市・町の制度 国/県の制度

【報告】 3/25 「2017年度 みやっこ会議フォーラム」に参加して

小野市 藤本あさみ

 

昨年夏頃より障問連の方と交流があり、毎月届くニュースの中にフォーラムのお知らせがあったこと、また短期間ではありますが西宮市に住んでいたため親近感もあり、今回初めて参加しました。

DPI尾上氏による基調講演「障害者差別解消法についての全国の取り組み」、みやっこ会議に携わる方々によるパネルディスカッション「西宮市が目指すべき差別解消の展開について」など、とても興味深い内容で、北播磨での障害福祉に役立つと思いました。

 

北播磨とは、西脇市・三木市・小野市・加西市・加東市・多可町の5市1町で、兵庫県のほぼ中央に位置している地域です。田舎で完全な車社会であるため公共交通機関が非常に乏しく、高齢者や障害ある人達の移動手段問題は深刻です。また、支給時間は出たとしても訪問系サービスの事業所自体が非常に少なく、サービスを使いたくても使えない状態です。

私自身は、進行性筋ジストロフィーゆえに現在は簡易電動車いすユーザーです。3年前に長年勤めた仕事を退職し、西宮市で短期間の自立生活を経験し、地元に戻って小野市でサービスを利用し始めましたが、障害福祉サービスの遅れに愕然としました。最近は、福祉関係の仕事をする仲間達と一緒に、北播磨の障害福祉活性化に向けて準備を始めたところです。

 

さて、各自治体で少しずつではありますが障害者差別解消法に関連する条例が制定されていますが、まだまだどこも積極的ではありません。というのも、地元の「第5期小野市障がい福祉計画等」の策定委員として策定委員会に出席していたのですが、委員のどなたからも条例の“じょ”の字も出てこず、会の中で担当者に「県内でも条例制定されたり検討中の自治体があるが、小野市では今後どのように考えておられるか」と尋ねるも、お役所らしい曖昧な答えを返され、計画の中に文言も入らず位置付けもされず、条例制定はまったく眼中にないのだなと感じました。

地元はそんな状態ですので、県内でも昔から障害者団体等の活動が活発で障害福祉が進んでいる西宮市での取り組みや全国の動きは非常に興味があったのです。

 

「共生社会」「共に生きる」「我が事・丸ごと」等の言葉をよく目にし耳にするようになりましたが、はたして根っこの考え方は伝わっているのでしょうか…根っこの考え方とは「社会モデル」ゆえの「合理的配慮」であり「平等性確保」です。

障害者支援に関する制度や施策の考え方は近年大きく変化していて、障害のある人の定義についても 個人の機能障害に原因があるもの と考える「医療モデル」から、「社会的障壁」による日常生活や社会生活に制限を受けることを問題にする「社会モデル」に大きく転換していますが、その考え方や定義の変化自体が、まず一般的に知られていません。

メディアでは何となく耳障りの良い文言が飛び交っていますが、今はまだ「福祉=優しさ・善意・思いやり」という概念で語られています。長い間の概念が、そう簡単には変わりません。人は表向きには「差別はいけないこと」「配慮をしよう」とマナー的に言葉にし、面と向かって差別的なことを言ったり、あからさまな態度を取ることは少なくなったかもしれませんが、合理的配慮を求めると「なぜ障害者ばかりに気を使う必要があるんだ」「障害者ばかり優遇されている」「これ以上にまだ権利を主張し求めるのか」という声が裏では渦巻いています。

圧倒的大多数である健常者用の社会構造により「社会的障壁」が存在するので、スタート地点を障害のない人と同じラインに持ってくるために合理的配慮が必要である、という考え方なのですが、それが「障害者は権利ばかり主張する」「特別扱いを求める」「障害者はワガママ」と取られがちです。

 

どういう事柄を社会的障壁と言うのか、そして合理的配慮とは具体的にどんな事を指すのか…一般市民にはイメージしづらい言葉です。そんな中、明石市では「合理的配慮の提供を支援する助成制度」があります。この制度を利用することにより、事業者や地域の団体・民間団体は合理的配慮の具体的なイメージが沸き、実体験をすることで合理的配慮を身近に感じ、まさに我が事として捉えることができ、市民が考えるキッカケになっているとの報告がありました。予算にすれば年間300万円程とのこと。

同じ規模の予算を投じ、「障害者差別解消法とは」等の立派なチラシやパンフレットを作成し全戸配布したり研修啓発も大切だとは思いますが、人は体験し経験してこそ気づき、意識の中に根付いていくと思うので、条例制定と共に明石市のような実効性確保の制度が各自治体にも広まることを願います。

 

西宮市では、第5期障害福祉計画(平成30~35年度)に、差別解消支援地域協議会の設置と条例制定(32年度中)を目指すことが明記されているそうです。小野市と西宮市では財政基盤も地域特性も大きく違いますが、「人」が生活していることには変わりありません。西宮市はじめ、各自治体での障害者差別解消法に関する動向に注目し、地元にも発信していきたいと考えています。

« »