【報告】 兵庫県とのオールラウンド交渉の報告
障問連事務局
11月12日、兵庫県民会館において午前に新たな「ひょうご障害者福祉計画」策定に向けた障問連からのヒアリングが行われたのに続き、午後から関係全部局とのオールラウンド交渉が行われました。以下、要約して報告します。
◆全般的な総括
交渉全体として県の姿勢は後退していると言わざるを得ません。各市町への指導強化(技術的助言)を求めましたが、内容によれば以前の回答からも後退し、県は市町に(指導できない)言えない姿勢が強くなっています。大阪では大阪府が福祉サービス等の留意事項を作成し市町に周知しており、同様に兵庫県に求めましたが消極的な姿勢に終始しました。
また長年にわたり家族会の強い要望でもある重度障害者医療費助成制度についても「行財政改革の厳しい中で現行制度の維持が限界」と今回も回答され、地域活動支援センター施策についても同様の回答。また差別解消に係る県条例の制定要望についても積極的な姿勢は見られません。現在、国における「障害者政策委員会」での差別解消法の見直し議論も踏まえ、引き続き求めていきたいと思います。
◆各課題について
【ひょうご障害者福祉計画について】 回答:障害福祉課(権利擁護)
(県の回答)・・・「前回と同様、15人の特別委員を委嘱したい。本決まりではないが本委員が30人、特別委員を合わせると45人になり十分に意見が言えないため、特別委員だけ集まり意見を聞く場を設けたい」
【強制不妊手術の被害者への対応について】 回答:間接協議(健康増進課)
① 知的障害のある被害者にはどのような配慮を行って個別通知されているのか教えて下さい。
(県の回答)
「被害者への支給制度を広く知らしめるため県と市町にリーフレットにより周知したい。また一般社団法人知的障害者施設連盟等の関係機関や医療機関にもリーフレットを配布し周知したい。個別通知については手術を受けたことが県の記録等により分かった方に対して訪問によりお伝えする予定。県として相談窓口を設置し、障害に合わせて相談に応じるよう努める。分かりやすい表現に心掛ける」
② 知的障害のある被害者は兵庫県内に何人いるのか。
(県の回答)・・・・「把握していない」
【差別解消条例の制定について】 回答:障害福祉課(権利擁護)
(県の回答)・・・「・・本県のユニバーサル社会づくりの推進に関する条例と目指すべき方向性において同一であると考える」ため、制定しないとの極めて不十分な回答だった。
【街づくり・交通・バリアフリーに関わる課題】 回答:県土整備部・都市政策課
○高速道路を運行するバスの車いす障害者への対応(乗務員の介助等)
(県の回答)・・・「高速バスの車椅子乗車については、国が設置し、県や各市や各交通事業所が参加FY移動等円滑化移動等円滑化評価近畿会議に兵庫県も出席し、その前後を活用して国に対して要望内容を伝えます」
○県「福祉のまちづくり条例基本指針」の「目標」の中に、リフトバスの導入率を入れてください。
(県の回答)・・・「バリアフリー法の改正に係る国の動向を踏まえ基本方針を見直していきます」
【地域活動支援センター補助金算定基準の見直しについて】 回答:ユニバーサル推進課
(県の回答)
「事業者の負担軽減の観点から、県の行革プランはあるが、廃止することなく予算を確保して支援してきた。国の地方交付税措置の状況も見ながら基礎的補助を今後とも確保し支援していきたい」
(追加質問)・・・就労支援B型との同日利用を認めて欲しい。県が基準として同じサービスのため認められないとしているが、GHと就労B型とはサービスが異なると認められている。就労B型と地活センターとの役割の違いを認めて欲しい。 → 後日の回答
【訪問系サービス等に関する各市町への留意事項等の通知】 回答:障害福祉課(政策)
(※ 特にたつの市がセルフプランを否定する対応についての県の見解)
(県の回答)・・・「国の通知にある内容は、従来から年度末の各市町の主幹課長会議を活用しながら周知に努めている。個別については個別に対応したい。・・・平成27年から障害福祉サービス等利用計画の義務付けを踏まえ、26年通知にもセルフプランは本人の権利擁護の観点から望ましいとされています。一方では安易なセルフプランは望ましくない」・・・やり取りの後、「相談支援の体制が整っているのかどうかが課題であるが、セルフプランは認められないということはおかしい」。
【知的障害者、精神障害者の1人暮らし支援の在り方について】 回答:障害福祉課(政策)
○重度訪問介護の対象拡大の促進について (※下記に県下市町の実施状況)
(県の回答)
「重要な課題であると認識している。現在の計画の中でも居宅介護や重度訪問介護等の訪問系サービスが計画通りに進んでいる一方、地域により重度訪問介護はサービス供給が進んでいないとも聞いているので、重度訪問の従事者の養成が必要」
○重度訪問介護の対象にならない障害者の地域生活について
(県の回答)
「重度障害者にも対応しているGHの日中一時支援、他の入所者が地域移行した先のGHが加算面で報酬が措置されている。また自立生活援助もある」
【重度訪問介護の対象拡大による新たな利用者数 2019年度上期実績】
県内総数36人(昨年度回答)から今年度は46人に増加していますが、神戸市ではゼロ人です。
市町名 | 知的障害者 | 精神障害者 | 合計人数 |
尼崎市 | 3 | 0 | 3 |
西宮市 | 14 | 3 | 17 |
芦屋市 | 1 | 0 | 1 |
伊丹市 | 13 | 0 | 13 |
宝塚市 | 6 | 1 | 7 |
豊岡市 | 1 | 0 | 0 |
加古川市 | 1 | 0 | 1 |
赤穂市 | 1 | 0 | 1 |
淡路市 | 1 | 0 | 1 |
佐用町 | 1 | 0 | 1 |
計 | 42 | 3 | 46 |
【グループホームについて】 回答:障害福祉課(基盤整備)
○グループホーム開設の補助施策の拡充と柔軟運用について
(県の回答)・・・「補助制度は県単独でなく国庫補助制度のため予算を上回る場合には協議になり、国において選定方法が決められている」
【地域移行~入所、入院時の移動支援利用】 回答:障害福祉課(権利擁護)
○三田市での監禁事件について ~ 県の取り組み状況
(県の文書回答要旨)
・平成30年10月3日付、各市町宛文書により、三田事件の検証結果を周知すると共に、同年12月の県主催の虐待対応力向上研修の開催や、兵庫県版障害者虐待対応マニュアルの更新を伝達した。(別添6)
・次に平成30年12月26日に上記研修を開催し、特に重度の障害児者の現況確認を行い、市町とつながりをもった状態を維持できるよう、庁内組織の情報共有や孤立している障害者の絞り込み方法、更には、家庭訪問等の現認後のフォロー体制の確立などを各市町に技術的助言として伝えた。
・最後には平成31年3月15日に県が主催した市町担当課長会議において、県独自項目などを加えた虐待対応マニュアルを説明し、その活用を促しているところ。
(県の口頭回答)
「市役所には税金や年金等の様々なテータがあり、それと障害者手帳そして福祉サービス利用に難のテータもない人がいるのかを市町が確認し、それと特別支援教育や保健所の個人情報とを重ね、それでも分からない人に訪問していく。フォローは自立支援協議会、計画を作る会議もあり、そこで情報共有し、医療と福祉が同じ方向を向くようにしていく」
○入所、入院時の移動支援について
(県の回答)・・・「一部の施設では買い物や娯楽などを体験して入所者の希望を踏まえ地域移行に取り組んでいる」「移動支援は市町が実施主体となり地域のニーズを踏まえて実施するものであり、対象と認めるのかどうか判断が異なる場合がある。各市町へフィードバックしニーズに応じた支援をお願いしていく」
【継続支援/措置入院者支援委員会】 回答:いのちの対策室(精神)
○2018年度の「継続支援」「措置入院者支援委員会」、それぞれの人数、期間について。
(県の回答)・・・継続支援は合計87人の方を対象として実施した。措置入院者支援委員会は1名の方に対して検討を行った。
(県の回答)・・・その方の状況によって異なるが、半年~1年程度の方が多くなっている。また、継続支援による支援が終了した後も、保険所としてはその方の支援を終了するわけではない。適宜、精神保健福祉法第47条の範疇で対象者の方の支援を行う。
○継続支援になったケースの疾病種別、入院種別の件数を教えてください。
(県の回答)・・・疾病名については、状況によって変動するため集計していないが、統合失調症・躁うつ病の方が多くなっている。平成30年度の支援対象者については、支援開始時の入院形態は、措置が69名、医療保護が8名、その他在宅等が10名となっている。
○個別支援会議などに警察が関与した件数を教えて下さい。
(県の回答)・・・支援計画を作成するに当たり個別支援会議に警察が関与した件数は無い。
【精神科病院の長期在院者について】
精神科病院での入院者数 (兵庫県 2018年6月30日時点) 総入院者数 10210人
入院期間 | 1年~ | 5年~ | 10年~ | 20年~ |
人数 | 2777人 | 1333人 | 1060人 | 826人 |
【地域移行の課題】 回答:県土整備部(住宅管理課)
○病棟転換型居住系施設について
(県の回答)・・・「本県において、前回回答(平成27年)以降も、病棟転換型居住系施設は建設されていない。本県では国の省令を踏まえ、県の設置条例により設置基準が厳格化されており、今後も引き続き、障害者基本法の理念(共生社会の実現)を踏まえ、地域移行の推進に努めていく」。
○公営住宅に係る課題 回答:住宅管理課
(県の回答)・・・「優先枠の取り組み、世帯用件を撤廃して単身入居もできる」と全般的に説明され、精神障害者への配慮については「各団地の協力が不可欠となる事から、精神障害のある入居者に自治会役員や清掃等で配慮することを引き続き要請していく。精神障害への理解は相当時間を要するため障害者問題に詳しい総合相談員を1~2名置いていく」と回答された。
【兵庫県精神医療審査会について】
(県の回答)・・・「平成30年度については、合議体を45回開催し、計7696件の審査を行った。そのうち退院請求が36件、処遇改善請求が5件となっている。退院請求のうち3件を不適当と判断し、県より退院命令を発令した」、そして口頭回答として・・・「人員は国が定める基準を満たしているが、十分かと言われたら課題もある。スタッフの考え方や認識、スキルにも課題があると認識している。引き続き病院の実態について職員からの聞き取りなどに努めたい」。
【精神科病院での身体拘束】 回答:いのちの対策室(精神)
○身体拘束の県の見解と2018年度の数値について
(県の回答)・・・身体拘束については、自殺企図または自傷行為が著しく切迫している場合、多動または不穏が顕著である場合や、その他放置すれば生命の危険が及ぶ恐れがある場合のみ行動を制限できることとされている。県では、各精神科病院において安易に行動制限を実施することがないよう、毎年精神科病院実地指導を行い、各病院の行動制限の最小化が図れるよう指導を行っている。
平成30年精神保健福祉資料(630調査)では、県下30病院(神戸市を除く)のうち、23病院が身体拘束を実施しており、総数は207件となっている。
【保健・医療について】 回答:いのちの対策室(精神)
○生活障害への理解、研修について
(県の回答)・・・「生活障害を含む行動障害については認識している。当事者の意見を聞く事が重要」
○看護師・支援者への当事者ゲストの研修
(県の回答)・・・「当事者の体験から学ぶ事が重要だと認識している。研修に当事者の講師をお願いしている」
【重度障害者医療費助成制度の精神障害2級対象拡大】 回答:いのちの対策室(精神)
(県の回答)・・・「改善したいとの思いはあるが、制度の安定的な運用を重視し対象者の枠組みも現行を維持したい。今すぐの拡大は考えていない。」
【精神障害者への交通割引について】
(県の回答):いのちの対策室(精神)
「県としてJR、バス協会を直接、訪問するなどお願いをしている。同時に他障害と同様、全国的に整備されるべきであると国に要望していきたい」やり取りの後、「実情は理解しているつもり、粘り強く働きかけたい」
(県の回答):ユニバーサル推進課
「6月22日に衆参国会で請願が採択された。国も今後、全国的な課題として認識し検討されるだろう。県として公共交通事業者部会で率先して各事業者に周知したい」
新たな「ひょうご障害者福祉計画」検討の動向
兵庫県障害者福祉審議会では、新たな「ひょうご障害者福祉計画」の策定に向け、すでに審議会の下に、以下のような分科会が設けられ、昨年10月~各分科会での議論が始まっています。
・「ひと」分科会・・・幹事課(ユニバーサル推進課、特別支援教育課)
〈対象分野〉・・・学校教育、生涯学習、いじめ問題、幼児教育・保育の提供体制、地域福祉、発達障害、特別支援教育、障害児支援、地域福祉の人材育成
・「参加」分科会・・・幹事課(ユニバーサル推進課、労政福祉課、特別支援教育課)
〈対象分野〉・・・就労支援、法定雇用、農福連携、職業訓練、障害者差別解消、障害者虐待防止、成年後見、芸術文化、障害者スポーツ、ユニバーサルツーリズム
・「まちもの」分科会・・・幹事課(ユニバーサル推進課、都市政策課)
〈対象分野〉・・・住宅・都市インフラのユニバーサル化、バリアフリー、相談支援、障害福祉サービス、地域移行、精神保健、医療(研究開発含む)、難病、疾病、経済的自立、福祉用具
・「情報」分科会・・・幹事課(ユニバーサル推進課)
〈対象分野〉・・・意思疎通支援(手話、要約筆記等)、情報アクセシビリティ、通訳者等の育成、ICTの活用、防災・防犯対策
・・・この4つの課題は「ユニバーサル条例や総合指針」で分類している項目で、上記のように全ての分科会の幹事課にユニバーサル推進課が入っています。兵庫県担当者に聞くと、「障害福祉計画」の上位に「ユニバーサル条例や総合指針」が位置付けられているため、平成31年9月開催の審議会で了解を得て分科会をスタートさせ、新たな計画もこの分科会と同じ分野として策定の予定とのことです。
しかし現在の計画に示されている「基盤整備」「教育社会参加」「しごと支援」「くらし支援」「安全安心」の5分野から計画の構成が変わります。また、「ひょうご障害者福祉計画」は障害者基本法が求める全体的な理念や施策の方向性を示す総合計画と主に福祉サービス等の数値目標を示す福祉計画を一体として策定され、具体的には数値目標等が重きが置かれるかと思いますが、上記のよう、例えば「まちもの」分科会では、障害福祉サービスからバリアフリー、住宅、精神保健まで多種多様な課題が詰め込まれ、どのように議論されるのか、今後とも注視し特別委員として意見提起していきたいと思います。また2月18日開催の「情報」分科会には西宮在住でピープルファーストの住田理恵さんがゲストに呼ばれ意見を述べられます。今後とも当事者参画を求めていきたいと思います。
2月 9, 2020