教育

【報告】 第35回 DPI日本会議全国集会in松山 参加報告

凪 裕之(障問連事務局次長)

5月31日、松山でDPI日本会議の全国集会が開かれた。DPIは「障害者インターナショナル」という世界規模のNGO組織で障問連も加盟している。当日は全国から約200名の障害当事者らが参加していた。車いす障害者などが大半を占めていた。

 

◆国内関係法を権利条約に合うようバージョンアップを!!

午前の全体会のテーマは・・・

「来たぞ見直し! 障害者権利条約の完全実施へ国内法のバージョンアップを!

~ 障害者基本法改正から障害者差別解消法見直しへ ~」

報告では、来年の条約の日本の建設的対話(審査)に向け、DPIなども関わっている日本障害者フォーラム(JDF)が昨年から取り組んできたパラレルレポート(国でなく市民社会の側からの議論)を今月、国連に提出する予定。その後、来年に国連権利委員会と国による双方向の建設的対話を経、勧告、勧告に対する国の実施へと続く。パラレルレポートの概要説明があり、今後は国連障害者権利委員会で事前質問、審理が行われ、当事者の傍聴、ロビー活動が必要になってくる。条約を道標に条約のレベルまで今後国内の制度改革の第2ラウンドを行い、国内法のバージョンアップ、「私たち抜きに私たちのことを決めないで」を大切にした展開を強調された。

ヨーロッパのDPIからSDGs(持続的開発目標)の視点から障害者権利条約についてビデオ報告がなされ、権利条約の総括所見(勧告)にも多くの言及がされている。また障害者差別解消法が今年で3年目で見直しを迎え、DPIはプロジェクトチームを立ち上げ、事例の収集、提案、ロビー活動を行っている。DPIは法律を変えるのは私たちしだい、差別事例こそ大きな力になると繰り返した。報告の後のシンポジウムは、日身連会長(JDF代表)、学者、盲ろう者の当事者、当事者の親であり弁護士の4人で、それぞれの差別事例やそれに対する取り組み、法律の問題点(周知・啓発活動の重要性、差別の定義、紛争解決の仕組み、民間の合理的配慮の提供の義務化など)について出された。

 

◆インクルーシブ教育分科会で権田君の問題を報告  全国も厳しい状況

午後は教育分科会に報告者として参加しました。テーマは「障害者の高校進学について」。私の兵庫の報告(権田君のこと)の他、沖縄と北海道から高校進学の報告があった。

・沖縄・・・長位鈴子さん(DPI常任委員、沖縄県自立生活センター・イルカ代表)からは、昨年に続き今年も不合格になった仲村伊織君の報告がされた。教育委員会は学習指導要領それも高等学校でなく、特別支援学校の指導要領に本人を当てはめようとする、どうしていったらいいのかと会場に終始ぶつけていた。

・北海道・・・山崎恵さん(DPI常任委員、インクルネットほっかいどう)は、自己推薦と一般入試で合格した二人のことを挙げながら、受験時の配慮で作文で単語帳を膨大に作るなど大変苦労したこと、筆記補助を誰にするか、記述もすべて選択式に希望するなど行った。問題作成や配慮は道教委と札幌市教委にわかれていて、対応もまちまちだったようだ(?)。

会場からは、日教組の人が沖縄の不合格に触れ、地域の小中学校に行ったことを言い続けていくことが大事だと発言されました。

・神奈川藤沢市の市会議員(元中学教諭)は、高校教師の適格者主義にかなり不満をもち、神奈川県では知的障害者を特別枠で受け入れるインクルーシブ教育実践推進校を3校から2020年入試から14校になり、3校が藤沢市内に指定されるが、藤沢市は中学から色んな子がいるのが当たり前で、特別支援教育とかインクルーシブとかあえて強調せず、自然な形で共に学ぶことを実現している。親が学校に付き添う問題も指摘していた。

・広島からは、20年前まで定員内不合格がなかったが、教育委員会が代わり、2ケタ、最近では3ケタもの定員内不合格が出ている酷い状況。その中で自立生活を準備し、不合格を経験しながら再びチャレンジするかどう

 

かの本人がつい先日亡くなられた状況でも、兵庫の報道などから失意の中でも広島でも取り組みを続けていきたいとの発言があった。

 

◆世界の流れは私たちの味方~高校進学の道を絶やしてはならない

アドバイザーのDPIの崔さんからは、沖縄の2年続きの不合格の即効の解決策にはならないとしながらも、JDFのパラレルレポートの高校教育の部分に触れ、日本の状況、適格者主義など問題点、条約の概念、海外の教育制度にも触れながら、世界の流れは我々の味方であり、能力主義からの脱却するため、「障害に基づく差別」を理解し、定員内不合格が「差別」であることを言い続けることだとまとめた。

高校問題は、各地で運動の有り無し、運動があっても後退、なんとか前進など様々だ。しかし、重い障害者の高校入学は全国的にまだまだ閉ざされ、厳しい現実がある。

世界の実情や障害者に関する様々な考え方で私たち障害者が問うていきながら、各地の障害者の高校進学の道を絶やしてはならないと強く感じた。

 

○教育集会の開催

~ 総合判断の壁を超えて 障害を理由とした定員内不合格は許さない ~

・日時:7月15日(月)午後2時~の予定

・場所:神戸市障害者福祉センター会議室AB

・ゲスト:「障害児を普通学校へ全国連絡会」 竹迫和子さん

※竹迫さんは元教員、全国連絡会で高校問題を担当され、毎年、全国の高校入学の状況をまとめられています。全国状況の報告も受け、また権田君の高校生活の報告も受けます。

※正式なご案内は、後日、障問連HPでお知らせします。

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