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【精神障害】 精神保健福祉法の「改正」がなされようとしています

野崎泰伸(障問連事務局)

 

まずは、以下の新聞記事をご覧ください。神奈川の地方版です。

 

■相模原の障害者施設殺傷 市長が厚労省に理解 事件受けた法改正 /神奈川

毎日新聞2017年4月26日 地方版

https://mainichi.jp/articles/20170426/ddl/k14/040/200000c

相模原市の障害者施設殺傷事件を受けた精神保健福祉法改正案を巡り、厚生労働省が説明資料から「二度と同様の事件が発生しないよう法整備を行う」などの文言を削除したことについて、相模原市の加山俊夫市長は25日の会見で「改正の趣旨が精神障害者による事件事故の防止対策ではないのだから、削除は当然と思う」と話し、厚労省の対応に理解を示した。その上で、精神障害による「措置入院後のフォローのあるべき姿を国としてしっかり示していただきたい」と注文を付けた。

法案審議中の趣旨変更は異例で、民進党などは法案の再提出を求めている。また、改正案が措置入院患者の退院後のフォローについて自治体間や地域社会での情報共有を盛り込んでいるため、精神障害者団体などから「退院患者を監視する社会体制を作り、予防拘束につながる恐れがある」との指摘も出ている。昨年7月に起きた事件では、措置入院解除時や退院後の相模原市の対応が批判された。

 

昨年の相模原事件を受けて、精神保健福祉法の「改正」案が議論されています。その審議中に厚労省から、今般の「改正」は、精神障害者による事件の防止が目的であるとする文言が削除されたのです。しかし、法案の中身は以下に見るように、退院患者の監視、予防拘禁の色合いが強いため、法案の検討を振り出しに戻すべきでしょう。また、4月25日には参議院講堂にて、当事者団体を中心とした「改正」反対の集会が開かれました。

以下、DPI日本会議が出した声明文です。

 

精神保健福祉法改正案に反対するDPI日本会議声明

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議  議長 平野みどり

私たちDPI(障害者インターナショナル)日本会議は全国95の障害当事者団体から構成され、障害の種別を越え障害のある人もない人と共に生きられる社会の実現に向けて運動を行っている団体である。

2017年2月28日に「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案(以下 精神保健福祉法改正案)」が閣議決定され、国会で審議されている。この法案は相模原障害者殺傷事件の再発防止を趣旨として、強制入院の強化、医療を治安維持に使うといった重大な問題を含んでおり、さらに審議途中で改正の趣旨が削除されるなど看過できない問題が起きている。DPI日本会議としてこの法案への反対を表明するとともに、相模原障害者殺傷事件の再発防止策と精神保健指定医制度の見直しについては精神保健福祉法改正とは分けて検討することを強く求める。

 

1. 改正の趣旨が変わったのだから一から検討し直すべき

法案の概要説明文書には、改正の趣旨として「相模原市の障害者支援施設の事件では、犯罪予告通りに実施され、多くの被害者を出す惨事となった。二度と同様の事件が発生しないように」と書かれていた。しかし、厚生労働省は、参議院で審議中の4月13日に突然この文章を削除した。法改正の趣旨が変わったのだから、審議は中止し、法案を一から検討し直すべきである。

2. 措置入院の強化と治安維持

改正案では「措置入院者が退院後に医療等の継続的な支援を確実に受けられる仕組みの整備」とあり、手厚い退院支援が提供されるように書かれているが、実際は退院後の監視体制づくりである。そもそも、日本は措置入院と医療保護入院といった強制入院が諸外国に比べて極端に多い。障害者権利条約や国際的な潮流を踏まえて、地域移行をすすめることが必要である。

しかし、今回の改正案では、措置入院者は措置入院中に「退院後支援計画」を作らなければ退院できず、入院期間が長引く恐れがある。

さらに、退院後支援計画は「精神障害者支援地域協議会」が作るが、この代表者会議の構成員に警察が入っている。医療は本人の治療のためのものであるはずなのに、治安維持の仕組みとなっている。

3. 相模原障害者殺傷事件の再発防止は別に検討すべき

4月12日までは改正の趣旨として「相模原市の障害者支援施設の事件では、犯罪予告通りに実施され、多くの被害者を出す惨事となった。二度と同様の事件が発生しないように」と書かれており、相模原障害者殺傷事件の再発防止を名目に掲げた改正案であったことは明らかだ。しかし、本年2月20日に容疑者は刑事責任能力があるとの精神鑑定結果がでている。「精神障害によって引き起こされた事件」との予断と偏見を前提にした改正案は直ちに取り下げるべきである。

その上で、相模原障害者殺傷事件は優生思想に基づいた犯行であり、政府には、優生思想とどう闘っていくのかを示すことが求められている。精神保健福祉法の議論とは別に、優生思想の克服をはじめとした再発防止策を検討すべきである。

4. 精神保健指定医制度の見直し等は別に取り組むべき

今回の改正法案では、精神保健指定医制度の見直しが含まれている。2015年には聖マリアンナ医科大学病院で複数の精神科医師が「精神保健指定医」の資格を不正取得していたことが発覚した。精神保健指定医は措置入院や医療保護入院といった人権を制限する入院を判断する重要な役割が課せられている。にも関わらず、100人を超える不正取得者がいたことが明らかとなった。これは重大な問題であり、見直しは不可欠である。今回の精神保健福祉法改正案は取り下げた上で、精神保健指定医制度の見直しに取り組むべきである。また、障害者権利条約の完全実施の観点から、精神障害者の人権と地域生活の確立を課題として障害当事者を交えた検討を行うべきである。

 

医療は本来、患者の健康の維持、回復、促進のために行うものであることから、精神医療を治安の道具としてはならない。昨年6月には障害者権利条約の第1回日本政府報告が国連に提出され、今後、その審査プロセスが本格化する。あらためて、障害の有無によって分け隔てられないインクルーシブな社会を目指して、精神科病院からの地域移行と地域生活基盤整備の飛躍的拡充を求めるものである。

 

精神障害者の「社会復帰の促進及びその自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行」(精神保健福祉法第1条)うのであれば、強制入院や閉鎖的処遇こそなくしていくべきだと考えます。精神医療の目的は犯罪予防ではありませんし、依存症者の場合、警察と病院とが連携すれば、病院にかかりづらく症状の悪化も懸念されるという指摘もあります。また、地域移行を進める対象者から「重度かつ慢性」の精神病者を排除しているところにもさまざまな問題点があると思います。このように、今回の法「改正」はインクルーシブな社会を目指すうえでは逆行しており、問題点が山積しています。

 

★大阪府池田市で「大久保クリニック」を開いている精神科医師、大久保圭策さんが、「許していいのか?精神保健福祉法改悪」というサイトを立ち上げており、署名もできますので、紹介します。→ https://mental-health.amebaownd.com/

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