【要望書】 神戸市教委への緊急要望書
神戸市教育委員会 様 2017年10月16日
障害者問題を考える兵庫県連絡会議
神戸市立楠高校の学級減に対する緊急要望書
私たち「障害者問題を考える兵庫県連絡会議」は1981年設立以来、障害のある児童が障害のない児童と共に地域の学校で共に生き学ぶことができるよう、就学支援に取り組み、また神戸市教育委員会との協議を20年以上にわたり行ってきました。
さて、今般、突然、神戸市立楠高校が来年度から1クラスの学級減になると聞きました。中学3年生の進路希望調査が新聞各紙につい最近発表され、楠高校は定員120人とされていました。高校受験まであと数か月という、差し迫った時期に、突然の学級減の動向を知り、驚くとともに強い憤りを感じています。楠高校の学校現場への聞き取りや実情調査なども一切行われることなく、一方的に既定の方針であるかのごとく強行する姿勢は許されるべきことではありません。
楠高校は、障害のある生徒にとって、県下でもかけがえのない大切な高校です。障害生徒、特に入学選抜試験で点数を取ることが困難な知的障害等の生徒にとって、全日制高校、私立高校に入学を希望しても、学力選抜と言う極めて高い壁があり、入学は実質的に困難です。また阪神間から神戸にあった定時制高校でも一切門戸を開かなかった高校、一方、粘り強い障害児童の保護者や高校現場の先生方の努力により、障害生徒を迎え入れた定時制高校もありました。しかし兵庫県教育委員会の高校教育改革の名の下、とりわけ阪神間の定時制高校の多くが募集停止されました。
日本政府は2014年に障害者権利条約に批准し、また障害者基本法には「可能な限り障害のある生徒と障害のない生徒が共に学ぶべき」と示されています。しかし現実は大きな壁があります。大阪府では知的障害生徒に特別枠を設けて毎年知的障害生徒を受け入れています。このようなインクルーシブ教育推進のための施策を、私たちは長年にわたり兵庫県教育委員会、神戸市教育委員会に対して要望をしてきましたが、一切実現されないどころか、とりわけ2012年度の阪神間の定時制高校の募集停止は、阪神間各市議会の意見書や各市のPTA等の強い反対や多くの県民の署名にもかかわらず強行され、障害生徒を受け入れてきた定時制高校を募集停止しました。さらに今回、兵庫県下でも突出して障害生徒を受け入れてきた神戸市立楠高校に対して、学校現場の実情や先生方の意見を一切聞くことなく、一方的な学級減を強行することは到底、容認できません。
また私たちは現在、淡路在住の障害の重いG君という児童、保護者から何とか楠高校に行きたいという声を聴き、この間、支援しています。保育所の時から障害のない仲間と暮らし、小学校、中学校とみんなと共にいるからこそ、たくましく成長しています。中学では身体障害があり他の生徒と同じようなクラブ活動はできませんが、彼にできることをみんなが考え仲間として部活に取り組み、その経験はかけがえのない宝物になっています。淡路島内では障害のある児童に理解のある高校はなく、数年前にも淡路から楠高校にたどり着いた生徒はいます。今回、G君と保護者は、通学の方法をどうするのか、下の兄弟の面倒はどうするのか、多くのいまだ解決されていない課題が多くありながらも、G君と保護者は何とか楠高校に行きたい希望を持っています。
今回、もし楠高校が学級減になれば、定員超過するかもしれない、また従来と生徒数は変わらないのに教員数が8人も減になれば、障害の重い生徒の受け入れが困難になる事も予想されます。また楠高校は障害者手帳を持つ生徒が55人いると聞きます。卒業生の保護者からは、こんなに障害生徒や保護者にも寄り添って安心できる教育環境は、小、中学校でもなかったと言います。障害者だけでなく様々な被差別にある、また家庭的に困難を抱える生徒、高齢者生徒、そんな様々な生徒に寄り添い、1人1人を大切にする理念や風土がしっかり根付いており、多くの県民市民にとってかけがえのない、まさに特色ある高校なのではないでしょうか。学級減の理由として、市民の理解が得られないと神戸市教育委員会が示されていると聞きます。もしそれが理由であるなら、楠高校の教育実践、県下の高校、いや全国的にも先進的な、まさにインクルーシブな教育実践を神戸市教育委員会が積極的に発信し、まさに市民の理解を得られるよう努力するべきではないでしょうか。
以上の理由により、私たちは下記の点について強く要望します。
一、現在検討されている、楠高校の学級減の計画を即座に中止してください。
11月 4, 2017