事業所交流会

【事業所交流会】 第8回「障害者の地域生活を支援する事業所交流会」報告

村上真一郎(NPO法人ウィズアス)

 

2017年2月19日(日)に行われました第8回「障害者の地域生活を支援する事業所交流会」の報告をします。

今回の事業所交流会は初の試みということで、午前と午後の2部制で開催されました。

午前の部は、『合同研修会:先人から聞いてみたい!!障害者支援への思い』と題して、松村さん(NPO法人サニーサイド)がコーディネーターで、山田さん(社会福祉法人えんぴつの家)・川田さん(NPO法人パレット)・田中さん(NPO法人生活支援研究会)・栗山さん(NPO法人遊び雲)の4名でのトークセッションを行いました。

 

①最初の質問ということで、まずは、それぞれの『支援のきっかけ』を。

川田さん以外の方は、大学の在学中に様々な社会運動やサークル活動に関わる中で、友達に誘われたり、先輩に誘われたりして、地域で生きる障害者と出会ってしまう。そのような「出会い」をきっかけにして、障害者とともに生きていくということに直面し、悩み、それでも今ここにいる、と。川田さんは知的障害者の入所施設職員出身で、在学中は教員志望だったけど教職を取る過程で行った養護学校での「出会い」をきっかけに、障害福祉に関心を持ち関わるようになったとのことでした。どなたも、キーワードは「出会い」。何らかの、でも大きな「出会い」があって、今の障害者への関わりがあるということでした。

 

②続いてのテーマは、『障害者と関わってのエピソード』。

障害者と関わることを家族に大反対されて、「家族か、障害者か」という選択を迫られたという話。自分で言葉を発することの出来ない在宅障害者との出会いをきっかけにして、障害者への関わり方が大きく変わったという話。他にも、入所施設でのエピソードで、立ったままでしか寝ない知的障害者への支援から、環境を変えたら変わるものがあるということに気が付いたという話。「自己解放」というキーワードから、亡くなった澤田さんが言っていたような「オレはオレ」というような「自分が自分らしく生きること」の大切さに気付かされたというエピソードや、知的障害者との出会いなどを積み重ねて続けているという話。まず、「出会い」という今の関わりへの入り口があって、それぞれの現在にいたる「きっかけ」についての話でした。

 

③次のパートは、会場からの質問に答えるという形。

グループに分かれていくつかの質問を出し合い、その質問に答えてもらいました。「若手との温度差について、どう思うか?」「制度が出来たことについては?」「給料の最低額と最高額、もしくは平均値が知りたい」「障害者運動をする上での交通費はどうしていた?」「関わりをやめたい、転職しようとは思わなかった?」「障害者が好きか、嫌いか?」などなど、各グループから実に様々な質問が出てきました。

たくさんの質問が出たので、それぞれ答えたい質問に答えてもらうという感じで答えてもらいました。質問への答えとしては、

・山田さん⇒『障害者云々ではなく、基本的に人が好き』『制度が出来たことで、様々な本質的な問題を覆い隠している。「介護をすることで自分の時間が取られる」など、本当は向き合わなくてはならない問題を、金銭的な側面で流してしまっている。本質はおさえておかなくてはいけない』『交通費は基本的に自腹』

・川田さん⇒『ガイドヘルパーの制度が出来た時は万歳して喜んだ』『施設職員時代に、「ちょっと待ってね」と口にした回数を数え始めた時に転職を考えた』

・田中さん⇒『基本的に人間は面倒くさい。「好きか、嫌いか」で質問されることが嫌い』『生活は基本面白くなくて良い。でも、そういう面白くないことに人を巻き込まなくてはいけない。その戦略として面白がろうとしてきた』『辞めたいと思ったのは、介助者がホントに集まらなくて、体調が悪くなって医者に入院を勧められた時。その時に阪神大震災があった。ここで辞めるって「人間としてどうなの」と思った』

・栗山さん⇒『好き・嫌いではなく、合う・合わないはある。でも、苦手な人にでも関心を持つことは出来る。そこから始まることもある』『制度の根幹は日本国憲法にある。基本的人権が保障されているか。制度は正しくおさえることが大事』

 

田中さんの「面白くないことをしている」という考え方を前提にたてた意見に、山田さんが『でも、面白くないということを前提に立ててしまうとやる気がなくなる』と全く異なる意見を言われたのが非常に印象的でした。この二つの異なるを意見を、それぞれがどう捉えているかについては、午後からのグループワークでもテーマになっていきました。

 

④次のテーマは、『切り開いてきたエピソード』

まずは、制度の話をとっかかりにして。

『制度は上に乗りかかれるほど、強固なものではない。降りるべき時を逃すと降りられなくなる(田中)』 『無償介護保障から有料介護保障という制度の流れの中で、なんとなくの対立関係はあったが、しっかりとした論争はなされてこなかった(山田)』 『優性思想を巡る問題は制度論とは別の個人に問われるべき問題で、制度論と同時に考えておくべき問題。制度論だけで障害者の問題は解決しない(山田)』 『制度が出来たことで多くの障害者が救われる可能性が出来たという意味で評価はすべき。だが、これを使いこなすことが大事(田中)』 『舌打ち等で話す障害者が入院した時に抱えた課題で、「入院時の制度利用は無理」と言われた時にそこで引き下がってしまうのか、と。課題を突き付けられた時に、「それって人としてどうよ」というところから考えられるか(田中)』 『制度のことを良く知った上で、「おかしいことはおかしい」と言っていくことで、乗っている制度の形を変えていくことも問われている(栗山)』

 

それぞれの制度観の違いのようなものが良く出た話になったと思いました。そして、その異なる視点からの話のいろいろな所に、今の支援を切り開いていくヒントが散りばめられているように感じました。

 

⑤最後に一言。

・山田さん⇒『若い人に思うことは、関わることと考えることを大事にしてほしい。個人として何を大事に生きていくのかということがあると、いろんな問題が楽になると思っている』

・川田さん⇒『入所施設への違和感から在宅に来たが、地域と施設がただただ対立するのではなく、地域がより耕されてきたら施設から出てくる人も増えると思っている』

・田中さん⇒『福永さんがいつも言われるのが、「障害者にとって大事なのはタイミングだ」と。自分の気持ちを汲んでくれる相手の側で、声を出しそびれたら状況は変えられない。抑え込まれている状況は今も変わらずにあって、それを逆転するチャンスになれる支援をしたい』

・栗山さん⇒『多様に障害者の問題があることを知った上で共闘していくこと。この制度の中でどのような支援をしていくのかを一緒に考えていきたい』

 

というところで、前半のトークセッションは終了、お昼の休憩を挟んで午後からはグループワークに取り組みました。もちろんテーマは、「午前中の話を受けて、それぞれがどう感じたのか」で。午後からについても松村さんの進行で、こちらも初の試み「ワールドカフェ」という方式で行いました。個人的にも「ワールドカフェ」を行うのは初めてで、いろんな事業所の人と話が出来るという意味で魅力的だと感じました。それぞれ、いろんな立場で障害者と「ともに生きる」ということを考えているのだということが伝わり良い刺激になりました。

今回の合同研修会を通して感じた事。それは、自分の「想い」を言葉で伝えるということの大切さでした。午前中に話をしてくれた4名の方、それぞれに熱い想いがあって、それがきちんと伝わってくること(少なくとも、自分には伝わりました)に素直に感銘を受けました。それは同時に、「自分が話す時には、何を、どう話すか」を考えることへと繋がりました。自分の前に道を切り拓いた人がいて、そしてそれを強い言葉で伝えてもらったのであれば、それを次へと伝えていかないといけない。その為にも、自分が何を切り拓いていくのかも含めて、もっと考えていくことが必要だと感じました。この研修を通して(自分が、勝手に)受け取ったそれぞれの「想い」を、次へと引き継いでいくためにも。

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