優生思想

【報告】 旧優生保護法の下での強制不妊手術に対する国賠訴訟

障問連事務局宮城県の女性が仙台地裁に提訴して以降、同問題はマスコミでも連日取り上げられ、状況も動いています。神戸新聞記者やNHK、毎日新聞から障問連にも取材がこの間続いていました。

3月28日には仙台地裁で第1回口頭弁論が開かれました。政府与党の作業チームや国会議員連盟の救済への動きを念頭に置いてか、具体的な主張は行わず、「請求棄却」とのみ主張したと報じられています。 傍聴、支援に仙台現地、東京での院内集会まで行かれた藤原久美子さん(NPO法人自立生活センター神戸ビスケット)が、帰られた直後のあわただしい中、障害者春闘でも報告していただきました。

 

◆裁判の動向

提訴の動きは続き、仙台地裁で2人目の女性、札幌地裁にも70歳代の男性、そして東京地裁にも70歳代の男性が提訴の予定と報道されています。

北海道では3月12日に被害を受けた本人、家族からの相談窓口を設置したところ、30日現在で親族20人を含む38人から相談があったと報じられています。毎日新聞(3/22)の記事では、同紙が滋賀県に対して開示請求して入手した資料には、親の同意が得られず手術の実施が困難になったため、拒否する親に対して「無知と盲愛のため」と侮辱し、「保護義務者の言うままにしていても時間を徒過するだけ」と、何としても「同意を強制」しようと執拗に説得していた生々しい記録が報じられ、その他、被害を受けた方々の実態や痛切な思いが少しずつですが報道されています。

また、旧法の下で開催が義務付けられていた審査会が省略されていた事例が、少なくとも4県の開示された資料の中から12人分が判明し、従来の国の「手術は厳正な手続きの下、合法的に行われていた」との主張の一端が崩れているではないかと報じられています。

さらに、ハンセン病を理由とする事実上の不妊手術を「非人道的」と断罪した2001年のハンセン病国賠訴訟熊本地裁判決、終生絶対隔離の「らい予防法」の下、元患者の方々から、療養所で子どもを産むことが絶対許されなかった苛酷な被害が多く裁判でも証言されてきました。判決から17年を経て、元患者と障害者ともに国の優生政策の被害者であることが、当事者の証言として報道されています。

3月30日には「旧優生保護法弁護団」主催により、兵庫県も含む全国17都府県で、弁護士会または弁護士有志により電話相談が実施され、今後も提訴者が各地で続く可能性もあり、裁判での闘いが広がっていく見込みです。兵庫県では弁護士会が実施主体となり、大槻倫子弁護士が事務局としてJR神戸駅前の「あいおい法律事務所」が相談連絡先となっています。

 

◆国会での動向 ~ 兵庫県での取り組み

このような裁判の動向を受け、国会では3月6日に超党派の国会議員連盟が発足、また政府与党もワーキングチームを設立するなど、急速に動き始め、来年度の通常国会を目標として救済法案を検討するとされています。大きな課題が被害者の特定、資料も既に破棄されていたり、既に被害者が亡くなられている場合も多いようです。

その意味でも、障問連として兵庫県に対して、県としての責任、実態究明への積極的な姿勢、特に兵庫県は「不幸な子どもの生まれない運動」を知事を先頭に県に対策室まで設けて展開し、同運動の期間内に最も優生手術の件数が増加しているよう、明らかに一体のものとして推進されてきたのです。他団体とも連携しながら取り組んでいきたいと思います。

 

以下、関連する新聞記事を2件掲載します。

 

■強制不妊手術、電話相談に34件の声 本人や家族らから

朝日新聞デジタル 2018年4月3日09時00分

https://www.asahi.com/articles/ASL4300QWL42UBQU01G.html

 

旧優生保護法のもと知的障害などを理由に不妊手術が強制された問題で、北海道、宮城、東京、愛知、大阪、福岡など17都道府県の弁護士が3月30日に全国一斉で電話相談を受け付け、34件の相談が寄せられた。

被害者を支援する仙台弁護団によると、相談件数は宮城14▽東京4▽山形3▽北海道、京都、熊本各2――など。このうち本人からは14件だった。

19歳で手術をされた後、不妊手術だと知ったという兵庫県の70代女性からは「このまま死ぬしかないと思っていたが、(60代女性の提訴を)報道で見て、諦められないと思った」と電話があった。このほか「娘の同意を得ないまま手術を受けさせてしまった」「妹が18歳の時、養護学校の同級生とともに集団で手術を受けた」など家族からの相談もあった。当時の施設職員から証言も寄せられた。

同弁護団の山田いずみ事務局長は、「提訴も含めて支援をしていく。まず相談をしてほしい」と呼びかけている。電話相談は引き続き、仙台弁護団事務局(022・397・7960)が受け付ける。

 

 

■強制不妊手術の被害、全国調査へ 政府が方針転換

朝日新聞デジタル 2018年3月15日16時09分

https://www.asahi.com/articles/ASL3H3GTZL3HUTFK005.html

 

旧優生保護法(1948~96年)の下で、知的障害などがある人たちに不妊手術が強制された問題で、政府は被害の全国的な実態調査をする方針を固めた。当時は適法だったとしてこれまで調査に消極的な姿勢を示してきたが、救済策を議論する自民、公明両党によるワーキングチーム(WT)が発足し、近く厚生労働省に調査を要請するのを受けて方針を転換した。

強制手術を受けた人は、少なくとも1万6475人いるとされる。被害者を特定する資料は都道府県に残っている可能性が高いが、保管状況はまちまちで残存していないケースも多い。このため、救済には政府の実態調査が欠かせず、政権幹部は「多くの人が苦しめられている。実際にどうだったかは調べる必要があると判断した」としている。

強制手術をめぐっては、今年1月に宮城県の60代女性が全国で初めて国に賠償を求めて仙台地裁に提訴。これをきっかけに今月、超党派の議員連盟が発足し、さらに与党WTも立ち上がった。ともに政府への実態調査の要請や議員立法による救済策を検討しており、WTは近く第1回の会合を開き、厚労省に調査を求めることを決める方針だ。メンバーの一人は「厚労省が動きやすいように与党からのアプローチが必要だ」と話している。

こうした動きを受け、政府はまずは都道府県の協力を得て、手術が実施された当事者の記録の収集を進める方針だ。


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