【国の制度などの動向】 来年度に向け、報酬改定の議論が継続しています
障問連事務局
この間の報酬改定を中心に、国の制度動向について報告します。以下の内容については、「障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議」(障大連)の細井清和さんから、府外にも関わらず提供いただいている「事業所ネットワーク情報提供」から抜粋、参考にさせていただいています。感謝です!!
■第4次 障害者基本計画の策定開始
・もともと、国際障害者年に対応して作られ始めた長期計画と呼ばれていたものですが、第3次計画は、5年のスパンとなっていて、2018年度から、第4次障害者基本計画が始まります。これは、障害者政策委員会で原案に対する意見を言うという形で議論が進められます。8/7に開かれた障害者政策委員会では、就労支援に関連しては、職場内で精神・発達障害のある同僚を見守る「しごとサポーター」という仕組みが提案されています。(2時間ほどの講座受講)障害者差別解消に関しては、意思決定支援指針(2017年3月策定)の普及、成年後見制度の利用促進と共に欠格条項の見直しを行うことなどが提案されています。東京五輪・パラリンピックや権利条約の国際権利委員会による初めての審査なども視野に入れて、議論が進められる予定です。(以上「事業所ネットワーク情報提供」資料より)
■報酬改定の前提として・・・社会保障全体予算総枠の規制
○今回の改定では、枠組みとして社会保障全体の総予算の抑制が予想されます。政府として、社会保障(医療、介護保険、障害福祉、生活保護、子供・子育てなど)に関しては、2014~2018年度まで、年間に介護保険も含めて自然増として5000億円増までしか認めないという財政制度審議会答申の枠組み(経済・財政再生計画)があります。
・2018年度予算について、社会保障費に関しては、8月末の概算要求段階では「概算要求基準」として6300億円の増加しか認めないとしました。さらに年末の政府予算案までに1300億円カットし5000億円まで抑え込む方針を打ち出されています。社会保障全体の予算は、高齢化の進展などによって必然的に増加します。障害福祉関係については、新しいサービス(自立生活援助など)がはじまりますが、障害福祉の予算は全体として、押さえ込まれる可能性があります。
・2014年度以降、医療費や介護保険などで大幅な削減がされてきましたが、今回の1300億円カットの中で、どのような抑制が働くのか、注目しておく必要があります。
【参照1】社保費1300億円削減へ=概算要求基準を閣議了解(時事通信7/21配信)
・政府は7月20日、臨時閣議を開き、各省庁が2018年度予算を要求する際のルールとなる概算要求基準を了解した。高齢化などに伴い増大が見込まれる社会保障関係費は、今年度に比べ6300億円の増加を要求の上限とする。政府は社会保障費の伸びを年5000億円に抑える目標を掲げており、予算編成では1300億円の削減をめぐる具体策の取りまとめが焦点となる。
18年度は診療報酬と介護報酬の二つの改定を控えており、医師らへの報酬引き下げに踏み込めるかが社会保障費の抑制で大きなカギを握りそうだ。麻生太郎財務相は閣議後、記者団に対し「年末の決定段階までに厚生労働省と詰めていきたい」と発言。厚労省との協議を今後、本格化させる考えを示した。
○これらの総枠規制に関する各団体の対応としては、DPIなどでは、障害者関係予算は、先進国と比較して低水準になっていることを踏まえて、全体の枠を増やすべきだと主張していますが、厚生労働省が掲げる「持続可能な制度にするための課題」という設問の中で、「何かを増やすなら何かを削る」という論理が押しつけられ、多くの障害者団体で、削減やむなしという論調となっています。
※いくつかの団体で利用料の引き上げなども提案されています。
・また、「介護職員処遇改善加算」については、今年度に前倒ししたと言うことで、検討の枠組みからも外されています。(団体からは、人材確保の視点から「他の業種との格差」が主張されていますが・・・
■2018年施行に向けた報酬改定について
平成30年4月に障害福祉サービスの報酬改定にむけて「報酬改定検討チーム」による議論が行われています。DPI日本会議や全国自立生活センター協議会(JIL)など当事者団体、関係支援団体など多くの団体からのヒアリングが現在行われています。以下のタイムスケジュールで実施されます。また、以下、全国自立生活センター協議会の意見を紹介します。
〈報酬改定タイムスケジュール〉
・平成29年 6月~夏頃 関係団体ヒアリング、論点整理【報酬改定検討チームによる】
・平成29年 夏頃~11月 具体的な議論【報酬改定検討チームによる】
・平成29年 11月~12月 取りまとめ【報酬改定検討チームによる】
・平成30年 1月~2月 障害福祉サービス等報酬改定案の決定【厚労省による】
○全国自立生活センター協議会の意見(要約)
1 重度訪問介護 関係
① 入院時利用の対象者について
―平成30年4月から開始される入院時利用の対象者について、障害支援区分6に限らず援助の必要性(ニード)に着目して利用できるようにすること。
② 重度訪問介護の基本的報酬単価の拡充、区分4・5に関しても十分上げること。
③ 介護保険給付対象者の国庫負担基準の引き下げ問題
―介護保険との併給者の国庫負担基準が3分の1程度に下がる仕組みを廃止すること。
④ 障害者特有のサービス化
重度訪問介護を障害者特有のサービスであると位置付け、介護保険優先利用となっても変わらず利用できるようにすること。障害福祉サービス事業所から介護保険事業所に移行した際に、重度訪問介護従業者のみの資格者が引き続き介護提供できるようにすること。
⑤ 利用のシームレス化
(イ) 重度訪問介護における外出
―平成18年9月29日厚生労働省告示第523号で記載された文章により規定されています。これら規定が障害者の社会参加の大きな妨げなっている為、それらを削除すること。
(ロ) 通勤・通学等において、他の施策(労働関係、教育関係など)が保障されない場合は、障害福祉サービスで保証できるようにすること。
2、医療的ケアならびに重度障害者特有の評価について
① 医療的ケアに取り組む事業所に対し大幅に評価を引き上げること。
② 医療的ケアを地域において安全に行うために必要な頻回の同行研修(繰り返し5回~10回研修等)について評価・報酬をおこなうこと。またそれは医療的ケアが無くとも重度障害者についても同様であること。
3、相談支援について
① 計画相談において、とりわけ言語障害を持つ重度障害者等、繰り返し聞き取りを必要とする人の計画作成について充分な評価・報酬をつけること。
② 地域移行支援において、これまで自立生活センター等の障害当事者団体がおこなってきた施設・在宅からの自立支援の仕組みを報酬として位置付けること。
4、移動支援について
―行き先等を詳しく書かせることや、著しく行動を制限させるような仕組みをあらためること。
5、地域支援の基盤整備について
―財政が逼迫している中で地域生活支援を持続可能なしくみとしていくためには、入所施設や精神科病院から地域移行を進め、地域生活資源強化を進めていくこと。
これら要望の詳細資料を使って説明をおこないました。
当日のヒアリングには全8団体ほど呼ばれていて、最初に各団体10分ずつ意見・要望事項を話す時間が与えられており、その説明が一通り終わった後に検討チームの各委員から団体ごとに質問がされ答える形式で進んでいきました。また最後の質問では、全団体に対して「障害福祉サービス等に係る予算額が、障害者自立支援法施行時から2倍以上に増加しており、毎年10%近い伸びを示している中で、今後持続可能な制度としていくための具体的方策をどのように考えているか?という意見を求められました。
このことについては、非常にシビアで重要な課題であるとの認識にも立ちつつ、単に報酬や介助量を増やせということでなく、まだ障害の程度、障害の種別、地域間格差によって受けられるべきサービスが行き届いていない点、未だ進まない地域移行を進めるといった点で予算が必要であること、また日本の障害福祉予算がOECD諸国(経済協力開発機構)の障害福祉予算から見ても低水準であることからも、障害者総合福祉法の骨格提言や障害者権利条約に沿った水準までは予算が必要だという点に立って、変わらず求めていかなければならないと思います。(「JILニュースレター」より)
■介護保険制度の動向
○前回の介護保険法改正により、今年4月からは、すでに要支援者のヘルパーとデイサービスを予防給付から分離していく新しい「介護予防・日常生活支援総合事業」が始まっています。(例:大阪市・生活援助型訪問サービス)
・また、今年の8月からは、前回の介護保険法改定で決まっていた、一部の人の自己負担限度額の引き上げが始まります。(37200円→44400円)
(注)住民税が課税されている「一般」世帯は、4万4,400円となります。但し一定の収入(年金収入が280万円など)以下の人は、3年間(2020年まで)は、据え置き(月37200円)です。
○今回の介護保険法改正法案(2018年度から実施)が、5月26日成立し、来年度以降の仕組みが決まりました。
1、共生型サービス創設
2、現役並み所得者(単身で年収340万円以上、夫婦世帯で463万円以上)の利用料自己負担を3割に引き上げ
3、保険料「総報酬割り」導入
※大企業社員の保険料を引き上げ(中小の「協会けんぽ」は若干引き下げ)
4、福祉用具レンタルで上限価格を設定
(以上「事業所ネットワーク情報提供」資料より)
■生活保護における扶養調査の実態把握へ
・7/19厚生労働省で、「生活保護の扶養調査の実態把握」を行い、年末を目途に「改善策」を講じるということが方針として出されました。各自治体で3親等内の扶養義務者に対して、どのような範囲で「扶養する意思の有無を確認」しているのかなどを調査することになりました。
・これは、自民党などでの「親族に扶養の義務や能力があるにもかかわらず、保護費を支給することは問題だ」という意見を背景にしてします。
・もともと2014年7月から、生活保護法が改悪され、福祉事務所が、扶養義務者に対し扶養照会を行い、扶養義務者が扶養できないと回答した場合等、本当に扶養できないのかどうかも含めて、扶養義務者(基本的には、親、子どもおよびきょうだい)の資産・収入等について、官公署に資料の提供や報告を求めることができるようになりました。また、銀行、信託会社、雇用主、その他の関係等に対し、資料の提供や報告を求めることも可能となりました。これらの調査は、現在生活保護を受けている世帯についても同様に行うことが可能です。
・この間、利用者の資産調査が毎年1回行われるようになっていますが、扶養義務の強化が、更に進められようとしています。障害者の自立にとって、非常に大きな問題です。
(以上「事業所ネットワーク情報提供」資料より)
9月 1, 2017