市・町の制度

【報告】 北播磨地域における活動について

小野市 藤本あさみ(オールフリーの会 代表)

 

昨年12月23日、小野市において「上映会&トークセッション」というイベントを開催し、障問連の方々をはじめ近隣市町から100名を超える参加があった。その際の報告は2019年2月号に掲載いただいたが、今回は今年度の計画やその後の活動についてお伝えしたい。

 

オールフリーの会 とは

この会は、同圏域の障害当事者・社会福祉士・相談支援専門員・介助者・介護福祉士などがメンバーである。地域の障害福祉サービス活性化を図ること、ひいては障害者に対する理解を深め事業への協力者を増やし、障害の有無に関係なく自分の生き方が自由に選べる社会を築くことを目的としている。

地域生活が可能な障害者が、安心して地域生活を開始・継続するための支援やサービスは様々必要であるが、とりわけ訪問系サービスの整備が必須となる。北播磨は訪問系サービス整備が遅れており、事業所自体が少なく人員不足も顕著であり、訪問系サービスを利用したくても出来ず家族介助に依存せざるを得ない。当事者が住み慣れた地域での生活を望んでも、特に重度障害者には病院や施設という選択肢しかない。「地域での自立生活」という考え方が浸透していない地域である。そこで、この問題をなんとかしたい!と、当事者と支援者有志が集まった。

2018年1月から月一定例会を行い、イベント企画等を始めた。昨年は手探り状態の中、まずは同12月のイベントを開催するために有志は上映実行委員となり、その後「オールフリーの会」という名で活動継続している。

 

今年度の計画・活動

◆障害当事者と支援者・一般の人との関わり又は対話の場、また当事者の意見を集約して行政機関に投げかける ⇒zadankai(座談会)

障害当事者の声を拾い上げ、届ける場が必要である。同圏域では町中で障害者を見かける機会も非常に少なく、支援職以外は、障害者と関わる機会が本当に無いため偏見や誤解が多い。少しでも関心がある人達から関わりを持ち、支援者・共感者を増やすことが目的である。初回は4月に行い、8月も企画中である。

 

◆支援者への教育活動 ⇒研修会、セミナー等の開催

今年度は、会メンバー及びイベント協力者の活動内容に対する基本スタンスを整え共通認識しておくため、今一度「権利・人権」について学ぶための権利擁護勉強会を企画。講師は、障害者の介護保障にも詳しい青木志帆弁護士に依頼。

「障害者の権利擁護 -障害者差別解消法を中心に-」というタイトルで約90分、みっちりと話していただいた。この日のポイントは以下のとおり。

①「基本的人権」は「義務」とバーター(交換条件)ではない

②これからの「福祉」は「生存権保障」ではない

③「障害者権利条約×障害者差別解消法」

④障害を理由とする差別を見つけては、なんでもかんでも「合理的配慮」の話にしないこと

 

まず①について、世の中的にありがちな間違いとして、まん延している「障害者は義務も果たさずに権利ばかり主張する」というセリフについてである。「義務」を果たした見返りとして「基本的人権」は保障されるものではないということ。いつからこんな間違った捉え方が広まったのか…権利という言葉を口にすれば、いかにも我が強く相手の都合を考えずに押し通してくる要求のように捉えられるが、あらゆる場面で権利が侵害されている当事者であるからこそ主張せざるを得ないのであって、主張しなくてもよい(したことのない)人達は、そもそもその権利を意識しなくとも享受しているのである。

②については、「いかにして最低限度の生活を確保するか」ではなく、「いかにして本人の意向を実現できるか」ということである。ここを目指した支援が、障害者の権利擁護と言える。

③について、障害者権利条約では「障害のない者との平等=機会の平等」を保障する、とある。ここで、「平等」という捉え方が社会一般的にズレているという。個々人の違いに全く着目せず全員を等しく取り扱う事(左図)ではなく、結果が平等になるように個々人の違いに応じた取り扱いをすること=結果の平等(右図)、が本当の「障害のない者との平等」となる。この法的根拠が、障害者権利条約であり、障害者差別解消法であり、合理的配慮という発想である。

しかし個人的にも感じることは、この右図の「木箱2つ」を世の中は、ズルいだの不公平だのと言う。この無意識の誤った常識が行政内にも大いにあるのでは…という点だ。さらに「木箱2つ」は人々の「やさしさ」によって提供されたりされなかったり、では問題である。これまで、合理的配慮の提供という言葉はなくとも、機会の平等は「やさしさ」=社会や人々に余裕がある時に善意で提供されてきた配慮によってではなかっただろうか。

車いすユーザーに対して公共バスへの乗車拒否が今なおアチコチで起こり、世論も「それっておかしくない?」という反応ではなく「だって仕方ないよねー」となり、当たり前の権利という視点からではなく運転手個々人の「やさしさや善意」で左右されているのが現状だ。

④について、障害者差別解消法といえば「この問題は合理的配慮の不提供だ!」となりがちであるが、よくよく読み込むと「不当な差別的取り扱い」の問題も多いという。この判断を誤ると、解決へ導く手段も変わってくる。まさに自分自身、なんでもかんでも合理的配慮の話とゴッチャになっていたが、このポイントは当事者にとっても支援職にとっても必ず覚えておかなければならない。

 

◆社会への啓発 ⇒同圏域民に向けて年一度のイベントを開催

障害福祉サービスの地域格差が大きい現実を、障害当事者や家族は元より福祉関係職にもあまり知られておらず、その現状を各事業を通して知ってもらう。その上で、同圏域の障害福祉サービス整備の必要性を共に考える必要がある。当事者が支援者と共に発信するインパクトあるイベントは継続していくことが重要で、昨年初めて行ったが、今年も同時期で12/22に開催する。内容はこれから詰めていく。

 

◆重度訪問介護従事者養成研修

啓発活動や場づくりだけでなく、ヘルパー増のための事業を同時進行させる。

ヘルパー不足が喫緊の課題であり、同圏域は訪問系サービスが非常に乏しく、利用したくても出来ない状態である。一人でも増やす必要があるため、既存事業所等と協力し重度訪問介護従事者養成研修を開催し、必要なヘルパーを増やす活動を始めるため検討中。

 

◆東播ブロック社会福祉士会において活動報告

共に活動している仲間が上記会の役員をしており、その繋がりから今年度総会(6/2)において「重度障害者が自立した生活を地域で実現するために -介護時間と社会資源の地域格差-」というタイトルで60分の話す機会をいただいた。

東播ブロック社会福祉士会は、明石市から西脇市・多可町までの広いエリアの社会福祉士が所属している。社会福祉士の業務としては、介護・医療・障害・児童・行政など領域が非常に様々である。その中で、重度障害者の地域生活における諸問題はやはりマイナーなのか、はたまた地域性なのか専門職にもほぼ知られておらず、ソーシャルワークを日々行う専門職の方々に知っていただくありがたい機会となった。

障害当事者が必要な情報を得ることは重要であるが、障害によっては身体的・物理的に難しい当事者も多いと思う。抱える問題に関して、何からどこから手を付ければよいのかさえ分からないものだ。そんな当事者に近い存在である社会福祉士の方々に現状を知ってもらい、最初のキッカケや糸口になってもらえたらと願う。

 

DPI日本会議 三澤基金を活用した障害平等研修(DET)ファシリテーター養成講座の受講

障害平等研修(Disability Equality Training:DET、以下DET)とは、障害者自身がファシリテーター(対話の進行役)となって進める障害学習で、障害者差別解消法を推進するための研修である。障害者の社会参加や多様性に基づいた共生社会を創ることを目的として、発見型学習という対話に基づく方法を用い、障害者を排除しないインクルーシブな組織づくりを参加者と一緒に考えていく研修で、この度、そのファシリテーターになるための研修を受講する。

このDETファシリテーター養成講座は今年度で7回目の開催となるそうだ。5/18から始まっており、主にオンデマンド型の研修方法なのだが、約半年かけて受講する中でスクーリングが3回あり、会場が東京都大田区となっている。介助者必須の身であるため、スクーリングの際の旅費もなかなかの金額となる。そんな時、DPI日本会議において「次世代障害者のリーダー育成を目的に、2014年9月に設立された三澤了基金」なる助成がある情報を得た。

この基金では、“「やりたいこと」はあるけれど、資金調達が難しく実行できない若手障害当事者を応援して、活動資金の提供や資金調達のお手伝いをします。対象は個人・団体・グループなど。申請受付は随時!みんなで基金を活用しましょう!” という事で、ダメ元で申請をした。ちなみに、申請者である私はもう若手ではない。しかし、申請者の年齢ではなく、その助成申請の事業が今後どのように若手障害者に影響を与えていくのか、が重視されているため、これをご覧の障害当事者の皆さんも、資金面で実施にうつせない活動等があれば申請を考えてみるのも手ではないだろうか。

さて、ありがたいことに助成決定となり、費用面の負担もかなり軽減され勉強の機会を得ることとなった。現時点では、このDETはファシリテーターが関東圏に多いため、関西方面ではDETは知られていないし受ける機会も非常に少ない。少しでも地元や兵庫県内で広めていけるよう、また活動しているオールフリーの会としても社会モデルの捉え方は非常に重要であるため、まずは自身が学んできたいと考えている。

 

(図については http://drfridge.hatenablog.jp/entry/2018/05/08/094106 を参照)

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