020年度の予算の提案がなされ、役員が選出されました。新役員として、副代表に青木久実子氏、播磨地区担当に草津良氏、神戸市交渉担当に野橋順子氏、知的障害者問題に野橋氏と栗山和久氏、バリアフリー部会に古川格士氏がそれぞれ就任します。以上、拍手でもってすべて承認、議長退任、閉会となりました。
世界では平和や環境が脅かされ、また日本においても安倍一強政府が居直り続け、皇位の継承やオリンピックなどの国家行事一色に進められています。社会保障に関しても「全世代型社会保障」の名のもとに、財政不安をいたずらにあおり、公的責任をますます弱める方向で動いています。障害者施策に関しても、7月の参議院選挙で重度障害者議員が誕生したものの、5月に行われた仙台地裁での旧優生保護法のもとでの強制不妊手術の国賠訴訟の判決は、憲法違反としながらも原告は実質的に敗訴、国の責任は明らかになっていません。川崎市での医療的ケアが必要な児童の就学拒否をめぐる裁判が続いていますが、憲法を楯に「能力に応じた教育」が肯定されています。総会では、私たちを取り巻く情勢として、以上報告されました。
このように、非常に厳しい情勢ではありますが、国内外の平和や人権を求める運動を見据えつつ、兵庫県内の障害者の人権、自立と解放を求める闘いを継続していきます。今後とも、私たち障問連の運動をよろしくお願い申し上げます。
■人権シンポジウム2019報告
総会に引き続き13時半から、人権シンポジウム2019が同センター会議室A・Bにて行われました。「誰もが排除されないインクルーシブな社会、教育――外国人、障害者あらゆる人が共に生きられる社会を求めて」と題して、NPO法人神戸定住外国人支援センター(KFC)の金宣吉さんに講演いただきました。約40名の参加がありました。
部落解放同盟兵庫県連の今西さんを司会に、石橋事務局長からあいさつ、障問連事務局から基調報告として、外国人児童が特別支援学級に入れられている新聞報道が紹介され、かつて障問連としても取り組まれた外国人無年金障害者問題での共闘の歴史が報告されました。
金さんから、まずはNHKドラマ「心の傷を癒すということ」で取り上げられている精神科医・安克昌氏との思い出を話され、障問連が責任団体として活動していた25年前の被災地障害者センターにも触れられました。
金さんの話の概略としては、次の5点でした。①日本の多国籍化・多民族化の現状、②外国ルーツの子どもの状況、③外国ルーツの子どもの「生きづらさ」、④「外国人」をとりまくと偏見と差別、⑤多様性の本質と多元の意義。簡単に、金さんの話を振り返ります。
○日本の多国籍化・多民族化の現状
在日外国人は「増えている」。しかし、「日本に来たいから行く」という単純な構図でもない。「日本が外国人を呼び寄せている」面もある。ベトナム難民は、ベトナム戦争があったから来ざるを得なかった。日系南米人に関しては、日本に3世まで在留を認めた。90年代以降は、安価な労働者として雇用した。リーマンショックでは、非正規の外国人労働者を解雇、帰国させた。昨年の入管法改変を機に、留学生や技能実習生は増やし、また、労働力の足りないところは貧しい国の外国人を安価で雇用している。そのため、移民の多くは不法滞在ではないが、不法滞在者の多くは騙されて入国している。日本の多国籍化・多民族化には、外国人の人権という観点は薄く、経済状況によって外国人を増やしたり減らしたりしている面が大きい。
○外国ルーツの子どもの状況
日本語指導が必要な児童には、日本人も外国人もいる。しかし教育基本法で就学が保障されているのは日本国籍保持者のみ。外国人の子どもたちが、定時制・通信制に通い、公立の昼間の高校に通えない問題がある。経済的にも、日本人の生活保護世帯の2.5倍という現状がある。
○外国ルーツの子どもの「生きづらさ」
日本が侵略した朝鮮半島からの強制連行による創氏改名の歴史はないが、ベトナム人家庭の児童では「いじめられるから」と「自発的」に名前を日本風にすることがある。ここに「強制はない」と言えるのか。また、日本に子ども時代に来た人も現在は親になって子どもをかかえており、「貧困の再生産」も見られる。
○「外国人」をとりまくと偏見と差別
東京大学特任准教授であった大澤昇平氏のツイート「中国人はパフォーマンスが悪いから、私の会社では中国人は採用しない」は、明らかに間違い。パフォーマンスの良い中国人もいれば、パフォーマンスの悪い中国人もいる。中国人と十把一絡げにするのは中国人差別。真実よりも受け入れられやすさで世の中が回ってしまっている。現在も、福沢諭吉的なアジア人蔑視感が根強い。マスコミ視聴者が受け入れやすいメディアを必要とし、メディアがそれに答え視聴者を「作り上げる」。
○多様性の本質と多元の意義
そのようななかでは、多文化主義とヘイトクライムとは、「外国人性」の強調という意味ではコインの表裏ではないのか。本当の多様性の肯定とは、上っ面の文化の吸収だけではなく、その文化の根差しているものへの理解や、人権の尊重といったことが前提になければならないのではないのか。
その後に行われた質疑応答では、外国人と障害者との差別のされ方の類似性、外国人の子どもの生活、排除しない教室づくり、災害とマイノリティといった論点が議論されました。金さんからは「外国人の子どもたちが社会に参加する力をつけること」「少し年上のマイノリティの先輩たちが教育にかかわること」「当事者が当事者を支える事業の必要性」などのお答えをいただきました。
最後に、事務局次長の凪からあいさつがあり、人権シンポジウム2019を終了しました。
※下記の上映会は金宣吉さんからの情報提供です。
案内 第8回ヒューマンシネマ上映会「ソウルガールズ」(2012年 オーストラリア映画 103分)
オーストラリア先住民アボリジニの女性ソウルボーカルグループの実話を元に人種差別を克服し、新たな
道を切り拓いた人たちの勇気と元気をもらえる作品です。1960年代の大ヒットソウルミュージックの数々
が映画のなかで多く流れており、その音楽を聴いているだけでも楽しい作品ですので是非ご来場ください。
●日時:2020年2月28日(金) 18:00~20:00(字幕版)
●場所:ふたば国際プラザ ●無料 ●定員30人(申込受付順)
●主催・申込・問合せ:ふたば国際プラザ 653-0042 神戸市長田区二葉町7-1-18ふたば学舎Ⅰ-5
TEL 078-747-0280 FAX 078-747-0290 E-mail fic@tbz.t-com.ne.jp
2月 9, 2020