【優生思想】 優生手術国賠訴訟・DPI日本会議の声明
巻頭にもあるように、優生手術に関する救済法が成立しましたが、大きな問題点もはらんでいます。以下、DPI日本会議の救済法に対する声明文を掲載します。(新聞記事にも関連報道を掲載しています)
◆「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」成立に際しての声明
認定NPO法人 DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野 みどり
http://dpi-japan.org/wp-content/uploads/2019/04/b9e6430e0ca727bbb242b6bc5b5547a4.pdf
DPI日本会議は、障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会を実現するための取り組みを進める、全国96の加盟団体からなる障害当事者団体である。私たちは障害当事者の立場から、「優生手術は障害者の生殖の権利に対する人権侵害であり、国は被害者への謝罪と賠償等を早急に実施すべきである」と20年以上前から訴えてきた。
この度の「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」成立に際して、今後の取り組みに向けたDPIとしての決意を表明するものである。
昨年1月の仙台地裁への旧優生保護法の被害を訴える初の提訴後、同年3月には与党旧優生保護法に関するワーキングチーム(以下、与党WT)、並びに優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟がそれぞれ立ち上げられた。被害者や支援者にヒアリングを行うなどして真摯に耳を傾け、党派を超えて尽力されたことに敬意を表するものである。
また被害者が高齢であることにも鑑み、異例ともいえるスピードで精力的な検討が重ねられてきたことを、これまで遅々として進まなかった長年の経過を思い返しつつ見守ってきた。
私たちDPIとしての意見は昨年11月と今年1月の二度に渡って提出してきた。法案策定に向けた努力は評価すべきではあるが、残念ながら被害者やその家族・支援者にとって満足のいく法律までには至っていない。
この法案に関する委員会質疑で、与党WT座長の田村憲久・元厚労大臣は、前文のおわびの主語として使われている「我々」に関して「主に旧優生保護法を制定した国会、法律を執行した政府を念頭に置いた」と述べている。このことをふまえた誠実な対応が、国会、政府には求められている。
特に、「優生保護法被害の調査・検証」について、障害当事者、並びに優生思想を批判的に研究してきた専門家等を含めた第三者委員会を立ち上げ、被害者や家族からヒアリングを行い、その声を反映したものとすることを強く要請したい。その際、「特定の疾病や障害を有すること等を理由として生殖を不能にする手術又は放射線の照射を受けることを強いられるような事態を二度と繰り返すことのないよう」(同法・第21条)との趣旨から、母体保護法以降も続く強制不妊手術の実態も含めて調査することが必要だ。
現在7地裁で争われている優生保護法被害者・家族が訴えた裁判は、いよいよその重要性を増している。5月28日には第1次提訴の佐藤由美さん(仮名)、第2次提訴の飯塚淳子さん(仮名)の判決が仙台地裁で言い渡されるのを皮切りに、各地の裁判が結審、判決に向かう予定だ。勝訴判決を勝ち取るまで、傍聴をはじめとする裁判支援を継続していかなければならない。
また、優生保護法という「国策」にそって、「不幸な子どもの生まれない県民運動」といったキャンペーンを積極的に展開してきた自治体は、未だに何らの総括も行っていない。こうした自治体の優生政策推進への関与について、その検証・謝罪もあわせて求めていかなければならない。さらに、被害の実態を把握するため、一部自治体が行っている施設・病院への独自調査が全国各地で実施されることが望まれる。
私たちDPIはこれらの取り組みを全国の仲間に呼びかけるとともに、2016年に起きた津久井やまゆり園・障害者殺傷事件に至る、社会に広く存在する優生思想の克服に向けて、今後も粘り強く取り組む決意である。
以上
5月 6, 2019