介護保障

【報告】 みんなで作ろう!地域で暮らせるガイドライン 連続セミナー第1回

星屋和彦(障問連事務局)

■連続セミナーに至る経過と第1回の趣旨

2月18日(日)に神戸市勤労会館にて行われた「みんなで作ろう!地域で暮らせるガイドライン 連続セミナー」の第1回の報告をさせていただきます。

障害者が施設ではなく地域で暮らしていくには、ヘルパーによる支援を必要とすることが多々あり、障害が重度になるほど必要とするヘルパー派遣の時間も増えていきます。「地域で暮らしていくためにヘルパー派遣を受けたい」と思い、障害者やその家族が福祉事務所に申請に行くと、本人が必要とするヘルパー時間を支給決定してもらえないという話はよく聞き、障問連でもこれまでたびたび相談を受けたり、役所との話し合いの場に立ち会ったりしてきました。また、そうした話し合いに行き詰まりを感じる有志が集まり、「障害者の介護保障を考える会」を立ち上げ、介護保障を考える弁護士と障害者の会・全国ネットの弁護士さん達にも参加していただきながら誰でも相談できる場を作ったりもしてきました。

そうした活動を通じ、支給決定に至る過程での様々な問題点が明らかになる中で、特に神戸市で定められた「ガイドライン(支給決定基準)」の問題が大きいのではないかという考えに至り、ガイドラインの改定をここ数年に渡りずっと神戸市に訴えてきました。

一方、神戸市でも2019年4月を目処にガイドラインの10年振りの改定を決定。すでに内部検討会が開催されていますが、改定内容に障害当事者の声をどう届けてどう反映させるかが大きな喫緊の課題となっています。そこで、「地域で暮らせるガイドラインを作ろう」というコンセプトで3回に渡り連続セミナーを行うことにより、そこに集まった人たちで障害種別を越えた様々な課題を出し合い、問題点を共有しあい、何より当事者の想いを込めたガイドラインを自分たちで神戸市に提案していきたい!と考えた次第です。

第1回では、まず神戸市のガイドラインの状況共有を行い、兵庫県内他市のガイドラインも公開。また豊中市からはNPO法人障害者の自立を支えるサポートネットワークに所属し、自立支援協議会のメンバーでもある古田拓也氏をお招きして豊中の状況も伺い、そうした他都市と比較しながら、みんなでガイドラインをざっくばらんに語り合う場としました。

 

■神戸市のガイドラインとその問題点

神戸市では支給決定基準(ガイドライン)を「障害福祉サービスの標準支給量」として時間数の「標準」数字だけがホームページで公開されている一方で、「支給量審査基準」という支給決定を行うマニュアル的な文書が各福祉事務所に配布され、それは基本「非公開」でその場では見せてもらえません。つまり、肝心な審査基準が非公開のため障害者や家族にはどんな基準で自分の支給決定がなされたか非常にわかりづらい(公式な情報開示請求の申請をすれば入手可能)。あるいはこれから「ヘルパーを使いたい」と考えた障害者、特に「ヘルパーをつけて一人暮らししたい」と思った障害者が公開されている情報だけでは自分の一人暮らしの生活をイメージできない。

他都市を見ると、豊中では146ページもあるガイドラインが全てホームページで公開され誰でも見ることができます。県内でも西宮市では70ページのガイドラインが同様に市のホームページで公開されており、利用する者にとってもわかりやすい基準となっています。そういう市民と共有できるわかりやすい基準の作成と公開が必要ではないでしょうか。

また、神戸市のガイドラインは先に述べたように公開されているのが標準数値だけなのはもちろん、審査基準にも「他の者との平等」「地域で本人が望む地域生活の実現」といった理念的なことが一切書かれていません。区の窓口での対応も区によってばらつきがあり、大きな問題としては「標準」支給量があたかも支給量「上限」であるかのように勘違いさせてしまう対応があとをたちません。その点、宝塚市では前書きに「ガイドラインは基準であって上限ではない」と明記されています。

そして、神戸市で重度訪問介護(障害程度区分4〜6の重度障害者が利用できるヘルパー制度)を使って一人暮らしを希望する障害者が直面するのが、深夜帯の介護保障や見守りを含んだ長時間の介護に対して非常に厳しい支給決定がなされるという、ガイドラインの運用実態があります。結果として、深夜には嫌でもオムツを付けた生活を選ばざるを得なくなったり、一人暮らしそのものをあきらめざるを得なくなるような厳しい状況があります。国が進めている「障害者の地域移行」という方針にも沿うものとはとても思えません。

その他の他都市の状況としては、西宮市にはガイドラインの運用をチェックする第三者機関まであるそうです。

 

■質疑応答から~地域生活は最低限の権利だ!!~

会場からの質疑応答の中では、非定型審査会のあり方に関する意見が出ました。通常、本人の希望に沿ったプランが、支給決定基準を超えた場合でも、いわゆる「非定型の支給決定」等として市の非定型審査会にかけることができます。神戸市でもできますが、そこに至るまでのハードルが高く感じられ、また実際に非定型審査会そのものが神戸市では年に10〜20回しか開催されておらず、しかも議事録もとられていないとのことで、どのようなことがそこで話し合われているのかもよく分かりません。例えば豊中市では、審査会が大きな役割を果たしており、障害当事者も審査会委員として参画しているそうです。ちなみに、今回来ていただいた豊中の古田さんは、審査会やガイドライン改定の議論の中や、自立支援協議会に障害当事者が参画していくことの重要性を強く訴えられていました。

また、他都市で相談支援事業所をしておられた方から、「神戸市の相談支援のあり方にびっくりした。当事者の立場にたって当事者と共に役所と話をしていくのが相談支援と思っていたのに、神戸市では相談支援が役所の窓口のような対応をさせられているように見受けられる」という意見をいただいたりもしました。

 

地域移行のため、そしてどんな障害をもっていても地域で安心して暮らしていけるようになるためには、障害者が自分らしい生活を具体的にイメージでき、それが実現するような支給決定の仕組みが必要です。ガイドライン、相談支援、非定型審査会、すべてが繋がっています。

介護時間数を求める、生活のために介護をつけるというのは、必要があってそうしているだけであって、決して「贅沢なこと」を求めているのではありません。必要な介護時間数があって、介護者をつけて生活して、初めて障害のない人と同じ状態になる、障害のない人と同じスタートラインについたに過ぎないからです。同じスタートラインにすらつけないような状況を強いたり、障害をもっているということだけで生活に様々な制限を設け、選択肢を限っていくのはおかしいのではないでしょうか。

 

■4/28 第2回連続セミナーにも、ぜひご参加ください

この連続セミナーで、普段の疑問などを出し合い、たくさんの議論をおこない、障害者が自分らしく生きていくためのガイドラインをぜひ一緒に作っていきませんか?

第1回に参加してくださった方はもちろん、2回目からでももちろん大歓迎です。第1回の資料も送りますので、ぜひ参加していただいて、一緒に私たちの思うガイドラインを形にして神戸市に提案していきましょう!

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