【報告/告知】 「障害者の地域生活を支援する事業所交流会」の報告
障問連事務局
〈次回の告知〉・・・日程のみですが、12月10日(日)に開催します!!!
詳細は未定・・・・またご案内します!!!
■前回・第10回事業所交流会の報告
第10回交流会は、7月16日、三宮勤労会館・多目的ルームにおいて開催されました。初の企画として「様々な事例~実践の検討会」というテーマ。内容としては、それぞれの現場での支援の在り方を、障害当事者も含む様々な立場から掘り下げ考え合うことを通じて、目指すべき支援の在り方を一緒に考えようという趣旨。「訪問系・通所系・グループホーム・経営労務」の4つの分科会に分かれ、事業所からの実践報告を受け、様々に意見交換しました。以下、「経営労務」分科会の報告を司会者よりいただきましたので、下記に掲載します。また半年前になりますが、第8回交流会報告を、次に紹介します。「事業所交流会って、どんなところ???」と思われる皆さん、ぜひ一読ください。
【経営労務 分科会報告】
川田晋(NPO法人ぱれっと)
自己紹介のあと実践事例を通しての話し合いを行った。事例発表は西宮A事業所のSさん。
テーマは「キャリアパス要件への取り組み、2017年度処遇改善加算取得に向けて」。
最初に法人(事業所)の(職員の状況を含めた)紹介がされた。正社員と登録ヘルパーがおられ、登録ヘルパーでも社会保険加入者もおられるとのこと。
次に取り組みの内容について話をされた。2015年に2016年度からの施行をめざし給与改定等に取り組まれた。3名のスタッフと社労士が月1回程度の会議を持ち検討された。
結果、正社員については年齢と経験による基本給制度へ変更し、資格手当の新設を行われる。
2016年には加えて新たな処遇改善手当の申請に向けて就業規則、賃金改定、職務規定の作成に取り組まれた。役職手当、役割手当て等を具体的し明瞭化している。取り組まれた結果、正職員、登録ヘルパーの違い、取り組みまでの給与水準の問題などはあったが、改善点多く、ペーパー化することで分かりやすくもなったとのこと。
職員もそれぞれの職務や立ち位置など意識化されたとのこと。今回決定したこともいずれ変化していくであろうが、組織的にも法人の将来に向けて、また次世代へ向けてつなぎやすくなったとのこと。
発表後に意見交換が行われた。給与格差の問題や、困難ケース対応者への配慮、同行援護など資格がなくては出来ない職務への手当て、限りある財源の中で行う昇給の仕組みの事等多くの意見が交わされた。いつものことだが、人材不足の問題なども上がった。
意見交換の中で今回の、A事業所の取り組みで良かったことは、まずブレーンストーミングなどを行い、職員の意見などを聞いている事や、うまく現職員の配置が決まったことがあげられた。また、ペーパー化することの必要性は言うまでもなく、皆が統一して「必要」との意見で、A事業所の資料を参考に各法人(事業所)でも考えていきましょうと言う話になった。ブレーンストーミングについては、事業所交流会などでも活用していければという話も出た。
その後、時間が少し残ったので、それぞれの事業所での会議や研修についても意見交換を行った。それぞれ工夫をしているが、なかなか全員が集まれる機会が持てない、特定事業所加算をとっているところでは研修が必須となっているので課題になっているなどの話がでた。こちらも今後のテーマとされた。
全体を通し、有意義な意見交換の場所になった。経営分科会だが、で話だったが、経営する立場の者だけでなく、多くの方に参加していただくともっと広がりを見せるのではないかとの意見もだされた。事例をだすという手法は、話し合うきっかけにもなり良かったのではないかと思われる。
■(半年前ですが)第8回交流会「先人から聞いてみたい!障害者支援への思い」報告
星屋和彦(自立生活センター神戸Beすけっと)
第8回は、今までの分科会方式とは違い、午前中に「先人から聞いてみたい!!障害者支援への思い」という内容で、NPO法人サニーサイド(尼崎)の松村さんをコーディネーターとして、古くから支援者として活動してこられた栗山和久さん(NPO法人遊び雲・西宮)、山田剛司さん(社会福祉法人えんぴつの家・神戸)、田中義一さん(NPO法人生活支援研究会・神戸)、川田晋さん(NPO法人パレット・明石)の4名にお話を伺いました。その内容をもとに午後からは参加者が「ワールドカフェ」方式でグループに分かれて意見を出し合い、また4名の先人に質問をぶつけるというような新方式で、非常に刺激的でした。
田中さん、栗山さん、山田さんといえば、僕の中では『カニは横に歩く』(角岡伸彦著・講談社)という、Beすけっと前代表の澤田隆司さん初め、福永年久さんたち関西の自立障害者の先駆者と、障害者解放運動を取材したノンフィクション本の中にも出てくる、大先輩。普段、一緒に活動させていただく機会はありますが、なかなか直接聞くことのない、活動を始めた当時の話をこの交流会で聞くことができ、『カニ横」のライブヴァージョンと言う感じでとても面白かったです。
支援に関わった経緯など
栗山さん、山田さん、田中さんは、世代的には違いはありますが、3人とも学生時代から澤田さんや福永さんたちの介助に入り、重度障害者の「地域生活」にこだわってきた人達です。制度のない時代なのでもちろんボランティア。澤田さん・福永さんたちの「青い芝」が行っていた在宅訪問(1980年代の制度もなにもない時代に、自宅に親とともに引きこもらざるを得ない障害者宅を訪問して、外に出て好きな人生を送ろうと障害者自らが誘いにいく活動)にも介助者として関わってきていたそうです。
それは、多くの人が想像するような「ボランティア」、つまり「可哀そうな人」を「お世話」してあげて、「感謝」される、というようなものとはまったく違う世界。3人とも、学生時代のそうした活動の中で、今までの常識を覆されるような体験をし、そして「世の中を変えていきたい」という思いを多かれ少なかれ持ちながら、現在も活動を続けられているということです。
もう一人のパネリスト、川田さんは、もともと施設で働きながら、施設の在り方に疑問を持って、在宅支援・地域移行に移って来られた方です。
川田さんご自身、施設で働いていて、夜間には40人の障害者を2人の職員で介護していたが、トイレなど介護を頼まれた時にどうしても「ちょっと待ってね」と言わざるを得ない状況になる。その「ちょっと待ってね」を自分で数え始めた時に、このままじゃ駄目だと思い、施設を離れ自ら在宅支援の事業所を立ち上げたそうです。施設で働く多くの人は、川田さんのように一生懸命、過労になりながら頑張っている。けれども、それでもやっぱり矛盾や疑問を感じざるを得ないのが施設生活なのかもしれません。
川田さんは、自覚的に、経験的に施設での生活への矛盾を感じてきた方。僕なんかは、最初に始めたのがたまたま(有料での)在宅介助。もちろん当初は、地域生活や自立生活の意義や知識、支援しようという気持ちもさらさらなく。それでも、澤田さん初め様々な自立障害者の方の地域生活での介助をさせてもらう中で、「施設って何やろ、施設での生活ってどうなん、自分やったらやっぱり施設は嫌なんちゃうかな・・・」とは思うようになり。でも、それは感覚的なものでしかなく、実際の施設生活・施設介助を詳しく知るわけではないので、川田さんのお話はとても説得力があり参考になりました。
障害者制度をどう考えるのか
こうしたそれぞれの方の、今までの経緯や、きっかけなどを聞いたあと、他にもいろんな話を聞くことが出来ました。その中で、特に印象に残ったことを2つ、書きます。
まずは、4人のパネラーに対して「制度のない時代から活動してきた皆さんから見て、現在の障害者の制度についてどう思うか」という会場の参加者から出た質問があり、それに対して4人からいろいろな意見が出ました。
まず、パネラーから出たのが、「制度は嫌いである、制度とは利用するもの」という意見。
制度があることでいろいろな大事な本質を隠しているのではないか。例えば「介護で自分の時間をとられる」という思いも、「仕事だから」と割り切ることで、その思いを深く突き詰めずに流せてしまうことに問題がある。無償介護と有償介護の違いやそれぞれの良さについて、お金がもらえるから障害者と関わるのか(もらえなかったら関わらないのか)、という根本の問題も、きっちり考えることなく、うやむやにしてきたのではないか。なぜ制度がないと障害者の生活が保障されないのか、制度なんてなくても保障されるべきではないのか、と問い続けることが大事。それに、生活保障としての介護保障は制度に乗っかりながらも、優生思想などは別問題で残っていることを絶対忘れてはいけない。
一方で、制度そのものには疑問を感じることはあっても、すべてが駄目なわけではない。制度の良かったこととして、例えばガイドヘルプ制度を筆頭に障害者の社会参加が当たり前になってきたことは、制度の良い面ではないか。そして、関わる人が増えたというプラス面もある。という話も続きました。
2003年に支援費制度が出来る前の90年代まで、重度障害者の自立生活を支援する介護付けは、介護ボランティアも増えず大変だった。無給だけど介護に来て、と頼むときに、「おもろい人おるで」と誘うが、実際にはそんなに介護がおもろいわけではない。「ありがとう」や「ごめんなさい」で疲弊していく仲間を見ていて、逆転するためには制度が必要やと痛感した、という当時のリアルな話もありました。
そして、忘れてはいけないのが、障害者を巡る制度の根幹は憲法の「基本的人権」なんだということ。障害者の介護制度も、何も障害者がワガママや贅沢を求めているのではなく、障害がない人と同様の当たり前の生活を求めているだけ。今の制度を作り上げるまでに、どれだけの多くの障害者の汗や涙があったか。そのレールの上に現在のわたしたちは乗せてもらっている。障害者の制度は決して私たちに関係ないものではない。障害者が切り拓いてきて世界で、生かされている我々、という自覚を持つことも大事ではないか。
こうした、制度の良い面悪い面という話がある中で、こんなことも出てきました。
制度が出来て、障害者の生活はどこまで良くなったのかという視点も必要。結婚していたり、就職している重度障害者がどれだけいるのか。どんな友人関係を築いていて、どんな生活や趣味をもっているのか。介護者をつけてどんな社会参加をしているのか。一緒に学校で学び、一緒に働き、一緒に生きていくことがどれだけ出来ているのか。そこにはまだまだ多くの問題が残されている。
それと、制度が後退しないように守りながらも、足らないところを拡充していく、切り拓いていくことの大切さを若い人たちも実感してほしい。その最先端に、わたしたちはいるんだという想いを持つことも大切。という言葉もいただきました。
例えば、身近なところでは「重度障害者入院時コミュニケーション支援事業」という神戸市の制度がある。これは、澤田さんや福永さんたち当事者、そして支援者たちが神戸市と交渉して作ってきた制度。全国に先駆けて神戸市で一番最初に出来た。その後、同じような制度が全国の自治体で出来ていった。
入院時には、普段使っている制度が使えなくなるため、介助者が制度で使えなくなる。でも病院では、24時間介助が必要な、ナースコールも押せない障害者の介助をきっちりしてくれるわけはなく、入院したことにより、褥瘡になったり体調を悪くする障害者もあとを絶たなかった。また、制度で介助者を使えないので、自費で介助者を雇わざるを得ず、そこには膨大な費用がかかる。そのため、体調が万全でないのに無理やり退院したり、逆に体調が悪いのにぎりぎりまで入院をしない、という障害者もいた。そんな制度の矛盾を、「決まりやねんから仕方ないやん」と諦めるのではなく、声をあげていくことで実際に制度が変わった。
普段から、「制度だから絶対」「制度だから正しい」と思いこむのではなく、「これっておかしくない?大丈夫?」という視点を持ち続けること。そして「おかしいやん、なんとかならんの?」と声をあげていく、声をあげてもいいんだ、という気持ちをもつこと。今回、先人たちの話をきいて、「あーありなんや」「へー変わることもあるんや制度」と思った若手もいるのではないかと思います。
障害者支援はおもしろいのか???
もうひとつ特に印象に残ったのは、「障害者の支援は面白いのか、面白くないのか」というやり取りが出て、盛り上がったことでした。
障害者との関わりを、「面白い、面白くない」、で決めたくない。なぜなら面白い障害者のもとにはたくさんの人が集まってくるけど、人付き合いの苦手な障害者や自分の言葉や行動でコミュニケーションをとりにくい(まわりにわかってもらいにくい)障害者が、取り残されたり支援が集まらなかったりする現場を見てきた。
支援が必要だけど圧倒的に足らない障害者が目の前に居てたら、面白い・面白くない、好き・嫌いの前に「せなあかんこと」があるんじゃないかという想いがある。介助していて面白い時もあるけど、人の生活に入る・支援するということは基本「面白くないこと」「つまらないこと」。特に24時間介助を必要とする重度障害者の介助は、「日常の暮らし、当たり前の何もない生活」を介助するということ。そういう「つまらないこと」にたくさんの人を巻き込んでいくことの難しさを感じている。人を巻き込むために、戦略的に「面白がる」ことはあるが、人に「面白いでしょ」と言えない。という意見が出ました。
それに対し、面白くない人はいない、どんな人にも味や人間味があり、それを味わう関係性を目指したい。という別のパネラーの意見もあり、ここは会場も意見が分かれ、盛り上がった部分でした。
その他、いろいろ面白い話がありましたが、いくかあげてみると。
『介助といっても、1対1のことでお互い人間なので、きついと感じることもある。そういう時の介助のしんどさ。でも、相手の障害者のやるせなさや、それまで生きてきた歴史と人生に想像を巡らせること。嫌だと思っていても、その人に「関心を持つ」ことは出来るし、それが大事。「嫌い」「あわない」といって関係を切ってしまったらそれでおしまいになる』。
『日々の介護や事務作業に流されるだけではなく、立ち止まって考えること、疑問をもつこと、勉強していくことが大事。差別に対する怒り、自分以外のことにも興味を持ち、怒りを感じることの大切さ。いろんな社会問題を知ることで、自分の意識を広げ、自分の持っている世界観(常識)を疑う。それにより、障害者との付き合い方も変わる』。
『障害者にとって大事なのはタイミング。もっと出かけたい、もっとお風呂に入りたい、そういう声をきける大事なタイミングの場にいるのが介助者。障害者の逆転のチャンスになれる支援をしていきたい』。などなど。
最後に・・・
事業所交流会は毎回40人以上参加があり、それぞれ内容も充実していて、普段、いち事業所のいち職員として活動しているだけでは感じられないことや、思いもしなかった考え方など、様々な刺激を受けています。そして、それを持ち帰り、自分なりに普段の活動にフィードバックして生かしていこうという、とても前向きな刺激になっているのではないかと個人的には思っています。
事業所交流会・・・刺激になります、元気になります!刺激を求めている方、ご興味ある方はぜひお問い合わせくださいませ!!!
※(上記は「自立生活センター神戸Beすけっと」機関誌の文章を著者の了解を得、修正したものです)
9月 1, 2017