優生思想 障害者春闘

【報告】 障害者春闘2018 私たちの声を聞いて!! 相模原事件から20ヶ月

野崎泰伸(障問連事務局)

 

3月31日、13時半から神戸市勤労会館にて「障害者春闘2018 私たちの声を聞いて!! 相模原事件から20ヶ月」を開催いたしました。参加者はざっと見たところ70~80名ほどでした。障害者春闘では2年連続で同じテーマになりますが、相模原事件の底流にある優生思想の問題は、障害者が生きていく際、決して逃れようもない問題です。しかし、マスコミが扱うことはもうほとんどなくなってしまいました。また、本年1月に提訴された強制不妊手術に関する国賠訴訟をめぐって、兵庫県においてはどうなっているのか、さらには兵庫県立こども病院移転記念誌に、県の過去施策「不幸な子どもの生まれない運動」が称賛されていたこととも関連づける必要があります。そういった思いから、企画がなされました。

司会の石橋事務局長の挨拶のあと、野橋事務局次長から企画の説明があり、最初の発言者である寺田さち子さん(リメンバー7.26神戸アクション)が話されました。「リメンバー7.26神戸アクション」の経緯、周囲の反応、活動の意義などを、写真や新聞記事を交えてお話しいただきました。寺田さんご自身が、小さいころ訪問学級での指導を受けており、しかしその制度を利用していた多くが重度心身障害児で、寺田さんのように意思疎通のはかれる障害者は少なかった、と。そこで寺田さんは「意思疎通がはかれてよかった、他の人たちは意思疎通がはかれないから待遇が悪い」と思ってしまったと言い、「これは被告と同じ考えなのでは」と言われました。「小さい子にそのような優生思想を植えつける社会に問題がある」と言われたのが印象的でした。

次に、兵庫ピープルファーストの4名の方が話されました。桜田厚子さんは、ヘルパーや事業所の職員にもっと優しく接してほしいと言われました。芝田鈴さんは、障害者が殺されたり犠牲になったりするのはおかしいと述べられました。岸田茂樹さんは障害を持っていても生まれてくればよく、障害があるからと言って胎児を中絶するのはかわいそうだと訴えました。最後に住田理恵さんは、青い芝の会を例にあげつつ、「知的障害者も、もう少し強く自分たちの聞いてほしい気持ちを言っていってよいのではないか」と言われました。相模原事件では、殺された仲間が知的障害者であり、彼ら彼女らの意見を私たちが聞かなければ何もはじまらないのではないでしょうか。

続いて、吉田明彦さん(リメンバー7.26神戸アクション)が話されました。事件の経過とその後の動きということで、主にやまゆり園再建問題をめぐって話をされました。神奈川県の黒岩知事は、いったん施設拡充の方向で進めようとしたが、当事者たちの反対によって撤回させたこと、でも本当は、知事は拡充したかったのだということを、動画を用いて説明されました。これからが正念場で、よろこんでばかりはいられないと言われました。

最後に、藤原久美子さん(自立生活センター神戸Beすけっと/DPI女性障害者ネットワーク)の話がありました。相模原事件と同じ根を持つと思われる、強制不妊手術について、そして兵庫県での不妊手術の実態、さらには1966年から始まった県の「不幸な子どもの生まれない運動」について、県は反省するどころか、「ユニークな県民運動」と称している県こども病院の名誉院長の文章を移転記念誌に掲載し、ホームページに掲載(現在は削除)した問題について、関連づけながら話されました。吉田さんと藤原さんとの議論では、兵庫県が独自に不妊手術に金銭的な補助をしていたことも指摘されました。

その後、16:00すぎから、勤労会館を出発し元町の大丸前までデモ行進を行いました。太鼓など鳴り物が響き、車イス利用者を含む隊列が、土曜日の夕刻の繁華街を練り歩きました。「相模原事件を忘れない」「障害者は不幸な存在ではないんだ」「施設ではなく地域で生きたいんだ」などのシュプレヒコールが、買い物客でにぎわう三宮センター街をこだましました。

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