介護保障 市・町の制度 新聞記事から

【新聞記事より/介護保障】 神戸市の介護保障に対する取り組み

障問連事務局

障害者の介護保障を考える会・例会案内

日時:6月25日(日)13:30~16:30

場所:神戸市障害者福祉センター会議室A

議題:個別相談、10月28日(土)介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネットと共催のシンポジウムの内容相談

 

神戸市の障害者に対する介護保障については、障害当事者のニーズに即したものとは言い難いと、障問連や「障害者の介護保障を考える会」においても問題提起をし、改善を訴えてきました。とくに、重度訪問介護における深夜帯の介護保障においては、最大で4.5時間しか認められない現状があります。また、支給量以上の介護が必要な障害者も多く、そのような障害者の介護保障にあっては、①障害者が自己負担して事業所に支払う、②事業所が資金を持ちだして負担する、③介助者が無償あるいは安価な対価で介助を行う、この3つの組み合わせでしのいでいるのが現状です。しかし、そもそも介護保障とは憲法に規定される生存権にのっとり、誰もが必要なだけ行政機関によって保障されるべきものではないでしょうか。このままでは、障害者も事業所も介助者も限界が来てしまい、立ち行かなくなる可能性があります。せっかく地域で自立した生活を営んでいても、行政施策によって生活がしんどくなるなら、真に「共生社会」であるとは言えないのではないでしょうか。

今回、神戸の介護保障の取り組みや、地域で暮らす障害者の困難な現状を、毎日新聞が取材しています。ぜひご一読いただき、神戸市の介護保障問題の一端を共有していただければと思い、2本の記事を掲載させていただきます。

 

■心の扉を開いて

共に生きる兵庫 第1部「地域で暮らす」/1 当たり前の夢を実現 重度障害、見守りに支えられ /兵庫

毎日新聞2017年5月15日 地方版

https://mainichi.jp/articles/20170515/ddl/k28/040/278000c

 

午前2時過ぎ、ベッドに横たわる迫田博さん(40)は、天井に向け右手人さし指を立てて見せた。脳性まひで、言葉を発することができない迫田さんがトイレに行きたいという意思表示だ。指が1本ならおしっこ、2本ならうんち。夜中に3回程度訴え、その都度ヘルパーが介助をする。時には間に合わず、漏らしてしまうこともある。ヘルパーは迫田さんのサインを見逃さないよう、寝ずに見守る。

神戸市長田区の「Re-Smile」(リ・スマイル)。全国的にも珍しい、重度身体障害者も入居できるシェアハウスだ。4階建て建物の個室で迫田さんを含め男女9人が1人暮らしをする。9人の障害支援区分は5~6で、迫田さんは最も重い6。重度の障害者も当たり前に地域で暮らす。ここは彼らの夢を実現する場だ。

生活を支えるヘルパーは、障害者総合支援法に基づき、重度の障害がある人に生活全般の介護を提供する「重度訪問介護」を利用して、派遣される。ただ、支給時間数は自治体の裁量に任されている。迫田さんは24時間ヘルパーを付けてほしいと求めるが、神戸市は1日最大15時間しか認めていない。深夜帯は「生命にかかわる危険性がない」として、8時間のうち5時間はヘルパーが付かない空白時間帯も生じている。

しかし実際には、頻繁にトイレを訴える迫田さんに対し、ヘルパーは空白時間帯も部屋を離れることなく、ボランティアとして見守り続けている。「迫田さんの尊厳を守らなければならない」。シェアハウスを運営し、迫田さんらを支援するNPO法人「ウィズアス」職員の村上真一郎さん(39)は説明する。

トイレだけではない。就寝中、頭がベッドから落ちることもあり注意が必要だ。体調が急変する恐れもある。

昨年5月20日午後11時ごろ。迫田さんは突然、原因不明の激しいけいれん発作に見舞われた。全身が硬直し、皮膚が青紫色になるチアノーゼの症状も出ている。ヘルパーはすぐに救急車を呼び、心臓マッサージを施し続けた。迫田さんは中央区の中央市民病院に緊急搬送された。

西区の実家にも連絡が入った。父光弘さん(72)と母歌子さん(69)は病院に急いだ。道すがら、光弘さんの脳裏に30年以上にわたる介護の日々が駆け巡った。

 

×  ×

 

博は家族で出かけるのを喜んだ。シェアハウスで暮らすまで、博の世話を一手に引き受けていた歌子がくも膜下出血で倒れた時は、途方に暮れたが娘たちが助けてくれた……。

ふと思った。<これでみんな楽になれる>

「親亡き後」どうするか、結論が出ないまま歳月が流れたが、もう案ずる必要もない。すべてが終わるのだ。

覚悟をして病室に入ると、元気な息子がいた。処置が早く、回復したのだ。ヘルパーが見守っていたからこそ、救われた命だった。

<お前は懸命に生きようとしとるのに、わしはとんでもないことを考えてしまった。すまん、博>。父は心の中でわびた。息子は屈託のない笑顔を見せる。この子はやはり、かけがえのない子だ。光弘さんの目から涙がとめどなく流れ落ちた。

 

■  ■

 

「共生社会」の実現が今、求められている。私たちは何をしたらいいのか。閉ざしていた心の扉を開くと、隣に自分とは異なる個性を持つ人の存在に気づく。まず彼らを知ることから始めたい。第1部は「地域で暮らす」ことについて考える。【編集委員・桜井由紀治】=つづく

 

■心の扉を開いて

共に生きる兵庫 第1部「地域で暮らす」/2 私たちの声届けよう 介護空白帯、自助努力でやり繰り /兵庫

毎日新聞2017年5月22日 地方版

https://mainichi.jp/articles/20170522/ddl/k28/040/319000c

 

今月12日、神戸市長田区に「障がい者の声を届ける会」が発足した。公的介護サービスを受けながら地域で暮らす障害者が、生活や命を守るために自分たちの声を行政に届けていく当事者組織だ。この日の初会合に、同区のシェアハウス「Re-Smile」(リ・スマイル)で1人暮らしをする、重度脳性まひの迫田博さん(40)の姿もあった。

司会者から発言を求められた迫田さんは、手元の機器を操作して合成音声を流した。「(重度訪問介護の支給)時間数が足りないので困っています。どのようにしたらいいのかと思っていました」

言葉を発することができない迫田さんは普段、文字を音声に変換する機器を利用する。会合開始30分前に車椅子で会場にやって来て、発言内容を一語一語、キーボードに打ち込み準備をしていた。

障害者総合支援法に基づき、重度障害者に見守り支援を含めた生活全般の介護を提供する制度「重度訪問介護」。障害支援区分が6と最も重く常時介護を必要とする自分には、1日最大15時間の支給時間数では足りないと訴えたのだ。

迫田さんだけではない。他にも、この制度を利用する4人の当事者が困窮する状況を訴えた。全員、重度の脳性まひだが、要望する介護時間数と実際に支給される時間数には大きな隔たりがある。いずれも、深夜帯の午後10時~翌朝6時までの間、ヘルパーが付かない空白時間帯が数時間あった。審査する神戸市は見守り支援について「単なる待機は認められない」という姿勢だが、当事者はこの空白時間帯に一人きりになってしまうことに不安が大きい。

兵庫区の市営住宅に1人で暮らす堀之内和弘さん(36)は血友病も患う。生活費は障害年金などで賄いながら、認められていない空白2時間分は自己負担をしてヘルパーに見守ってもらう。自己負担分の介護料は特別障害者手当月々約2万6000円を充てているが、全額支払えないので事業所に値引きしてもらい長時間介護を実現させている。それでも、堀之内さんは「これからも地域で生きていく」と決意は固い。

障害年金と特別障害者手当で生活する長田区の凪(なぎ)裕之さん(44)も、貯金を取り崩して空白時間帯を自己負担する。自力では寝返りや体温調整ができない。多い月は10万円以上の出費となるという。借りている民間アパートの家賃の支払いもある。このままでは貯金も底を突いてしまうため知人らに頼み、深夜に無償で付き添ってもらうこともある。凪さんは「自己負担が気になって、やりたいこともやれない生活。それが情けない」と訴える。2人共、自助努力でやり繰りしたうえで成り立っている地域生活だ。

 

×  ×

 

「施設から地域へ」。2003年度に国の障害者福祉は方針転換した。だが、障害者が地域で安心して暮らせるための公的サービス制度は十分ではない。自分たちが声を上げなければ社会は何も変わらないという思いが、彼らを突き動かす。

神戸市によると、重度訪問介護の市内利用者数は280人(昨年11月末現在)。重度障害者を支援するNPO法人「ウィズアス」の鞍本長利代表は「声を上げられずに、我慢している仲間はまだ多いはず。当事者間のネットワークが必要だ」と指摘する。【編集委員・桜井由紀治】=つづく

※次回は6月5日掲載予定です。

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