市・町の制度 介護保障

【報告:~介護保障をめぐる取り組み~】 自分らしい地域生活の実現~人権としての介護保障を求めて!!

栗山和久(障問連事務局)

■「障害者の介護保障を考える会」が、神戸市で支給量めぐる行政の厳しい対応への取り組みとして2014年に結成され、以降、例会では県下各地からも相談が寄せられています。また「介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネット」にも関わる弁護士を中心に関西で活動する弁護士の皆さんも例会には必ず参加いただき、個別事案への行政交渉支援など取り組まれています。

■神戸市長田区在住のNさんの事例について、「考える会」でも取り上げられ審査請求が意図し行われていますが、今年3月兵庫県からの不服審査請求が棄却、Nさんは裁決の取り消しを求め9月20日に提訴されました。内容は別紙「支援呼びかけ文」を参照ください。「考える会」から障問連にも支援要請が寄せら、支援のほどよろしくお願いします。第1回裁判は11月にも予定されています。

■「神戸市のガイドライン問題」について、9月4日に神戸市障害者支援課と障問連の第2回協議が行われました。第1回協議で、「そもそもの改訂の目的も不明ではないか」との私たちの指摘に対し、改訂目的と内容の文書が提示されたが、極めて杜撰な内容でした。当事者が一切参画しないところで作成された「見直し案」の撤回を引き続き求めました。

また「自立生活センターリングリング」をはじめ3団体により、全国の多くの障害者団体の賛同も得て、要望書が提出されました。問題は広がっています。以下、「考える会」例会報告も含め、報告します。また緊急ですが、12月に下記のような集会を開催します。正式なご案内は次号になりますが、ぜひご参加ください。

・日時:12/6(金) 18時~20時30分

・場所:神戸市勤労会館308号室 (三宮駅からすぐ)

講演「人権としての介護保障の実現をめざして」

講師:藤岡毅弁護士(全国ネット共同代表/自立支援法違憲訴訟弁護団事務局長)

 

■神戸市のガイドライン(支給量基準)問題について

9月10日、障問連加盟団体が運営する事業所から相談の連絡がありました。内容を聞いて愕然としました・・・・。

◆神戸市障害者支援課が間違った制度解釈により各区役所を指導!!

その内容は神戸市から「そもそも重度訪問介護は居宅内でのサービス+移動であり、目的地での介護は想定していないので移動介護加算だけでなく重度訪問自体が使えない」と言われたとのこと。総合支援法の厚労省通知の解釈をめぐる微妙な問題は場合により確かに存在しています。しかし、ヘルパーが移動中は介護しても「外出先での介護はできません」となれば、どれだけ障害者が困るのか、むしろそんなことは有り得るはずもないにも関わらず、このような間違った解釈をし、そして区役所や支援センターに指導を神戸市は行っているのです。相談を寄せた事業所によると、同じ利用者に関わる他の事業所は神戸市の解釈には従わないといけないので撤退すると、市の間違った制度運用により当事者に対して被害が生じているのです。

うっかり間違っていたでは済まされません。障害者の生活実態を顧みず、制度解釈にのみ奔走している神戸市の姿が如実に表れています。ガイドライン問題の第2回協議では障害者支援課は各区役所での対応のばらつきや問題を語っていましたが、支援課自体がこのような基本的な間違いを起こしているのです。そのような行政が行うガイドライン改訂案に対しより一層不信感を抱かざるを得ません。

 

◆神戸市ガイドラインについての話し合いの報告

中尾悦子(自立生活センターリングリング代表)

2019年9月6日、神戸市の出したガイドライン(案)について、「Beすけっと、リングリング、全国自立生活センター協議会」が共同で要望書を提出しました。

Beすけっとからは藤原さん、リングリングからは、中尾、寺田、船橋、浜野、石井が参加しました。神戸市障害者支援課の奥谷課長と遠山係長と、問題点について話し合い、当事者を入れてガイドラインの作り直すことを要望しました。

神戸市の主張としては、「今回の改定は、呼吸器利用などの最重度の人たちの決定がスムーズにできるように変更したもの。支給量を減らす目的ではない。他の区分についても今まで同様に非定型を認めるし、最初の部分には総合支援法の理念も丁寧に書き込む予定。」ということでした。

しかし、私たちとしては、結局はこのガイドラインが区役所の窓口で独り歩きをして、絶対的な判断基準になってしまうことが予測される中で、このまま容認はできません。いくら立派な理念であっても、誰も読まないところに書き込んでいたら意味がないのです。関係個所に具体的な低い数値が書き込まれたり、最重度の人にも一人で過ごす時間を想定するような考えがガイドラインに載っている限り、個々の支給決定に影響が出ることは必須です。

このような問題の多いガイドラインができあがった根本的な理由は、当事者不在で話を進めたからです。今回のガイドライン案を廃止し、改めて作り直す会議を開催すること、そこに当事者を入れることを求めて、話し合いを続けていくつもりです。今回の話し合いについて、神戸市からは10月の初旬に回答をもらう予定です。

 

 

【提出された要望書】

神戸市長 久元喜造 様

自立生活センター神戸Beすけっと

代表  石橋 宏昭

自立生活センターリングリング

代表  中尾 悦子

全国自立生活センター協議会

代表  平下 耕三

 

神戸市居宅系サービスの支給量審査基準等の見直しに関する要望書

 

私たちは、神戸市で活動する自立生活センターと、全国の自立生活センターの連携を担っている団体です。障害当事者が運営しており、どんなに重度の障害があっても、地域で自分らしく生きられる社会をめざして活動しています。

現在、神戸市において、居宅系サービスの支給量審査基準(いわゆるガイドライン)が10年ぶりに改訂されようとしています。私たちは、今回、神戸市が提示した改訂案が障害当事者の意見も全く聞かず拙速に作られたこと、そしてその不十分な内容に強く抗議します。

 

神戸市は、ガイドラインの見直しの理由として「様々な法制度の改正が背景にある」と述べています。そうであれば、今回の見直しにおいて、障害当事者が参画することは必要不可欠です。

2014年に国連障害者権利条約が批准され、それに伴って様々な法律が改訂されました。権利条約は「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という世界的な障害当事者のスローガンで成立されたものです。批准国となった日本では、国レベルでも各自治体でも、障害者施策の策定や検討をするときには、権利条約の理念に従って障害当事者の参画が実施されるべきです。今回の神戸市での見直しにおいても、本来は、障害当事者や関係事業者、有識者も交えて検討会を立ち上げることが求められていたはずです。それにも関わらず、今回の検討会は「神戸市障害者支援課・関係課・区役所障害担当・障害者地域生活支援センター」のみで構成され、非公開で議事録すら公表されていません。さらに当初は、障害当事者等からの意見聴取を行い、それを踏まえて市当局が案を作成するというスケジュールをたてていましたが、それすら守られませんでした。

 

さらに問題なのは、今回、出来上がったガイドライン案が、地域で暮らす障害者の現実に即したものにはなっていないことです。障害者権利条約、障害者基本法、総合支援法のいずれにおいても、どんなに障害が重くても地域社会で自立した生活を送る事は「権利」とされています。その権利を実現する手段が重度訪問介護や居宅介護などの居宅系サービスであり、それらが適切な量で支給されることは、障害当事者が生きるための最低限の保障です。障害者それぞれの状況にあわせて、実際に必要な時間数が支給されることが重要です。そのためにも、支給量基準(ガイドライン)が地域生活を不可能にさせる内容であっては困ります。

しかし神戸市が今回示した案では、最重度の障害者の単身者においても、重度訪問介護の月支給量が279時間を基準とされています。「様々な法制度の改正が背景にある」と言いながら、今までとまったく変わらない時間数です。そもそも、1日わずか9時間の支給量で、重度の障害者が生活できるわけはありません。また家族介護を前提とするかのような「介護環境区分」を新たに設けたり、常時痰の吸引が必要な重度障害者に対しても、「一人で過ごせる時間」を想定するなど、支給量の抑制を意図したとしか考えられない内容になっています。

このままでは、今回のガイドライン見直しは法制度の改正に伴って行うのではなく、単に神戸市が支給量を削減したいために行うということになり、明らかに不当な行為です。障害者が地域で生きる権利を奪うこのような改定は、私たち障害当事者にとって決して容認できるものではありません。

私たちは、神戸市が今回示された案を撤回し、障害当事者等の参画を保障した検討会を改めて立ち上げることを強く要望します。

 

賛同団体:2019年8月18日現在(順不同 計33団体)

自立生活センター 自立の魂/CILこねくと/全国障害者介護保障協議会/メインストリーム協会/CIL星空/NPO 障害者生活支援センター・てごーす/自立生活センターアークスペクトラム/自立生活センター日野/CILふちゅう/CILぶるーむ/自立生活センター三田/CILもりおか/自立生活センターてくてく/CILイルカ/ながさき自立生活センターこころ/自立生活センター立川/自立生活センターほっとらいふ/自立生活センター 十彩/自立生活センター ILみなみTama/ヒューマンケア協会/神経筋疾患ネットワーク/静岡障害者自立生活センター/フリーダム21/ぐっどらいふ大分/アシストミル/自立生活センターちくご/NPO法人アイアンドユウ/障害者自立応援センターYAH!DOみやざき/CILおのみち/岡崎自立生活センターぴあはうす/自立生活センターヒューマンネットワーク熊本/CILくにたち援助為センター/福祉のまちづくりの会

 

 

■「障害者の介護保障を考える会」例会報告

例会は2か月に一度開催しています。8月11日に神戸市障害福祉センターにおいて県下各地から障害当事者や弁護士も交え、22名が参加して開催されました。個人情報に関わる内容のため詳しい報告はできませんが、この間寄せられた相談の進捗状況も含め、以下、報告します。

 

〈丹波市の事例〉

昨年度から相談が寄せられ、本人が希望する重度訪問介護の支給量を丹波市が認めず、ショートステイ(短期入所)の利用を半ば強制するような市の対応。8月に支援者から連絡があり、市も支給量の増量を認めそうだとのこと・・・また決定でなく今後も見守り相談に乗っていきたいと思います。

 

〈太子町の事例〉

「セルフプランは認められません。相談支援事業者が作成した障害福祉サービス等利用計画がなければ支給決定できません」との市の対応については、情報開示も含め弁護士が入り相談が継続しています。

 

〈姫路の事例1〉

姫路市の加盟団体も支援していますが、本人の生活実態や希望が全く顧みられていない難病者の事例について、弁護士が情報開示などを行って支援が継続しています。

 

〈姫路の事例2〉

昨年度から更新の度に重度訪問介護の支給量が減らされているが納得できないとの相談について。弁護士を中心に助言されました。

 

【神戸のNさんから】

・不服申請の棄却裁決がでた・・・いろいろ悩んだが、今回は時間数について争うのではなく、減らすのなら理由をきちんと付記するべきという点で兵庫県神戸市を提訴しようと思う。支援を是非お願いしたい。

→会として応援することは賛同を得た上で障問連の呼びかけ文章をみんなで読み、感想や意見を交換した。

◆「障害者の介護保障を考える会」次回例会のご案内

日時:10月27日(日) 13時半~16時半

場所:神戸市東部在宅障害者福祉センター2階多目的室

(JR灘駅、下車すぐ)

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