教育

【報告+支援のお願い】 共に生きる教育の実現!!障害を理由とした高校入学拒否に抗議を!!

栗山和久(事務局)

 

◆西宮インクルネットの取り組み

5月19日、西宮市総合福祉センターで総会+記念セミナーが行われました。なんと!!就任1か月少しの石井西宮市長も参加、挨拶を受けました。「・・・市長のトップダウンで変えられます。でも教育委員会や先生、市民がみんな納得することが大切。市教委も方向性は同じです」と、今後に期待したいと思います。

記念セミナーは一木玲子さん(大阪経済法科大学)の講演と合理的配慮の事例の質疑。「子供を分ける事は差別/国際的な当たり前な考え方と諸外国の実践」「インクルーシブ教育と日本の特別支援教育の違い」を映像も交えつつ説明され、「・・・今は過渡期、だからきちんと整備されていない、でも通常学級に入り続けることで変わっていく」と若い保護者に対しての熱いメッセージと共に話され、参加者から極めて好評でした。

また西宮市教委は西宮市特別支援教育審議会が継続して開催され、前回(5/14)には基礎的環境整備に関する中間まとめが発表されました。通常学級における合理的配慮の在り方について踏み込んだ議論がされておらず、インクルネットとして何らか要望していきたいとのことです。

 

◆障害を理由とした定員内不合格に抗議する!! 楠高校校長の差別発言を許さない!!

前号でも校長発言の内容を紹介しましたが、権田君のお母さんに詳細にお聞きすると、極めて悪質な発言内容が更に明らかになりました。障問連としての「抗議ならびに要望書」ができましたので紹介します。また加盟団体の皆さんからも要望の声を届けていただき、ありがとうございました。併せて紹介します。要望書は6月初旬に提出し、話し合いの場を持つ予定です。

 

全国的な障害児の高校進学の状況が「障害児を普通学校に・全国連絡会」機関誌にて報告されています。熊本県、愛知県、千葉県、香川県では権田君と同じように定員内での不合格があったと報告されています。千葉県のW君は6年間で23回受験、香川県のIさんは14年間28回の受験にも関わらずの不合格。香川県では、毎年ひどい定員内不合格状況で、今年は合格者より不合格者の方が多い「異常事態」とのこと。その一方、東京都では5人が定時制、1人が全日制を受験し、今年も定員内不合格を出させることなく合格したとのこと、東京都立学校は全日制も生徒が集まらず433人もの、異例の3次募集まで行われたとのことです。また千葉県では昨年定員内で不合格になったT君が同じ高校を受験して今年は合格、同じ校長が「つらい1年にして申し訳なかった」と謝罪されたといいます。

「全国連絡会」機関誌では、受験における配慮だけでなく、「選抜についても障害のある人も含めた公正公平」の必要性が指摘されています。兵庫県ではとりわけ、それまで障害児を受け入れてきた阪神間の定時制高校の打ち続く統廃合もあり、この10年、障問連として高校入学の取り組みはできていませんでした。そのような中で、勇気を振り絞って挑み、多くの犠牲を払った権田君、ご家族の涙、悔しさ・・・県下たった1人の定員内不合格は、障害が理由であることは明らかであり、楠高校長への事実確認、謝罪と反省を求める話し合いに、ぜひ多くの皆さんのご支援をお願いします。

 

神戸市教育長      長田 淳 様                       2018年6月  日

神戸市立楠高校校長   有元 文祐様

 

抗議ならびに要望書

障害者問題を考える兵庫県連絡会議

代表 福永年久

 

平成30年度兵庫県公立高等学校の定時制高校の入学者選抜において、3月19日発表の第一次選抜試験の結果は、全県で受検者901人、合格者883人。不合格者18人のうち、定員超過校における不合格者17人を除き、定員内での不合格者は1人。3月28日発表の再募集の結果は受検者216人、合格者215人。定員内での不合格者は1人。定員内であるにも関わらず、神戸市立楠高校を受験した障害のある権田祐也君、たった1人だけが、一次試験、再募集のいずれも不合格にさせられたのである。

障害を理由に門戸を閉ざし排除することは明らかに障害者差別であり、私たち「障害者問題を考える兵庫県連絡会議」(以下、略 障問連)は、断じて許すことはできない。この判断を下した楠高校有元校長、ならびにそれを容認した神戸市教育委員会に対して強く抗議する。なぜ権田君を不合格にしたのか。楠高校長ならびに神戸市教委は、その理由を明らかにし、私たちに対してはもとより、何より本人や家族に納得いくよう、話し合いの場を持つ事を強く求める。

 

脳性まひによる重度な身体障害のある権田君は、自分で文字を書くこと、言葉として表現すること、自力で文字盤を押したりパソコン操作を行うことができない。入学試験では権田君の意思を代筆者が読み取る事ができなければ、正解が分かっていても、点数を取ることはできない。そのため権田さん親子は中学入学後、受験対策に集中して取り組み、中学校担任とも定期考査の度に試行錯誤を続け、また何年も前から言語のリハビリ訓練にも通い、その指導員と本人、お母さんとの三者で、試験の際の車いすの位置、問題を集中して見ることができる姿勢、方法等、必死で取り組んできた。

受験に際しての特別措置を巡って、権田さん親子は、「試験問題を全問選択式にしてほしい」、「意思を聞き取れる代筆者を配置してほしい」との要望を中学を通じて行ったが、選抜試験における「公平性」を理由に認められなかった。だが、果たして今回の入試方法は、障害者差別解消法が求める「合理的配慮」がなされたものだったのか。重い障害を持っている彼の意思や学力が正しく判断され、障害のない者と真に「平等」「公平」に判定されるものだったのか。私たち障問連は強い疑念を持ち、指摘してきた。

しかし、権田さん親子は強い不安を感じながらもそれを受け入れ、権田君の力が十分に発揮できない試験方法ではあったが、全力で試験に臨んだ。そして、点数の情報開示を行った結果、一次試験でも低いけれど点数を取り、二次試験においては、権田君か回答できる選択問題のうち半分近く正解している教科が複数あったのだ。

私たち障問連は、かつて「0点でも高校へ」と多くの知的障害を持つ児童の高校入学を支援してきた。学力検査による選抜制度の大きな壁に直面しながらも、なぜ高校なのかと眠れぬ夜を幾日も過ごしながら、それでも共に学ばせたいと震えるような思いで高校に挑み続けた親子を支援し共に闘ってきた。その結果、例え点数がとれなくとも定員内であれば受け入れる高校も出てきた。楠高校もその一つであった。が、他方で何年受け続けても門戸を閉ざし続けた高校もあった。そこには同じ障害生徒の中でも、点数が取れる、取れないによる大きな壁が厳然としてあるのだ。

しかし今回、権田君は厳しい条件が課された中でも、点数を取っているのだ。権田さん親子は「学力による選抜試験」の枠に従い、懸命に努力してきたのだ。そして点数を取った。それでも不合格。しかも定員内での不合格。

二次試験での不合格は権田君の行き場を無くしてしまう。そんな事を十分に承知し、それでも頑なに入学を拒むのは一体なぜなのか。意思疎通に時間がかかる、全面的な介助を要する、胃ろうにより医療的ケアが必要、そんな障害の重さによる入学拒否、それしか考えられない。障害の重さを理由にされる事がどれだけ権田さん親子を絶望の淵に落とし込むか。明らかに障害者差別である。受験に際しての特別措置については厳正に「公平性」と語りながら、合否については何らの公平性が存在しない。その事は、これまでの楠有元校長の発言に如実に示されている。私たち障問連は、このようなあからさまな障害を理由とした排除、障害の重い者とその家族の努力や尊厳を踏みにじることを決して許さない。

 

権田さん親子は二次試験の合格発表の後、楠高校有元校長と話し合った。その詳細な内容を権田さんが思い起こし書いている。

 

一、          有元楠高校長の発言について、当事者である有元楠高校長と権田さん親子による事実確認が、まずなされなければならない。発言の隠ぺいや捻じ曲げがあってはならないため、神戸市教育委員会ならびに障問連が立ち会い、話し合いの場を持って、事実確認することを求める。

 

二、          有元校長は不合格理由を「学校の方針と適合しない」と言ったと聞く。それでは楠高校の方針とは何か。楠高校の生徒募集のポスターには大きく「ここの空気が好き~授業で学べない事も学んでいます」とある。兵庫県下でも突出して多くの障害生徒を受け入れ、在日外国人生徒や高齢生徒など様々な立場、異なる生活背景を有する生徒が共に学ぶ学校、それが楠高校の方針ではないのか。そのような「空気」を見学の中で肌で感じ知ったからこそ、権田さん親子は、他の高校ではなく楠高校をあえて志願したのだ。不合格の理由として「学校の方針と適合しない」との発言の意味内容を有元校長に説明を求める。「障害を理由とした不合格」を隠ぺいするための口実でしかないと、私たちは考えるが、神戸市教育委員会としてはどうなのか。

 

三、          有元校長は「定員内であれば点数はあまり関係ない」と言ったと聞く。これは事実に基づく正当な発言であるのか。かつて点数がかなり低い障害生徒の場合には、定員内でも合否について楠高校内部でも大きな問題になったと聞く。定員内の合否の判断に際して、これまで点数は大きな要因であったのではないのか。ところが今回の権田君の場合は点数を取った。すると「点数はあまり関係ない」と言い換え、加えて「・・・過去の他の学校の例で、当日すごく点数取れていて内申点もすごくよくても不合格になった人もいる」とまで言った。これは権田君がいくら点数を取っても入学はできないとの宣言に他ならない。すなわち、この発言もまた、「障害を理由とした不合格」を隠ぺいするための発言でしかないと私たちは考えるが、改めて有元校長に真意を確認するとともに、神戸市教育委員会の見解を求める。

 

四、      有元校長は「仮に合格しても、出席日数、進級できるかどうか」と不適合の理由を述べたと聞くが、権田さんは「祐也は小学校、中学校と熱が出た時や診察の時以外は休まず学校に行きました」と有元校長に手渡した文章にも書いていたし、また昨年11月に有元校長がわざわざ東浦中学まで出向いて行った時に、中学側と権田さんから直接聞き知っていた。それなのになぜこのような事を言ったのか。この発言に沿って本当に合否が判断されるなら、例えば中学時代に不登校の傾向にあった生徒は、高校に入学しても不登校状態が継続し出席日数が不足する可能性があり、卒業できるかどうか分からないという理由で不合格になるはずである。これまで楠高校は不登校を理由として不合格にした事実があるのか。有元校長ならびに神戸市教育委員会に説明を求める。

 

五、          昨年11月、東浦中学を訪れた折には「個人的には試験に合格すれば来てもらいたい」と言いつつ「看護師配置など制度的には難しい」としていた有元校長は、市教委の「合格すれば看護師配置は前向きに検討する」との私たち障問連への神戸市教委の回答を受け、今度は「・・・学校は私一人ではなく、他の先生方もいての学校で、私一人の意見では決められない」と、今度は現場教師の責任に転嫁してきた。 確かに楠高校においては、4年前までは合否判定は校務運営員会で慎重に審議し、教師の合意の下で決められてきた。ところが現在は、教師の意見は聞きはするが、合意が無くても、校長が自分の考えでもって決め、教職員に伝え実施させることができる仕組みになっている。校長は合否判定においても絶大な権限を持っているのである。本当に校長が権田君に「来てほしい」と思っていたのなら、それは出来たのだ。重い障害生徒の前に立ちはだかる学校の壁を、自らの持つ重い権限と責任でもって突き崩し、扉を開いてきた校長たちがいることを、私たちは知っている。

昨年11月に、東浦中学を訪れた折には「個人的には試験に合格すれば来てもらいたい」と権田さん親子に語り、再募集で不合格にした直後においてなお、「・・・去年の11月に中学校でお話をした時に、お母さんや祐也くんの気持ちを聞いていたので、よくわかっている」と言ってのける有元校長とはいったい何者なのか。

 

六、          有元校長は、権田さんの「では、どうすれば合格できるのか」の問いに対して、「例えば祐也くんがこの1年で劇的に成長するとか…」と述べた。この校長発言は障害のある者に対する差別であり、許すことはできない。この種の言葉が、どれほど多くの障害者と親たちを苦しめ打ちのめしてきたことか、怒りと共に、権田さん親子からこの言葉が消えることがないだろう。

校長は昨年11月に保護者から「祐也、そして家族の思い」と題した、「なぜ楠高校に行きたいのか」の文章を保護者から受け取り、目にしているはずである。546gの超極小体重で出生、3歳の時の胃ろうの造設という重い身体的障害との格闘。しかし保育所時代からみんなと共に生活してきたからこそ、猛暑の夏でもいっぱい汗をかきながらの部活動もでき、病気や訓練等に通う日以外はほとんど学校を休むことはなく、意思疎通も、ちゃんと付き合おうとする相手には自分の意思を伝え、また3桁と3桁の掛け算も時間はかかるができるようになった。保護者も信じられないほど成長した権田君のそうした生い立ちや生活の一端を、文章を通じて校長は知っていたはずである。にもかかわらず、本人を前にして「劇的に成長すれば」などと、よくも言えたものだ。重度の脳性マヒの障害を持つ者に何をもって「成長せよ」と言うのか。特別支援学校の経験もある校長のこの発言は、障害者を愚弄し見下す発言でしかない。障害の重い者は、その障害を克服し「劇的に成長」しない限り、高校に来るべきではないと言うのか。この校長の差別発言は断じて許すことができない。

 

以上、有元楠高校長ならびに神戸市教育委員会に対し強く抗議すると共に、神戸市教育委員会の責任において有元楠高校長も同席した話し合いの場をもって回答することを求めるものである。

以上

 

◆権田君の勇気に励まされ

中谷秀子(ぶったぁ福祉会)

この春、権田君は、普通高校への夢をかなえることができませんでした。本当に残念でたまりません。

初めて権田君に会ったのは地域の保育所でした。園長先生と看護師さんがいて、私達の町の保育や教育はここまで来たかと誇りに思いました。権田君や家族の勇気、そして彼を取り巻く先生方や友達、行政や地域の方々に感動しました。その実践は、地元の小学校や中学校につながり、彼は多くの友達に囲まれ過ごしてきました。

出会いと体験は彼の成長のみならず、多くの人たちに影響を与え、共生社会への実現に大きな力となりました。そんな中で、普通高校をめざしたのです。医療的ケアの必要な権田君は、あらゆる節目の挑戦者でした。ほとんどの子供たちは小中学校に難しい手続きもなく受け入れられます。でも、障害をもつ子供たちは違ったのです。やがて来る春を不安と怖れと、少しの期待とに胸を痛めてきました。

友達と一緒に通える春は喜びもひとしおです。何倍も何倍も大はしゃぎします。しかし、閉ざされた春はどんなに大きな悲しみと苦しみだったでしょう。障害があることで、決して仲間から遠ざけられてはなりません。障害があることで、学校や社会から締め出されてはなりません。

どんなに重い障害があっても、出会う喜びや共にできる新たな経験を待ち望む友人や先生方、たくさんの人達とのチャンスをなくしてはならないのです。権田君の勇気に励まされ、私達はこれからも共に生きる道を歩み続けましょう。

 

◆楠高校校長 様

富田啓子(川西市共働作業所あかね)

定時制高校に入学を希望した障害を持つ権田祐也君が定員内不合格になったとことを知りました。「なんで・・・今ごろ」。障害者権利条約に批准してからも長い。

私の息子も平成4年度に定時制川西高校を受験し、4年間無遅刻無欠席で卒業する事ができました。現在45歳の社会人として堂々と生きている、その陰には多くの人の支援と応援゜と仲間がありました。多くの支援を受けながらも、人間として障害を持ちながらも生きていくということに大きな感謝があります。

この世に人として生まれ、人として生きる上で、彼らにしかできない役割があります。その「役割」とは・・・。母親として、いや健常者側から彼等が生まれてきた、彼等の「人として生きる役割」を考えてみる時、彼等が存在しない社会では学ぶことができなかった、人間として生きる自分たちの価値すら見えなかったのではないだろうか。今、母として健常者として、どう生きるのかの目的は、さべつされながら生きにくい世の中を堂々と地域の中で生きる彼等から学んだことはたくさんあると断言できるのです。

勉強だけの学校ではないはずです。人間としてどう生きるか、なぜ生きるかを問い続ける、とても素晴らしい仲間です。支援の手間を惜しまず、彼を受け入れ学生たちに生きる目的を学ぶチャンスとして与えてください。きっと楠高校の生徒達には素晴らしい社会人として卒業していく事でしょう。先生たちは、その後ろ盾で頑張ってください。宝物が見えてくると思います。少子高齢化社会になって厳しい人生を生き抜く生徒たちに、障害者と向き合って強く豊かにやさしく生き抜く若者を育てるためにも、障害者支援の枠を広げて、彼を受け入れて下さることを心から望むものです。どうぞ、よろしくお願いいたします。

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