教育

【要望書】 西宮市/市教委への要望書(インクルネット西宮)

西宮市長 今村岳司様                                           2017年10月10日

西宮市教育委員会 様

要望書

インクルーシブ教育をすすめるネットワークin西宮

代表  目良知美

 

日々、障害福祉の向上ならびに特別支援教育にご尽力されていることと存じます。

本年7月から西宮市特別支援教育審議会において、インクル―シブ教育システム構築に向け障害者差別解消法の合理的配慮の提供も含めた基礎的環境の整備等、障害者権利条約の理念に則り地域共生社会の実現に向け審議も始まりました。

本年7月14日開催の同審議会では、西宮市教育委員会特別支援教育課より、障害のある児童の公立幼稚園の就園の在り方を見直すとの提案がなされました。その内容は、障害のある児童に対して、教育支援委員会において「専門機関相当」との判断が下されても保護者との合意形成により公立幼稚園への就園も可能とするものです。大変、喜ばしい事ではありますが、しかし、以下にあるよう、①来年度の就園に向け現在行われている公立幼稚園への就園の在り方、②これまで行われてきた「専門機関相当と判断されれば公立幼稚園に就園できない」という「障害を理由とした排除」と言うべき在り方への根本的な認識、において大きな問題があり私たちは明らかに障害者差別解消法に違反するものだと考えます。

障害のある児童も障害のない児童も平等に公立幼稚園への就園への機会が与えられる、そのようなごく当たり前の在り方に早急に改善されるよう強く要望します。早急に以下の要望をぜひ実現していただき、質問に対してご回答ください。遅くとも本年10月末日までに要望の実現ならびに質問に対する回答を行ってください。

 

①   来年度の就園に向け現在実施される公立幼稚園への就園において、審議会で示されたよう、専門機関相当と判断されても公立幼稚園への就園を可能とするよう早急に改善し、当該の保護者に対し、誠実に対応してください。

・子どもさんが専門機関相当と判断された保護者Aさんが、9月29日に西宮市特別支援教育課の担当者と面談し話し合った。担当者は「1対1の支援が必要な子供に対して、いま現在の支援員の制度(教員ではなく有償ボランティア)では適切とは考えれない。その為専門機関の方が適切と判断。審議会で公立幼稚園入園の見直しの案が降りてきているので、現在検討はしているが公立幼稚園の減少などもあり受け入れ体制を整える事が難しい」と保護者Aさんに伝えた。それに対し「保護者が付き添います」と保護者は申し出たが、「前例がないためできない」と回答され、これ以上話し合っても解決には至らないと、保護者Aさんは非常に不本意ながら話し合いを終えた。

・障害者差別解消法には学校・幼稚園など公的機関には合理的配慮の提供は義務付けられている。その義務を履行しないどころか、就園の機会すら与えないことは合理的配慮の提供以前の、門前払いという、障害を理由とした不当な差別的取り扱いに該当すると判断される。

・また、合理的配慮の提供においては、どうすれば当該児童が公立幼稚園に就園できるのか、双方の建設的対話に基づき協議・調整していくことが求められている。環境整備が不十分という現状を保護者Aさんは受忍し、自分が付き添うという建設的な協議を申し出たにも関わらず、「前例がない」と全く理由にならない理由により拒絶したことは、解決しようという姿勢が一切なく、障害者差別解消法が示す対応として全く不適切な対応である。また「前例がない」との理由は何ら正当性がないと考えられるが、それが当該担当者の個人的な見解でなく西宮市教育委員会としての認識であるなら、重大な誤認識である。2016年4月1日より障害者差別解消法が施行され、同法は従来であれば義務と課していなかった障害児者への不当な差別的取り扱いの禁止、合理的配慮の提供義務など、新たな法制度的環境の下に現在はあるため、仮に過去に前例がなかったとしても同法の下で履行に向け努力することは当然のことである。この点に関し、下記②とも内容が重複するが、西宮市教育委員会としての見解をお示しください。

・また、私たちの活動の中で、多くの保護者から公立幼稚園への就園を断られても、私立幼稚園に就園し支援員の支援を受け通園している事実は多くある。多くの保護者が、なぜ私立幼稚園で可能なのに公立幼稚園ではできないのか、むしろ公立幼稚園こそ積極的に障害のある児童を受け入れるべきではないのかと強い疑問を有している。

 

②   従来の、そして現在もなお改善されてない「専門機関相当と判断されれば公立幼稚園に就園できない」在り方は、過去の裁判判例から見ても不当だと考えられます。障害者差別解消法に抵触しないのか、これまで(少なくとも障害者差別解消法が施行された2016年4月1日以降)十分な検討が行われたのか、検討されたのであれば、どのように検討されたのか、具体的に説明下さい。

 

・徳島県藍住町立幼稚園に二分脊椎等の障害のある児童が入園を申し出たが、町の財政的理由で職員の加配が認められず入園が拒否され、その後、仮の義務付け訴訟が提起され、平成17年6月7日に徳島地方裁判所は保護者の訴えを認め、仮の義務付け決定の制度により、町教育委員会が入園を不許可とした決定には何ら合理的理由はないと、就園を仮に許可せよとの、決定を出しました。

・徳島地方裁判所の同決定に際して裁判所は、「子どもには・・・自己の人格を完成するために必要な教育を受ける権利が憲法上保障されており・・・心身に障害を有する幼児にとって・・・特に、幼少期から、障害の有無にかかわりなく他者と共に社会生活を送り、自主的、自立的な精神を育むことが重要であり、・・・その障害の克服する意欲を持続するためにも、他者との社会活動が重要となる場合もある・・・」と障害のある児童の幼児教育の重要性を指摘し、「地方公共団体としては、幼児の保護者から公立幼稚園への入園の申請があった場合には、これを拒否する合理的な理由がない限り、同申請を許可すべき・・・障害を有する幼児に対し、一定の人的、物的な配慮をすることは、社会全体の責務であり、公立幼稚園を設置する地方公共団体においても、このような配慮をすることが期待される」と、地方公共団体の義務に触れ、「当該幼児に障害があり、就園を困難とする事情があるということから、直ちに就園を許可するのが真に困難であるか否かについて、慎重に検討した上で柔軟に判断する必要がある」のに、当該町は、これをしていなかったので、「不許可処分に合理的な理由がない」とされたのです。

・上記、徳島地方裁判所の判例と今回私たちが要望する事案とは、行政の対応、当該児童の障害の状況など、具体的には異なる面はある。しかし、徳島県藍住町教育委員会と西宮市教育委員会が入園を認めない理由についてはほとんど同じ内容であり、また裁判所が根拠とする考え方は十分に適用できるものであると考えられる。

・また徳島地方裁判所の判例は平成17年であり、その時点では日本政府は障害者権利条約にも批准せず、現在の障害者基本法の改正前であり、障害者差別解消法も存在すらしなかった時代である。その時代においても、障害のある児童に対する幼児教育の必要性、障害のない児童と共に学ぶ意義、環境整備は社会全体の責務であり、その環境整備は地方公共団体に求められると憲法を根拠として示されている。そうであるなら、現在、障害者権利条約に日本政府は批准し、障害者基本法においても「可能な限り障害のある児童と障害のない児童が共に学ぶべき」と法上に明記され、さらに障害者差別解消法において「障害のない者と障害のある者との平等」の実現、そのため不当な差別的取り扱いの禁止や合理的配慮の提供、とりわけ公的機関には明確に義務として位置付けられている、そのような法制度環境の現時点においては、先の徳島地方裁判所に提起されたような事態は本来あってはならず、仮にあったとするなら早急に改善されることは当然のことである。

 

③   西宮市全体で、この問題を解決してください。

私たちは2016年11月末にも、今回の幼稚園の就園の在り方について要望し、また7月14日特別支援教育審議会以降も数度にわたり口頭で改善の要望をしてきました。また、9月西宮市議会においても障害のある児童の公立幼稚園の入園問題が質疑されています。私たちの要望だけでなく、議会の場でも要望を受け、問題を十分認識しながら、なぜ西宮市教育委員会として解決されようとされないのでしょうか。本来、私たちとして西宮市教育委員会を信頼し、協議により建設的に改善されるものと期待していましたが、一向に改善される見込みもないため、不本意ながら、このように文書により要望するに至りました。

9月市議会で、3割の障害のある児童が専門機関相当との判定を受けていると答弁されています。これまで何年にもわたり多くの障害のある子ども、その保護者が、公立幼稚園への就園への門戸が閉ざされてきました。ある保護者は言います。「幼稚園に入りたいと思っても断られた、そんな目にあったら通常の学校に行かせたくても行こうとは思わない」。子どもに障害があれば生きていくだけでも、幾多の困難に直面します。子供の成長と共に、障害のない児童が幼稚園、小学校へと歩み出していく、それは喜ぶべきことです。しかし幼稚園にも障害のない子どもたちと同じように就園できない、その時に保護者が抱く断念や辛く悲しい思い、西宮市教育委員会の1人1人の担当者の皆さんが、その事に思いをわずかにでも馳せていただくことを期待します。

また平成29年度施政方針で「インクルーシブ教育システム構築に向け努力する」と述べられた今村市長におかれては一刻も早くこのような事態改善に向け取り組んでいただき、また地域共生社会の構築に向け尽力されている西宮市障害者自立支援協議会の「こども部会」や「権利擁護委員会」等その他関係機関の方々におかれても、障害のある子どもやその保護者が2度とこのような辛い目に合わないよう、積極的に西宮市教育委員会に働きかけてください。

来年度の就園に向け、今なお待っている保護者がいます。上記の要望並びに質問にご回答いただくと共に、早急な改善を要望します。

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