教育

【教育】 楠高校2年連続不合格に対する神戸市教委への抗議と要望

抗議ならびに要望書 2019年5月23日

 

神戸市長     久元 喜造様

神戸市教育長   長田 淳 様

神戸市立楠高校長 有元 文祐様

 

障害者問題を考える兵庫県連絡会議

代表  福永年久

 

2年連続の障害を理由とした定員内不合格ならびに、3月19日の合格発表に際し、

警察を導入した神戸市教委に強く抗議する

 

権田祐也君は昨年度、神戸市立楠高校を2度にわたって定員内不合格になった。辛い1年間を経、今年度も一次試験で楠高校を受験したが、今年もまた、たった一人の定員内不合格になった。

その後、権田君は、再募集試験で兵庫県立湊川高校を受験し合格を果たした。権田君は1年ぶりの学校生活、授業に集中して参加し何より同世代の生徒たちと一緒にいる事に喜びを感じ休むことなく元気に通学している。権田君にとって共に学ぶ場が確保されたことは何よりかけがえのないものである。

しかし、湊川高校に合格した喜びと共に、それではなぜ楠高校を不合格になったのか。障害が理由ではないと言うなら一体何なのか。改めてその疑問はより一層大きくなり、有元校長および神戸市教委に対する私たちの憤りと不信感は強まっている。

不合格決定だけではない。楠高校の合格発表では、学校内外に多数の刑事が配置されるという極めて異常な対応に、権田君親子と私たちは直面した。私たち障問連として30年に及ぶ高校入学支援の取り組み、また全国的な高校入学支援の取り組みの中でも、このような事態は聞いたことはない、前代未聞の事態である。権田君の両親は、昨年から1年間の有元校長及び神戸市教委の言動も含め、「このまま黙っていることはできない」と抗議の意思を示している。「学校に行きたい、共に学びたい」、そんな当たり前の願いを警察導入してまでも拒絶した楠高校および神戸市教委に対して、私たち障問連は、権田君親子と共に以下、強く抗議するものである。

 

「総合判断」~ なぜ県立湊川高校と市立楠高校とで判定結果が異なるのか

 

楠高校および神戸市教委は繰り返し「その高校の教育を受けるに足る能力・適性等を総合的に判定し、合格者を決定している」と言う。しかし、それは権田君が合格した県立高校においても同じである。

合否判定資料Aは中学からの調査書であり両校には同じものが提出されている。そして判定資料Bは当日の学力検査である。権田君親子が情報開示した昨年度、今年度の学力検査結果を見れば、昨年度の楠高校の再募集試験の点数より今年度の湊川高校の点数の方が下回っている。これは一体どういうことなのか。同じ兵庫県の神戸市内の同規模の定時制高校で、なぜこのような判定の違い、矛盾した結果が生じるのか。

市立・県立の違いはあれ、兵庫県公立高等学校入学者選抜要綱に基づき行われ、「身体に障害がある事のみを持って不合理な取り扱いは行わないように」との県教委通知が発せられている。湊川高校の合格発表直後、高校側は権田君と母親に「看護師配置の事は考えずに判定しました」とわざわざ説明した。湊川高校としては、この県教委通知を遵守した、障害を理由に拒むことはしなかったのだと、昨年からの経緯を知るからこそ、高校としてあえて伝えたのだろう。

また「定員内不合格」については、「教育上、支障がある場合を除き生徒募集定員を充足するよう」との通知を県教委も市教委も高校に出している。現在、湊川高校では看護師や介助員、学習支援員の体制整備に向け県教委と協議し尽力している。これらの支援があれば、「教育上、支障はない」と湊川高校は判断したのだ。それでは、楠高校はどのような理由で権田君の入学が「教育上、支障がある」と判断したのか。この点については、一切楠高校および神戸市教委は明らかにしていない。

昨年度の定時制高校の約1000人が受験した入学者選抜で、定員内不合格はたった1人、権田君だけであった。定員内での不合格の理由として、重い障害があること以外に一体何があると言うのか。権田君の両親にとって最も知りたいのはその一点である。しかし昨年度の再募集試験の合格発表後に、有元校長が母親に伝えた「定員内であれば点数は関係ありません。点数が高くても不合格になった例はあります」、「それではどうすれば合格できるのか」との問いに対して校長の放った「この一年間で祐也君が劇的に成長すれば・・・」との言葉にどれだけ傷つけられどん底に突き落とされたか。合格するためには点数を取らないといけないと息子を怒りながらも勉強させたこと、中学3年間、医療機関や訓練施設に通い点数が取れるように奔走し続けてきた親子の日々の苦悩と尊厳が、この校長発言によって、どれだけ傷つけられたか。

 

「看護師、支援員の配置」~ なぜ県立湊川高校と市立楠高校で対応が異なるのか

 

湊川高校の合格発表直後に高校は「・・・できる限りの事はさせてもらいます。学校生活を送りながら一緒に考えていきましょう」と権田君親子に伝え、その後持たれた入学説明会でも、看護師配置についても前向きに相談しながら進めるとの説明を受けた。兵庫県の公立高校では初の看護師配置の事例ではあるが、県教委もバックアップしながら前向きに進められている。また介助支援や学習支援についても具体的な人材確保に高校は懸命に努力している。

それに対し、神戸市立楠高校と神戸市教委の対応はどうであったのか。有元校長は昨年の受験前に自ら淡路市まで出向き「看護師配置は困難、制度の壁が高過ぎる」「支援者など外部の者は一切教室には入れません」と権田君親子にわざわざ伝え、昨年11月13日に楠高校で行われた有元校長と権田君親子との話し合いでは、「楠高校には入学後に、こんなはずではなかったと不本意入学者が多くいる。権田君に照らせば看護師配置も含めた必要な支援が困難であり、仮に入学しても不本意な結果になるかもしれない、特別支援学校高等部は考えられないのか」と有元校長自ら説明し、執拗に「なぜ楠高校が良いのか、他の高校は考えられないのか」と発言した事実を認めている。これらの事実は楠高校への受験を断念させるため以外に何があったというのか。さらに神戸市教委は2回持たれた昨年の話し合いで、私たちが、これらの有元校長の言動は障害者差別解消法に反する対応ではなかったのかとの問いに対し、「合理的配慮の踏み込んだ対応、現状を伝えただけ」などと強弁、有元校長の言動をひたすら擁護し続けてきた。

看護師配置、支援員の配置など合理的配慮の提供に関して、県立高校・県教委と神戸市立高校・神戸市教委とで、なぜここまで対応が異なるのか。今年3月6日神戸市議会で市会議員からの質疑に対し長田教育長は「本市の全日制・定時制の高等学校において、これまでに重度・軽度にかかわらず、障害のある生徒を受け入れてきている」と答弁している。重度障害者も受け入れていると言うなら、有元校長はなぜ異例な受験前の個別訪問まで行って上記のような言動を行ったのか、一切明らかにされていない。

また同日の神戸市議会で長田教育長は「・・・看護師配置なり劇的に成長云々というようなお話が出たが、私どもも校長に確認したところ、当然、現在高等学校に看護師を配置する制度が無いというようなお答え、あるいは、もし本校に入学した場合は当然関係機関にお願いするが、校長の判断で配置すると約束できる立場にはないというような現状を説明したというふうに聞いている・・・」と答弁している。

しかし県立高校に看護師を配置する制度があるかと言えば、存在はしていない。制度の有無でなく、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供は義務なのである。また湊川高校としても校長判断で看護師配置が約束できるものではなかったし、今回の再募集試験に際して、それらを本人と保護者に事前にわざわざ「現状を伝えに行った」事実などはない。

 

議会、市長の声すら無視する神戸市教委

 

このように神戸市教委・楠高校と県教委・湊川高校との対応の違いは歴然としている。障害者基本法が定める「障害がある者と障害がない者との平等」、その実現のためには障害のある人の権利が保障されなければならず、障害者差別解消法では必要な合理的配慮の提供は義務とされ、さらに「可能な限り共に学ぶ教育、インクルーシブ教育」の推進が法的にも求められている。

湊川高校と県教委はこれら法制度に則り判断、対応したのだ。しかし神戸市教委は差別的な言動を繰り返す有元校長を一貫して擁護し、様々な法制度に照らし矛盾を追求する私たちの声、最終的には1月21日付に提出した私たち障問連の要望書に対し、1月31日付「話し合いには応じられません」との一方的な文書回答を持も7って、私たちとの話し合いを一切、拒否し続けてきた。

さらにマスコミでも障害者の高校入学の在り方、定員内不合格問題などが大きく報じられるなか、昨年12月6日定例記者会見での「定員内であれば丁寧な説明が求められる」との神戸市長の見解、また今年2月13日神戸市議会では多くの議員から「神戸市教委は話し合いには応じるべき」との意見が出され、神戸市議会の公文書である「神市会政第410号-3 (平成31年2月20日神戸市会議長北山 順一)」通知には、「今後も話し合いを続けていくとの当局の説明があった」とあるが、それらを一切無視し居直り続けているのが今の神戸市教委である。まさにこの神戸市教委の対応は、いじめによる中学生の自死をめぐって、社会的に今まさに糾弾されている隠ぺい事件と通底するものである。

 

3月19日楠高校合格発表での警察導入の異常な事態

 

その日、権田君の合格発表を見守ろうと、祐也君に幼いころから関わってきた淡路市の元教員、福祉の相談員そして約10人の重度の車いす障害者とその介護者、数人の支援者が楠高校の校門近くで、通行人の邪魔にならないように待機していた。校門に行くと「受験生と保護者、関係者以外の立ち入りを禁じる」との立て看板が掲げられ、閉ざされた校門の向こうでは、学校の敷地内には一歩も入れまいと立ち塞がる教師たちがいた。昨年度にはなかったこの光景に私たちは驚いた。

さらに発表の時間が来たため、権田君親子と淡路の関係者だけが発表を見るため校内に入り、私たち支援者は校外で整然と見守ろうとした。その時、私たちが目にしたのは、校舎2階の教室から私たちを見下ろすように、帽子・マスク・サングラスに身を固めた私服刑事と思われる者がビデオカメラを私たちに向け回し続けていたのだ。また私たちの背後の路上に4人、50メートルほど離れた所で校舎内の刑事と連絡を取りながらこちらの様子を伺う指揮官風の私服刑事が1人立っているではないか。路上にいた刑事の一人は「トラブルが発生すれば逮捕する、そのために来た」と、その意図をあからさまに口にしていた。これは一体どういうことなのか。定員内でたった1人の不合格がどれだけ辛いか。私たちは権田君親子と共に発表に立ち会い、不合格なら共に悔しさを噛みしめ合い励まそうと、ただそのために立ち会っただけである。それなのに、これは、何という理不尽な対応か、皆が一様に驚き憤りを感じた。

合格発表が貼り出された校舎内では、多くの教員が権田君親子を取り囲んだ。発表のフロアーから、わずか数メートル先に校長室がある。権田君の父親は「不合格理由を聞きたいので校長先生に会わせてほしい」と求め近づこうとすると、一斉に教員が立ちはだかる。校長室の前にも数人の教員が門番のように立っている。父親は何度も校長に会わせて欲しいと要望するが、教頭が「校長は会わないよう教育委員会から指示を受けている」と言い、立ちはだかる教師たちに雑じっていた刑事が、「早く出て行くように」と威嚇したのだ。

 

障害者差別を隠ぺいし警察を導入してでも排除する神戸市教委を糾弾する

 

昨年度の楠高校の合格発表に父親は立ち会えなかった。不合格の結果のみならず、有元校長によるひどい発言に息子と母親だけをさらしてしまったと、父親は強く悔いている。だからこそ、父親は今年の合格発表には無理してでも仕事のやりくりを付け立ち会い見守ったのだ。仮に不合格なら改めて有元校長に、なぜ不合格なのか、障害が理由ではないと言うなら何なのだと、わが子の尊厳にかけて、自分が向き合うのだと、そう覚悟して臨んだのであった。その父親に対し、神戸市教委は校長に会わないように指示をだし、あまつさえ警察を導入してでもそれを阻んだのである。

昨年8月28日、神戸市教育委員会との話し合いで、権田君の父親は神戸市教育委員会を糾弾した。

「あんた空飛べますか。飛んでみなはれ。人の子をなんやと思うとるんや。納得できること何か言えや。これ差別以外に何があるんや。どないしたら劇的に成長するんや。何が腹立ついうて、その一言が本当に腹立つんです」。

そして昨年11月13日、権田君の父親は有元校長に、直接こう問うた。

「祐也も行きたいと言うので頑張って3年間勉強した結果、この子なりのすべてを出したつもりです。しかし不合格。基準を満たしていない、挙げ句の果てには点数は関係ない。どないしたら合格できるのですかと聞いたら、劇的に成長すればと言われる。先生が親ならどう思いますか。こんな子を持った親ならどう思いますか」。

重度の脳性マヒの障害を持つ者に何をもって「劇的に成長せよ」と言うのか。校長のこの発言は、障害者を愚弄し見下す発言でしかない。障害の重い者は、その障害を克服し「劇的に成長」しない限り、高校への入学は許可しない、それが神戸市教委が繰り返す「その校の教育を受けるに足る能力・適性等を総合的に判定し、合格者を決定している」の真意なのである。明らかな障害を理由とした入学拒否を隠ぺいするため、ただ話し合いを求める父親に対し神戸市教委は警察を差し向けたのだ。神戸市長が言う「高校や市教委は丁寧に説明すべきである」との意見、神戸市議会の意見、それすらも神戸市教委は無視しているのだ。

私たちは、権田君親子ともに神戸市教委、有元楠高校長に対し、話し合いの場を持つよう要望する。

 

○同要望書は5月23日に神戸市教委に提出しました。しかし現在(6/6)まで何らの回答はありません。引き続き話し合いの場を求めていきます。

○権田君の高校生活

5月後半から看護師が配置され、日替わりですが学習支援員もようやく確保され、元気に通学していると聞いています。7月教育集会で、報告を受けたいと思います。

« »