新聞記事から

【報道】 新聞記事より

■夢持てる教室へ 障害児教育の現場から(5)神戸新聞 2017/12/10朝刊 


小学2年生から地域の学校で学んだ 障害者支援NPO理事長 野橋順子さん

互いの違い認め合えた もまれて成長、

将来プラスに

障害者を支援するNPO法人生活支援研究会(神戸市東灘区)の理事長で、脳性まひの障害がある野橋順子さん(42)は、小学2年生から地域の学校で学んだ。障害のある子どもと、ない子どもが同じ教室で学ぶ「インクルーシブ教育」について、これまでの体験や、期待を聞いた。(鈴木久仁子)

 

――地域の学校に入るまでのいきさつは。

「未熟児で、脳性まひと診断されました。本格的にリハビリをして『歩けるように』という母の願いで、障害者施設で1年半暮らしたけれど、母が恋しかった。地元の本山南小学校への編入を希望したのに、教育委員会は養護学校(特別支援学校)を勧める。母が何度も掛け合い、『親がずっと付き添うなら』という条件つきで、やっと入学がかなった」

――小学校の思い出を教えて。

「みんなが5分で歩く距離を、歩行器で40分かけて通学。苦痛で孤独だったけど、ときには友達が付き合ってくれ、うれしかったな。毎日、母が教室にいるのは窮屈で、友達とも話しづらい。ある日、級友が『お母さんと毎日一緒でしんどいやろう』と気遣い、先生も『責任を持つから』と言ってくれて…。ようやく母の付き添いのない学校生活が始まった」

――学校では、スキー合宿や修学旅行に参加した。

「小学校のスキー合宿は、ぽつんと待機ばかりだったけれど、ある先生がおぶってくれて、そりに乗って参加させてくれた。本当にうれしかった思い出。中学、高校の修学旅行は、母も自己負担で同行を求められた。母と泊まる部屋も同じで、家族旅行と変わらず、楽しくなかった。家から離れ、友達同士で話しをしたり、遊んだりしたいのに、学校はまったく考えてくれない。普通に考えたって、嫌に決まってますよね」

――思春期はどう過ごした。

「なかなか障害のある自分を受け入れられず、自信が持てなかった。高校生の頃、障害者団体のキャンプで、文字盤で意思を伝達する人に出会った。できないことは気兼ねなく介護者に頼み、堂々としているその人にあこがれた。20代前半で、カウンセラーから『障害のあるあなただからすてきだよ』と言われ、楽になったことも心に残っている」

――地域の学校に通って良かったことは?

「小さい頃から、施設でリハビリばかりして、周りもみんな障害児だった。スーパーに行くと、じろじろ見られて、健常の人が何を考えているのか分からず怖かった。健常の人と一緒に学び、当たり前に接することができるようになった。いまでも、学校の友達は会うと手を振って、声を掛けてくれる。特別支援学校に進んでいれば、そんなことはなかったでしょう。その友達だって、単に障害者をじろじろ見るようになっていたかもしれない。共に生活をするのが、どれだけ大切かを実感しているんですよ」

――インクルーシブ教育に期待することは何か。

「たくさんいじめられ、つらいこともあったけれど、地域の学校に行ったことは、結果的にはとてもプラスだった。障害者にとっても、インクルーシブ教育で、もまれることは大切。障害のある子どもがたくさん教室にいて、互いの違いを認め合うようになってほしい」

――昨年7月には、相模原市の知的障害者施設で19人が殺害され、26人が重軽傷を負った事件が起きた。

「今でも、障害者の命が軽く見られる風潮はなくなっていない。障害者と健常の人が分けられている現状では、自分には関係のない人たちと思ってしまうのかもしれませんね」

 

 

■いのちとの伴走 iPS細胞誕生10年 第6部 変わる生の形①

京都新聞 20171222朝刊

 

それでも生きづらさ残る

「障害による生活の不便さは、福祉制度の充実で解消できる部分も大きい」。脳性まひの当事者として障害学を研究する立命館大非常勤講師の野崎泰伸さん(44)は指摘する。野崎さんは、障害の有無にかかわらず受け入れられる社会の必要性を著作などで訴えてきた。

生まれつき手足が不自由な野崎さんは、2月に首の骨の神経圧迫によるしびれが悪化して手術を受けた。手術はうまくいった。だがしびれが悪化するまではできていた自力歩行は難しくなり、外出には車いすとヘルパーが不可欠となった。主治医からは「iPS細胞(人工多能性幹細胞)による治療を期待するしかない」と告げられた。

もちろん新たな技術で生活が便利になることは望ましい。障害のある人にとって生き方の選択肢が広がるからだ。

ただ、現状の福祉制度を充実させることにも注意を向けるべきだという。例えば野崎さんは、通勤に必要なヘルパーを自費で雇っている。働けば働くほど支出が増える現状だ。「障害者の社会生活を支える経済活動が阻まれている」と訴える。

さらに技術が進んで福祉制度が充実しても消えない問題はある。「障害故に感じる負い目です」。障害のある人全体に一般化はできないと断りつつ、野崎さんは説明する。

野崎さん自身は、ヘルパーに車いすを押してもらったりドアを開けてもらったりすると「申し訳ない」と思う。「障害者の権利だと理解していても、感謝ではなくて『負い目』を感じてしまう」と明かす。精巧な義手など新技術の活用でも、障害で周囲に迷惑をかけたくない人が使う場合、本人の自由な意思が尊重されたと言えるかは疑問だという。

「技術が向上して福祉制度が整っても、障害による生きづらさは残るのではないでしょうか。この問いとどう向き合うか、健常者とともに考えていきたい」

 

 

■精神障害者、雇いやすくする特例措置 厚労省、来春から

朝日新聞デジタル 2017年12月24日13時43分

https://www.asahi.com/articles/ASKDQ52ZCKDQULFA01S.html

 

厚生労働省は22日、企業が精神障害者を雇用しやすくする特例措置を来年4月から設けることを決めた。身体障害者や知的障害者に比べ、職場に定着しにくい精神障害者の働き口を確保しやすくする狙い。

従業員のうち一定割合以上の障害者の雇用を事業主に義務づける法定雇用率は現在2・0%。改正障害者雇用促進法が施行される来年4月から、身体障害者と知的障害者に加え、精神障害者の雇用も義務化されることに伴い、2・2%に引き上げられる。

法定雇用率は原則として、週30時間以上働く障害者は1人、週20時間以上30時間未満働く障害者は0・5人に換算して算出される。来年4月以降は精神障害者に限り、週20時間以上30時間未満の労働でも雇用開始から3年以内か、精神障害者保健福祉手帳を取得して3年以内の人は1人と数えることにし、精神障害者の雇用を促す。5年間の時限措置とする。こうした厚労省の案がこの日の労働政策審議会の分科会で示され、妥当と認められた。

身体障害者や知的障害者と比べ、精神障害者は短時間労働でないと仕事が長続きしない人が少なくない。厚労省幹部は「事業主が精神障害者を雇うハードルを下げて、働き口を増やしたい」と話す。(村上晃一)

 

 

■相次ぐ視覚障害者の転落 駅にホームドア設置進まず

産経West 2017.12.18 12:32更新

http://www.sankei.com/west/news/171218/wst1712180040-n1.html

 

視覚障害者が駅のホームから転落する事故は各地で相次いでいる。国土交通省や鉄道各社はホームドアの設置など対策を急ぐが、未設置の駅で被害が繰り返されている。

大阪では高石市のJR阪和線富木駅で10月、視覚障害者の男性(59)が線路に転落し、快速電車にはねられ死亡する事故が起きたばかり。駅の防犯カメラには男性が白杖を使いながら歩く姿が写っており、ホームドアは設置されていなかった。

1月には埼玉県蕨市のJR蕨駅でも盲導犬を連れた男性(63)がホームから転落し、列車と接触し死亡した。

視覚障害者の転落死亡事故は昨年8月と同10月にも東京と大阪で相次ぎ、国は対策を検討。鉄道各社と昨年12月、ホームドアがない駅では原則として、駅員が視覚障害者を介助することを取り決めた。

 

 

■日弁連 障害者差別禁止「国会も」 法制化促す

毎日新聞2017年12月18日 07時30分(最終更新 12月18日 07時30分)

https://mainichi.jp/articles/20171218/k00/00m/040/092000c

 

日本弁護士連合会が、国会における障害者差別を禁じる法令を制定するよう求める意見書の取りまとめに着手した。現行の障害者差別解消法では、内閣に置かれた行政機関や地方議会を含む自治体などが適用の対象とされるが、三権分立を踏まえて国会は対象外になっている。昨年の国会審議で難病患者が質疑時間などを理由に参考人として出席できなかった問題を受け、国会に法制化を働きかける。

早ければ年度内にも公表される見通し。識者からも国会が法律の対象外となっていることを疑問視する声が出ており、立法府として対応を求められそうだ。

2013年6月に制定された同法は、国や自治体に対し、障害を理由とした不当な差別的取り扱いを禁じ、過重な負担にならない範囲でバリアフリーのために必要な措置をとる「合理的配慮」を義務づける(民間事業者は努力義務)。16年4月に施行された。

一方で、国会や裁判所については「三権分立の観点からそれぞれ実態に即して自律的に必要な措置を講じることとすることが適当」(内閣府)とし、法律の対象から除外している。

16年5月の衆院厚生労働委員会で、障害者総合支援法改正に関して野党側が、当事者の意見を聞くため筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の男性を参考人質疑に呼ぼうとした。しかし、与野党協議の結果、「質疑に時間がかかる」などとして男性の出席は実現しなかった。

これを受け、日弁連は対応を協議。現状では、議員や参考人、傍聴人らに対する合理的配慮が国会の裁量に委ねられており、法的に担保されていないとして、関係者へのヒアリングも重ねて法制化を促す意見書作成の検討を進めている。

日弁連は裁判所に関しても、13年に「裁判所の合理的配慮義務」の規定を民事訴訟法に設けることなどを求める意見書を公表しているが、立法化には至っていない。【武本光政】

三権分立、理由おかしい

全盲・全ろうの重複障害を持つ東京大先端科学技術研究センターの福島智教授の話 障害者差別解消法は、障害者の基本的人権を担保する最低限の法的枠組みを示したもので、国民の社会的・政治的活動の自由を規定した憲法の理念と連動している。国会も裁判所も法の対象とすべきだ。三権分立は国家権力の乱用を防ぎ、国民の政治的自由を保障するため立法、司法、行政の各機関が相互にチェックし合う原理。それぞれ「自律的に」差別解消に向けた必要な措置をとるための理念ではない。

 

 

■障害者通所系施設 食事負担軽減措置を継続へ 廃止を撤回

毎日新聞2017年12月14日 19時47分(最終更新 12月14日 21時26分)

https://mainichi.jp/articles/20171215/k00/00m/040/052000c

 

厚生労働省は14日、来年度の障害福祉サービスの報酬改定で、障害者の就労支援などを行う通所系施設が提供する食事の負担軽減措置を来年度以降も継続する方針を固めた。今年度限りで廃止する方針だったが、障害者団体などから反対が相次いだため撤回した。

軽減措置は、通所系施設が一定の年収以下の障害者に食事を調理して提供した場合に、調理など人件費相当分約300円を施設の報酬に加算する仕組み。約26万人が対象で費用は年間約190億円。利用者1人あたり月約6000~7000円の負担が軽減される計算だという。

2006年に施行された旧障害者自立支援法で、食事は全額自己負担が原則となったが、激変緩和で軽減措置が設けられ、3年ごとの延長を繰り返している。今後、軽減措置の対象者や提供する食事など実態を調査し、他制度との公平性を考慮してあり方を検討する。【山田泰蔵】

« »