【報告】 9/19 第1回 兵庫県との交渉報告
障問連事務局
9月19日、兵庫県中央労働センターにおいて、今年度第1回目の兵庫県との交渉が行われました。8月、突然の県の「ユニバーサル条例」検討という新たな事態を受け、要望書にはなかったが、重点課題として話し合いました。また、「人権の視点から見た兵庫県の障害者施策について」という課題も初めて取り上げましたが、1時間半という非常に短い時間制約もあり、県と折衝した結果、文書回答も含め、次回(11月13日)に話し合うことになりました。
以下、報告しますが、「精神障害者問題に関する要望」については次号ニュースにて報告させていただきます。
■第5期障害福祉計画策定に関わる課題
〈要望内容1〉:厚生労働省は障害、高齢、児童など横断的な支援のあり方、相談体制を構築すると、今後の福祉施策の根幹に据えると「地域共生社会」の構想を打ち出しています。具体的には2018年度から「共生型サービス」が導入されます。これらについて兵庫県の考え方、ならびに第5次障害福祉計画にどのように反映されるのか、事務局の方針を回答ください。
〈県・回答要旨〉:兵庫県では、「年齢による切れ目のない支援」の実現を目指し、これまで高齢障害者ケアマネジメントをテーマにした検討会や研修を実施してきたところである。
「共生型サービス」の導入により、65歳を迎えた障害者が従来のサービスを継続して受けやすくなれば、「年齢による切れ目のない支援」に資すると考えているが、実際に「共生型サービス」が広く利用されるかどうかは、今後示される基準や報酬の設定によることから、国の社会保障審議会障害者部会での議論を見守りたい。また、介護保険と障害福祉の適用関係と同様、「共生型サービス」についても本人の意向や状態像を踏まえた適切な利用がなされるよう、注視してまいりたい。なお、第5期障害福祉計画では、障害福祉サービス事業所の整備が遅れている地域を中心に、「共生型サービス」への参入を促進する方針を盛り込むことを検討している。(回答:障害福祉課障害政策班)
→ 国の動向、報酬改定議論が継続しており、その推移を見守りつつ、回答について検討し、特に「共生型サービス」については、2回目の話し合いでの要望項目でもあり、引き続き話し合うことを確認した。
〈要望内容2〉:新たな障害児童の計画策定に当たり、就学前も含めた共生共育の視点や理念を反映した軽鎖核策定について県の見解を聞く。
〈県・口頭回答〉:障害児の支援の在り方について、第5期障害福祉計画にかかる国基本指針において、新たに障害児支援の提供体制の整備等が成果目標の大項目として示された。(中略)県障害福祉審議会では、国基本指針とは別に新たに計画に盛り込むべき項目について検討したところです。医療的ケア児の支援体制構築のため基盤整備や関連分野の支援を調整するコーディネーターの配置等の相談支援の充実、福祉と教育の協議の場を設置すること等を計画に盛り込む予定。(回答:障害福祉課障害政策班)
※(質問:福祉と教育の協議とは何か??)→
→(県回答)・・・想定しているのは市町の規模によって協議する内容が異なってくる。小規模の市町であれば例えばA君B君C君といった個別の教育の現場で困っている事例に対して福祉の支援者からこうすればよいのではないかと具体的なアドバイスを行う場、あるいは神戸市や中核市であればスキームの話として福祉の現場からどんなアドバイスができるのか、逆に教育の場から放課後デイや福祉の現場に対して、学校でこういう問題があるから、こういうことに気を付けてほしいとか、意思疎通を図るような場として想定しています。
→ これまでの県障害福祉審議会でも教育に関する意見が出ているが、県教委方針を追認するだけで計画等に反映されていない。インクルーシブな社会構築には教育は重要。子ども子育て支援の転換も併せ踏み込んだ検討を行ってほしいと要望した。
■人権の視点から見た兵庫県の障害者施策について
〈要望内容〉:相模原事件の犯人が主張するという優生思想と同様の内容で、兵庫県は過去に「不幸な子供の生まれない運動」を知事自らが積極的に推進してきた。現時点での反省を含めた意見表明を要望。
〈県・回答読み上げ〉:健康増進課が母体保護法を主管していますので文書回答いただいていますので代読します。
「1966年昭和41年から1974年昭和49年については旧優生保護法の施策に取り組む立場にあったと認識している。同法は優生思想に基づく部分が障害者に対する差別になっている等の理由から1996年平成8年、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するという優生思想に基づく部分が削除され名称が母体保護法に改められました。兵庫県においても改正の経緯、趣旨を受け止め母子保健法の遵守に努めます。平成27年3月に本県障害福祉行政の基本指針である障害福祉計画を策定しましたが、障害者権利条約に示された障害者の人権や基本的自由の享有の確保、固有の尊厳の尊重を骨格として基本理念等の設計を行っており今後も同計画の趣旨に則って県の障害福祉行政を推進していきたい」
→ 全く回答になっていない。昨年8月の定例記者会見での知事発言に対する回答も併せ、次回、2回目の場でも話し合うことを確認。
■新たな「ユニバーサル社会推進のための委員会」/条例化について
〈要望内容〉:8月に記者発表され、条例化も視野に入れた表記について、趣旨を聞き、もし条例化されれば、差別解消条例や手話言語条例は制定しないとの意味なのか等、口頭で試問した。
〈県・口頭回答〉:
・元々兵庫県は平成17年度に「兵庫ユニバーサル社会づくり総合指針」というのを作っています。これ
は年齢・性別・障害・文化等の違いに関わりなく誰もが地域社会の一員として支え合う中で安心して暮らし1人1人が持てる力を発揮して元気に活動できる社会、これを目指しますという趣旨で作った。対象者は障害者だけではありません。高齢者・子ども・外国人の方、いろんな方が対象になる。5本の柱がありますが、「人・もの・情報・街・参加」。この総合指針については平成22年度に一度フォローアップしました。フォローアップができる平成23年3月に東日本大震災が発生し、そのことも踏まえて平成23年6月にフォローアップの結果を発表した。それから丸6年を過ぎ、その6年間の間にマスターズ、東京パラリンピック、昨年の相模原事件、視覚障害者の駅ホームからの転落事故、様々なことがあり、そういった事も踏まえて、特に情報の分野は大きく、1年1年変わっている。新たに総合指針を検証していく必要があるとの観点から始まった。
・そしてその中で、この総合指針をもっと具現化していくためには条例制定も視野に入れてやる必要が
あるが、あくまで条例制定ありきというものではありません。条例制定も視野に入れているので、結果的には条例を作ることになるかもしれませんが、条例ではなくて総合指針を見直して改訂することも選択肢の一つだという点はご了解願いたい。
・権利擁護や手話言語ですが、条例を作るとした場合に、どこまで入っていくのかはまだ未定です。まず
条例を作るかどうかという点もありますし、条例を作るのであれば、単に理念的なものだけではなくある程度実効性のあるものも必要ではないかと考えていますので、例えば兵庫県の責務、各市町の責務、事業者の責務それぞれの責任と役割、これらを明確にして、県としてはこういうことをやります、市町にはこういうことを求めていきますなどが必要なことだと思います。手話言語についても、条例作るのであれば、その中で当然何らかの形で触れますが、一般的に言われている鳥取県をはじめとする手話言語条例といったような形のもの、手話言語に特化するものではない。当然、情報という観点から手話言語をはじめとする様々なコミュニケーション手段、点字、手話、指点字など全て想定したものについて考え方を示すことになるかもしれません。
・また今月の7日、兵庫県議会が管内視察で明石市に行かれ、その中で兵庫県議会健康福祉常任委員長
から条例についてコメントされ、その中で「ユニバーサル条例はユニバーサル条例、手話言語は手話言語条例で」といった発言があったそうで、サンテレビではすでに報道されています。そのような考え方もあるのかなと思います。条例を作っていく場合でも、どういった形で条例をつくるのかは未定ですし、仮に2本、3本の条例ができるとしても、それぞれが独立してというものでなく当然関連したものになる事を想定していただければと思います。とにかく条例ありきではないということだけは確認していただきたい。
・差別解消法、虐待防止法は法律的に障害者基本法という根拠法があるが、ユニバーサル社会づくりにつ
いては根拠法令がない。兵庫県でも総合指針は持っているが、「指針にこう書いてある。あなた方もきちんとしてください」と求めていくのは困難な現実がある。1つの考え方として、条例を作ることによって県としての根拠になると考えています。困っているのは障害者だけではない。車いすの入店拒否、これは高齢者も同じ、例えばベビーカーも入りにくい現状があり、総合的に支援していく事も必要ではないかと考えています。(回答:障害者支援課社会参加支援班)
※〈質問〉:条例化されるなら今後のタイムスケジュールは??
→〈県・回答〉:タイムスケジュールとしては、想定しているのは今のところ来年の6月県議会。今年度中も想定しましたが、色んな団体の意見を聞く必要があるので、スケジュール的には2月県議会は非常に厳しく来年の6月県議会が一つのメドになるのかなと思います。
※〈質問〉:非常に拙速ではないのか??
→〈県・回答〉:すでにユニバーサル社会づくり総合指針というベースになるものがあるので拙速ではない。
※〈質問〉:知事は2月県議会で「実効性の無い条例は作らない」と明言している。実効性のある条例になるのか??
→〈県・回答〉:内容はできていないが、県や市町、事業者、団体、県民それぞれの役割と責務を明確にしたうえで、全てが具体化した内容になるわけではないし理念も入ってきますし個別のやるべきことを定めていく事になると思います。
※話し合いの中で、差別解消条例にも言及されたため、主管課から以下の回答があった。
→〈県・回答〉:障害者差別解消法ができた時に兵庫県でも条例を作るという動きがありました。寸前まで行って条例化ができなくなって県民に対する指針という形になってしまった。ただ今後これを条例化するという動きは恐らく出てこないになります。条例で考え方を県民にきちんと伝えることも大事だと思いますが、我々は先ほど言いました指針に基づいて本当に年間20回程度、色んな所で差別解消法、虐待防止法について周知している。今後も条例化は非常に難しいんですが精一杯、差別解消については普及に努めたいと思います。(回答:障害福祉課障害政策班)
※「ユニバーサル社会づくり総合指針」は幅広いもので、中にはバリアフリーも含まれるが、幅広い総論・理念的なものであるので、例えばバリアフリーでは「福祉のまちづくり条例」が別途、策定されている。今回の動きは県議会でも要望が上がり、県として手話言語条例をどうするのかという議論の中で、知事が「ユニバーサル条例」を指示したと聞きます。トップダウンが必ずしも悪いわけではない。明石市の取り組みも市長の強い意向が反映されている。しかし、そのトップがどこを向いているのか、まさに人権の視点から見て大きな課題があると感じられる。差別解消条例にも関わる課題であるため、次回に継続して話し合うことを確認した。
兵庫県ユニバーサル社会推進委員会に関する資料
記者発表(資料配付)
・発表日時 8月8日(火)10:00
・担当課名障害者支援課 社会参加支援班
・電 話 078-362-4090 内線:2958
・発表者名(担当者)課長 羽原 好一(副課長 斎藤 信広)
・その他配付先
ユニバーサル社会推進委員会の設置について
本県では、平成17年に「ひょうごユニバーサル社会づくり総合指針」を策定し、誰もが主体的に生き、支える社会の構築を目指してきました。
当該指針は平成23年度にフォローアップを行いましたが、その後6年を経過し、2020東京パラリンピック競技大会、ワールドマスターズゲームズ2021関西を控えるとともに、近年、障害者支援施設での殺傷事件、視覚障害者の駅ホームからの転落死亡事故、さまざまな自治体による手話言語条例・コミュニケーション条例の施行、認知症高齢者の増加など、さまざまな情勢の変化を踏まえた対応が必要となっています。
したがって、このたび「ユニバーサル社会推進委員会」を設置し、総合指針の検証を行うとともに、「ユニバーサル社会づくりの推進に関する条例(仮称)」の制定も視野に、今後のユニバーサル社会づくりの推進について検討を進めます。
記
1 第1回ユニバーサル社会推進委員会の開催(冒頭取材可)
日 時 平成29年8月10日(木)10:00~12:00
場 所 兵庫県民会館 7F 亀の間
2 推進委員会委員(敬称略、順不同)
関西大学社会学部 教授 松原 一郎(委員長)
関西福祉大学社会福祉学部 教授 谷口 泰司
兵庫県議会 健康福祉常任委員長 伊藤 傑
NPO法人コミュニティ・サポート神戸 理事長 中村 順子
(公財)兵庫県身体障害者福祉協会 理事長 岡田 和隆
(一社)神戸外国倶楽部 元会長 フリッツ・レオンハート
(社福)兵庫県社会福祉協議会 会長 吉本 知之
(社福)プロップ・ステーション 理事長 竹中 ナミ
(社福)きらくえん 名誉理事長 市川 禮子
以下、第3回ユニバーサル社会推進委員会の開催案内も県のホームページに出ています。傍聴締め切りは10月10日(火)、詳しくは県ホームページ https://web.pref.hyogo.lg.jp/press/20171003_a5f62d3d761e46f1492581ae0005ee53.html をご覧ください。
日時:平成29年10月17日(火曜日)10時00分~12時00分
場所:兵庫県民会館 7F 亀の間
内容:ユニバーサル社会づくりの推進に向けた今後の方向性の検討 等
10月 8, 2017