【報告】 7/26 障害福祉について障害者団体が尼崎市長と懇談
障問連事務局
尼崎市では、この数年、障害福祉サービスのガイドライン(支給量基準)の制定、また移動支援事業も新たなガイドラインが示されています。阪神間では、宝塚市もガイドラインの見直しが行われていますが、両市とも障害福祉に係る予算の増加、国庫負担基準を越える市の負担など、それを市全体としても抑制する方向に基づく改訂です。宝塚市では、一部市会議員が「宝塚市では障害福祉に他市に比べ、こんなに多額の予算が使われている。これをもっと経済活性化のために使うべき」・・・このような内容の広報ビラを各戸配布していました。許せない事です。
兵庫県下では障害者がいくら希望してもその人の望む支給量が認められない市町が多い中、これまで両市とも障害者や家族の希望に寄り添った支給決定を行ってきました。財政的な事情を理由に、地域での自立した生活を実現するために必要な支給量が一律に削減されることはあってはなりません。しかし、抑制方針の下で窓口での様々な問題が起きています。障問連として、この間も両市の加盟団体から相談等を受け、十分な支援はできていませんが、以下、報告します。
■宝塚市では・・・Aさんの抗議
宝塚市ではガイドラインが改訂され、直後の更新時に、障問連加盟団体に所属されるAさんに対して、「余暇活動には認められません」「お金を節約するように介護時間も節約してください」等のケースワーカーの発言がありました。Aさんは、すぐさま抗議し、謝罪を受け、セルフプランに基づき生活していくために必要な重度訪問介護・600時間を越える支給量を認めさせました。
Aさんは、「自分のように、こうして要望できる者は良いが、このような事を市役所から言われたら、多くの障害者や家族は我慢させられ、諦めてしまう。宝塚市は差別解消の条例も作っている。今後、絶対にこのような事はないようにしてほしい」と強く申し入れられました。障問連として、この間、神戸市の特に重度訪問介護を巡る支給量の取り組みを行っていますが、宝塚市では、ガイドラインが改訂された途端に、このような問題が起きました。障害福祉課のケースワーカー等の職員は、障害者基本法や総合支援法の理念に則り、本人中心計画に基づき、その人の望む暮らしを、どうすれば実現できるのか、それが第一義の仕事にもかかわらず、また国・厚労省が「ガイドラインに示される支給量(時間)は基準であって上限ではない」と繰り返し通知しているにもかかわらず、ガイドラインが一人歩きし、市の職員は抑制方針の下、このような対応が多く見受けられます。
西宮市の障害者計画策定委員長の北野誠一さんは「非定型審査会(基準を越える場合に審議する機関)の開催がゼロはおかしい。ケースワーカーが本人の希望を聞き、地域生活の実現に向けてきちんとケースワークしているなら、非定型審査会はもっとあって当然」と常々言われています。本来、そうあるべきです。しかしその西宮市でもケースワーカーによれば、抑制を強く求める職員もいます。
政府が強い社会保障全体に抑制を掲げる中、各自治体でも同様の動きは今後ますます強められます。1人1人がバラバラでなく、つながりあえる運動が求められます。
以下、加盟団体を通じた尼崎市で7月26日に開催された障害者関係団体と市長との懇談会について要約して報告します。
■尼崎市長と障害者団体140人により懇談会が開催される
【要望:小規模作業所及び地域活動支援センターのほとんどが赤字運営です。今後も継続して運営できるように補助金を増額して下さい】
・尼崎市内にある小規模作業所及び地域活動支援センター30ヶ所についてアンケート調査したところ、80%の事業所が赤字運営。しかし「障害福祉サービスの利用が難しい方」の貴重な受け皿になっている。
【市長回答】
今の財政状況では補助金の増額を約束することは困難。ただ、小規模作業所及び地域活動支援センターの役割については、十分理解をしている。今後もこの制度を維持できるように努めていきたい。小規模作業所は法内に移行して欲しいとお願いしてきた。これからも個別に対応していきたい。
【要望:消防法の改正に伴い、グループホームにスプリンクラー等の設備を2018年の3月までに設置する必要があります。そのための助成をぜひ実施して下さい】
・尼崎市の中でも今回の設置問題で困っているホームが他にもあると聞く。小規模の運営ですので、事業収入は人件費等の支出でほとんど消え、返済に充てる程の予算が組めないのが実情です。
・自力での設置が困難な事業所が苦渋の決断でホームの廃止を決めたら、そこで暮らしていた利用者はどこに行けばいいのでしょうか?利用者の中にはその環境に慣れるために何年も必要とする人も少なくありません。自分自身に置き換えても、住み慣れた場所や仲間と離れるのは辛いことです。また、設置義務を回避するために、重度の人はホームへの入居を拒否されるおそれもあります。
・住み慣れた地域で安心して暮らせるように出来だのがグループホームです。今その「障がいがあっても地域で生活する」という市民としての当たり前の暮らしを脅かされています。今年の市の予算には当初、スプリンクラー設置の補助金があったそうですが、認められなかったようですが、是非、補助金を付けて頂けないでしょうか、また、自力で設置した事業所も借入等でしのいだわけですから、過去何年間は遡っての補助を認めていただきたいです。
【市長回答】
設置基準などで他にも問題があると思いますが、他市など免除など基準を緩める方法を取っているところもあるが、それはやりたくない。グループホームについては、運営するのが難しく増えていない。どうやって安全なGHを増やせるのか検討していきたい。実態を把握したい。個々に窓口で対応したい。
【要望:障害福祉サービスを受けていた方が65歳を境に介護保険サービスへの移行を余儀なくされ、支援時間が大幅に変更になるケースがあります。居宅介護と訪問介護における給付目的や基本方針などの違いを鑑み、65歳に達した後も必要な支援時間数の支給を保障して下さい】
・介護保険に移行していく対応に、柔軟性がない。尼崎市では65歳になったら、その瞬間から、障害福祉サービスは使えません。介護保険を使ってくださいと言われる。
・隣の西宮市では柔軟に対応していると聞く。65歳になっても、生活をがらっと変えることはせず、部分的に介護保険を利用し相談しながら進めている。
・しかし尼崎市では、65歳になる方がいるので相談に乗ってほしいと市に連絡すると「相談には乗れない。できません。決まってます」の一点張り。
・また、尼崎市は内規があり、要介護度5以上、重度訪問のみが、障害福祉サービスを使えるとのことですが、「内規があるのであれば、その文章を見せてください」と言っても、いまだ見せてくれません。人の暮らしがあることを忘れないでいただきたい。
【市長回答】
65歳問題については、限られた財源の中でみんなで話し合っていきたい。窓口の対応については、そのようなことがあるのだと思うので、現場で徹底していきたい。
【要望:移動支援事業について、報酬単価切り下げによる予算削減案がガイドライン部会で決定され提案されていますが、これ以上の切り下げが起こらないよう強く要望します】
・ガイドライン部会の削減案では、事業所に支払われる報酬単価(30分~1時間)が、これまでの5割から7割へ減少するものだった。これにより節減額は2億7622万円になると試算されている。この案は、障害者団体・事業所・行政の3者が協議する「自立支援協議会」でまとめられた案。
・しかし同時に 使い勝手をよくする改善や「サービス等利用計画や個別支援計画等において必要と認めた場合に限り、利用を認める」などの障害者の生活の実際に沿った運用がなされるよう付帯事項が付けられた。しかし、一生懸命書かれた支援計画や利用計画が窓口で、けんもほろろに扱われるという事態が起こっている。これは今まで培ってきた行政担当者と事業者・障害者団体と信頼関係を損なうものである。市長も現状を再認識してほしい。
【市長回答】
お話をお聞きしていると現場に理解不足があるようです。今日の様な場を持って、一緒に考えていきたい。
10月 8, 2017