市・町の制度 精神障害者 オールラウンド交渉

2017年度  精神障害者問題に関する要望書

神戸市長 久元 喜造  様

神戸市教育委員会 雪村 新之助 様


障害者問題を考える兵庫県連絡会議

代表  福永年久

2017年度  精神障害者問題に関する要望書

2017年 10月 11日

 

【1.教育】

精神疾患は誰もがなる可能性があり、思春期、学生時、就労してから、様々な要因で精神疾患になり、年々増加している現状があります。もし自分が精神疾患を持った場合、子どもの頃に必要な教育を受けていれば、大きく変わります。とりわけ精神障害に関しては「知らない」事により、本人も周囲も大きな生き難さを生じます。国際的にも生徒の心の変調が増加しており、精神疾患の早期発見・介入の促進のため欧米では6歳から学校精神保健プログラムが実施され、世界保健機構〈WHO〉は生徒・教職員に精神疾患の知識啓発を実施するよう各国に提案しています。しかし日本では不登校の生徒の増加や、心に悩みを持つ生徒が増加、また児童を取り巻いて精神疾患を抱える家族も増加しているにもかかわらず、日本の学校では、精神保健に関わる教科はなく、正しい精神保健福祉の記述は見られません。それらを踏まえ、以下、要望ならびに質問します。

①  これらの動向について神戸市教育委員会の考え方、今後の方針について回答して下さい。

②  現在でも学校現場で、人権教育・障害理解教育は行われており、その枠組みを活用して各学校で精神疾患の知識を正しく認識し、啓発できるような学校精神保健プログラムを神戸市教育委員会として検討し、実施可能な、例えば、精神障害当事者をゲストティーチャーに招いた研修を実施することも含め、積極的な施策を検討していただくよう要望します。

 

【2.交通】

(1)【運賃割引】

精神障害者の交通運賃について、「全国精神保健福祉会連合会」が2016年に60万筆以上の国会請願署名を提出し、国に対して強く要望しています。2017年には、西日本鉄道が精神障害者の電車とバス料金割引を大手私鉄として初めて実施しています。神戸市内の状況は、神戸新交通以外の鉄道事業者で割引を行っている事業者はありません。神戸市として、各事業者へどのような働きかけを行っているのか報告してください。(事前の資料回答)

 

(2)【介護者付割引】

精神保健福祉手帳2級や3級の障害者も、介護者がいなければ外出が困難な者は、移動支援等を利用して介護者と共に移動しています。全国的には1級の者しか介護者付割引を認めていない事業者もありますが、2級や3級の者も認めている事業者もあります。神戸市においては、知的障害では等級に関わらず介護者付割引が認められ、介護付福祉乗車証が交付されているにも関わらず、単独での外出が困難なため移動支援を利用する2級・3級の精神障害者には介護者付割引を認めていません。このような障害種別による格差を設けていることについて、市としてのどのように考え、どのような検討をされているのかを示していただき、また民間各事業者にも割引実施を働きかけてください。

 

(3)【駅のベンチ】

駅ホームにいる際に強迫観念や幻聴や妄想などのためパニックになり、ホームから落ちそうになることがあります。精神障害の立場からもホームドアの早急な設置を強く要望します。また、それまでの対策としてJRが実施しているように、ベンチを線路と垂直とすることで転落を防止するよう事業所に周知してください。昨年度の回答では、神戸市営地下鉄ではベンチから立ち上がりそのままホームに転落した方はいないということで、ベンチを垂直にすることは検討していないとのことでしたが、実際に他鉄道ではそういった事故が起こっていますので、事故が起こる前に対策を検討してください。

 

(4)【ヘルプマーク等】

精神障害者でも心理的な負担なしにシルバーシートが利用できるように「体調が悪い人はすべて利用できること」を表すようなマークや説明文をつけるなど配慮を行うよう事業者に周知してください。「ハート・プラスマーク」のような内部障害と内部疾患のある人に限定されているものではなく、2017年7月にJISが改正され全国共通マークになった「ヘルプマーク」の普及と、「精神障害者」もシルバーシートが利用できるということが誰にでもわかるような環境作りを、神戸市でも事業者に周知してください。

 

【3.地域移行~退院促進】

(1)【精神医療審査会・身体拘束】

2017年6月1日毎日新聞で、必要な委員の出席者数の要件を満たさず精神医療審査会を開催している自治体が政令市と都道府県の中で約4分の1ある等の厚生労働省の調査結果が報道されていましたが、神戸市の精神医療審査会の以下の内容について回答してください。

①神戸市の精神医療審査会の2016年度の開催回数と審査件数について回答ください。(事前の資料回答)

②精神医療審査会はほとんどが書類審査だと聞きます。閉鎖病棟や様々な自由が制限されかねない精

神科病棟の中に権利擁護の仕組みが求められます。厚生労働省も「医療保護入院制度等の特性を踏まえ、医療機関以外の第三者による意思決定支援等の権利擁護を行うことを、地域生活支援事業に位置付けることが適当」とされています。神戸市としての今後の改善に向けた取り組みについて回答ください。

③精神科病院で行われている「身体拘束」について、実施した精神科病院数と身体拘束の件数および

身体拘束の理由について、平成27年度の状況について報告してください。(事前の資料回答)

 

(2)【重度かつ慢性について】

2017年2月8日「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」報告書では、1年以上の長期入院者の地域移行において、「重度かつ慢性」の人たちは地域移行支援と社会基盤整備の数値目標の算出から除外すると聞きます。「重度かつ慢性」とはどのような基準であるのかを説明してください。私たちは「重度かつ慢性」とされる人たちも地域生活を送ることは権利だと考えますが、神戸市の考え方と第5期障害福祉計画での検討の方向性について説明してください。

 

(3)【公営住宅】

地域移行のためにも公営住宅は重要です。しかし公営住宅に入居した精神障害者が自治会の役員や掃除を担う事は困難で、近隣住民との関係が悪化し症状が悪化し住み続けられなくなる場合もあります。さらに公営住宅の管理は民間事業者に丸投げされています。神戸市として、精神障害者が「公営住宅に住んでからの支援」「入居後の孤立・不安を取り除き、安心して住み続けられる支援」をするため、管理を委託する民間事業者に対し、精神障害者の入居者への配慮、サポートについて、精神障害への理解、人権啓発等の研修を積極的に行ってください。

 

(4)【長期在院者の減少率】

神戸市の長期在院者の減少率について、2016年度の進捗状況を報告していただくとともに、退院理由として、転院、家族の下、グループホーム、死亡など、2016年度実績における、それぞれの割合を回答ください。(事前の資料回答)

 

【4.精神障害者の介護保障等、地域生活】

(1)精神障害者に特化した居宅介護等の2016年度の利用者数・利用時間について資料でもって回答して下さい。(事前の資料回答)

 

(2)精神障害者の移動支援(ガイドヘルプ)についても、精神障害者に特化した2016年度の利用者数と利用時間について資料で持って回答して下さい。(事前の資料回答)

 

(3)居宅介護・ガイドヘルプにおいて、「支給決定」と「実利用」に大きな格差があることについて神戸市としてどのように分析しているのか回答してください。また、ここ数年の人数・時間の推移について、市としてどのような見解をもっているのか回答してください。

 

(4)神戸市に精神障害者のグループホームが何ヶ所あり、何人利用しているのか、2016年度実績について回答して下さい。(事前の資料回答

 

【5.就労・障害年金】

精神障害者に係る障害年金は、疾病名や就労しているだけで不支給となるケースが多くあります。また一旦就労できても離職したり、就労したいが就労すれば年金が無くなるのではないか、そんな不安が症状を悪化させたりします。そのためにも安心して生活できるためにも障害年金は重要です。しかし、年金や精神保健福祉手帳の等級判定に際して、診断書を書く担当医師によれば精神障害当事者の実情、特に「生活障害」について十分理解されていません。医師が「生活障害」についてしっかり踏まえたうえで手帳等級判定するように、医師会や精神神経科診療所協会などに情報提供するなど改善に努めてください。

 

【6.保健・医療・衛生について】

重度障害者医療費助成の精神障害2級拡大については、全国の200以上の市町で実施されています。しかし神戸市は「財政負担により制度存続が第一」と毎年回答されており、私たちの要望と市の回答はずっと平行線です。しかし、精神障害保健福祉手帳障害等級判定基準では、2級の人は「著しく日常生活に制限を受ける」等記されており、一般就労が困難な人が多くいると思われます。こうした実態に応じて医療費助成の対象者を精神保健福祉手帳2級の人まで対象拡大してください。家族の高齢化や経済的負担は家庭崩壊しかねない現状があります。当事者、家族の実情や要望を聞いていただき、今後とも改善に向けた検討を行ってください。

以上

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