国/県の制度

【報告】 兵庫県がユニバーサル社会づくり条例の検討を始める!!??

障問連事務局

 

■突然の「ユニバーサル社会推進委員会」の設置と条例検討の動き

兵庫県は、8月8日、「ユニバーサル社会推進委員会の設置について」、突然記者発表を行った。障問連事務局として、この動きを聞きつけ、7月28日要望書提出の事務折衝の際に、障害福祉課に確認すると、「一切言えません」と極めて固い対応に終始しました。

その後、記者発表資料を見ると、同委員会について、以下のように記されています。

本県では、平成17年に「ひょうごユニバーサル社会づくり総合指針」を策定し、誰もが主体的に生き、支える社会の構築を目指してきました。

当該指針は平成23年度にフォローアップを行いましたが、その後6年を経過し、2020東京パラリンピック競技大会、ワールドマスターズゲームズ2021関西を控えるとともに、近年、障害者支援施設での殺傷事件、視覚障害者の駅ホームからの転落死亡事故、さまざまな自治体による手話言語条例・コミュニケーション条例の施行、認知症高齢者の増加など、さまざまな情勢の変化を踏まえた対応が必要となっています。したがって、このたび「ユニバーサル社会推進委員会」を設置し、総合指針の検証を行うとともに、「ユニバーサル社会づくりの推進に関する条例(仮称)」の制定も視野に、今後のユニバーサル社会づくりの推進について検討を進めます。

上記を読めば、まったく意味不明。相模原事件から様々なことが羅列されていますが、単に主要なトピックスとして挙げられているだけであり、貫かれたものは何もありません。

そして、推進委員として9人。県障害福祉審議会の委員でもある大学教授2人、県身体障害者福祉協会理事長、障害者就労支援系事業者、という障害関係者はいるものの、その他の委員は、県会議員(自民党)、特別養護老人ホームを経営する団体関係者、「神戸外国倶楽部」といったメンバーにより構成されています。「国際化」「高齢者問題」そして障害者問題を加え、非常に大雑把な内容での「ユニバーサル」社会の実現の取り組みと解されます。あえて推測するなら、上記の「ワールドマスターズゲーム2021関西」の主催団体として「関西広域連合」があり、井戸知事は広域連合の座長。知事再選後の大きな話題作りの意図があるのかと考えられます。

 

■兵庫県の人権感覚が問われるものではないか

しかし、一方では全国各地、県内自治体でも広がっている手話言語条例について、また以下のように県議会でも手話言語条例、差別解消条例を制定すべしとの声が挙げられており、その要望に対峙するものとして、この動きがあるようです。さらに、県の担当課は「障害者支援課・社会参加支援班」となっています。様々な課題を網羅するならもっと別の部局が主管すべきです。今後検討されるユニバーサル条例の中身はわかりませんが、以下の県知事の議会答弁にあるよう、「実効性の無い条例、条例事項の無い条例は意味がない」との知事自らの答弁と大きく矛盾すると考えられます。あえて言うなら、障害者団体の要望は聞き入れない、そしてこのユニバーサル条例制定により、今後とも「手話言語条例や差別解消条例は制定しない」という県の意思表明ではないかと危惧します。

大阪府は、相模原事件から1年目の7月26日、行政として声明を出しました。兵庫県の姿勢とは大きく異なります。障問連の今年度の対兵庫県要望でも、具体的な福祉施策のほかに、人権の視点から見た兵庫県の障害者施策という課題について要望しています。きたる9月19日の第1回交渉でも取り上げたいと考えています。同委員会は9月15日にも委員会が開催されます。今後とも注視し取り組んでいきます。

■県議会での井戸知事の答弁(抜粋)

兵庫県議会第335回定例会(平成29年2月24日)」において、神戸市長田区選出の公明党議員、越田浩矢氏が、差別解消条例について井戸知事に質問しています。

○越田議員の質問抜粋

「・・・人間は自分が普通と思っているものとは異なる人に対して、排除や嫌悪といった無理解ゆえの反応を示すことが往々にしてあります。だからこそ、障害者についての理解を深める啓発活動が、障害者差別解消に向けた一番の取組であると考えますし、差別解消における成果の評価は、障害者側から社会を見て、障壁や差別の解消が進んでいると感じられるかであると思います。

そこで、法施行から1年を迎えるに当たり、県のこれまでの取組の成果や今後の課題について、当局のご所見をお伺いします。

また、障害者側から見た法施行後の改善度合いの認識をアンケート等で把握していく必要性や、県民への障害者理解に向けた啓発活動の強化に向けて、北海道や熊本県、長崎県等で制定されている、障害者の権利に関する条例のような条例制定が、障害者差別解消の実効性を高めるためにより有効であると考えますが、併せて当局のご所見をお伺いをいたします」

 

○井戸知事の答弁 抜粋

「・・・差別解消法により事業者に対する報告聴取や勧告などを行う仕組みが整備されておりますので、障害福祉委員会の議論を踏まえまして、県としては、条例ではなく、施策の基本的な考え方や県の役割を推進要綱として策定をし、これに基づいて着実に取組を進めております」。

 

「条例を作ることの意義というのは、条例事項があるかないかということを第一義に考えるべきだと思っています。ご指摘のように、条例があったほうが、中身はともかく、支援の手を差し伸べているんだという、いわば印象を与える効果はある。そういう意味で、意味がないわけではないという議員のご指摘だと思いますが、条例事項があるかないか、条例事項もないのに、単に条例を作るということよりは、私はもっと実質的な効果が発揮できるような対応をしていった方が現実的だし、対応力としては望ましいものではないか、このように思っています。したがって、手話につきましても、条例を作るよりは、手話を使いこなせる人の数を増やすということで、全県的な手話教室の数を一挙に増やさせていただいて、その普及を図ろうという対応をさせていただいております。ただ、拒否をしているわけではありません。状況あるいは障害のある方々の希望も十分に踏まえながら、更に検討を加えていきたい、このように思っております」

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