優生思想 精神障害者

【精神障害】 精神保健福祉法「改正」の動きと問題点

障問連事務局

相模原事件を受ける形で、政府は2/28に精神保健福祉法「改正」案を閣議決定、当事者たちの反対運動にもかかわらず、5/17に一部修正のうえ参議院で可決されてしまいました。

障問連としても今後の衆議院通過に反対するとともに、なぜ反対するのかについて、大阪精神医療人権センターの山本深雪さんが『人権センターニュース』2017年4月号でわかりやすく書かれていますので、転載させていただきます。また、5/27に開かれた同センターの総会で出された声明文も同じく転載させていただきます。

 

精神保健福祉法「改正」案について思うこと

認定NPO大阪精神医療人権センター

副代表 山本深雪

2017年2月28日、政府は相模原障害者殺傷事件を受け、精神保健福祉法の改正法案を閣議決定しました。この改正法案は、たくさんの問題点があると思いますが、ここでは精神保健福祉法「改正」と精神科病院について、3つの問題点を述べます。

●法改正の前提がおかしい

相模原障害者殺傷事件の根底にあったものは障害者差別の思想です。どうして彼が障害者は社会にとって必要がない存在だと考えたのか、そこを問題にせずに措置入院のあり方に絞り込んだ議論をし、法改正を行おうとしていることです。措置入院を経験した人たちが今回の改正案の内容を知ったら、「措置入院になることって責められるべきこと?」と思うのではないでしょうか。医療とは、治安のためではなく、本人のためにあるものです。

●多すぎる強制入院

日本の精神医療は、もともと強制入院が多すぎます。その上で、今回の改正ではさらに強制入院の入口が広くなるという問題もあります。

医療保護入院に関し、市町村長同意の範囲が広がることになります。改正の概要では、「患者の家族等がいない場合に加え、家族等が同意•不同意の意思表示を行わない場合には、市町村長の同意により医療保護入院を行うことを可能とする」となっています。措置入院については、「精神障害者支援地域協議会」により、出口も、すぼめられようとしています。

●精神科病院には権利擁護の仕組みがあリません

「閉鎖空間に入れられ、手足が縛られる、それなのに理由の説明もされず期限もわからない」、「人間ではない扱いをされる」当センターにはそのような声が届いています。人間としての尊厳が傷つけられることが起こってしまう空間なのです。自由を奪われる強制入院や身体拘束が法律で認められている精神科病院の中に権利擁護の仕組みがないことはおかしいことです。

今回の法改正に関する厚生労働省の資料には、「医療保護入院制度等の特性を踏まえ、医療機関以外の第三者による意思決定支援等の権利擁護を行うことを、障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業に位置づけることが適当」と書かれています。これは権利擁護の仕組みとはいえません。また、地域生活支援事業は、自治体の裁量によって実施しないこともでき、自治体による格差が出たり、形式的に置かれるだけとなってしまうおそれがあります。権利擁護の仕組みは、「ないよりまし」ではなく、「なくてはならないもの」です。

精神科病院での権利擁護の仕組みとして「精神医療審査会」があるという意見もあります。しかし、精神医療審査会はほとんどが書類審査です。実地面談が実施されるのはまれです。審査会事務局が行政の中にあり「第三者」とは言えません。精神医療審査会は権利擁護の役割を果たすことができていません。強制入院となったら、自動的に(せめて72時間以内に)、病院から独立した立場の「権利擁護者」(研修をうけた入院経験者や法律家、ソーシャルワーカーなど)が地域から面会にきてくれる仕組みが必要です。

●私たちがとりくんでいること

当センターでは、精神科病院に入院中の人の権利擁護活動として、電話相談や面会活動を行っています。この取組みは大阪だけでなく、どこにでも必要だと思っています。

私たちはこの法「改正」に反対する意見書を出しました(詳細は次のページから)。また、議員への要望に行ったり、集会や取材で意見を述べてきました。まだまだ不十分なので今後も活動をかさね、積極的に発信していきたいと思います。ネバーギブアップです。

(『人権センターニュース』2017年4月号より)

 

声明~精神保健福祉法改正法案の廃案を求めます~

1 今年2月28日に国会に上程された精神保健福祉法の改正法案は、5月17日に参議院で一部修正のうえ可決され、来週にも衆議院での審議が始まろうとしています。

 

2 精神保健福祉法は、2014年4月に保護者制度の廃止などを内容とする改正法が施行され、施行後3年である今年4月を目途に見直しをすることになっていました。私たちは、この間、同法の見直しにあたって、医療保護入院の廃止を含む強制入院制度の抜本的見直しや権利擁護者制度の確立を求めてきました。ところが、昨年7月の相模原市障害者殺傷事件をきっかけに、政府は、これらの課題を置き去りにしたまま、事件の原因が措置入院制度にあったかのように歪曲ないし矮小化し、再発防止のためと称して、措置入院者の退院後の管理と監視を強めることを主たる内容とする精神保健福祉法の改正を打ち出してきました。

 

3 今回の改正法案は、政府が当初から説明していたように「二度と同様の事件が発生しないよう」にするために措置入院制度を変えるもので、精神医療を本人のためにではなく社会防衛のために用いようとするものです。法案の内容についてみても、措置入院者を対象とする退院後支援計画を策定するために入院が長期化すること、計画策定の手続や実施などに警察関係者が関与するおそれがあること、措置解除後も「継続的支援」の名の下に本人の居場所や人間関係への介入が予想されること等精神障害者の人権保障の観点から見過ごすことのできない多くの問題点があります。また、措置入院者に対する差別・偏見を助長することにつながるおそれもあります。厚生労働省は、参議院厚生労働委員会での審議中に、改正法案の説明資料のうち、改正趣旨の犯罪防止の部分を削除するという異例の対応をしましたが、法案の基本的内容に変更はありませんでした。精神医療を治安の道具にしようとしている改正法案の本質は変わっていないのです。参議院では、厚生労働委員会で18項目にわたる付帯決議を上げたほか、施行後3年を目途として、措置入院者の退院後支援計画の作成手続への関与や計画内容への異議申立、非自発的入院者の権利保護制度等について検討することを附則に定めました。しかしながら、措置入院の長期化や措置入院者への監視強化による人権侵害という改正法案の問題点はまったく解消されていません。

 

4 私たちは、衆議院における改正法案の審議にあたって、多くの問題点を抱える改正法案を廃案とすることを求めます。

 

2017年5月27日

認定NPO大阪精神医療人権センター総会・記念講演会 参加者一同

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