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【報告】 10月28日 介護保障全国ネット5周年シンポジウム報告

野橋順子・栗山和久(障問連事務局)

 

開催まで準備に追われた日々でしたが、シンポジウムには100人以上の参加があり、また全国各地で活躍する弁護士の方とお会いすることができ、何よりも全国の障害当事者の生の声を聞けて良かったです。施設や病院から出て、自立生活を始めた時の喜びを語っておられ、改めて障害者はみんなが普通に出来ていることが出来ないと痛感して、だからこそ普通に障害者も地域で暮らせるようになる為に手を繋いで、障害当事者、支援者、弁護士 など 一人だけで介護のことを悩まなくてもみんなで繋がる必要性を実感したシンポジウムでした。

開会あいさつに続き、「基調報告①」としてまず地元神戸での介護保障の取り組み報告として「障害者の介護保障を考える会」設立の経過、主に深夜時間帯の支給量に関して行政交渉や審査請求等に取り組む3人の当事者自身の訴え、支援者からの取り組み説明が行われました。

続けて「基調報告②」として、全国ネット共同代表である藤岡毅弁護士から「全国ネット5年間の歩み」が、以下のように報告されました。

 

■介護保障訴訟の歴史

1996年4月に大阪市ホームヘルプ訴訟が提起、88歳の寝たきり高齢者が「週3回/1回2時間では生活できず、週7日/1回3時間」の介護保障を訴えたが、原告は敗訴、2001年高裁判決でも訴えは棄却された。当時の老人福祉法では介護保障の明記がなく、行政に努力義務を課してはいるが、判決では「行政施策の反射的利益を受けるに過ぎず権利ではない」とされた。今から15年ぐらい前には、こんな厳しい状況だったのだと改めて知るとともに、根拠となる法律制度の重要性を痛感しました。

〈東京/鈴木訴訟~移動支援の支給量〉

車椅子ユーザーの鈴木さんの移動支援支給量を、東京都大田区が新たに作成した要綱に基づき、大幅に削減したことへの訴訟。2006年判決では、「各障害者の個別事情・個別ニーズに即した必要な支給量が保障されなければならない」と原告の訴えが認められ、第二次訴訟判決(2010年)では「原告が求める月147時間の移動支援支給量に対して113時間しか認めないことは社会通念に照らし妥当性を欠き裁量権を逸脱して違法」と原告が再び勝訴した。

〈和歌山/石田訴訟~2011年大阪高裁判決〉

重度の脳性マヒの石田さんに対して和歌山市は月408時間(一日13時間)しか認めない違法性を争う訴訟。①申請者1人1人の状況に応じた支給量、②和歌山市の言う「生命の危険が切迫している場合にしか月18時間以上は認められない」事に対して「生命の危険が無くても自立生活社会生活が困難なら違法」、③身体状況に応じた支給、④夜間は睡眠確保のためにも巡回では体調が維持できない、見守りも含めた支給量が必要等、以上のように具体的な個別事情に基づく支給量が概ね認められ、さらに和歌山市が主張する財政問題についても、「役所の財政上、一定の影響はあるが、具体的にいかなる支障が生じるか明らかでなく、財政上の影響で今回の判断は左右されない」とまで踏み込んだ判決が下された。

〈和歌山/ALS訴訟~2012年和歌山地裁判決〉

人工呼吸器、胃ろうしているALSの方(妻と同居)に対し、和歌山市は月248時間(一日8時間)

介護訴訟の歴史しか認めない違法性を争う訴訟。石田訴訟判決を踏襲しつつ、家族介護が争点になった。判決では1日21時間(介護保険含む)の公的介護を義務付けたものの、1日3時間は妻が介護すべきとされた。妻も高齢で家の中でも伝い歩きの状況だが、自立支援法上の考慮事項として家族の状況もあり、法上の限界も示された。

 

■権利条約~総合支援法~現在の状況

以上の裁判凡例により、裁判所では「当事者1人1人の障害状況に応じた支給量を出さなくてはならない」事はスタンダードな考え方。また憲法上の根拠、障害者権利条約への批准、2011年障害者基本法の改正、2013年~障害者総合支援法と、上記の裁判凡例の時点より、「基本的人権を享有する個人としての尊厳/分け隔てられない共生社会」とさらに権利性を明確にした法的根拠が示されている。

しかし総合支援法では「介護支給量の支給は市町村の裁量」とされ、そのため「支給量の大小は、市町村によって格差があり、必ずしも全ての申請者が必要な支給量を受けられているわけではない」のが現状であり、藤岡弁護士によると「最近の傾向として、東京都23区は確信犯的に厳しく、大都市で厳しい傾向が見られる」と述べられていた。また全国ネットとして全国各地30人以上の方を支援しているが、訴訟や審査請求でなく申請段階から弁護士が代理人として入り行政交渉していく取り組みにより解決に至った事例が多いこと、その際には介護日誌や写真撮影報告書や医師の診断書、ヘルパーの陳述書など説得力のある資料提出が不可欠とのこと。今後とも全都道府県に介護保障に取り組む弁護士を配置したいと述べられていた。

 

■兵庫県・和歌山県・徳島県の当事者による座談会

座談会では「自立したきっかけや親との関係」、「自立してよかった事、苦労している事」、「弁護士と出会ってどう思ったか??」、「伝えたいメッセージ」等、弁護士がコーディネートしながら3人の当事者の率直な思いが語られました。

最後に全国各地の事例が報告されました。

・仙台市・・・筋ジストロフィーのIさん。人工呼吸器を利用しているが気管切開していないため切迫していないとの行政の評価、生命維持・健康維持の見守りは認めるがそれ以外は認めない、電化製品の沿いさもテレビ等は認めない等のひどい対応を受け、弁護団の支援を受け今年5月から月799,5時間の支給量が認められた。市会議員やマスコミ、相談支援も支援し輪が広がった。

・大阪市・・・当初、月301時間しか認められず平成27年に375時間、それでも空白が200時間以上におよび80歳を越える母親が介護を余儀なくされていた。弁護団の支援を受け平成28年には月548時間(生活介護を合わせ1日23時間)の決定を受けたが、現在も交渉は継続している。

・石川県・・・筋ジストロフィー。8歳から現在まで長期の入院生活。平成28年病院からの外出・ガイ浜時のための支給量108時間を決定、宿泊体験を重ね平成29年3月に933,5時間を申請。シンポジウム中はまだ交渉中であったが、後日談として支給が認められ、自立生活に移行され、大きく新聞でも紹介された。

 

以上報告でした。この全国ネットシンポジウムの成功を踏まえ、神戸での支給量問題について、解決に向け今後とも頑張っていきたいと思います。

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